口腔・咽頭科
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17 巻, 3 号
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  • 加藤 智絵里
    2005 年 17 巻 3 号 p. 285-288
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    2002年4月より, 神戸大学附属病院にて口腔.中咽頭癌患者の摂食・嚥下リハビリテーションに言語聴覚士がかかわるようになった.術前より嚥下のリハビリテーションについてオリエンテーションを行い, 術後早期から間接嚥下訓練と直接嚥下訓練を実施した.3食経口摂取可能になった日数は, 舌部切は平均7.1日, 舌半切は平均30.4日, 舌亜全摘以上では1ヶ月以上, 中には10ヶ月近くかかる症例もみられた.中咽頭癌は平均約1ヶ月強であった.摂食・嚥下リハビリテーションにおける言語聴覚士の役割について述べる.
  • 小林 祐希, 野澤 はやぶさ, 後藤 孝, 吉崎 智貴, 高原 幹, 原渕 保明
    2005 年 17 巻 3 号 p. 289-296
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    ベーチェット病は, 口腔咽頭などの消化管粘膜潰瘍, ぶどう膜炎などの眼病変, 結節紅斑などの皮膚症状, 外陰部潰瘍など多彩な症状を呈する原因不明の炎症性全身疾患でりしばしば治療に難渋する.
    ベーチェット病の中には上気道炎や扁桃炎によって発症または症状の悪化がみられる症があるとの報告があり, 扁桃病巣感染症の一つと考えられている.今回我々は, 扁桃病感染症が疑われたベーチェット病4症例に対し両側口蓋扁桃摘出術 (扁摘) を施行したで報告する.
    扁桃炎の既往, および扁桃炎時にベーチェット病の症状が増悪したエピソードのある症例では, 扁摘によって術後に明らかな症状の改善が認められた.他の2症例においてプレドニゾロン等の併用にて症状の改善が認められた.
    自覚的なスケールを用いた扁摘後のベーチェット病の改善度を判定した結果は, 今回示した4症例全てにおいてスコアの改善が認められ, 扁摘への満足度は高いものと思わた.
  • 浜口 清海, 福島 英行, 中村 一, 宮田 耕志, 梅田 裕生, 木谷 芳晴
    2005 年 17 巻 3 号 p. 297-302
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2011/03/01
    ジャーナル フリー
    顎下腺唾石症の手術法には口内法と外切開法があるが, その選択基準は明確ではない.今回我々は当科での入院手術症例38例を検討し, 術式選択の基準を中心に考察した.双指診により触知できた唾石は, その部位によらず口内法により摘出できており, 触知可能な顎下腺唾石は口内法で摘出可能と考えられた.唾石摘出後の処理について, 口内法で唾石を摘出後は開放創としたが, 術後合併症はガマ腫を形成した1例があるのみで開放創で手術終了としてよいと考えられた.口内法は外切開法に比べ低侵襲で, 双指診により触知できる顎下腺唾石については口内法で摘出可能であると判断できるので, 双指診を行って唾石を触知することは極めて重要である.
  • 山口 宗一, 末野 康平, 山口 威, 田中 真琴, 浅野 友規美
    2005 年 17 巻 3 号 p. 303-307
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    症例は48歳女性, 主訴は右顎下部の腫脹.平成14年10月頃から腫脹に気付き, 平成14年11月27日, 歯科医から当科を紹介され受診した.右顎下腺の前方に, 28×20mmの硬い腫瘤を触知した.画像所見とFNAの結果から炎症性腫瘤が疑われ経過観察とした.その後, 腫瘤が増大したために平成15年3月19日, 確定診断目的で摘出した.病理組織診断は, 膿瘍と肉芽組織形成と報告された.平成15年10月6日, 再び同じ部位が腫脹したために外歯瘻を疑った.歯科医へ相談したが, 外歯瘻の可能性は低いと報告された.平成15年12月16日, 痩孔を形成したため, 創部から消息子を挿入したところ下顎骨方向へ痩孔を確認し, その旨を歯科医へ報告した.そこで抜歯が施され, その後現在まで再発を認めていない.
