日本口腔科学会雑誌
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66 巻, 2 号
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第71回NPO法人日本口腔科学会学術集会
教育講演
  • Tanguy Y. Seiwert
    2017 年 66 巻 2 号 p. 59
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    Immunotherapy, enabling a patient's own immune system to attack a cancer, is a novel treatment modality that has shown activity in more than 20 cancer types. Head and neck cancers show a prominent inflamed phenotype with tumor infiltrating lymphocytes, and is amenable to immunotherapy.
    Specifically, immune checkpoint inhibitors, such as those blocking the interaction of PD-1 and PD-L1 have shown marked activity in recurrent/metastatic head and neck cancer, including oral cavity tumors. Responses are oftentimes more durable than what is observed with chemotherapy or targeted therapies, and the impact on survival is pronounced compared to standard treatments. Combined with a favorable toxicity profile PD-1 agents have been approved in the US for treatment of head and neck cancer.
    This presentation will provide an overview of available clinical data from multiple agents, and outline how to best use these novel medications, as well as a discuss side effect management, and patient selection/candidate biomarkers.
    Furthermore, while PD-1/PD-L1checkpoint blockade is active in HNC and non-cross-resistant with other treatment modalities, much remains unknown: I will review strategies and ongoing trials, attempting to integrate immunotherapy in earlier lines of therapy, including curative intent, and adjuvant therapy. I will specifically review how immunotherapy may be complementary with surgical care, as well as potentially radiation, and chemo-prevention.
    Finally we will look ahead at upcoming second generation combination immunotherapy approaches, with early data suggesting that continued progress is ahead for our patients with oral cavity cancers and head and neck cancers in general.
特別講演1
  • 田口 円裕
    2017 年 66 巻 2 号 p. 60
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    高齢化の進展などの社会情勢に対応するため,国では「地域包括ケアシステム」の実現を目指しています。
    一方で,歯科疾患構造の変化や治療の高度化に伴い,国民の求める歯科医療サービスも多様化しています。
