口腔・咽頭科
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13 巻, 2 号
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  • 閉塞性睡眠時無呼吸に対する応用
    中村 晶彦
    2001 年 13 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    単純性のいびきおよび軽度の閉塞性睡眠時無呼吸に対する外科的治療には従来より金属メス, いわゆるcold knifeを用いた口蓋垂軟口蓋咽頭形成術が行われている.近年の医療技術の進歩に伴いcold knifeにたいしhot knifeとでも呼ぶべき高周波メス, レーザー, 超音波メスなどを使用し組織の切開, 凝固, 切断を可能とした機種を用いた外科的手技が行われている.hot knifeを使用した単純性いびきおよび軽度の閉塞性睡眠時無呼吸に対する口蓋垂軟口蓋形成術のなかで, 電気メスを用いる方法であるCautery-assisted palatal sdffening operadon (CAPSO) とラジオ波の通電を用いる方法Radiofrequency volumetric tissue reduction (RFVTR) を紹介する.
  • 疫学調査ならびに花粉抗原との関係
    小笠原 寛
    2001 年 13 巻 2 号 p. 165-171
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    シラカンバ花粉症には共通抗原性により口腔アレルギー症候群 (OAS) がしばしば合併する.オオバヤシャブシはハンノキ属で, 土砂崩壊を防ぐためや緑化として更地によく植えられている.芦屋市においては, 以前の疫学調査でハンノキ属の空中花粉数と花粉症が相関することを示した.902名の住民のうち, OASは山間部で6.3%, その平地部で1.6%であった.143名の学童では11名のOASがみられ, そのうち2名のみが花粉症に合併していた.宝塚の新興住宅地では3997名の住民のうち4.0%にOASがみられた.ハンノキ属の花粉量が花粉症とOASの有症率に関係していた.ハンノキ樹木の伐採により花粉症だけでなくOASも改善した.
    リンゴ果実とオオバヤシャブシ花粉の間にある共通抗原性は, イムノブロット抑制試験ならびに患者血清と主要抗原に対するモノクロナール抗体を用いたtissue prints法により証明された.profilinはminor allergenであるが, 全身症状を呈するOASではリンパ球幼弱化試験, ヒスタミン遊離試験で強い反応を示し, ELISAで測定したprofilinに対するIgE抗体は4.5U/mlであっだ.
  • 横田 俊平
    2001 年 13 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    扁摘術は習慣性扁桃炎, 扁桃肥大による呼吸障害, リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの病巣性感染をもつ小児に対する外科的対応法である。しかし最近は小児科医が耳鼻咽喉科医に扁摘術を積極的に依頼することが少なくなった。関連7施設にアンケート調査を行ったところ, 地域基幹病院では年間1~5人程度の扁摘術依頼が行われており, その理由も習慣性扁桃炎5施設, 慢性扁桃炎3施設, 扁桃肥大による呼吸障害6施設, 病巣性感染1施設であった。扁摘術は有効で, 免疫不全状態に至った例はなく, わずかな出血が副作用として認められたのみであった。今後は扁桃肥大による呼吸障害の治療に扁摘術は行われると考えられていた。
  • 熊井 恵美
    2001 年 13 巻 2 号 p. 179-188
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    北海道におけるシラカンバ花粉症中のOASが増加している.今回, シラカンバ花粉飛散時期の約3か月間に当院を受診した鼻アレルギー患者678名中, OASと診断したのは248名, 36.6%だった.また, シラカンバ花粉症276名中, 135名, 48.9%がOASであった.シラカンバ花粉症OASで84%がバラ科果実を含む複数の原因食物により症状を起こし, 最多は18種類であった.臨床症状は三叉神経領域のかゆみと腫脹が80%以上を占めるが, 咽喉の絞扼感4.4%, 呼吸苦8.1%, 咳3.7%, 蕁麻疹3.0%, 消化器症状8.1%なども見られた.症状発現までの時間は, 1分以内37.7%, 15分以内88.2%であった.
  • 辻中 良一, 井野 千代徳, Naoko Marusasa, 山下 敏夫
    2001 年 13 巻 2 号 p. 189-193
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    内頸動脈の走行異常は今日まで散発的に報告がなされているが, それらの症例の主訴は咽喉頭の異常感が殆どである.実際, 筆者らも2年前に咽喉頭異常感を主訴とする内頸動脈の走行異常症例を経験した.その際, 内頸動脈の走行異常が本当に異常感の原因と成りうるものか疑問に思った.そこで, 主訴の如何にかかわらず我々はこの2年間に診察し得た患者の中に内頸動脈の走行異常を有する症例の発見に務めてみた.その結果, 内頸動脈の走行異常を有する症例は決して稀なものではないことが解った.2年間で28例発見でき, 男性9例, 女性19例, 女性に多くみられた.右側20例, 左側3例, 両側8例, 右側に多くみられた.最も多い主訴は耳鳴, 難聴などの耳性疾患が10例で咽喉頭異常感は3例しかみられなかった.内頸動脈内側偏位は咽喉頭異常感の原因に成りえないと考えられる.
