口腔・咽頭科
Online ISSN : 1884-4316
Print ISSN : 0917-5105
ISSN-L : 0917-5105
14 巻, 2 号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
  • 堀田 修
    2002 年 14 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    IgA腎症は慢性糸球体腎炎のなかで最も頻度の高い疾患で25年の経過で約40%が末期腎不全に陥る.現在, 年間約3万人が末期慢性腎不全で透析導入に至っているがこのうち慢性糸球体腎炎が原疾患の1/3を占め, 最近10年間での減少傾向はなく, 透析導入時期を遅らせるという治療コンセプトによって新規透析導入患者の減少は期待し難い.当院ではIgA腎症の根治/寛解を目的として扁摘+ステロイドパルス併用療法をこれまで多数例に対し実施してきたが, これまでの蓄積された治療成績より早期根治治療の実施により多くのIgA腎症症例が寛解にいたることが明らかになりつつある.本小論ではこれまでの治療成績をもとに根治治療としての扁摘+ステロイドパルスの可能性について述べる.
  • 高野 信也
    2002 年 14 巻 2 号 p. 151-158
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    術後10年以上を経過した扁摘施行症例154例と扁摘未施行症例37例について検討した.
    1) 術後の咽頭炎は15歳以下で84%および16歳以上で90%の症例が3回/年以下に減少する.
    2) 15歳以下では術後1年以内に80%が, 16歳以上では60%以上が咽頭炎の回数が減少する.
    3) 発熱に関しては, 16歳以下では61%が2℃ 以上改善した.
    4) 手術未施行例では, 平均11.4年経過すれば自然に扁桃炎の頻度は減少する.
    5) 手術未施行例は発熱に関して自然治癒する可能性は低い.
    6) 社会生活を考慮すると習慣性扁桃炎の扁摘は有用である.
  • 工藤 典代
    2002 年 14 巻 2 号 p. 159-164
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    扁桃摘出術の適応のひとつに「反復する扁桃炎・発熱」が挙げられる.今回3歳以下の乳幼児に対する「反復する扁桃炎・発熱」に対する扁摘の効果を調査した.当科で扁桃摘出術を行った症例で, 術前の症状に「反復する扁桃炎・発熱」が見られたのは1歳台で14例, 2歳台で30例, 3歳台で104例であった.この中で5年以上経過がおえた例を対象とした.術後に「著明改善」と判断した例は1歳台の7例中7例, 2歳台では12例中11例, 3歳台では35例中32例であった.
    以上のことから, 乳幼児にも扁摘の効果は見られることが判明した.しかし, 未手術例で自然改善例もあり, また未発見の先天性疾患などが術後に判明する例があった.そこで, 手術適応は2歳後半以降で保存的治療に抵抗する例, 扁桃炎の頻度に減少傾向が見られない例と考えている.
  • 留守 卓也, 工藤 典代
    2002 年 14 巻 2 号 p. 165-170
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    オートバイポーラとアルゴンプラズマ凝固装置 (Argon Plasma Coagulator; APC) を用いた扁桃摘出術 (新法) を従来法と比較した.術中の出血は医師の経験年数によらず, 従来法の半量以下になった.再止血を要する術後出血は従来法で0.9%に, 新法で2.1%に認めた.新法の術後出血例のうち半数はAPC導入年に認めたが, 習熟により従来法の発生率と同等になった.総手術時間は医師の経験年数によらず短縮し, 特に止血時間の短縮が著明であった.操作性がよく安全性が高いなどの点から新法を経験した術者の満足度は高く, 従来の扁桃摘出術に対して有利な点が多いと考えられた。
  • 肥塚 泉, 内田 登, 木下 裕嗣, 渡辺 昭司, 服部 康介, 宮部 聡
    2002 年 14 巻 2 号 p. 171-178
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    超音波振動を利用して切開ならびに剥離, 止血を行うことができる, 超音波凝固切開装置を用いて扁桃摘出術を行った症例を対象に, 手術時間, 術中出血の有無, 術後の疼痛, 睡眠, 食欲, 快・不快について従来法と比較検討した.手術時間についてはこれまでの方法との間に有意な差を認めなかった.術中出血については, 超音波凝固切開装置のみを用いて手術を行った群で, 出血をまったく認めなかった症例が存在した.術後の疼痛については, 超音波凝固切開装置のみで手術を行った群の方が軽度である傾向を示した.睡眠, 食欲, 快・不快についても超音波凝固切開装置のみで手術を行った群の方が良好である傾向を示した.扁桃摘出術における超音波凝固切開装置の利用は有用な手段と思われる.
