近年,さまざまな業界においてグローバル化は大きなうねりとなり,歯科医療・教育の分野にもその波が押し寄せてきている。実際に,外国人留学生の歯学部への受け入れ,歯学部での英語での授業,技工物の海外発注,新たな治療知識と技術習得のための海外研修,患者の多様化など,もはやどんなに高いクオリティーを有していても国内への内向きな対応のみでは難しい時代になってきた。既に約10年前の2010年に日本学術会議歯科委員会は「歯学分野の展望」において「歯学研究・教育のグローバル化を推進するには(中略)卒前・卒後を通したシームレスな歯学教育のグローバル化を実現し,国際競争に打ち勝つことのできる人材を育成することが重要である」と提言している。国際競争の相手となる他国,特に米国における歯科医療教育はどのような背景とシステムで運用されているかを知る必要がある。
また,近年,日本人の博士課程進学者が減少する傾向が見られる。博士課程修了後の進路に困難を抱える学生が多いのが原因と言われている。こと歯学部においては教育カリキュラム更新や研修医制度導入による歯学部生の臨床志向の上昇により,歯学研究特に基礎系歯学研究に携わる人材は減少の一途を辿り,長期的展望を考えると,日本の口腔科学の衰退を招くことになる。国際競争に打ち勝つことのできる口腔科学研究者を育てることは急務であり,そのための体系作りが必須である。
米国で13年間基礎医学研究を行う傍ら米国における歯科医学,レジデント,および博士教育に関する調査をおこない垣間見てきた実態を,私自身の体験談も含めて紹介したい。今後の日本の歯科界および博士教育に何が必要か,次世代医学のために口腔科学がなすべき事のヒントにして頂きたい。
■略歴
1999年 大阪歯科大学歯学部 卒業
2003年 大阪歯科大学大学院歯学研究科 修了 口腔外科学専攻(歯学博士)
2003年 大阪歯科大学口腔外科学第1講座講師(非常勤)
2004年 京都大学再生医科学研究所生体材料学分COE研究員
2006年 日本学術振興会特別研究員
2007年 Weintraub Center for Reconstructive Biotechnology, UCLA School of Dentistry, Postdoctoral Scholar
2010年 Division of Plastic and Reconstructive Surgery, Department of Surgery, David Geffen School of Medicine at UCLA, Postdoctoral Fellow
2014年 Division of Plastic and Reconstructive Surgery, Department of Surgery, David Geffen School of Medicine at UCLA, Adjunct Assistant Professor
2014年 Regenerative Bioengineering and Repair Laboratory, Department of Surgery, David Geffen School of Medicine at UCLA, Research Director
2020年 Division of Plastic and Reconstructive Surgery, Department of Surgery, David Geffen School of Medicine at UCLA, Adjunct Associate Professor
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