  • 中島 逸男, 谷垣内 由之, 吉田 博一, 中村 昭彦, 馬場 廣太郎
    2001 年 13 巻 2 号 p. 195-201
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    11歳の男児が耳痛を主訴に近医を受診した.局所治療を受けたが症状が軽快しないめ他院を受診した.そこで舌の腫瘤を発見され, 精査・加療目的に当科を紹介された.病変は右舌縁から口腔底にかけ表面不整な潰瘍を呈し, 周囲の硬結は舌正中を越えていた.生検にて高分化の扁平上皮癌と診断された.画像診断も含めた全身検索の結果, 入院時病期分類はT4N0M0 stage IVと診断された.化学療法 (5-Fiuorouracil, Cisplatin) 2クール施行したところ腫瘍はわずかに反応を示し, 縮小するかと思われた.しかし, その後の放射線外照射中にも腫瘍は増大し両側の扁桃窩まで広がりをみせ, 3回の動注化学療法も効果なく, 初診から10ヵ月後に死亡した.
  • 勝野 雅弘, 窪田 哲昭, 松井 和夫, 高崎 宗太, 小林 斉, 大田 隆之
    2001 年 13 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    今回硬口蓋に原発した無色素性悪性黒色腫に対してインターフェロン (IFN) の腫瘍内投与を単独で施行し, 原発巣が完全消褪 (CR) となった症例を経験した.症例は57歳男性, 初診時硬口蓋正中部に3×3×1.5cm大の比較的硬い淡赤色の半球状隆起性病変を認めた.治療はINF-β の腫瘍内投与を選択し, 投与回数82回, 総投与量23, 200×104IUにてCRが確認された.治療終了後, 局所再発なく経過観察していたが肝臓転移のため不幸な転機をとった.頭頸部領域において悪性黒色腫の広範囲切除は解剖学的構造から困難であり, 未だ治療法が確立されていない現在, 悪性黒色腫の原発巣に対しIFNの単独投与は新しい有効な治療法と期待できるものと思われる.
  • 東松 琢郎, 川堀 眞一
    2001 年 13 巻 2 号 p. 209-214
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔アレルギー症候群 (OAS) は, 果実や野菜が口腔粘膜と接触したことによっておこるIgEを介した即時型反応である.
    シラカンバ花粉症患者255名を対象にOASについて検討した.その結果1) シラカンバ花粉症患者の42.7%がOASを訴えた.2) 原因食物はリンゴ, モモ, サクランボなどが多く, 大半の症例は複数の食物が原因だった.3) OASとシラカンバ花粉症の罹病期間には有意な相関関係を認めた.4) シラカンバ花粉のCAP-RASTクラスはOAS合併群が非合併群に比べて有意に高かった.5) 診断にはプリック+プリックテストが簡便で有用であった.
  • 高木 実, 牛飼 雅人, 大堀 純一郎, 黒野 祐一
    2001 年 13 巻 2 号 p. 215-220
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎の発症や遷延化に炎症性サイトカインが重要であると言われている.またNF-κBは炎症性サイトカイン転写制御に重要である.今回我々は, ヒトアデノイド由来培養線維芽細胞でNF-κBの活性化とIL-8発現について検討した.
    すなわち, NF-κB活性化能をEMSAにて, またIL-8の発現にRT-PCR・ELISAにて検討した.
    その結果IL-1βやLPSの刺激によりNF-κBは著明に活性化され, TPCK処理にてNF-κBの活性化を阻害すると, IL-8の発現は著明に抑制された.以上よりアデノイド繊維芽細胞におけるIL-8の発現にはNF-κBの活性化が重要であると考えられた.
  • 門山 浩, 桜井 一生, 内藤 健晴, 加藤 久幸, 岡田 達佳
    2001 年 13 巻 2 号 p. 221-228
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    鼻咽腔血管線維腫の1例を報告した.症例は10歳の男性で, 右鼻閉と繰り返す右鼻出血を主訴として来院した.造影CTにて腫瘍は鼻咽腔, 鼻腔, 節骨洞, 蝶形骨洞, 側頭下窩, 翼突窩に拡がり, 一部眼窩深部と前頭蓋底に浸潤していた.手術の前日にセルジンガー法による超選択的塞栓術が行い, 腫瘍は経頭蓋顔面アプローチにて全摘された.術後の合併症や顔面の変形は認めず, 再発なく経過良好である.