  • 正常者での検討 (第1報)
    西元 謙吾, 大堀 純一郎, 下麥 哲也, 黒野 祐一
    2005 年 17 巻 3 号 p. 309-315
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    味覚障害に対する簡便な検査として我々が提唱しているソルセイブ検査はスプーン型濾紙に一定濃度の食塩を浸透, 乾燥させたもので, 塩味閾値を簡便に測定できる.今回, 我々は耳鼻咽喉科疾患および高血圧症や糖尿病などの全身的な合併症のないボランティアに協力してもらい, この正常値が妥当であるのかを再検討した.また, 経過観察するために使用できる検査であるか, 閾値の再現性についても検討を行った.3回の繰り返しソルセイブ検査で, 認知閾値と検知閾値の間に解離を認める例があり, この中には正常値である0.6%を超える認知閾値を示すものもあった.しかし, 検知閾値は正常値以下であまり変動がなかったことから, 検知閾値が重要であることが推測された.
  • 小林 隆一, 唐木 將行, 森 望
    2005 年 17 巻 3 号 p. 317-322
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    平成15年4月~平成16年5月までの14ヶ月間に終夜睡眠ポリグラフ検査 (PSG) を行った成人100例について検討した.75例がSASと診断された.n-CPAPの継続は47例中43例 (91%) で脱落した4例中2例は扁摘や鼻手術が有効であった.SASに対して集学的治療を行うことはCPAPのコンプライアンスや治療の継続率を高めるためにも重要と思われた.
  • 菊池 淳, 坂本 菊男, 佐藤 公則, 中島 格, 名倉 美津佳
    2005 年 17 巻 3 号 p. 323-331
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    睡眠時無呼吸症候群 (SAS) に対する経鼻持続陽圧呼吸 (CPAP) の使用状況を, 扁桃肥大, 鼻・副鼻腔疾患別に検討した.扁桃肥大なし~1度の群はCPAPによるAHIの改善度は良好であった.扁桃肥大2度の群は, CPAPによるAHIの改善度は80%以上であったが, 治療後にAHIが10以上残る結果であった.扁桃肥大3度の群はCPAPによっても改善不良であった.いずれも鼻・副鼻腔疾患の合併例では改善度が不良であった.AHIに対する影響は, 扁桃肥大なし~1度までの群では鼻・副鼻腔疾患の影響が大きく, 逆に扁桃肥大2度以上の群では, 扁桃の影響の方が大きいと思われた.
  • 長内 洋史, 朝日 淳仁, 長峯 正泰, 片山 昭公, 荻野 武, 今田 正信, 野中 聡, 原渕 保明
    2005 年 17 巻 3 号 p. 333-338
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺深葉から副咽頭間隙に進展した耳下腺悪性混合腫瘍を報告した.下顎骨正中離断にてpush up法を用い腫瘍を摘出した.病理組織では腺管上皮由来と筋上皮由来の部分で悪性像がみられた.発生母地となる多形腺腫の部分は認めず悪性混台腫瘍の診断となった.術後に60Gy/30fの放射線外照射治療の追加をおこなった.
  • 矢野 陽子, 石田 雄介, 村上 信五
    2005 年 17 巻 3 号 p. 339-344
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    鼓索神経切断後に続発する味覚障害やその回復の機構には不明な点が多い.本報告では鼓索神経を切断された中耳術後症例の茸状乳頭分布について検討を行った.対象は術後数年~約40年経過した15症例で全例片側のみ手術が施行されている.舌尖における茸状乳頭の分布は, 1.切断側はすべて萎縮・消失, 2.舌正中から切断側へ1cm以内に存在, 3.舌正中から切断側へ2cmを越えて存在の3パターンが示唆された.いっぽう舌体ではすべての症例で正中を越える茸状乳頭は観察されなかった.以上より交叉支配または健側からの神経の再支配は舌尖が中心であること, さらにそれらは2cmを越えて生じる例が存在することが示唆された.
