口腔・咽頭科
Online ISSN : 1884-4316
Print ISSN : 0917-5105
ISSN-L : 0917-5105
11 巻, 2 号
選択された号の論文の19件中1~19を表示しています
  • 冨田 吉信, 檜垣 雄一郎
    1999 年 11 巻 2 号 p. 169-174
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    動注化学療法は, 機能を温存しつつ治療成績の向上を図るためには有用な治療と思われる.口腔・咽頭癌に対しては, 外頸動脈系 (浅側頭動脈, 上甲状腺動脈, 後頭動脈) 又は大腿動脈からSeldinger法を用いてカテーテル挿管が行われている.CDDP, CBDCA, PEP, 5-FU等の薬剤が単剤もしくは組み合わせて外照射と併用されることが多い.今後の課題として, カテーテル先端部の固定, 副作用の軽減, より有効な薬剤・剤形・投与スケジュール, 症例に応じた使用動脈の選定などを考慮する必要があると思われる.
  • 毛利 学
    1999 年 11 巻 2 号 p. 175-184
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    アレルギー性口内炎は薬物や歯科医療で用いられる金属によって起こる.
    薬疹は, 播種状紅斑丘疹, 蕁麻疹, 固定薬疹のような軽症なものから, Stevens-Johnson syndromeや中毒性表皮壊死融解症のような重症なものまでさまざまである.発熱, 倦怠感, 関節痛などを伴って, 粘膜病変が口唇の粘膜皮膚移行部に拡大したり, 滲出性紅斑が急激に融合する場合には, Stevens-Johnson syndromeやLyell syndromeの可能性を考慮すべきである.
    特徴のある皮膚病変が見られる場合は臨床診断は確定できる.皮膚病変を伴わず病変が口腔に限局する場合には診断が難しくなる.このような場合には局所および全身性に使用している薬剤について注意深く問診すべきである.薬疹の早期に直ちに治療を中止すれば毒性を限局することができるし, ステロイドの全身投与は治癒を早める.中等度から重症疾患ではプレドニン60mgから開始する.
    歯科金属疹は薬疹と同様に口腔粘膜と皮膚に病変をきたす.水銀, 銅, ニッケル, 金が原因となった色素沈着 (アマルガム刺青), 扁平苔癬, 舌痛症, 掌蹠膿疱症を観察した.これらの症例にはパッチテストとX線マイクロアナライザーによって金属分析を行った.アレルゲン金属を除去することによって症状は緩解した.歯科金属アレルギーの診断はパッチテストとEPMAの両者によってなされる.通常の治療で反応しない原因不明の粘膜皮膚疾患では金属アレルギーを疑うべきである.
  • 高橋 廣臣
    1999 年 11 巻 2 号 p. 185-189
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    反復性アフタ (Recurrent aphtha) は, 口腔前庭, 舌, 頬, 咽頭粘膜に1乃至数個のアフタができ, 疼痛以外の症状に乏しく, お互いに融合することはなく, 1週間前後で瘢痕を残さず治癒する原因不明の疾患である.
    診断は臨床経過と局所の肉眼的所見のみによる.
    治療は主としてステロイドの局所投与が行われるが, ビタミン剤, 抗スビタミン剤, 漢方薬, その他の全身投与も行われることがある.
    ベーチェット病や難治性口腔咽頭潰瘍に移行する例がある.
  • 本庄 巖, 高橋 晴雄, 長谷部 誠司, 高桑 由紀子
    1999 年 11 巻 2 号 p. 191-199
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    アデノイドの中耳に対する関係, とくにその滲出性中耳炎の病因に対する役割について, 我々の行ってきた臨床的観察を中心に過去の文献も交えて検討した.
    1. アデノイドは物理的に耳管を圧迫して中耳換気を障害することよりもむしろ中耳に対する炎症源として中耳炎の病因に関連していると考えられた.
    2. アデノイド切除により副鼻腔炎に代表される上気道の炎症が改善し, それに伴い耳管機能も改善すると考えられた.
    3. アデノイド切除は短期的には小児滲出性中耳炎に対して有効であるが, 長期的には鼓膜チューブ留置と同様の効果にとどまり, 乳突蜂巣発育抑制や耳管の器質的異常を持ついわゆる難治性滲出性中耳炎には効果は期待できない.
