小線源治療は直接に癌病巣に放射線を放出する同位元素 (放射性同位元素) を格納した線源を入れて照射する方法で, 従来の外部照射に比べると腫瘍に対する線量集中性が高く, 一方で皮膚や粘膜などの正常組織を温存して治療できるという格段に優れたメリットがある. そのために小線源治療は, 舌癌, 中咽頭癌, 食道癌, 気管・気管支癌, 胆管癌, 子宮頸癌, 子宮体癌, 前立腺癌, などの原発病巣, そのほかリンパ節転移巣や再発癌などへの局所的な照射・再照射で用いられている. 小線源治療は単独で用いられることもあるが, 外部照射で予防的な広い範囲の照射を行い, そのあと小線源で病巣に集中的に照射する役割で用いられることもある. 外部照射と異なり小線源治療は化学療法の併用に関する制約は少ない. また1回照射のような低回数での照射であれば全身の免疫機能に及ぼす影響は非常に少ないというメリットがある. 近年のコンピュータ技術の進歩により柔軟で正確な線量配分が可能になり, 様々の障害予測モデルの登場により治療計画の段階で科学的な障害予測が可能になり, 安全を確認しつつ効果的な治療を遂行することが可能になった. このような優れた利点の多い反面, 装置や手技が特殊であること, 特に侵襲を伴う組織内照射では技術やIVRのセンスが必要であること, 装置本体や線源の費用に比べて保険で請求できる額が低く, 少ない件数では採算が取れないことがあり, 小線源治療装置の普及や用途は限定している. そして小線源治療はIMRTや粒子線治療など, 画像下に治療計画し正確な高線量の照射を行う方法画像下 (高精度放射線治療) の挑戦も受けている.
最近, 私達は新しい技術を開発し, 危険臓器を移動させ, 高い障害発生確率を, 低い確率に置換えて治療することを可能にした. この新しい方法の粒子線に劣らない高い線量集中性による治療効果についても紹介する.
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