川崎病は4歳以下の乳幼児に好発する原因不明の血管炎であり, 多様な臨床症状を呈することが知られている. 最も重要な合併症として冠動脈瘤の形成は予後に関係するため, 迅速な診断および治療が必要である. 今回, 発熱, 疼痛を伴った左頸部腫脹を主症状として発症し, 画像上, 感染性疾患との鑑別に苦慮した川崎病の1例を経験した. 症例は3歳5か月, 男児. 主訴は左頸部腫脹, 頸部痛, 発熱. 川崎病の既往あり. 現病歴は2011年6月8日より38度の発熱が出現し, 近医小児科を受診した. 両側頸部腫脹が出現し, 血液検査では炎症反応の上昇を認めたため, セフジトレンピボキシル (CDTR-PI) を処方された. 翌日9日には40度, 頸部腫脹の増悪を認めたため, 当院小児科を受診し, 感染性疾患鑑別目的にて当科に紹介初診となった. 入院時現症として, 左口蓋扁桃および周囲の発赤, 腫脹. 頸部は左上深頸部に鶏卵大の腫脹あり. 血液学的検査は著明な炎症反応を認めた. 画像検査所見において, 両側頸部に腫大したリンパ節腫脹の集簇を認めた. 以上より左急性扁桃周囲炎を伴った急性化膿性リンパ節炎を疑い, 6月9日よりセフトリアキソン (CTRX) 1,300mgの点滴投与を開始したが, 改善を認めず, 6月12日から口唇の発赤および眼球結膜の充血が出現し, 心エコーでは冠動脈壁の輝度の亢進を認めたため, 川崎病の再発との診断となった. 抗生剤の投与は中止し, ガンマグロブリン投与が開始された. その後, 発熱と頸部リンパ節腫脹は速やかに消失し, 全ての臨床所見が改善した.
抗菌薬抵抗性の小児頸部リンパ節腫脹を認めた場合は川崎病も考慮する必要がある.
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