口腔・咽頭科
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15 巻, 3 号
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  • 鈴鹿 有子
    2003 年 15 巻 3 号 p. 267-272
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔咽頭領域においての診断は視診, 触診, 生検が優先し病変の発見に関する画像の診断的価値は他の頭頸部領域に比べて低い.しかしより詳細に, また副咽頭間隙や深部の解明には画像診断は欠かすことができない.
    画像は変遷し進歩し, より実物に近づこうとしている.ここでは正常編を中心に単純X線, パントモグラフィー, CT, MRI, dynamic MRI, virtual endoscopyを比較し供覧する.それぞれ画像の特徴を知り, 選択的にまた組み合わせて活用することにより診断価値が高まり, 形態診断と機能診断の融合が医療へのますますの貢献となる.
  • 岩井 大
    2003 年 15 巻 3 号 p. 273-276
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    これまでMRIを用いた顔面神経の描出法が多く報告された.しかし, 耳下腺内顔面神経は, T1強調画像で低信号とされたり, 唾液腺管や血管あるいはchemical artifactとしばしば混同されてきた.そこで今回, 高分解能MR装置によるMPR法を用いる耳下腺内顔面神経の描出法を確立した.正常人6人12側および茎乳突孔に近接した直径3cm以上の耳下腺腫瘍を持つ患者3人3側を対象とした, 乳様突起の垂直部でまず顔面神経を同定し, MPR法を用いて連続的に耳下腺内顔面神経を追跡した.すると, T1強調画像で顔面神経は耳下腺と等信号あるいはやや高信号として撮像された.すべての対象者の顔面神経本幹は, 上枝と下枝に分枝するまで容易に同定された.腫瘍患者においても, 腫瘍と顔面神経との関係が明らかにできた.したがって, 本法を用いれば, 腫瘍と顔面神経との関係や顔面神経の走行変異などについての術前画像情報が正確に得られると考える.
  • 高原 幹, 野沢 はやぶさ, 岸部 幹, 原渕 保明
    2003 年 15 巻 3 号 p. 277-283
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症は扁桃病巣感染症の中でも代表的疾患であり, 扁桃摘出術が非常に高い治療効果をもたらす疾患である.当科における45例の検討でも, 有効以上の効果は38例 (85%) に認められ, 高い改善率を示した.術後改善度と年齢, 性別, 胸肋鎖骨過形成症合併の有無, 病悩期間などの患者背景や, 血清ASO, ASK, IgA, IgM, IgG値, 扁桃病理組織におけるT細胞領域, B細胞領域の面積比の相関を検討した所, T細胞領域において術後改善度と正の相関が認められ, 術後改善度を予測する因子となり得る可能性が示唆された.
    以前より, 掌蹠膿疱症扁桃の病理組織において, T細胞領域の拡大が認められる事が報告されている.このT細胞領域では, CD25陽性活性化T細胞の増加が認められ, T細胞制御因子 (CTLA-4, Smad7) のmRNA発現低下が認められたことから, その拡大はT細胞の制御機構の障害による活性化, 増殖によるものと推測された.T細胞制御の障害は無秩序な免疫反応を助長し, 自己抗体産生に繋がることが予想され, この事が掌蹠膿疱症の病因に関与している可能性が示唆された.このことから, T細胞の活性化を表す指標が術後の改善度を予測する因子になる事が予想される.その一つとして, T細胞領域の計測が考えられるが, それ以外にもT細胞の活性化を反映するより簡便な指標が存在する可能性もある.より高い改善率を目指すために, それらの指標に関してさらに検討を進める必要があると考える.
  • 牛飼 雅人, 林 多聞, 相良 ゆかり, 黒野 祐一
    2003 年 15 巻 3 号 p. 285-290
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    滲出性中耳炎の発症機序からみたアデノイド切除の有用性について文献的考察を行うとともに, 臨床上の効果について自験例および過去の報告例から考察した.アデノイドは動的耳管機能に影響するとともに, 上気道の炎症・感染巣として, また炎症性サイトカインの産生の場として発症に関与していると考えられる.アデノイド由来線維芽細胞による実験からアデノイドの炎症性サイトカインの産生にはNF-kBの活性化が重要であることが示唆された.また, 当科におけるretrospectiveな検討では, アデノイド切除を同時に行った群では, 換気チューブ留置単独群と比べて対してチューブ再留置が必要である割合が有意に少なかった.