    4. 小児滲出性中耳炎に対するアデノイド切除の指標として, 副鼻腔炎を伴うものや反復性中耳炎などを伴う早期の治癒が望ましい滲出性中耳炎が考えられた.
  • 橋口 一弘
    1999 年 11 巻 2 号 p. 201-206
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症における扁桃誘発試験の有用性について検討した.有用性を決める要因として1) 病巣感染の診断及び手術適応の有無の決定ができるかどうか, 2) 皮膚科への回答, 3) 患者への説明, 4) その他の4つがあると考えた.すでに標準化委員会から, 誘発試験は根本的な見直しが必要であるという結論が出されている.
    現行の基準に加え, 白血球数または好中球数の増加率を指標として扁桃誘発試験の診断的中率を求めたが, やや的中率は上昇したが満足できる結果は得られなかった.しかし, 対皮膚科, 対患者という点を考慮すると, 病巣性の診断には何らかの検査法が必要と思われた.現在のところ, 現行の誘発試験に変わる方法がないことから, 扁桃誘発試験は, 現在のところ臨床の場に残しておくべき検査法であると考えられた.
  • 行木 英生
    1999 年 11 巻 2 号 p. 207-213
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    舌根部腫瘍の外科的治療では, 腫瘍への到達法がキーポイントとなる.一般に述べられている舌根部への到達法の中で, 舌根部の鰓性嚢胞に対する顕微鏡下・炭酸ガスレーザーによる経口腔舌根到達法, 可動部舌癌の舌根部浸潤例に対して行われた頸部切開法の一つである咽頭側壁切開法に準じたアプローチ, および, 扁桃癌の舌根部浸潤例に対する下顎正中離断法の一つであるMandibular swing法による摘出術の3つのアプローチを取り上げた.舌根腫瘍の占拠部位に対してsafety marginを伴なった切除範囲を決めるには, とくに悪性腫瘍の場合には, 側方から直視下に舌根を観察することができるアプローチを選択することが重要であることを強調した.
  • 田原 真也, 天津 睦郎, 牧野 邦彦
    1999 年 11 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    下顎骨区域切除後症例を対象として, その再建法につき, 我々の方法を報告した.再建材料には肩甲骨皮弁, または腓骨皮弁をその特徴に応じて使い分けた.肩甲骨皮弁は骨弁を2重血管柄にでき, 骨弁内骨切りが可能であることから, 下顎前方の彎曲部の再建に適していた.腓骨皮弁は骨切りにはやや不向きで, 骨弁と皮弁の空間的自由度が制限されることから, 下顎骨の直線部およびその直上の粘膜欠損の再建に適していた.肩甲骨皮弁採取は術中体位変換が必要で, 手術時間が延長する欠点を有する.可能なかぎり, 骨皮弁採取術と頭頸部手術が同時進行可能な腓骨皮弁を第一選択として, 骨弁内骨切り, または骨弁と皮弁との間の自由度などの理由で, どうしても必要な場合のみ肩甲骨皮弁を用いるのを基本的方針とすべきである.
  • 藤森 正登, 市川 銀一郎
    1999 年 11 巻 2 号 p. 221-229
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    アポトーシスは, 病的細胞死であるネクローシスに対して, 生理的細胞死に関わる機構であり, 特に免疫系では, 胸腺や骨髄における自己反応性リンパ球クローンの除去に重要な役割を担っている.また, 最近, B細胞の成熟の場であるリンパ濾胞においても, 抗原に対して親和性の低い抗体を産生するB細胞や, T細胞からの活性化シグナルを得られなかったB細胞が, アポトーシスによって除去される可能性が示唆されている.そこで, 我々はヒト扁桃におけるアポトーシスの発現と, T, B細胞との関係について検討をおこなった.その結果, アポトーシス細胞はリンパ濾胞内のdark zoneとbasal light zoneに主に認められた.一方, リンパ濾胞内のapical light zoneやmantle zoneをはじめ, リンパ濾胞外ではアポトーシス細胞は少なかった.Dark zoneのB細胞はKi-67陽性の増殖期のものが多く, ここで既に抗原親和性の成熟が始まっていると考えられることから, この領域のアポトーシスは, B細胞の過剰増殖に対する反応性機構および抗体V領域遺伝子の体細胞点突然変異で生ずる低親和性抗体産生B細胞や非機能的B細胞の除去機構として起こっている可能性が考えられた.basal light zoneの細胞はKi-67陰性であり, この領域には活性化T細胞やfollicular dendritic cellが多く認められたことから, この領域のアポトーシスは主に抗原親和性成熟過程の選択に関わる現象と考えられた.Apical light zoneのB細胞は分化抗原CD23や活性化抗原CD86を発現しており, また, 活性化T細胞が豊富に存在することから, この領域はすでに選択された高抗原親和性抗体産生B細胞がmemory B cellあるいはpreplasma cellに分化し, これらが濾胞外に放出される場と考えられた.