    このような状況の中で,今後の歯科保健医療提供体制の在り方として,医療機関完結型の歯科医療から地域完結型の歯科医療への移行や在宅歯科医療を担う,あるいは多職種との連携ができる,かかりつけ歯科医機能をもった歯科医師の役割が極めて重要になってきます。また,歯科医療の需要に関しては,健常者に対する需要は減少し,高齢者に対する需要そのものが増加し,従来の修復治療や,欠損補綴を中心とした歯の形態回復に主眼をおいた歯科治療から,いくつかの基礎疾患を持つ高齢者や自立度が低下した高齢者に対する口腔機能の回復に主眼をおいた歯科治療へパラダイムシフトするものと考えられます。
    歯科医療機関の間での連携や医科歯科連携の観点から言えば,周術期の口腔機能管理については,在院日数の減少等のエビデンスも示されていることから,医科歯科連携とあわせ,病院歯科と歯科診療所との連携も重要です。この他,入院患者に対する栄養サポートチームへの参画や摂食機能等のアプローチ,さらには,医療機関や患者の状態に応じ,時間軸に沿った医療機関間の連携や多職種協働が求められています。このように歯科医療における連携と協働の推進は,周術期口腔機能管理料や栄養サポートチーム加算への歯科医師連携加算といった診療報酬上の評価の面からも図られています。
    今回の講演では,今後の歯科医療に求められる診療の在り方や地域等での役割の再構築などについて,連携と協働をキーワードに述べてみたいと思います。
特別講演2
  • 大隅 典子
    2017 年 66 巻 2 号 p. 61
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    神経堤は,ヒトであれば受精後3~4週目,原腸陥入という現象により中胚葉が形成される時期,外胚葉の正中部が神経板となり,徐々に巻き上がって神経管となる頃,表皮外胚葉と神経上皮の境界部に形成される一過性の領域を指す。神経堤の細胞は脱上皮して神経堤細胞として体内を遊走し,移動先において多様な細胞に分化する。医学の一般常識としては,「神経堤細胞=末梢神経系の原基」という捉え方であろうが,顎顔面領域では骨,軟骨,歯牙等,口腔領域の組織に大きく寄与する。また,下垂体等の内分泌系組織の発生にも関わり,最終的にその結合組織を派生する。これらの内分泌器官は,遊走した神経堤細胞からの誘導を受けて発生が進むと考えられている。さらに,神経堤細胞の一部は発生途中で脳の中に再侵入し,毛細血管の周皮細胞や,オリゴデンドロサイトというグリア細胞にも分化する。一方,神経堤細胞の増殖・分化異常は多様な病態をもたらし,神経芽腫,褐色細胞腫,カルチノイド腫瘍,非クロム親和性傍神経節腫などの腫瘍や,von Recklinghausen症候群,多発性内分泌腺腫瘍症(Sipple症候群),De Gorge症候群,CHARGE症候群などに関与する。腫瘍の好発は,神経堤細胞の増殖性が高く多様な細胞に分化するという,幹細胞としての性質を有することに基づくと考えられる。本講演では,このように多彩な役割を果たす神経堤細胞の起源や発生過程について,われわれの研究成果を中心に紹介したい。神経堤細胞の発生に関する本講演が,口腔科学の学徒の皆様のresearch mindを刺激するものになれば幸いである。
特別講演3
  • ~医科と国民を歯科の理解者とするために~
    西田 亙
    2017 年 66 巻 2 号 p. 62
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    糖尿病と歯周病の関連性が着目されるようになった背景には,“炎症”というキーワードが存在します。歯周病は,細菌感染による慢性微小炎症がその本態ですし,糖尿病もまた脂肪細胞が脂質を貯め込み,局所的な慢性炎症を引き起こすことが,原因のひとつであると考えられています。歯周病と糖尿病で起きている慢性微小炎症は,炎症性ホルモンの分泌を通じて,インスリンが効きにくい状態をもたらし,結果として血糖値を上昇させます。
    この「炎症を通じて歯周病と糖尿病がつながっている」という事実は,一般市民はもちろん,医科の間でもそれほど認知されていないように感じます。私自身,7年前に歯科の世界に出会うまでは,口腔内にほとんど興味はなく,口の中を診察した際に扁桃は観察しても,歯牙や歯肉,歯周組織に関しては全く意識することがありませんでした。“視れども見えず”の状態にあった訳です。
    しかし,「口腔は全身の窓である」ことを意識して診察するようになると,実に多くのことが見えて参りました。本日の講演では,様々な症例を通して口腔内の炎症,すなわち“口腔感染症”が命に関わるほどの事態を招いたり,歯周治療による“口腔感染制御”が,インスリンにも勝る劇的な効果を糖尿病治療にもたらし得ることをご紹介します。
    次に,糖尿病と歯周病が持つコインの裏表のような密接な関係を観察していますと,さらに大きな,口腔感染症を介した口腔と全身の関連が見えてきます。そのひとつが,東日本大震災で世界的に注目されることになった震災後肺炎であり,もうひとつは産科や内科領域で注目されつつあるFusobacterium感染症です。