  • 化学療法併用照射法を中心に
    甲能 直幸
    2003 年 15 巻 3 号 p. 291-299
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔・咽頭癌に対する化学療法で現時点で最も期待される使用方法は同時併用である.特に白金製剤との併用は有効性が示されている.ドセタキセルとの併用は粘膜障害のコントロールがポイントとなる.切除不能症例において奏効例では生存期間の延長, 切除可能症例では臓器機能温存の可能性がある.咽頭炎, 口内炎のコントロールが重要である.また上咽頭癌では同時併用+補助化学療法の成績が良く, 遠隔転移の危険が高い場合は補助化学療法の付加を考慮する.今後の展望としては粘膜障害を起こさせない併用と, 起こってしまった粘膜障害をコントロールする方法の開発が必要と思われる.著者はプロポリスを併用することにより口内炎の緩和を経験している.
  • 井上 俊哉
    2003 年 15 巻 3 号 p. 301-308
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    1996年から2002年までに, velopharyngoplastyを用いた中咽頭再建を22例経験した.その術式および術後機能について報告する.中咽頭側壁および上壁が切除された結果, 鼻呼吸障害や嚥下障害のため, 患者のQOLはしばしば著しく低下する.本再建法は, 残存する中咽頭収縮機能をできるだけ妨げないようにする機能的再建であり, 良好な術後機能, すなわち鼻呼吸の確保と鼻咽腔閉鎖機能および誤嚥防止を簡便に獲得することができる再建法である.
  • 亀井 壯太郎, 竹市 夢二
    2003 年 15 巻 3 号 p. 309-314
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    舌・咽頭の再建に側頭筋で再建皮弁を吊り上げ周囲の筋肉との協調運動として収縮し嚥下・構音を補助することを目的とした.
    切除再建範囲は舌では舌根部を含む残存舌半分以下, 軟口蓋では正中を越えて切除された症例とした.
    幅約2~3cmの側頭筋膜と側頭筋を挙上し頬骨弓下を経由し咽頭側壁へ貫通させ再建皮弁に固定した.
    対象 (1995~2002年) は13例 (口腔癌8例, 中咽頭癌5例;遊離皮弁9例, 有茎皮弁4例) で両側が6例, 片側7例であった.術後の合併症は側頭部の感染4例, 移植弁広範壊死3例, 移植弁部分壊死1例であった.
    側頭筋移行では十分な運動は認めないが, 皮弁の下垂予防になった可能性がある.
  • 藤枝 重治, 須長 寛
    2003 年 15 巻 3 号 p. 315-323
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    口腔咽頭腫瘍に対して, 18F-fluorodeoxyglucose (FDG) positron emission tomography (PET) の臨床的有用性を検討した.84名に対してFDG-PETを施行した.FDG-PETの有病正診率 (sensitivity) は94.6%であり, 特異性 (specificity) は78.6%であった.一方, これまで同様の目的にて使用されてきたGaシンチグラムは, 有病正診率37.5%, 特異性50%であり, FDG-PETの方がはるかに優れていた.FDG-PETの最小認知サイズは, 5mmのリンパ節転移であった.5名の原発不明頸部リンパ節転移症例では, 3名の原発巣が判明した.2名は扁桃, 1名は歯肉であった.FDG-PETによる全身スクリーニングでは, 3名の肺転移と2名の原発癌 (肺癌と大腸癌) が見つかった.進行中咽頭癌症例では, 放射線化学療法後の治療効果判定材料としてFDG-PETを用いたが, FDG-PET陰性であった患者は, 放射線化学療法後の手術療法を避けることができ, かつ現在も再発を認めていない.治療前のTNM分類 (ステージ決定) や治療後の残存腫瘍の評価にもFDG-PETは有用であった.FDG-PETは高価で維持が大変なサイクロトロンを必要とするが, 口腔咽頭悪性腫瘍の診断と治療に役立つシステムである.