  • 渡辺 哲生, 鈴木 正志
    2005 年 17 巻 3 号 p. 345-352
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    昭和58年10月から平成16年3月まで当科で入院加療した扁桃周囲膿瘍209例の細菌検査について検討した.187例 (89%) から351株の細菌が検出された.約半数の症例が混合感染で, 約70%の症例から好気性菌, 約40%の症例から嫌気性菌, 約20%の症例から両者が検出された.好気性菌は227株で, S.pyogenes, S.milleri groupが, 嫌気性菌は124株で, Prevotella属, Fusobacterium属が多くみられた.薬剤感受性検査の結果をNCCLSの基準からみると扁桃周囲膿瘍においては耐性菌の問題はなかったが, セフェム系抗菌薬に感受性の低いS.milleri groupの増加, クリンダマイシンに対する耐性菌がみられたので抗菌薬の使用に注意を要すると考えた.
  • 島津 倫太郎, 木寺 一希, 倉富 勇一郎, 井之口 昭
    2005 年 17 巻 3 号 p. 353-360
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    我々は1981年から2004年までに佐賀大学医学部付属病院にて治療を行った上咽頭癌46例について臨床および病理組織学的検討を行った.症例は男性35例, 女性11例で, 年齢分布は20歳から80歳であった (平均57歳).1次治療として8例はペプレオマイシン投与と放射線照射を行い, 22例はneo adjuvant chemotherapyと放射線照射を行った.16例は化学・放射線同時併用療法を行った.全症例の5年生存率は46%であった.ペプレオマイシンと放射線照射併用治療と比較して, 化学・放射線同時併用療法が有意差をもって5年生存率の改善を認めた.
  • 駒林 優樹, 今田 正信, 安部 裕介, 野中 聡, 原渕 保明
    2005 年 17 巻 3 号 p. 361-365
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    下顎骨に発生した12歳男児fibrous dysplasia症例を報告する.主訴は, 頬部腫脹であった.CT, MRIにおいて右下顎枝より発生する腫瘤を認めた.生検術を施行し, 病理組織学的検査の結果, fibrous dysplasiaと診断された.美容, 機能上の観点から経過観察を行った.3年間の経過観察で病変の自然縮小を認めた.
  • 田中 克典, 古謝 静男, 東野 哲也
    2005 年 17 巻 3 号 p. 367-371
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    咽後膿瘍は, 近年抗生剤などの化学療法の発達によりその数が減少しているとされるが, ステロイドや免疫抑制剤投与, 糖尿病などの免疫抑制状態にある患者の合併症として, 現在でも重要な疾患である.
    今回我々は, 10歳の男児で, 自己免疫性肝炎のため, ステロイド, 免疫抑制剤使用中に咽後膿瘍を合併し, その膿からMycobacterium fortuitumという非定型抗酸菌を検出した症例を経験したので報告する.
    Mycobacterium fortuitumによる咽後膿瘍は, 我々が確認できた限りでは報告が無いが, 本は薬剤感受性が低く, 日和見感染症の原因となりうる為, 今後このような症例も増加する可能性があると考えられる.その際には, 迅速な切開排膿, それから得られる薬剤感受性をもとに抗菌剤を選択することが重要である.
  • 和田 倫之助, 将積 日出夫, 藤坂 実千郎, 渡辺 行雄
    2005 年 17 巻 3 号 p. 373-377
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    コンタクトスコープ (接触型硬性内視鏡) を用いて舌表面微細構造を観察する場合の問題点であった, 舌表面への安定した固定方法を工夫した.サクションイリゲーションシステムを内視鏡に装着し, 舌表面観察時には内視鏡先端に陰圧 (200cm H2O) を加えた.さらに手ぶれ防止のため, 内視鏡は内視鏡ホルダーにて固定した.これにより, 安定した舌表面微細構造の記録が, 可能となった.