  • ナチュラルキラー細胞の分布について
    永井 浩巳, 高橋 廣臣, 八尾 和雄, 稲木 勝英, 中山 明仁, 馬越 智浩, 岡本 牧人
    2001 年 13 巻 2 号 p. 229-235
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ナチュラルキラー (NK) 細胞は, Bリンパ球やTリンパ球と異なる細胞で, 第3のリンパ球と考えられている.ある種の腫瘍細胞やウイルス感染細胞に対して, 獲得免疫が誘導される前におこる防御機能を示す.今回, 我々は, NK細胞の分布を把握し, 上咽頭の免疫応答について検討した.
    検討対象は, 剖検のヒト上咽頭を用いた.一次抗体はCD16, CD20, CD4とCD8で検討した.NK細胞は, 上咽頭の部位 (後上壁, 側壁と下壁) にかかわらず, 決しておおくはないがいずれにも存在することがわかった.また, 粘膜上皮へのリンパ上皮共生していたNK細胞は, 線毛上皮層内や扁平上皮層内よりも, 移行上皮層内に多く認められた.
    上咽頭のNK細胞は, 各部位の粘膜上皮, 粘膜直下に存在することで, 粘膜局所の自然免疫に関与し, この働きが感染の第一門戸である上咽頭にとって欠かせない機能であると思われる.
  • 丸笹 直子, 岩井 大, 吉永 和仁, 泉川 雅彦, 金子 明弘, 立川 拓也, 山下 敏夫
    2001 年 13 巻 2 号 p. 237-241
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1988年1月から1997年8月までに, 関西医大耳鼻咽喉科で全身麻酔下に口蓋扁桃摘出術を施行された725例を対象とし, このうち術後出血例につき検討した.その結果, 11例 (1.5%) で術後出血が見られ, 6例 (0.8%) は再度の全身麻酔が必要な症例であった.習慣性扁桃炎の11~20歳の年齢層に術後出血が生じやすく, 出血部位は左に多く, 出血時期は術後24時間以内に多く見られた.扁桃摘出術に際し, こうした事項の認識が重要であると考えた.
  • 同一術者による
    臼井 信郎, 川野 和弘, 伊藤 浩一, 宮城 真理
    2001 年 13 巻 2 号 p. 243-250
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    一人の術者による9年間のUPPP経験例を術前・術後で検討し, 経験件数, 期間が手術効果に影響するか否かを調べた.1990年から1998年迄の9年間に術前と術後3~6ヵ月で終夜睡眠検査, 呼吸抵抗検査, 上気道MRI検査を施行した症例を検討した.症例を3年間毎に, I期 (n=23), II期 (n=10), III期 (n=16) に分けて検討した.I期ではAHI改善率=69.6%, II期では90%, III期では93.8%であった.I, II, III期の間の比較ではAHI改善率, 術後の口呼吸抵抗, 術後の咽頭腔左右径値が経験を積むほど有意によい結果を示した.
  • 日高 利美, 秋定 健, 竹本 琢司, 東川 康彦, 増田 勝巳, 原田 保
    2001 年 13 巻 2 号 p. 251-255
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺に生ずる嚢胞性疾患は少ないが, その多くは腫瘍性嚢胞であり, 単純性嚢胞はかなり稀で鯉原性嚢胞, 類皮嚢胞, 貯留嚢胞などがある.本症例は左耳下腺浅葉に発生した, 頬部から耳下部に及ぶ, 巨大な貯留嚢胞であった.本症例は11cmと過去の報告と比較しても最大であったが, 外科的に完全に切除でき再発は認められない.貯留嚢胞には悪性腫瘍の合併が報告されていることからも腫瘍性病変に準じた手術が望ましい.耳下腺貯留嚢胞について若干の文献的考察を述べた.
  • 久我 たくみ, 高山 幹子, 石井 哲夫, 西田 佳史
    2001 年 13 巻 2 号 p. 257-267
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    睡眠中の呼吸を無拘束無侵襲で観察する目的で加圧に伴って電気抵抗値が減少する圧力センサを使用したベッドを作製し, 睡眠中の呼吸運動を観察した.また, 圧力センサベッドとともにマイクロスリープモデル97 (サイネティクス社製) よる睡眠時の呼吸状態につき観察結果を比較検討した.
    睡眠時無呼吸と診断された症例においてマイクロスリープ, 圧力センサの両者に無呼吸に一致して周期性の呼吸波形が観察され, これをチェーンストークス類似波形と名付けた.圧力センサの一時間中のチェーンストークス類似波形数がマイクロスリープの計測結果であるAI, ODI4と相関が得られ, 圧力センサベッドにより睡眠中の無呼吸の検出は可能であった.