  • 鈴木 賢二, 馬場 駿吉
    1999 年 11 巻 2 号 p. 231-237
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    本稿では過去10年間の我が国の扁桃の基礎的, 臨床的研究につき述べ, 最近5年間の急性扁桃炎よりの検出菌を1988年の集計結果と比較検討し, 扁桃周囲膿瘍のこれまでの報告を集計した.この10年間に検出菌の内訳には変化はなく, MRSAも扁桃から検出されにくいが, PI (R) SP検出率が増加していることが判明した.扁桃周囲膿瘍では嫌気性菌検出のための注意が必要で, 正しく検査された場合は嫌気性菌が半数以上を占め, Peptococcus, Peptostreptococcus, Bacteroidesが多いと思われた.
    口蓋扁桃常在菌のにつき, 耳鼻咽喉科領域に疾患のない新生児から84歳までの患者で検討した.最後に扁桃における細菌Biofilmについて述べた.
  • 藤枝 重治, 鈴木 亨, 関 瑞恵, 須長 寛, 斎藤 等
    1999 年 11 巻 2 号 p. 239-244
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    上気道・消化管を中心とする粘膜免疫にとってIgAは極めて重要であるが, IgA腎症ではそのIgAが腎臓に沈着して障害をおよぼし, 腎不全へと移行させていく.その原因であるIgAは, パラインフルエンザ菌特異的IgAではなかろうかと報告された.本研究ではIgA腎症患者の扁桃細胞を用いて, パラインフルエンザ菌特異的IgAが産生されているのか, パラインフルエンザ菌抗原がIgAを産生されうるようなサイトカイン産生を誘導しうるのかについてin vitroで検討した.その結果, IgA腎症患者扁桃において, パラインフルエンザ菌の外膜刺激でパラインフルエンザ菌特異的IgAが慢性扁桃炎患者の扁桃に比べ有意に多く産生され, かつIgA産生に関連深いTGF-β, IL-10の産生が増強していることが判明した.よってIgA腎症の病因にパラインフルエンザ菌の扁桃感染がより深く関連していることが予想された.
  • 病巣扁桃感染症に関する全国大学アンケート調査より
    野田 寛, 宇良 政治, 安田 忍
    1999 年 11 巻 2 号 p. 245-250
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ここ数年, 関心の度合の高まりつつある扁桃病巣感染症について, 当疾患の診断・治療に当たっている内科医, 小児科医, 整形外科医ならびに皮膚科医が, 現在どのように考え, どのように対処しているかを知るため, 全国の大学病院の179内科, 123小児科, 114整形外科, 113皮膚科について1978年と同様の内容のアンケート調査を行い, 内科77施設 (回答率43.5%), 小児科38施設 (30.9%), 整形外科57施設 (50.0%) 及び皮膚科51施設 (45.1%) より興味ある回答を得たので報告する.
    今回の調査により, いかに多くの疾患が当該各科より扁桃病巣感染症との関連性を懸念され, かつ耳鼻科医に対する期待が高まっているかが判明した.
  • 沼田 勉, 鈴木 晴彦, 武藤 博之, 昼間 清, 永田 博史, 今野 昭義
    1999 年 11 巻 2 号 p. 251-260
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺粘表皮癌自験例20症例を対象に, 臨床像, 病理組織学的悪性度, 予後などに関して検討した.術前画像診断等で良性腫瘍と考えられた症例は, T1-2の腫瘤でlow-middlegradeの悪性度であった.顔面神経を保存した切除術と, marginが不十分と考えられた場合の術後照射にて, 予後は良好であった.術前より悪性と診断された症例では, T3-4の進行例が多く, 顔面神経合併切除, 耳下腺全摘術や再建術が行われ, 術後照射をうけていた.high gradeの1例のみが, 切除後局所再発を繰り返し, 脳転移にて死亡していた.今回の検討では, 予後は良好であったが, 悪性度をいかに診断し, 治療に反映していくかが今後の課題である.