  • 耳鼻科, 皮膚科, 腎臓内科, 小児科より見た考え方
    下出 祐造, 村田 英之, 糸井 あや, 内田 光, 山田 奏子, 足立 真理, 小田 真琴, 宮澤 徹, 鈴鹿 有子, 友田 幸一
    2003 年 15 巻 3 号 p. 325-334
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    掌蹠膿疱症, IgA腎症, 小児習慣性扁桃炎や小児睡眠時無呼吸症候群, 滲出性中耳炎に対する扁摘やアデノイド切除に関し, 耳鼻科, 皮膚科, 腎臓内科, 小児科を対象にアンケート調査を行った.回答率は全体で約41%であった.掌蹠膿疱症やIgA腎症に対する扁摘の有用性は耳鼻科に比べ皮膚科, 内科で低かった.習慣性扁桃炎に対する保存的治療に対して経過は耳鼻科より小児科で長い一方, 小児科の閉塞型睡眠時無呼吸症候群に対しては年齢を問わず手術を勧めていた.滲出性中耳炎を合併する症例に対してX線検査や治療経過, 上咽頭ファイバー等で手術を決定する傾向が見られた.病巣感染症に対して病巣除去の有効性を更に啓蒙し, 小児には負担と治療効果を考慮し手術時期を検討する等, 各科相互の連携の必要性が明らかになった.
  • 赤木 博文, 福島 邦博, 小坂 道也, 服部 謙志, 土井 彰, 西崎 和則, 松田 充浩, 四方 賢一, 槇野 博史
    2003 年 15 巻 3 号 p. 335-344
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    腎生検後10年以上経過観察できたIgA腎症扁摘例 (以下, 扁摘群) 41例と, 同時期に同施設で内科的治療のみ施行されたIgA腎症非扁摘例 (以下, 非扁摘群) 30例の予後を, 比較検討した.
    結果は, 1.扁摘群 (41例): 寛解率24.4%, 腎機能保持率82.9%, 腎生存率95.1%であった.2.非扁摘群 (30例): 寛解率13.3%, 腎機能保持率70.0%, 腎生存率73.3%であった.腎生存率において, 扁摘群は統計学的に有意に高率であった (P<0.05).
    IgA腎症の扁摘適応の決定には, 腎病理組織障害度に比較して, 病歴, 扁桃局所所見, 扁桃誘発試験は, 有用とはいえなかった.
  • 前田 明輝, 藤 賢史, 檜垣 雄一郎, 冨田 吉信
    2003 年 15 巻 3 号 p. 345-351
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    動注化学療法は, 頭頸部癌に対して機能を温存しつつ治療成績の向上を図るために用いられている.口腔癌に対しては浅側頭動脈経由, 又は大腿動脈からSeldinger法を用いた動注化学療法が行われている.今回我々は口腔癌進行症例, 再発症例で, 患者の同意が得られた症例に対しSeldinger法を用いた超選択的動注療法を施行したので, その効果, 副作用を中心に報告する.対象は1996年4月~2002年6月に当科でSeldinger法による超選択的動注化学療法を施行した先行治療のある口腔癌14症例 (計33回) で, 手術不能例9例, 手術拒否例5例であった.全体の奏効度はPR8例, NC6例で, 奏効率57%であった.うち手術不能例の奏効度はPR7例, NC2例, 奏効率78%であった.G3以上の副作用は好中球減少のみで, G3以上の消化器症状, 腎機能障害などは認めなかった.PR8例中7例は先行治療から初回動注まで6ヶ月以上間隔が経過しており, 1例は先行治療に化学療法がなかった.先行治療で白金製剤を用いた症例では, 先行治療からの治療間隔が長い程, 奏効度が高く, これは白金製剤に対する腫瘍の薬剤耐性が時間の経過と供に低下した為と考えられた.
    また, 超選択的動注療法は今回の効果と副作用の発生頻度から, 他に有効と考えられる治療法のない症例や手術拒否症例などを対象として試みてもよい治療法の一つと考えられた.
