小児アデノイド・口蓋扁桃肥大症37例 (男児26, 女児11, 平均年齢4.7歳) について日中にトリクロフォスシロップ (0.8m
l/kg) を投与して眠らせ, 約3時間にわたりビデオ記録下に呼吸状況を観察し, 同時に酸素飽和度 (SaO
2) を連続記録した.睡眠時呼吸障害の程度 (SaO
2の低下) とレントゲン上の気道狭窄度の相関の有無について検討した.37例でアデノイドの厚さと睡眠時最低酸素飽和度 (L.SAT) の相関, 鼻咽腔気道径とL.SATの相関について検討したが両者共に相関関係は認めなかった.狭窄程度と部位により, アデノイド・口蓋扁桃肥大群 (11例), アデノイド群 (8例), 口蓋扁桃肥大群 (10例), 気道狭窄群 (8例) に分類して, 群間でのSaO
2低下の程度について検討した.L.SATはアデノイド・口蓋扁桃肥大群で91.8%, アデノイド群で87.3%, 口蓋扁桃肥大群で88.5%, 気道狭窄群での86.4%であったが群間で統計学的な有意差は認められなかった.これはレントゲン写真の上気道狭窄程度だけでは睡眠時呼吸障害を推定出来ないことを意味する.簡易検査では呼吸障害を見逃すことなく診断するにはSaO
2記録に加えて, ビデオで実際に呼吸状況を観察する必要がある.
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