  • 河田 了, 村上 泰
    1999 年 11 巻 2 号 p. 261-267
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    最近10年間に経験した大唾液腺粘表皮癌症例12例について検討し, その治療方針, 治療成績について報告した.粘表皮癌はその悪性度によって著しく予後が異なるので悪性度に従った治療が望まれるが, 画像診断や穿刺吸引細胞診 (FNA) で悪性度まで診断することは困難で, 適切な治療方針が立てられないことがまれでない.そこで, 最近では, 粘表皮癌と診断されたあるいは強く疑われる症例に対して, その悪性度を判定する目的で腫瘍摘出術を前提とした, 腫瘍生検 (open biopsy) を施行している.悪性度をはっきりさせることによって, 適切な治療方針を立てることができる.顔面神経は高悪性型では切除, 低悪性型では温存を基本としている.頸部リンパ節の処理は, 高悪性では根治的頸部郭清術, 低悪性では選択的頸部郭清術を施行している.全12例中高悪性の1例が担癌生存中である以外は生存している.しかし特に高悪性型の6例は観察期間が短く今後の観察が必要であると思われる.
  • 甲能 直幸, 北原 哲, 川井田 政弘, 中澤 詠子, 市川 銀一郎
    1999 年 11 巻 2 号 p. 269-276
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    現時点での粘表皮癌に対する, 照射・化学療法の効果を客観的に評価する目的で, 研究を行った.まず, 本邦での現状を知る目的で, アンケート調査を施行した.次に, 欧米ではどの様な治療がなされているか, 文献的解析を行った.最後に代表的な自験例を提示した.以上より解析の結果をまとめると, 照射は, 局所の制御率向上目的で使用され, 高度悪性群に適応があり, とくに切除断端陽性, 神経浸潤, リンパ節転移, 広範進展例に対して予防的に術後照射として役割が認められた.手術不能の進行例では積極的に使用しても良いと思われた.化学療法は遠隔転移の防止が主目的であるが, その使用方法はあくまでも補助的であり, 進行例で他に治療法が無い場合に姑息的に用いられる事が多いと思われる.その反応は扁平上皮癌に近く, CDDP, ADM, EXが一次選択のregimenになる.
  • 鈴木 正志, 児玉 悟, 坂本 菜穂子, 茂木 五郎
    1999 年 11 巻 2 号 p. 277-285
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃摘出術の, インフルエンザ菌に対する特異的免疫応答に及ぼす影響について検討した.対象は, 慢性扁桃炎または扁桃肥大により口蓋扁桃摘出術を施行した, 3歳から66歳 (平均18.1歳) の32症例である.扁桃組織, 扁桃上皮細胞内, および術前後での鼻咽腔液のインフルエンザ菌の培養とともに, 扁桃のP6特異的抗体産生細胞数を測定した.また術前後で, 鼻咽腔液のP6特異的抗体価およびサイトカイン濃度, 血清のP6特異的抗体価, 末梢血中のP6特異的サイトカイン産生CD4+T細胞割合を測定した.インフルエンザ菌は, 特に12歳以下の症例で, 扁桃組織, 上皮細胞内, 鼻咽腔液から高率に検出された.上皮細胞内のインフルエンザ菌の有無は, 特異抗体産生細胞数とは無関係であった.また扁摘後, 鼻咽腔液のインフルエンザ菌の検出率は低下した.しかし扁摘前後で, 鼻咽腔液や血清のP6特異抗体価や鼻咽腔液のサイトカイン濃度, さらに末梢血中のP6特異的サイトカイン産生CD4+T細胞割合に, 有意な変動はみられなかった.以上の結果より, インフルエンザ菌と口蓋扁桃との関係という点からは, 口蓋扁桃摘出術は効果的かつ特異的免疫反応に悪影響を与えないことが示唆された.
