聖マリアンナ医科大学雑誌
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49 巻, 3 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
原著
  • 神山 昌也, 三宅 誕実, 戸邉 友揮, 安藤 久美子, 古茶 大樹
    2021 年 49 巻 3 号 p. 67-73
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

    目的:器質的疾患を除く高齢の精神科入院患者を対象に,高齢発症などの因子が在院日数に及ぼす影響を検討し,新たな知見を得ることを目的とした。
    方法:2018年1月から2019年12月までの2年間に聖マリアンナ医科大学病院で入院加療を行った65歳以上の患者のうち,基準を満たす101名を対象とした。診療録を用いた後方視的研究で,社会的背景因子や高齢発症の有無を含む症候学的要因などの診療情報を抽出して検討した。
    結果:単変量解析の結果,発症年齢が60歳以上の群では,60歳未満の群と比較して有意に在院日数が延長していた。他に,在院日数延長に関連する因子として,医療保護入院,女性,精神病症状や希死念慮を有すること,病識の欠如が抽出された。多変量解析の結果からは,高齢発症であること,入院時に希死念慮を有することが,在院日数の延長を予測する因子であることが示唆された。
    考察:入院時に希死念慮を有することは,疾患の重症度を反映しており,在院日数の長期化に影響する可能性がある。特に,高齢発症の場合,患者,家族共に精神疾患の受け入れが困難となることが推測され,より退院に消極的になりやすい可能性が考えられる。したがって,入院時点で精神症候と診療情報を適切に評価し,環境調整を見据えた早期介入をすることが重要である。

  • 大橋 洋之, 宮垣 朝光, 門野 岳史, 伊澤 直樹
    2021 年 49 巻 3 号 p. 75-82
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

    2014年7月〜2020年11月までの期間に,当院でimmune checkpoint inhibitor (ICI) を投与した282例に対し後方視的検討を行った。Immune related Adverse Events (irAE) として皮疹を生じたものは38例,43病変であった。発症は女性にやや高い傾向にあった。皮疹の出現率は悪性黒色腫が51.6%,腎細胞癌が21.1%,悪性胸膜中皮腫が20.0%と高かった。レジメン別では抗PD-1抗体では総投与例の12.8%,抗PD-1抗体+抗CTLA-4抗体併用療法では50.0%,抗PD-L1抗体では10.0%の症例で皮疹が出現した。皮疹の内訳は紅斑丘疹21病変,白斑11病変,扁平苔癬3病変,乾癬3病変,皮疹3病変,水疱性類天疱瘡1病変,脱毛症1病変であった。乾癬,紅斑丘疹は早期から出現し,白斑,扁平苔癬は遅れて出現する傾向にあった。皮疹のCTCAEは93.0%がGrade1〜2であったが,Grade3も7.0%に認め,5病変でICIの投与中止が必要であった。irAEとして皮疹を生じた38例中,ICI治療奏効例は11例であったが,内7例は悪性黒色腫であり,特に皮疹が出現した群が有意に奏効と関連していた。皮膚のirAEは頻度が高く,早期から出現し,多くは軽症であるが,時に重症化し注意が必要である。irAEについては未だ不明な点も多く,今後も症例の集積と科を跨いだ連携が必要である。

  • 鍋島 諒大, 梶川 明義, 住江 玲奈, 友近 真世, 武内 嵩幸, 久保田 学, 井上 肇
    2021 年 49 巻 3 号 p. 83-93
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

    目的:培養表皮は侵襲性も少なく,広範囲尋常性白斑の治療に有効な医療技術である。しかし,従来の培養技術では,表皮細胞培養時に混入している色素細胞を維持しているに過ぎないため,移植後の結果も安定しない。そこで我々は色素細胞含有量を調整できる培養技術を確立し,今回この色素細胞含有培養表皮の生体への生着性と遺残性について検討した。
    方法:培養表皮細胞の調製過程において,播種表皮細胞数を基準に色素細胞混合量を調整して培養表皮を作製した。得られた表皮細胞シートを,免疫不全マウスの皮下に移植した。2週間後,3か月後の組織を採取し,病理学的検討を行った。
    結果:着色した移植表皮の生着が,2週間後に確認された。また組織学的にも,HE染色で培養表皮の生着を認めた。この生着培養表皮は,Melan-A陽性の色素細胞を認め,ギムザ染色でメラニン顆粒の存在も確認できた。移植後の培養表皮中の色素細胞数は色素細胞の混入比率に応じて変化した。また移植3か月後に採取した組織においても,培養表皮の生着およびメラニン顆粒を含む色素細胞が確認された。この移植表皮中の色素細胞は,3か月後においてDopa反応が陽性であった。
    結語:色素細胞含有率を調整した培養表皮は生体において生着し,長期的にも色素細胞の残存および機能の維持がされていることが示された。今後,尋常性白斑などによりカラーマッチの優れた治療を提供できる可能性がある。

  • 田中 信帆, 津野 宏隆, 加藤 智啓, 福井 尚志
    2021 年 49 巻 3 号 p. 95-103
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

    変形性関節症(OA)は関節軟骨の変性消失を本態とする疾患である。最近,マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-1,-2及び-3等,滑膜で産生されたタンパク分解酵素も軟骨の変性消失に関与するとの報告がある。一方,様々な疾患でmiRNAが病態に関与することが最近注目されている。本研究では,まずMMP-1に着目し,その産生に関与するmiRNAを見出すことを試みた。26例の初期,進行期のOA膝関節から採取した関節液26検体についてMMP-1濃度及び65種のmiRNAの量を測定した結果,miR-21-5pとmiR-195-5pの量がMMP-1濃度とそれぞれ有意の負の相関を示し,かつ測定値の分布幅が大きかった。これを踏まえ,末期膝OA症例30例から人工関節置換術時に採取した滑膜組織30検体においてmiR-21-5p,miR-195-5p及びMMP1の発現をqPCRで調べたところ,miR-21-5p量とMMP1のmRNA量の間に有意の負の相関が認められた。miR-21-5pについてMMP-2,-3との関連を調べたところ,関節液検体においてmiR-21-5p量とMMP-2,-3濃度の間に,滑膜組織検体においてもmiR-21-5p量とMMP2MMP3のmRNA量の間に,それぞれ有意の負の相関が認められた。以上の結果から,miR-21-5pはOA滑膜でのMMPの発現に関与する可能性が考えられた。

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