【目的】現在,術前に腋窩リンパ節転移陽性 (cN(+)) と診断され術前化学療法を施行した症例に対して腋窩リンパ節郭清が行われているが,術後に腋窩リンパ節転移消失 (ypN0) となる症例も少なくない。そこで今回,安全に腋窩リンパ節郭清省略可能な症例について,その選択に必要な因子を探索した。
【方法】2013〜2017年に当院でcN(+) と診断され,術前化学療法及び腋窩リンパ節郭清を行った初発乳癌患者を対象とし,臨床病理学的因子,原発巣の治療効果判定,リンパ節転移消失の正診率,再発率を後方視的に検討した。
【結果】全278症例中196例(70.5%)が術前化学療法後に画像上腋窩リンパ節転移陰性 (ycN0) へ変化し,そのうちypN0は137例だった。多変量解析で原発巣cCR (Odds Ratio (OR) 5.57, p<0.01),PgR陰性 (OR 3.23, p=0.02),HER2陽性 (OR3.32, p<0.01) において有意にypN0の正診率が高かった。ycN0と診断された196例中21例(10.7%)に再発を認めたが,リンパ節転移残存の有無と再発の有無に有意な相関は認めなかった(p=0.620)。
【結論】術前化学療法を行ったcN(+) 症例において,PgR陰性,HER2陽性,原発巣cCR症例では安全に腋窩リンパ節郭清を省略できる可能性が示唆された。
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