口腔・咽頭科
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26 巻, 2 号
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シンポジウム 扁桃周囲膿瘍・深頸部膿瘍への対応:重症度に応じた治療選択
原 著
  • 平野 隆, 森山 宗仁, 野田 加奈子, 鈴木 正志
    2013 年 26 巻 2 号 p. 111-117
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    深頸部膿瘍は口腔, 口蓋扁桃, 歯牙などが主たる感染源となり頸部間隙内に炎症が波及することにより生じる. 多くの場合は切開排膿を中心とした外科的治療が行われるが, 近年の高齢化社会により, 本疾患に対して高齢者の手術例が増加するものと考えられる. 当科にて入院加療を行った深頸部膿瘍症例54例について, 75歳以上を高齢者とし75歳未満症例との比較検討を行った. 深頸部膿瘍症例75歳以上の高齢者においては, 本人の自覚以上に, 局所および全身炎症症状が進行している症例が多く, 術前合併症が多く認めることにより術後合併症を誘導していることが示唆された. また, 術後合併症としてせん妄が多く, 術後せん妄に留意する必要があり, 循環器疾患, 呼吸器疾患などの対策も重要と考えられた.
臨床セミナー 口腔粘膜疾患
総 説
  • 佐藤 公則
    2013 年 26 巻 2 号 p. 119-130
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    1. 粘膜に生じた発疹を粘膜疹という.粘膜疹の主な基本形態には,斑,プラク,丘疹,結節,腫瘤,小水疱,水疱,膿疱,びらん,潰瘍,萎縮などがある.
    2. 口腔粘膜の粘膜疹の基本形態を理解し,粘膜疹の出現部位,出現状態を肉眼的に観察することは,口腔粘膜疾患の診断上大切である.
    3. 口腔粘膜疾患の診断・治療にあたっては,病変が口腔粘膜の粘膜上皮と粘膜固有層のどの部位に,どのような変化がおこっているのかを観察することが重要である.
    4. 肉眼所見から病理組織所見をイメージできることは,口腔粘膜疾患のより確実な診断と治療のために有用である.
原 著
  • 小林 一豊, 今井 良吉
    2013 年 26 巻 2 号 p. 131-136
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    扁桃周囲膿瘍の治療には,抗生剤投与,穿刺,切開による排膿等がある.膿瘍が小さい場合や浮腫性腫脹が強い場合は,まず抗生剤投与やステロイド投与による保存的治療を行い,その後CT所見と局所所見の推移をみながら穿刺,切開するのが安全で確実な治療法と考えた.併せて,膿瘍径15mm未満の症例は保存的治療で治癒する可能性が高いと報告した.また,造影CTによる膿瘍の状態の把握が扁桃周囲膿瘍の治療方針を立てる際に有効であった.
  • 本間 博臣, 渡邊 彩, 竹村 栄毅
    2013 年 26 巻 2 号 p. 137-141
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    30歳女性.慢性扁桃炎に対し全身麻酔下に両口蓋扁桃摘出術を施行.術後7日目に術後出血を認めた.局所麻酔下,全身麻酔下に止血操作を繰り返すも止血が得られなかった.持続する出血の原因精査を行うも原因が判明せず数ヵ月が経過している.状況から虚偽性障害が考えられ,自傷行為を行っていた可能性があるが証拠はつかめていない.術後8ヵ月近経過した現在もなお出血が続いており毎日外来通院している.
  • 菊池 淳, 暁 清文
    2013 年 26 巻 2 号 p. 143-148
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    睡眠医療に対する耳鼻咽喉科医の役割について,愛媛大学病院睡眠医療センターの現状をもとに述べる.睡眠センターには睡眠時呼吸障害 (sleep-disordered breathing, SDB) だけではなく睡眠障害の患者が受診する.単独の診療科での睡眠センター運営には限界があり,集学的な診療体制が望ましい.耳鼻咽喉科医は,形態診断と手術が行え,SDBの診断・治療には欠かせない.特に小児の場合は,睡眠検査の結果以上に形態診断と臨床症状が重要であり,治療に関してもその役割は重要である.今後,耳鼻咽喉科医が中心となって睡眠診療に携わっていくことが理想的であるが,現状では,耳鼻咽喉科医不在の睡眠センターに新たに耳鼻咽喉科医が参加することで,集学的体制を造ることが望まれる.
  • 相澤 直孝, 土屋 昭夫, 髙橋 姿
    2013 年 26 巻 2 号 p. 149-154
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    深頸部感染症は耳鼻咽喉科領域の最も重篤な感染症の一つであり,重篤な合併症を伴うと時に致死的な疾患ともなる.今回,食道穿孔を合併した深頸部膿瘍の2症例を経験した.両症例とも切開排膿術や気管切開術などを行った.術後は抗菌薬投与,創部ドレーンからの生食洗浄や経鼻胃管からのドレナージを行い症状は消失した.深頸部感染症では多様な合併症を呈するが,食道穿孔を生じた場合には縦隔膿瘍の発症や増悪を伴い,経管栄養も困難となって全身状態の一層の悪化を招く恐れがある.画像所見に十分な注意を払い,食道周囲への感染の波及が疑われた場合は食道穿孔の可能性を視野に入れるべきである.