  • 志水 賢一郎, 牧野 邦彦, 天津 睦郎, 埴岡 啓介
    2001 年 13 巻 2 号 p. 269-279
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    舌癌の原発巣における病理組織学的悪性度の評価およびこれらと頸部リンパ節転移との関係について検討をおこなった.深部へ浸潤する癌では組織分化度がより低いものへと変化するものが存在することが確認された.頸部リンパ節転移と有意な関係が確認されたものは, 神経周囲浸潤, 筋層深達度, 最浸潤部での組織分化度であった.神経周囲浸潤と筋層深達度との間には有意な関係が確認され, 神経周囲浸潤が深達度を増加させる因子であることが示唆された.治療方針であるが, 頸部リンパ節転移陰性かつ原発巣の筋層内深達度が7mm未満の例では, まず原発巣切除のみを施行し, 術後の病理組織学的検索で予後を推察したいと考えた.
  • 高橋 光明
    2001 年 13 巻 2 号 p. 281-285
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺手術は顔面神経手術とも言い換えられる.通常, 耳下腺手術を行う場合の顔面神経へ到達する部位は側頭骨外である.大部分の耳下腺腫瘍症例では, 神経を側頭骨外の主幹部で同定してから腫瘍を摘出する方法が安全で, 応用が利くため標準的な方法として用いられている.例外的に腫瘍が主幹付近で固着している場合などは末梢部で神経を見つけて神経主幹へと逆行して腫瘍を摘出することがある.また, 稀に悪性腫瘍が側頭骨に浸潤した症例では, 側頭骨内で顔面神経を確認する必要がある.本稿では耳下腺腫瘍の症例に応じた顔面神経への到達法を紹介した.
  • 鑷子, 小勇刀を用いた顔面神経剥離法
    沼田 勉, 武藤 博之, 柴 啓介, 花沢 豊行, 永田 博史, 今野 昭義
    2001 年 13 巻 2 号 p. 287-291
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺良性腫瘍では, 顔面神経を保存した耳下腺浅葉切除術または深葉切除術の適応となる.この術式では, まず顔面神経主幹を露出して確実に顔面神経を保存する.浅葉腫瘍であれば浅葉とともに, 深葉腫瘍であれば浅葉, 顔面神経剥離後に深葉とともに腫瘍を切除する.本術式において, 習熟すべきことは顔面神経の剥離露出法である.2本の鑷子を用いた顔面神経叢の剥離と, モスキートペアン鉗子と小剪刀を用いた顔面神経の剥離露出操作に関して述べた.出血を十分止血しながら操作を進めることと, 生理食塩水を十分にひたしたガーゼなどでよく術野を洗って, 顔面神経を明視下に置きながら剥離することが重要である.
  • 河田 了
    2001 年 13 巻 2 号 p. 293-296
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺良性腫瘍に対しては一般に葉切除術あるいは葉部分切除術が行われている.本手術では顔面神経を安全, 確実に保護することが最も大切であるが, 顔面神経は腺実質内を走行しるため, 剥離するときに出血に悩まされることが多い.そこで, 電気メスで腺実質を切離することで, 出血を減らし, きれいな術野を確保することで, より早く, より安全な手術を施行している.電気メス切離のとき顔面神経は, 非電導の神経鈎や神経保護ヘラを用いて保護している.術後顔面神経一時麻痺の頻度および回復までの期間を検討したところ, 電気メスを用いない報告と大差がなく, 電気メスが悪影響を及ぼしていることはなかった.
  • 村上 信五, 小山 新一郎, 亀井 壮太郎
    2001 年 13 巻 2 号 p. 297-301
    発行日: 2001/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺腫瘍摘出後の顔面神経麻痺の再建は神経移植が主体となる.神経移植は神経の欠損が長く, 直接縫合できない症例に適応される.通常は眼輪, 頬部, 口輪を支配する2-3本の枝に移植し, 前頭枝と頸枝には移植しない.神経縫合は側頭骨外では神経上膜縫合を行う.神経の断端をマイクロ用のハサミで新鮮化し, 顕微鏡下に8-0または9-0のナイロン糸で縫合する.その際, 緑色のシリコンシートを縫合部に敷くと見やすくなる.縫合は最初に180度離れて2針掛け, 本幹では6針, 末梢枝では2-3針縫合する.神経縫合で最も重要なことは縫合部にかかる緊張であり, 緊張が強いと神経腫で再生軸索が途切れたり, 瘢痕が縫合部に入り込み, 神経再生が障害される.
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