口腔・咽頭科
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32 巻, 1 号
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教育セミナー1 耳鼻咽喉科領域におけるIgG4関連疾患 —嗅覚障害との関連も含めて—
総説
  • 井下 綾子
    2019 年 32 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)での解剖学的病態の中心は咽頭である.OSAへの咽頭手術は,小児では,睡眠検査,症状,年齢,季節性変動,性差など総合的に適応を判断する.成人では適切な適応診断と,手術手技の工夫にて高い効果を期待できる.ただし,完治には至らず,術後も持続陽圧呼吸療法や口腔内装具などが必要となることもあり,対応に苦慮することがある.口腔筋機能訓練(myofunctional therapy:MFT)は,無呼吸時の咽頭筋群の反応性低下に対して関与し,術後の小児や,軽〜中等症の成人OSAへの効果が世界的に報告されている.OSAへのMFTは本邦では目新しいが,技術さえ学べば日常診療内において簡便に取り入れることができ,OSAへの新しい治療戦略のひとつとなり得る.
シンポジウム3 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)への手術治療を今一度考える
総説
  • 中西 清香, 吉崎 智一
    2019 年 32 巻 1 号 p. 11-14
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    IgG4関連疾患は本邦より提唱されて以来,全身多種多様にわたる病態の報告がなされている.耳鼻咽喉科領域では特に,唾液腺炎に関する病態が確立されているが,頭頸部全体でも様々な病態がある.今回我々は嗅覚障害に着目し調査を行ったところ,IgG4関連疾患患者における嗅覚障害は全体の52%に中等度以上の嗅覚障害を認め,健常人よりも多いことが明らかになった.さらに,治療経過で嗅覚障害が改善した症例もあり,可逆的な症状として我々耳鼻咽喉科医師が認識しておくべきものと言える.
パネルディスカッション2 扁桃摘出術ご当地自慢
総説
  • — 当院におけるPowered Tonsillotomy —
    手塚 綾乃, 島田 茉莉, 伊藤 真人
    2019 年 32 巻 1 号 p. 15-18
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    口蓋扁桃摘出術は広く行われる手術であり,今日までに様々なデバイスでの検討が為されているが,術式は被膜外切除(Tonsillectomy)が主流であり,術後合併症の発生も一定確率認めている.今回,当施設で実施した口蓋扁桃手術症例について検討した.口蓋扁桃摘出術では,術後出血率は従来の報告と差異は認めなかったが,扁桃摘出後の前後口蓋弓縫合を行った症例では術後出血率が低かった.さらに術後出血率を下げ,口蓋扁桃手術の安全性向上を目的に,近年は被膜内扁桃切除(Tonsillotomy)を行っている.Tonsillotomyを実施した8症例はいずれも術後出血や疼痛なく経過しており,今後さらに症例を重ねて検討していく.
原著
  • 山田 智史, 岡村 純, 細川 誠二, 峯田 周幸
    2019 年 32 巻 1 号 p. 19-25
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    類基底細胞癌(BSCC:Basaloid squamous cell carcinoma)は1991年にWHO組織分類に組み込まれた扁平上皮癌の亜型であり,比較的稀な悪性腫瘍である.通常の扁平上皮癌(SCC:Squamous cell carcinoma)と比べてリンパ節転移,遠隔転移頻度が高いとされ,予後不良とされている.2006年から2015年まで当科で経験した下咽頭癌274例のうちBSCCである6例を報告する.全て梨状陥凹原発であった.初回治療として放射線療法又は化学放射線療法を施行した症例は2例でいずれも現病死した.初回治療として手術を選択した残りの4例のうち2例はそれぞれ術後112ヵ月,28ヵ月無病生存となっている.BSCCは頭頚部領域ではSCCと同様の治療が行われることが多いが確立された治療法が存在しない.今後の症例の蓄積が必要となる.
  • 森 茂彰, 加藤 久幸, 日江井 裕介, 櫻井 一生, 内藤 健晴
    2019 年 32 巻 1 号 p. 27-32
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    頭頸部悪性黒色腫は比較的稀な予後不良の疾患である.今回我々は,ヒトPD-1に対するヒト型IgG4モノクローナル抗体であるニボルマブを使用した舌根部原発悪性黒色腫例を経験したため報告する.
    症例は63歳男性で頸部痛,嚥下および呼吸困難を主訴に前医を受診した.口腔咽頭腔に充満する腫瘍を認め,生検にて悪性黒色腫と診断され治療目的に当科に紹介された.手術不能例と判断してニボルマブ投与の方針とした.腫瘍は著明な縮小を認めたが,過去に未報告の免疫関連有害事象(immune-related adverse event:irAEs)と考えられた気管軟骨炎が出現した.ニボルマブ使用時は様々なirAEsの出現の可能性を念頭に入れ,他科との連携による対応が必要と考えられた.
