口蓋扁桃摘出術の, インフルエンザ菌に対する特異的免疫応答に及ぼす影響について検討した.対象は, 慢性扁桃炎または扁桃肥大により口蓋扁桃摘出術を施行した, 3歳から66歳 (平均18.1歳) の32症例である.扁桃組織, 扁桃上皮細胞内, および術前後での鼻咽腔液のインフルエンザ菌の培養とともに, 扁桃のP6特異的抗体産生細胞数を測定した.また術前後で, 鼻咽腔液のP6特異的抗体価およびサイトカイン濃度, 血清のP6特異的抗体価, 末梢血中のP6特異的サイトカイン産生CD4
+T細胞割合を測定した.インフルエンザ菌は, 特に12歳以下の症例で, 扁桃組織, 上皮細胞内, 鼻咽腔液から高率に検出された.上皮細胞内のインフルエンザ菌の有無は, 特異抗体産生細胞数とは無関係であった.また扁摘後, 鼻咽腔液のインフルエンザ菌の検出率は低下した.しかし扁摘前後で, 鼻咽腔液や血清のP6特異抗体価や鼻咽腔液のサイトカイン濃度, さらに末梢血中のP6特異的サイトカイン産生CD4
+T細胞割合に, 有意な変動はみられなかった.以上の結果より, インフルエンザ菌と口蓋扁桃との関係という点からは, 口蓋扁桃摘出術は効果的かつ特異的免疫反応に悪影響を与えないことが示唆された.
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