日本口腔・咽頭科学会ガイドライン委員会では急性咽頭・扁桃炎を症状と局所所見からスコア化し重症度を定量的に判定し, その重症度に応じた治療選択することを提唱した.すなわち,(1) 日常生活の困難度,(2) 咽頭痛, 嚥下痛,(3) 発熱, の3項目, および局所所見を (1) 咽頭の発赤・腫脹,(2) 扁桃の発赤・腫脹,(3) 白苔・膿栓の付着の3項目, 合計6項目についてそれぞれの重症度を0~2にスコア化する.6項目の合計が0~3を軽症, 4~8を中等度, 9~12を重症として扱う.軽症 (スコア0~3) では非ステロイド系鎮痛剤や消炎剤などの対症療法や局所療法のみ行う.中等症 (スコア4~8) に対しては経口ペニシリン系抗菌剤を第一選択とした.重症例 (スコア9以上) に対してはニューキノロン, クリンダマイシン, テリスロマイシン, 第3セフェムを候補とし, 頸部リンパ節腫脹を伴う症例や日常生活が困難な症例に関しては, 静注抗菌薬治療も考慮することとした.以上のような重症度に応じた初回治療を行っても症状や所見の改善がみられない症例に関しては, 1ランク上の治療を考慮する.
急性咽頭・扁桃炎患者 (成人症例) 108例を対象に本ガイドラインをそって治療を行い, その治療成績を検討した.患者の重症度と白血球数, CRP, 患者体温, 日本化学療法学会の感染症重症度がいずれも高い相関を認めた.細菌検査では108例中95例 (88%) において扁桃または咽頭側索から合計165株同定された.インフルエンザ菌26株 (15.8%) を含めたヘモフィルス属が90株 (54.5%) と多く, ブドウ球菌は34株 (20.6%), A群β溶連菌9株 (5.5%) を含めたβ溶連菌は28株 (17%), 肺炎球菌は4株 (2.4%), カタラーリス菌は4株 (2 .4%) の頻度で検出された.β 溶連菌検出群では初診時と3-5日目において有意に症状スコア, 咽頭・扁桃スコアおよび重症度スコアが高かった.A群β 溶連菌迅速診断キットと細菌培養の一致率は94%であり, 有意な相関を認めた (p<0.0001).薬剤感受性を検討したところ, CAMについてはインフルエンザ菌にはMIC50が高かったが, LVFX, CFPN-PI, CDTR, PI, AMPCのいずれもいずれの細菌に対しても高い感受性を有していた.7~10日目の全治癒率 (重症度スコア1~2になった症例の割合) を検討すると軽症例100%, 中等度症例85%であった.重症例では50%程度であるが, 症状消失率 (症状スコア1~2になった症例の割合) は90%であり, 臨床的には満足される成績と考えられる.
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