  • 大野 芳裕
    2019 年 32 巻 1 号 p. 33-39
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    慢性上咽頭炎症例73例に対して,生理食塩水による鼻うがいを併用し,1%塩化亜鉛を上咽頭粘膜に塗布する上咽頭擦過療法(EAT)を施行した.治療前後に自覚症状のアンケート調査を行い,電子内視鏡の上咽頭所見を比較して治療効果を検討した.主訴の改善率は79.5%,局所所見の改善率は87.7%であった.アンケート用紙に記載のある,頭痛・後鼻漏・咽喉頭違和感・咽頭痛・肩こり・耳鳴・耳閉感・めまい・咳のうち,耳鳴以外のスコアは有意差をもって改善した.内視鏡による局所所見の改善度と主訴スコアの改善の程度との関連において有意な相関が認められた.慢性上咽頭炎に対してはEATを含む局所療法が有用であることが示唆された.
  • 船山 さおり, 伊藤 加代子, 濃野 要, 井上 誠
    2019 年 32 巻 1 号 p. 41-47
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    近年,味覚障害患者が増加している.味覚外来における治療効果を検討することを目的として臨床統計を実施し,亜鉛補充療法の効果について調査した.対象は2012年12月より2017年12月までの5年間に当院味覚外来を受診した患者172名(男性56名,女性116名)とした.患者の既往歴,服用薬剤,診断について単純統計を行った.さらに亜鉛製剤投与による自覚症状の改善に関わる因子を多変量解析により探索した.患者の平均年齢61.1歳であった.亜鉛欠乏性および特発性と診断された99名に亜鉛製剤を処方した.自覚症状の改善があった者は82.8%であった.ロジスティック回帰分析の結果,自覚症状改善に関わる因子は,病悩期間や亜鉛/銅(Zn/Cu)比であることが示された.
症例
  • 相原 勇介, 岡本 伊作, 勝部 泰彰, 佐藤 宏樹, 塚原 清彰
    2019 年 32 巻 1 号 p. 49-54
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は47歳男性,両側耳下部の腫脹を主訴とし受診された.右耳下部に18×14cm,左耳下部に18×13cmの腫瘤を触知した.圧痛は無く,顔面神経麻痺は認めなかった.細胞診結果はClass Ⅱであり,画像診断からワルチン腫瘍の疑いで摘出手術を施行した.病理検査の結果,リンパ上皮性嚢胞の診断となった.リンパ上皮性嚢胞は一般的に側頸部に好発し,耳下腺での発生は稀である.我々は本邦最大級・両側性耳下腺リンパ上皮性嚢胞を経験した.
  • 小山内 彩夏, 稲垣 太郎, 井谷 茂人, 岡吉 洋平, 白井 杏湖, 高野 愛弓, 冨岡 亮太, 田中 英基, 塚原 清彰
    2019 年 32 巻 1 号 p. 55-59
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    今回我々は極めて稀な肺結核病変を伴わない咽頭後間隙結核の一例を経験したので報告する.症例は62歳女性である.3ヵ月前から咽頭腫脹を主訴に当科紹介となった.視診では,咽頭後壁左側の粘膜下に腫脹を認めた.頸部造影CTの結果,咽頭後間隙左側に造影剤増強効果を伴う腫瘤を認め,同部位を穿刺した結果,淡泥色,漿液性内容液が採取された.経過が長く炎症反応も乏しかったことから,咽後膿瘍としては非典型的であり,結核性膿瘍を鑑別疾患とした.結核菌DNA-PCR・結核菌IFN-γを提出したところ陽性であった.全身検索の結果,肺に結核病変は認められず,原発性咽頭後間隙結核と診断した.診断確定後,感染症科にて結核として治療を行った.副作用なく経過し,中咽頭左側の腫脹も改善した.現在も定期的に経過観察中である.
  • 橋本 雄一, 山田 大貴, 竹内 一隆, 内山 広大, 瀧澤 義徳
    2019 年 32 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    咽頭異物は耳鼻咽喉科外来において高頻度に遭遇する疾患である.中でも魚骨は高い割合を占める.今回我々は下咽頭輪状後部から甲状腺まで到達した魚骨異物の1例を経験したので報告する.症例は87歳の女性で魚を食べたあとからの咽頭痛があり,近医歯科受診後に当科紹介受診した.咽喉頭内視鏡で下咽頭輪状後部に魚骨の一部を認め摘出を試みたが,嚥下運動により確認できなくなってしまった.CT検査を行ったところ,下咽頭輪状後部から気管左外側を通り甲状腺に達する線状の異物を認めた.同日全身麻酔下でのラリンゴマイクロサージェリーで摘出した.CT検査で異物の有無を確認し,早急に手術を行ったことで頸部膿瘍への進展や気管切開術に至らなかったと考えられた.
  • 中村 匡孝, 任 智美, 西井 智子, 前田 英美, 阪上 雅史
    2019 年 32 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.味覚異常を主訴に当科受診,味覚機能検査において左側に優位な味覚機能低下を認めた.左顔面の知覚低下,舌のしびれを認め,頭痛の増悪もあったため頭部造影MRIが施行された結果,肥厚性硬膜炎と診断された.ステロイドパルス療法を施行され,開始後数日で味覚異常は消失し,味覚検査も正常範囲となった.画像所見や症状,味覚検査より本症例では左側の鼓索神経と舌咽神経の障害と判断された.一側性味覚閾値上昇,かつ複数の脳神経症状が認められる場合は中枢性疾患を積極的に疑う必要があり,本症例では頭部造影MRIが有用であった.
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