    歯周病と糖尿病,震災後肺炎,Fusobacterium感染症,この3つの病態を国民はもとより,医科領域の全職種に正しく伝えることで,歯科医療への理解と支援が,日本全国で醸成されるに違いありません。
特別講演4
  • 今村 健志
    2017 年 66 巻 2 号 p. 63
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    最近の急速な技術革新により,生命科学研究は飛躍的に進歩し,さまざまな生命現象の分子メカニズムが解明された。一方で,まだ未解決な複雑な生命現象や病態の解明のためには,既存の解析技術だけでは限界があり,新たな先端技術の導入が必要である。特に,培養細胞を用いたin vitro解析と動物を用いたin vivo解析の結果の違いから,従来の組織を固定する組織・病理学的解析や細胞をすり潰す生化学的解析のみでは限界があり,動物が生きたままin vivoで,細胞や分子を解析することが重要かつ必須である。
    本講演では,生命科学研究を取り巻く上記の問題点を解決する一つの手段として,蛍光技術を駆使した生体イメージング技術について,特にがん研究分野におけるわれわれの最近の知見,特に技術革新と研究の進歩について紹介し,革新的イメージング技術がもたらす次世代口腔科学研究と未来医療について議論する。
    具体的には,蛍光タンパク質の遺伝子を導入したがん細胞とさまざまな近赤外蛍光有機小分子プローブを用いた担がんマウスにおけるがん新生血管のイメージング,抗VEGF抗体のがん血管新生に対する効果評価における蛍光生体イメージングの有用性を示す。また,複数の近赤外蛍光有機小分子プローブを用いた,例えば,血管,プロテアーゼ活性とがん細胞などの多元的蛍光イメージングの例を紹介する。加えて,細胞周期をイメージングするFucciシステムを用いて,骨に転移したがん細胞の細胞周期のイメージングをおこなった結果を紹介する。
    さらに,より生体深部の蛍光イメージングのためにわれわれが開発している新たなイメージング技術,特に非線形光学を駆使した蛍光観察について,新規補償光学型長波長2光子励起顕微鏡の開発の例を示し,蛍光生体イメージングの技術革新の現状と今後,さらにその口腔科学研究の可能性について考察する。
宿題報告
  • 岡本 哲治
    2017 年 66 巻 2 号 p. 64
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    Dr. Gordon H. Sato は,細胞培養における血清の働きは細胞の恒常性・機能性の維持に必要なホルモン,増殖因子,接着因子,輸送蛋白,脂質等を提供することである,という仮説に基づき,成分の不明確な血清を,成分の明らかなホルモン,増殖因子,接着因子,輸送蛋白,脂質などに置き換え,基礎栄養培地に添加して用いる無血清培養法を開発し,機能性細胞培養法を確立した。その仮説は彼の研究室でのCetuximab(Erbitux)の開発などで証明された。私は,彼の研究室にポスドクとして参画して以来,口腔粘膜上皮細胞,口腔扁平上皮癌細胞(OSCC),唾液腺正常上皮・腺癌細胞,歯周靭帯細胞,マラッセ上皮細胞,活性化リンパ球,骨髄幹細胞,ES 細胞およびiPS細胞などの増殖・分化・未分化性などを維持する種々の無血清培地を開発し,細胞(組織)の機能性維持や悪性化に関わる蛋白因子・細胞増殖因子・受容体群を細胞内分泌学的に明らかにし,診断・治療に応用して来た。
    本宿題報告では,FGF結合蛋白HBp17/FGFBPの発見とその遺伝子構造および機能同定,VEGF受容体のチロシンキナーゼ活性の発見,KGFR/FGFR2IIIb遺伝子による唾液腺腫瘍の遺伝子治療法の開発,基底細胞母斑症候群およびOSCCにおけるsonic hedgehog-patchedシグナル異常およびFGFR3変異,Venous MalformationにおけるAngiopoietin-Tie2シグナル異常,高い細胞障害活性をもつ活性化リンパ球誘導無血清培地の開発とその臨床応用,両生類・マウス未分化細胞からの顎顔面軟骨・歯胚誘導,マウス・ヒトES細胞のフィーダー細胞フリー・無血清培地の開発,フィーダー細胞フリー・ウイルスインテグレーションフリー・完全無血清培養系での正常・顎顔面口腔疾患からの正常・疾患特異的iPS細胞の樹立と発症機構研究などについて報告する。
指名報告
  • ―微小環境ニッチを標的として―
    來生 知
    2017 年 66 巻 2 号 p. 65
