聖マリアンナ医科大学雑誌
Online ISSN : 2189-0285
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47 巻, 4 号
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原著
  • 藤川 あつ子, 中村 尚生, 小川 泰良
    2020 年 47 巻 4 号 p. 167-174
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    目的 頭部CT検査時に生ずる水晶体被ばく低減のために,ビスマス製防護シールドが有用であることが知られているが,この使用方法により画像に生じる影響の程度は異なる。今回,当院で行ったファントム実験での検証に引き続き,臨床画像でその画質低下の程度について,前向き研究を行い,画像診断の障害とならないことを証明する。
    方法 当院で過去に頭部CT検査施行歴のある50症例に対し,ビスマス製防護シールドを用い同一条件で頭部CT検査を施行した。シールドあり,なし群の,画質評価として22箇所のCT値とノイズ計測を行った。視角評価として2名の放射線科専門医で各群の画質を採点した。これら結果に対し2群間の統計学的有意差検定を行った。
    結果 13例はシールド以外の原因による画質劣化が高度のため除外し37例を検討した。CT値は3箇所を除き,シールドあり群と有意な差があったが,その差異は眼球以外では微小であった。画像ノイズは5箇所で有意差が見られたが,その差は1SD未満であった。視覚評価はシールドあり群で眼球の画質低下が有意に見られたが,その他には影響を認めなかった。
    考察・結論 CT検査機器の機能向上によりCT管球傾斜で眼球照射を避ける方法や,眼球の存在する前方側からの照射を低下させるなどで水晶体被ばく低減は実現されているが,すべての機器で可能となるまでは時間もかかる。今回結果では眼球を除いて有意な画質低下は来たしておらずビスマスシールドはまだ意義があると考える。

症例報告
  • 細屋 由紀子, 米山 喜平, 宮﨑 秀和, 山田 麻里可, 佐久美 哲也, 秋山 志帆, 玉置 麻衣子, 小口 由美, 仲 真由美, 渡部 ...
    2020 年 47 巻 4 号 p. 175-180
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    症例1:83歳男性。高血圧症と心房中隔欠損症の現病歴あり。動悸精査にて24時間ホルター心電図検査を施行したが心房細動を検出できなかったため,長時間ホルター検査を施行。14日間の記録期間中に137件の発作性心房細動が記録された。
    症例2:58歳男性。雇用先の定期健診にて心房細動を指摘され受診。24時間ホルター心電図検査を施行したが心房細動を検出できなかったため,長時間ホルター検査を施行。14日間の記録期間中に31件,最長持続時間22.5時間の発作性心房細動が記録された。
    発作性心房細動は日常診療において高頻度に遭遇する不整脈で,心源性脳塞栓症の原因の1つである。しかし,標準12誘導心電図や24時間ホルター心電図にて心房細動を捉える事が出来ず,診断に至らないケースが多くある。今回24時間ホルター心電図では検出し得なかった発作性心房細動を,最大2週間記録可能なパッチ型長時間ホルター心電図にて捉えることができ,なおかつ有症候性・無症候性双方のイベントを捉える事ができた2例を経験したので報告する。

  • 浅井 志高, 松葉 怜, 大槻 拓矢, 酒井 翼, 酒井 健輔, 田中 逸
    2020 年 47 巻 4 号 p. 181-188
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/04/09
    ジャーナル フリー

    82歳男性。既往に心筋梗塞と糖尿病があり。めまい精査に行った頭部MRIで下垂体腫瘍を指摘。ホルモン基礎値では,甲状腺刺激ホルモン:2.759 μIU/mL,遊離サイロキシン:0.73 ng/dLと中枢性甲状腺機能低下症が疑われたが,その他の下垂体前葉ホルモン値は正常範囲。また低Na血症:123 mEq/mLがあり,続発性副腎皮質機能低下症も否定できず,下垂体前葉機能評価目的で,甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(250 μg),副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(100 mg),成長ホルモン放出ペプチド-2(100 μg)負荷試験をそれぞれ別日に施行。汎下垂体機能低下症と診断し,ホルモン補充療法を開始。最終負荷試験7日後に突然の頭痛を自覚し来院。眼球運動障害や意識障害はなく,緊急頭部CTおよび下垂体MRIでも下垂体卒中(PA)を疑う所見はなかった。しかし,頭痛の継続のため,翌日に再度MRIを施行。T1強調像で腫瘍内部に高信号を認め,PAと診断した。PAの誘因の一つとして負荷試験が挙げられるが,多くは負荷後2日以内で,それ以降の発症は稀である。本例は他の要因も否定できないが,最終負荷試験7日後にPAを発症しており,負荷試験後1週間は注意を要す。

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