  • 酒井 剛, 川口 誠, 小泉 富美朝
    1999 年 11 巻 2 号 p. 287-295
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症 (PPP) 扁桃の組織学的特徴を明らかにするために, 扁桃組織の免疫組織学的検討をおこなった.その結果, PPP扁桃では高率 (69.2%) に多核巨細胞の出現がみられ, また形態計測では, B領域 (リンパ濾胞) の萎縮とsecondary T noduleの形成を伴うT領域の拡大が観察された.これらは, PPP扁桃では細胞性免疫が賦活化し進行していることを意味するものと考えられた.扁摘後の予後と組織像の関係では, 扁摘無効例ではB領域の萎縮とsecondary T noduleの形成を伴うT領域の拡大は観察されず, この組織学的特徴の有無は, PPPの扁摘後の予後の推定に有用であると考えられた.またPPP扁桃のsecondary T noduleには, 皮膚へのhoming receptorであるcutaneous lymphocyteantigen陽性のリンパ球が多数観察され, 手掌, 足蹠へと浸潤するリンパ球には扁桃由来のものが存在する可能性が考えられた.
  • 赤木 博文, 服部 謙志, 土井 彰, 笹木 牧, 西崎 和則, 増田 游, 清水 順子, 杉山 信義
    1999 年 11 巻 2 号 p. 297-305
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    IgA腎症に対する口蓋扁桃摘出術 (以下, 扁摘) 施行例の長期予後予測に, 従来の扁桃誘発試験 (以下, 誘発試験) が有用か否かを知る目的で, 検討を行った.対象は, 腎生検後IgA腎症と診断され, 誘発試験後扁摘を施行し, 術後5年以上観察できた53例 (男25例, 女28例) であり, 次の結果をえた.
    1. 53例の予後は, 寛解率26.4%, 腎機能保持率92.5%, 腎生存率96.2%であった.
    2. 長期予後予測因子としての誘発試験は, 腎病理所見に比較して, 有用性は乏しかった.
    3. 誘発試験の項目別検討でも, 従来の項目ではいずれの項目も, 長期予後予測における有用性は乏しかった.
  • 志賀 清人, 松浦 一登, 横山 純吉, 舘田 勝, 西條 茂, 高坂 知節
    1999 年 11 巻 2 号 p. 307-313
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    8種類のmicrosatellite markerを用いて舌扁平上皮癌におけるloss of heterozygosity (LOH) およびreplication error (RER) を検討した.予後に関与すると考えられる3番染色体短腕3pあるいは9番染色体短腕9pのLOHは舌癌30例中評価可能であった18例のうち5例 (28%) に認められた.LOHの有無について生存率曲線を検討するとLOH陽性例と陰性例の生存率に差はなかった.舌癌30例中RERの評価が可能であったのは29例でこのうち7例 (24%) に1から5種類のlocusにおいてRERが認められた.RER陽性例は明らかに45歳以下の若年者に多く (p=0.018), またNl症例が多い傾向にあったがその他の病期, T分類などに相関は見られなかった.同様に生存率曲線を検討するとRER陰性例で生存率が有意に低く (p<0 .05), RER陽性例では再発死亡例はなくその予後は良好であった.さらにRER陽性例では陰性例に比較して環境因子として明らかにアルコールの摂取量が少なく (p=0.002), また喫煙量も少ない傾向にあった.
    今回の結果から舌癌が下咽頭癌や喉頭癌とは異なり9p21または3p21領域の遺伝子欠損が腫瘍の悪性化に関与していることが少なく, むしろRERの有無が既存の因子とは独立したprognostic factorであることが示唆された.また舌癌の発癌因子として環境因子の他にDNAの修復異常やゲノムの不安定性などの内的因子の関与している可能性が考えられた.
  • 伊藤 裕之, 加藤 孝邦, 太田 史一
    1999 年 11 巻 2 号 p. 315-320
    発行日: 1999/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔, 咽頭, 喉頭癌の手術後の嚥下障害の治療についての論文である.1988年から1998年までの間に当科に依頼のあった7例の癌の術後の嚥下障害の症例を呈示し, 術後の嚥下障害のリハビリテーションについて検討した.当院では, 口腔, 咽頭, 喉頭癌の術後の嚥下障害は脳血管障害の嚥下障害よりも少なかった.その理由は, 癌の場合嚥下に関与している。中枢神経機構は正常に作動していることと癌の手術による嚥下障害は容易に代償されることにある.その癌の場合, 手術によって起こると予想される嚥下障害が重度の時には, 喉頭摘出術が癌の手術当時に行われることも原因である。その癌の術後の嚥下障害は手術が行われた施設で, 癌の管理のもとで行われるべきである.
feedback
Top