日本数学物理学会誌

可融性樹脂状 (無定形) 物質たる鹽化ヂフェニルに就て超音波干渉計による音波傳播速度及び吸収率の測定を試みた. 圓振動數ω=0.865×10⁷∝/sec一定とし測定温度を變化せしめた場合0℃-40℃の温度範圍に於て明瞭な超音波状異分散が觀測され, 吸収率 (△=αλ/2π, αはエネルギー吸収係數, λは波長) の極大値は0.086であり, 靜的粘度η₀=2690 poisを與へる温度23.5℃に於て現はれた. この實驗結果はMaxwellの關係式S=ηγ-τSS(τ=η/G) より導かれる一般化された超音波吸收の力學的理論によつて定性的乃至半定量的に説明される. 尚この事實をま現在迄觀測されてをらぬ純液體の同種の超音波異状分散に對して有力な示唆を與へるものと思ふ.

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CrO₃ 250g/l, H₂SO₄ 2.5g/lの溶液を用ひ, 種々の條件で電着されたクロム鍍金層の結晶構造を陰極線廻折によつて調べだ. その結果, 結晶型としては常に通常の體心立方型のもののみがえられ, 一定の鍍金條件の範圍内で [111] を纎維軸とする纎維構造が著しく發達すること, よく燒鈍された通常の純クロムの結晶格子に比し非常に大きい格子常數を示すことがあること等を確かめた. 又以上の實驗に關聯してクロム鍍金層の硬度を測定し, その結果を結晶講造と比較しクロム鍍金層の大きな硬度の原因について論じた。

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(1) 渦卷型の軌道をもつ特別な型のβ線分析器を作り, (§3) その性質を調べた. (§4) 分解能として線譜の幅をΔHρ/(Hρ) にて6パーセント位にすれば強度は全立體角4πの5パーセント程度に及び, 舊來の半圓焦點法その他で高々1パーセントに過ぎないのに較べてはるかに宜しい. (§5)
(2) 熱電子を0-3000ボルトで加速したものを用ひて分析器の性質を調べた. (§6) 線譜の幅を中間の點で2パーセント位にすれば全電子の約50パーセントは檢出器に達する. 一般の荷電粒子に應用すれば, 例へば質量分析器として利用される可能性が十分大きい.
(3) Th Bのβ線を電氣的に0-30キロボルトで加速して測つた. (§7, 1) 加速による譜の變形も少く, この方法は軟β線分析に利用出來る. 尚この際, 加速された冷放射電子のHρ値から加速電壓が知れる. § (7, 2)
(4) 譜の一部をくわしく調べる爲に, 一定磁場の下で加速電壓を變へることを試みた. (§7, 3) 即ち或勢力の電子をこの加速電壓の範圍でくわしく調べられる。
(5) 譜の強さを各點こついて夫々速された時の強さと比較して計數管の相對的感度を得た. (§7, 4)
以上の如く渦卷型β線分析器を試作して, その性質及び關聯事項の一班を試驗し, 二三の實驗には十分利用出來る事が分つた.

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