食料の多くを海外からの輸入に頼っている日本は,世界各国が気候変動によって蒙る様々な影響と無縁ではない。本研究は,気候変動による世界の水資源量と食料生産への影響推計モデルを作成し,世界の水の安全保障の観点から我が国の技術的な貢献の在り方について検討することを目的とするものである。 本推計モデルによると,経済発展国や発展途上国が表流水からの取水量を 5 年ごとに 5 %ずつ増加させたとしても,人口と経済の拡大に伴う需要を満たすだけの用水量の確保と農作物の生産は困難であり,結果として,生活用水不足や食料不足に困窮する人口は大幅に増加すると予想される。 このような中にあって,世界への日本の技術的貢献は,日本自身の安全保障の観点からも有益であることは自明の理である。同時に,恵まれた国としての使命でもあり,果たすべき役割には大きなものがある。