  • 松本 直美, 中山 明峰, 佐藤 圭, 加藤 高英, 坂野 立幸, 稲福 繁
    2002 年 14 巻 2 号 p. 179-186
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    UPPやUPPPはこれまで睡眠時呼吸障害に有効な治療法といわれてきた.しかしながら近年, 報告されているその有効率は必ずしも理想的とは言い難い.
    私たちは術前後にPSG検査を施行した55症例のデータの比較検討を行った.そのうち6ヵ月以上経過観察が可能であった25症例ではAHIが38.6±21.0から18.0±15.0へと有意に改善し, 50%以上の改善率は56.0%であった.
    また今回, 私たちが経験したUPP後の重篤な再狭窄例を報告した.本疾患の外科的治療では時として術後合併症や再発が問題となる.よって私たちは今後より慎重に手術症例を選択していかなければならない.
  • 中村 晶彦, 中江 香, 矢野 純也, 山下 敏夫
    2002 年 14 巻 2 号 p. 187-192
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    無呼吸低呼吸指数20以下の軽度の睡眠時無呼吸および単純性いびき症の患者男性5名, 女性4名に対し睡眠時呼吸障害用高周波治療装置を口蓋垂軟口蓋に使用した.術後4-6週後再度手技を施行し最大3回まで行った結果は, 全例で有意ないびきの減少を認め, 治療に対する満足度は89%であった.術前後の無呼吸低呼吸指数の検討は今後の課題であるが, 大きな合併症も認めず外来通院で行いうる治療として今後の普及が期待されると思われた.
  • 全国大学病院アンケートの調査結果
    伊藤 浩一, 川野 和弘, 大木 幹文, 臼井 信郎
    2002 年 14 巻 2 号 p. 193-201
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    睡眠呼吸障害に対する検査法を検討するために, 全国の大学病院耳鼻咽喉科で睡眠時無呼吸症候群 (SAS) が疑われる患者に対し現在行われている検査法を調査した.何らかの検査を行っている施設は71 (82%) であった.そのうち睡眠検査を行っているのは63 (88.7%) で, 約半数で簡易睡眠検出装置を使用していた.閉塞部位診断は半数以上の施設で行われていなかった.SAS診断のためには, 睡眠検査としてポータブル睡眠時呼吸障害モニターの使用, 閉塞部位診断として内視鏡下薬物睡眠検査は少なくとも必要である.
  • 斎藤 武久
    2002 年 14 巻 2 号 p. 203-207
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    KTPレーザーを用いた扁摘は, ハンドピースに通した石英ファイバーから出るレーザ光によって扁桃の剥離・摘出を行うものである.その利点として, 扁桃被膜と周囲組織の間の切離がきわめて容易であること, 組織切開と同時に止血がほとんど終了していることが挙げられる.従って, 止血時間が従来法に比べて大きく短縮される.欠点としては, 術後の創傷治癒が遅い傾向にある点, 術者の眼球保護のため, 茶褐色の眼鏡を装用しなければならず, 術野の視認性が低下する点である.
  • 宮下 久夫, 中村 弦, 鈴木 政彦, 鵜沢 正道
    2002 年 14 巻 2 号 p. 209-212
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    当科における大唾液腺腫瘍性病変は465例 (86%) であり, そのうち上皮性腫瘍は341例 (86%) で, 良性の50%は多形腺腫であった.その88%に浅葉切除が行われ, 12%が深葉あるいは両葉にまたがっていた.両葉で茎状突起に癒着した63歳女性症例を提示した.S字皮切で顔面神経を末梢から同定し, 輪ゴムで牽引しながら剥離を進め, 術中顔面神経をモニターして保存した.術後麻痺は生じたが約6ヵ月で回復した.これらの手技上の問題点について言及した.