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    口腔癌の標準治療としては手術が主に行われているが,近年放射線・化学療法を含めた集学的治療が普及し,機能温存が可能となりつつある。しかしながら局所再発や頸部リンパ節転移が散見され,予後を悪化させることから,治療後の再発・転移の制御は克服すべき課題である。がん組織はがん細胞とそれ以外の様々な細胞で構成されており,総称して癌微小環境と呼ばれているが,再発・転移の際にこれらの微小環境が変化することが近年報告されている。われわれはこれまでに,難治性口腔癌に生じる微小環境変化による再発・転移のメカニズム解明とそれらを標的とする新規治療法の開発を目指し研究を進めてきた。これまでに,放射線照射に伴い既存血管からの伸展が抑制されると腫瘍内に低酸素が生じHIF-1の活性化を介してCD11b+単球細胞の腫瘍内への誘導が生じることを見出した。さらに誘導されたCD11b+単球細胞の分化系の中で,CD11b+F4/80+マクロファージ(tumor-associated macrophage:TAM)と CD11b+Gr-1+骨髄由来抑制細胞(myeloid-derived suppressor cell:MDSC)の割合が有意に高いことが明らかになった。そして浸潤した単球細胞の一部がM2マクロファージへ分化し,腫瘍血管の再構築および再発に貢献していることが示唆された。これらの結果より,放射線照射後の腫瘍再発における微小環境変化の中でCD11b+単球細胞,特にTAM,M2マクロファージ,MDSCが照射後再発を制御するためのターゲットになり得ることが考えられた。一方,口腔癌のリンパ節転移における微小環境変化においてもCD11b+骨髄細胞の誘導が認められており,現在その役割および分子メカニズム,さらには創薬標的について解析を行っている。
学会賞受賞講演
  • 後藤 明彦
    2017 年 66 巻 2 号 p. 66
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    食道がん手術は周術期管理が難しく,術後合併症も多い。特に術後の肺炎は頻度が高く,予防対策が重要な合併症である。近年,食道がん手術の周術期における口腔ケアによる術後の肺炎予防に関する報告も見られ,当科でも,2009年より専門的な口腔ケアを導入している。一方,食道がん術後には反回神経麻痺が出現することがあるため,誤嚥による肺炎リスクとして知られている。
    今回,食道癌術後の肺炎発症リスクとしての反回神経麻痺および,口腔ケアによる肺炎予防効果に関して検討を行った。2007年1月から2009年12月までに当院にて右開胸開腹による食道切除術を行った患者86名(男性77名,女性9名,平均年齢64.0歳)を対象に,後方視的に有意差検定を行った。
    全86例中,口腔ケア未実施群(ケアなし群)は53例,口腔ケア実施群(ケアあり群)は33例であった。ケアあり群とケアなし群を比較するとケアあり群では33例中2例(6.1%)に,ケアなし群では53例中8例(15.1%)に肺炎発症を認めた。ケアあり群では肺炎発症頻度が少ない傾向を認めたが,両群間に有意差は認めなかった(p=0.204)。反回神経麻痺合併(反回神経麻痺+or-群)と肺炎発症に関しては,反回神経麻痺+群は25例中6例に,反回神経麻痺-群は61例中4例に肺炎発症を認め,反回神経麻痺+群で有意に肺炎発症頻度が多かった(p=0.022)。また反回神経麻痺+群のうち,ケアなし群は17例中6例に肺炎を発症したが,ケアあり群は全8例で肺炎を発症しなかった。両群間に統計学的な有意差は認めなかったが,術後反回神経麻痺症例のうち,ケアあり群で肺炎発症が少ない傾向を認めた(p=0.054)。
    本臨床研究の結果から,食道がん術後に発症する肺炎は,反回神経麻痺症例ではリスクが高まるものの,口腔ケア介入によりリスク低減に寄与する可能性が示された。
  • ─血管撮影術を用いた鎖骨下静脈への穿刺法─
    水野 頌也
    2017 年 66 巻 2 号 p. 67
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/07/18
    ジャーナル 認証あり
    口腔領域の疾患,特に口腔癌では,長期間にわたる輸液路の確保が必要なことがあるため中心静脈へのカテーテル留置は必要不可欠な治療手技である。穿刺静脈としては,大腿静脈では長期間留置における感染の可能性が高いこと,口腔外科領域では内頸静脈が治療域に含まれることがあるため不適である。そのため,われらの領域では,気胸や血胸などの合併症が多いものの,鎖骨下静脈への穿刺を第一選択となることが多い。
    一般的に中心静脈穿刺は超音波ガイド下にて行うことが推奨されているが,超音波装置操作の経験の浅い者には難しい方法である。
    当科では血管撮影技術を応用して鎖骨下静脈への穿刺およびカテーテル挿入を施行している。方法としては,最初に表在静脈より造影剤を投与することにより,DSA機能を利用した鎖骨下静脈の血管像を作成し,次に鎖骨下静脈の分布を可視化するために前述の画像と透視画像を重ね合わせ,いわゆる「マップ画像」を構築する。この「マップ画像」を参照とすることで,血管走行を二次元的に把握することができるため,穿刺針の深度の調整のみで血管確保が可能となる。故に,経験の浅い術者でもカテーテルの留置が安全に実施できる方法である。また,必要な際には超音波ガイドの併用も可能であった。
    当科で実施している「マップ画像」を利用した鎖骨下静脈穿刺は,比較的簡便で確実な穿刺法であると考えられたので報告とした。
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