  • 苦瓜 知彦
    2003 年 15 巻 3 号 p. 353-355
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    pul-through手術は舌癌に対する基本的な術式のひとつである.この手術の特徴は, 下顎骨の連続性は保ったまま, 口腔と頸部の病巣を一塊切除することにあり, その結果, より根治性の高い癌切除が可能になる.
    実際の手術では, まず頸部郭清をおこない顎下部の処理を済ませた後, 口腔内から舌を切除する.口腔底粘膜を切開して頸部と交通したら切除側の舌を頸部へ引っ張り降ろす (pull-through).最後は頸部からの操作で舌扁桃溝から舌根を明視下に切除する.
    切除後は頸部と口腔内が大きく交通するため, 前腕皮弁や腹直筋皮弁などの皮弁を用いて舌を再建しこの交通を完全に遮断する必要がある.
  • 鈴木 賢二, 西村 忠郎
    2003 年 15 巻 3 号 p. 357-362
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    中咽頭は側壁, 前壁, 上壁, 後壁の4亜部位に分けられるが, そのいずれの亜部位においても, その治療のための外科的アプローチにより, 大なり小なりの構音・嚥下障害を来すことになる.それらをできる限り軽くするべく, 手術侵襲の縮小化, 再建術式の工夫がそれぞれの施設において施行されているが, 未だに至適治療法が確立されたとはいい難い.今回, 中咽頭前壁癌のうちT3早期までのものならば低侵襲である舌骨下アプローチを採用できることを示した.本術式は, 術後の創部の治癒機転も早く, 創部瘻孔など重篤な副作用も起こりにくいと考えられ, 有用性は高いと考えられた.
  • 辻 裕之
    2003 年 15 巻 3 号 p. 363-367
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    Mandibular swing approachは, 下顎骨を離断しswingbackさせることにより, 口腔後部, 中咽頭, 労咽頭隙を広く展開できる有用なアプローチである.側壁型中咽頭癌に対する深部すなわち旁咽頭隙切除の適応および切除範囲に関しては, 一定の見解がなく議論の多いところである.著者らは, 旁咽頭隙切除に対し系統だった郭清としての切除範囲を設け原発巣と合併切除している.今回, 症例を呈示しその手術術式について報告する.
  • 渡辺 昭司, 岩武 博也, 肥塚 泉, 岸本 誠司
    2003 年 15 巻 3 号 p. 369-377
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    上咽頭から喉頭蓋の上縁の咽頭腔に存在した腫瘍に対してmaxillaryswingapproachが行われた.上中咽頭の術野を確保するために上顎洞は骨構造から遊離され外側へ開かれる.血液の供給は頬部の皮膚, 咬筋, 大口蓋動脈である.巨大な腫瘍は上顎骨と下顎骨の両方を外側へ開くことにより摘出した.術後の重大な後遺症は残らなかった.
  • 藤原 啓次, 林 正樹, 後藤 浩伸, 保冨 宗城, 田村 真司, 九鬼 清典, 山中 昇
    2003 年 15 巻 3 号 p. 379-382
    発行日: 2003/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    習慣性扁桃炎の発症機序について, 扁桃の免疫学的側面から解明を試みた.扁桃リンパ球におけるco-stimulatory factorの発現について, CD80, CD86とも扁桃炎を繰り返す回数が年に3回以下と4回以上に分けると, 年に4回以上の群で有意にCD80, CD86の発現の低下が認められた.すなわち, 年に4回以上扁桃炎を繰り返す場合には, 扁桃局所の免疫能が低下している可能性が示唆された.扁桃摘出術 (扁摘) の効果を発熱回数, 咽頭痛など上気道炎症状, 扁桃炎による学校欠席日数について扁摘前後で検討したところ, 学校欠席日数では扁摘例の方が欠席日数が有意に少ないことが認められた.現在混乱が見られる扁摘の適応について扁摘indexを考案した.扁摘indexは扁桃炎罹患回数 (最大数) x扁桃炎罹患年数であり, 5年間の経過観察後でも扁桃炎回数が3回以上となるindexを計算し, 扁摘の適応は扁摘indexが8以上を扁摘の適応があると考案した.
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