  • 菊池 恒, 西野 宏, 今吉 正一郎, 笹村 佳美, 市村 恵一
    2013 年 26 巻 2 号 p. 155-160
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    10年間に当科で初回から治療を行った,舌癌のI・II期症例について臨床的検討を行った.
    年齢は31歳から85歳,男性24名,女性15名.I期症例は全例舌部分切除を行った.II期症例は深部浸潤により頸部郭清術や舌亜全摘出術+再建術を組み合わせた手術を行った.Kaplan-Meier法による5年生存率はI期85.6%,II期72.7%であった.
    再発例はI・II期合わせて12例にみられた.うち8例に頸部リンパ節転移をみとめたが,救済手術が可能だった症例は3例のみであった.I・II期舌癌では術後1年以内の頸部リンパ節転移の可能性が高く,これを念頭に起き外来での厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 水町 貴諭, 加納 里志, 本間 明宏, 折舘 伸彦, 福田 諭
    2013 年 26 巻 2 号 p. 161-166
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    HPV陽性中咽頭癌は陰性例に比べ予後が良好であるが,陽性例であっても予後不良例も存在する.Spectorらは“matted nodes”というリンパ節の転移様式のみられる症例は遠隔転移しやすく予後不良であると報告した.中咽頭扁平上皮癌症例61例に対してretrospectiveに“matted nodes”および臨床的検討を行った.このうち“matted nodes”を認めたのは9例であった.全症例における“matted nodes”の有無別の生存率には有意差を認めなかったが“matted nodes”あり群の方が有意に遠隔転移しやすい傾向にあった.HPV陽性例のみでの検討では“matted nodes”あり群の方がなし群に比べ有意に予後が不良であった.HPV陽性であっても“matted nodes”のある症例は遠隔転移のリスクが高く予後不良であるので導入化学療法を行った方が望ましいと考えられた.
  • 柴山 将之, 大脇 成広, 大道 千奈津, 清水 猛史
    2013 年 26 巻 2 号 p. 167-172
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    下咽頭癌症例における重複癌について検討した.対象は,1995年から2011年まで当科で治療を行った下咽頭癌症例89例である.全89例のうち37例 (42%) に重複癌を認めた.同時性の重複癌は19例,異時性が14例,同時性・異時性の重複癌を4例に認めた.重複癌は食道癌,喉頭癌,胃癌の順に多く認められた.予後は重複癌がない症例との比較で有意差は認めなかった.重複癌の治療では,下咽頭癌や重複癌の進行度や悪性度を把握し治療方針や治療の優先順位を検討することが重要である.また重複癌についての患者教育を行い,ハイリスク症例については長期間の経過観察を行うことが必要である.
  • 加藤 久幸, 油井 健宏, 日江井 裕介, 岡田 達佳, 櫻井 一生, 内藤 健晴
    2013 年 26 巻 2 号 p. 173-177
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は78歳の女性.口腔内出血を伴う右軟口蓋腫瘤の精査目的に当科紹介となった.頸部CTでは右軟口蓋に造影効果を伴う35×25mmの腫瘍性病変を認めた.このため悪性腫瘍も疑い3度の生検を行ったが,悪性腫瘍との診断には至らず病理組織学的検査により咽頭放線菌症と診断した.ペニシリンG 300万単位/日の約4週間投与にて腫瘤は縮小し退院となった.退院2ヵ月後より右軟口蓋腫瘤の増大を認め,生検にて放線菌症と腺房細胞癌の同時併存が確認され,経口腔法による中咽頭腫瘍摘出術を施行した.術後12ヵ月経過したが再発や転移はなく経過良好である.
    放線菌症は悪性腫瘍と鑑別が困難であるだけでなく,実際に悪性腫瘍と同時併存する症例があるので注意を要する.
  • 鈴木 法臣, 行木 英生
    2013 年 26 巻 2 号 p. 179-183
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    症例は33歳女性,主訴は咽頭痛.喉頭ファイバーと頸部CTで舌扁桃の著明な腫大を認めた.抗生剤投与により咽頭痛は軽快するも腫大は残存した.舌扁桃の生検ではリンパ組織の肥大のみで,悪性所見は認めなかった.
    腫大が4ヵ月以上続くため,舌扁桃切除術を行った.病理診断は生検と同様だった.術後2年より舌扁桃は徐々に再増大し,更にその半年後から咽喉頭異常感症も出現した.増大の進行による嚥下・呼吸障害を考慮し,術後3年2ヵ月で2回目の手術 (舌正中離断による経口腔的舌扁桃全切除) を行った.病理診断は初回手術と同様だった.