  • 本間 明宏, 福田 諭
    2005 年 17 巻 3 号 p. 379-384
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    舌進行癌新鮮例で手術拒否例4例に対して超選択的動注療法と同時に外照射を行った後に高線量率組織内照射による治療を行った.
    1例は4年4ヶ月経過しているが非担癌生存しており, 視診上は舌の萎縮は認めるが, 常食を摂取でき発症前と変わらぬ生活を送っている.原発・頸部は明らかな再発はなかったが, 治療終了後に肺転移が出現し初診から8ヶ月で死亡した例が1例あった.残りの2例については観察期間は短いが, 残存・再発を疑わせる所見はない.
    今回, 我々が行った治療は手術を拒否する舌進行癌症例に対しては, 根治を期待できる治療となりうる可能性が示唆された.今後, 慎重に経過を観察し, 晩期合併症も明らかにしていきたい.
  • 児玉 悟, 鈴木 正志
    2005 年 17 巻 3 号 p. 385-392
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2011/07/05
    ジャーナル フリー
    扁桃の形質細胞様樹状細胞 (PDC) の特徴や機能について解析を行なった.口蓋扁桃よりPDCを分離精製し, フローサイトメトリーとRT-PCRにて表面抗原とtoll様受容体 (TLR) の発現について解析した.またAタイプとBタイプのCpGにて刺激し, サイトカイン産生についてELISAにて検討した.PDCはLin-, CD4+, CD11c-, CD40+, CD123+, HLA-DRmod, CD80-, CD86-, CD83+であり, TLR7, 9を発現していた.塩基配列や構造の異なるCpGにより, 異なるサイトカイン産生が観察された.扁桃の免疫応答においてのPDCの重要性が示唆された.
  • 大前 麻理子, 岩井 大, 池田 耕士, 八木 正夫, 馬場 奨, 金子 敏彦, 島野 卓史, 山下 敏夫
    2005 年 17 巻 3 号 p. 393-398
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    耳下腺多形腺腫症例60例についてMRIT2強調画像の信号強度と病理像とを比較し, 検討を行った.MRIT2強調画像の信号強度を3タイプに分類したとき, 正常耳下腺組織より著明に高い信号を示すタイプは, 45例75%に認められた.軽度高信号から等信号を示すタイプは9例15%, 低信号のタイプは6例10%であった.これらの症例それぞれの病理像を見ると, 粘液腫様・軟骨腫様間質は高信号領域に相当し, 一方, 細胞の密な領域は軽度高信号から等信号領域に, 線維性結合織は低信号領域に一致した.耳下腺多形腺腫はMRIT2強調画像で一般に高信号を示すとされるが, 今回の検討では, 等信号からそれより信号の低いタイプが全体の25%に認められたことになる.耳下腺腫瘍で多数を占める本腫瘍の, MR所見における特徴の把握が, この腫瘍の診断と他の耳下腺腫瘍との鑑別に有用であると考える.
  • 西窪 加緒里, 兵頭 政光
    2005 年 17 巻 3 号 p. 399-405
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2010/06/28
    ジャーナル フリー
    向精神薬の投与により嚥下障害をきたした15例について臨床的検討を行った.症例は男性9例, 女性6例で年齢は平均65.6歳であった.原疾患はうつ病が10例と最も多く, その他は, 非定型精神病, 身体表現性障害, アルコール依存症などであった.全例がベンゾジアゼピン催眠鎮静薬, 抗うつ薬, 抗精神病薬などを1種類以上投与されていた.6例では嚥下性肺炎の既往があった.嚥下造影検査では多くの例で咽頭クリアランスが低下しており, 8例で明らかな誤嚥を認めた.また, 造影剤の口腔移動時間が有意に延長しており, これらの結果, 口腔期および咽頭期嚥下が障害されていた.投与薬剤の減量や変更が行えた症例では, 嚥下機能の改善が得られた.
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