  • 市村 恵一
    2002 年 14 巻 2 号 p. 213-217
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    顎下部手術では顔面神経下顎縁枝が処理上最も問題となる.腫瘍の場合は良性腫瘍でも顎下部郭清を行うべきである.顎下腺摘出術では顎下腺のやや下面に切開を加え, 腺の被膜に沿って剥離し, 下顎縁枝を術野外として処理する。顎下部郭清術では筋膜の外側面で剥離し, 下顎縁枝を確実に同定保存する.
    がま腫は舌下腺からの唾液漏出により生じる偽嚢胞である.成因や再発の危険性がないことを考えれば舌下腺の全摘出で対処するのが好ましい.口腔底粘膜切開後, 剥離が容易な外側から鈍的に舌下腺を周囲から剥離していく.舌神経や顎下腺管は舌下腺の内側後方で容易に同定できるのでそれを温存する.摘出後は一期的に切開部を縫合する.
  • 吉原 俊雄
    2002 年 14 巻 2 号 p. 219-223
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    副耳下腺腫瘍は極めてまれな腫瘍であるが, 通常の唾液腺にみられる腫瘍組織と同様の腫瘍が発生しうる.また, 悪性腫瘍の頻度が高いのも特徴である.手術法は口内法, 腫瘍直上の皮膚切開によるアプローチと耳下腺腫瘍に準じたS状切開を基本とするアプローチが挙げられる.悪性腫瘍で進展範囲が広い場合, ステノン氏管の切除を余儀なくされる場合, 耳下腺本体の切除が必要となる場合などがあり, 耳下腺腫瘍に準じた手術が推奨される.顔面皮下のていねいな剥離と顔面神経末梢枝, とくに頬筋枝, 下顎縁枝の発見と剥離保存に努めることが大切である.
  • 小島 博己
    2002 年 14 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Ara-Cは代謝中にdCKなどのキナーゼによりリン酸化され活性化されるが, 一方脱アミノ酵素により不活性化される.多くの固形癌では細胞内のdCKの発現が少ないためにAra-Cの活性化が弱く, このためにAra-Cが固形癌に対して効果を示さないと考えられる.そこでdCK遺伝子を頭頸部癌細胞に遺伝子導入することにより固形癌においてもAra-Cに対する感受性を増強することが可能になると考え, アデノウイルスを用いたdCK遺伝子導入を試みた.その結果, in vitro, in vivo両者においてAra-Cの感受性の著明な増強と抗腫瘍効果が認められ, アデノウイルスを用いたdCK遺伝子の導入とAra-Cとの併用療法が頭頸部扁平上皮癌に対する新しい治療法である可能性が示唆された.
  • 仙頭 正四郎
    2002 年 14 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 2002/02/28
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    東洋医学には局所と全体の繋がりを重視する整体観の概念があり, 舌の各部位を臓器に対応させ, 舌という局所の所見から体全体を把握する.舌や舌苔の色は活動レベルである陽を, 舌の形, 大きさ, 舌苔の厚さは物質的要因である陰を反映する.舌尖紅は心肺の熱を示し, 不眠を伴う乾燥性の口内炎になりやすく, 肺熱を清して治療する.舌苔少は体液の消耗を示し, 上気道の乾燥性の炎症を伴い, 肺陰を補い治療する.舌縁紅は気の滞りを示し, 頭痛や耳鳴に通じ, 気を巡らせて治療する.厚黄膩苔は湿熱を示し, 化膿性炎症に通じ, 清利湿熱で治療する.白厚舌苔は, 胃腸の弱さや飲食過剰を示し, 浸出性炎症や眩暈に通じ, 健脾利湿して治療する.
feedback
Top