    現在は再増大傾向を認めないが,リンパ組織は残存しており今後も注意深い経過観察が必要である.
  • 武永 芙美子, 若杉 哲郎, 永谷 群司, 竹内 頌子, 高橋 里沙, 鈴木 秀明
    2013 年 26 巻 2 号 p. 185-190
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    巨大な口腔多形腺腫の1例を報告する. 症例は69歳女性で, 40年の間増大する口腔内腫瘤を自覚していたが, 反復する口腔内出血のため当科を受診した. 口腔内は, 硬口蓋を基部とする巨大な腫瘤で充満し, 閉口困難であった. 画像所見では長径75mmで不均一に造影される腫瘤が描出された. 良性腫瘍の診断下に経口的に腫瘍を摘出し, 欠損部はポリグリコール酸シートとフィブリン糊で被覆した. 病理診断は多形腺腫であった. 術後経過は良好である. 多形腺腫は自験例のように巨大化する場合があること, また小唾液腺と大唾液腺由来の腫瘍の間には, その臨床的特徴, 診断, 治療に相違があることに注意が必要である.
  • 崎谷 恵理, 山村 幸江, 吉原 俊雄
    2013 年 26 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    副耳下腺腫瘍は極めて稀な腫瘍であるが, その組織型は唾液腺腫瘍と同じ組織型の腫瘍が発生しうる. また, 悪性腫瘍の頻度が高く早急な診断と治療が必要となる. 当科では1989年9月から2012年8月の23年間で6例の副耳下腺腫瘍を経験した. 症例は男性3例, 女性3例と男女差はなく, 年齢は9歳から69歳であった. 悪性2例, 良性4例であり, 手術は全症例において耳下腺腫瘍に準じてS字状切開とし, 術後の顔面神経麻痺は認めていない. 症例を提示し, 副耳下腺腫瘍の特徴, 診断法, 手術法について検討した.
  • 兼坂 寛子, 有本 友季子, 仲野 敦子, 花澤 豊行, 工藤 典代
    2013 年 26 巻 2 号 p. 197-201
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    当科にて吸気性喘鳴, 哺乳不良を契機に発見された生後1ヵ月男児の咽頭良性ectomesenchymomaを経験した. 喉頭ファイバーでは上~中咽頭にかけて腫瘍が認められ, CT, MRIにて咽頭奇形腫と診断された. 気管切開を行った上で児の成長を待ち, 生後3ヵ月時に経口的アプローチで腫瘍摘出術を施行した. 病理学的検査では神経膠組織中に横紋筋細胞が散在しており, 良性ectomesenchymomaと診断された. 術後経過は良好であり, 現在術後9ヵ月になるが再発は認めていない. 新生児咽頭腫瘍の多くは奇形腫であり, またectomesenchymomaの報告はほとんどが悪性症例であることと合わせると, 本例は極めて稀な症例である.
  • 牧野 琢丸, 小野田 友男, 小山 貴久, 春名 威範, 江口 元治, 假谷 伸, 西﨑 和則
    2013 年 26 巻 2 号 p. 203-206
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    我々は2005年より上咽頭癌に対する初期治療として, 化学放射線同時併用療法 (CCRT) にて治療を行っている. 治療後2ヵ月で評価し, 局所残存例に対してはサイバーナイフ治療を追加している. 遠隔転移例に対しては, 手術やラジオ波焼灼療法等の局所治療も積極的に行っている. 当科にて初期治療にCCRTを行った19例を検討したところ, 初期治療の奏効率は94.7%, 3年生存率は92.9%であった. 引き続き現在の治療方針で症例を蓄積し, 検討を重ねていく予定である.
  • 小野田 友男, 牧野 啄丸, 小山 貴久, 石原 久司, 平井 悠, 春名 威範, 假谷 伸, 西﨑 和則
    2013 年 26 巻 2 号 p. 207-210
    発行日: 2013/06/10
    公開日: 2013/08/26
    ジャーナル フリー
    唾液腺導管癌 (Salivary Duct Carcinoma, 以下SDC) は唾液腺癌のなかでも数%とまれではあるが, 早期に局所再発やリンパ節転移, 遠隔転移をきたす悪性度の高い腫瘍である. 放射線治療, 化学療法は効果が乏しく, 外科的切除が治療の中心となり, 切除不能例は予後不良となる. 今回, 我々は三叉神経浸潤をきたし切除不能と診断した顎下腺SDCに対し, 重粒子線 (炭素線) を照射し, その後頸部郭清を行った. 顎下腺のSDCは大部分が壊死に陥るほどの高い効果が認められた. 治療後, 2年6ヵ月経過した現在, 明らかな再発を認めていない.
手 技
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