水利科学
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66 巻, 1 号
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  • 山口 晴幸, 岡山 伸吾
    2022 年66 巻1 号 p. 1-71
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2025/05/28
    ジャーナル フリー
    近年,魚類や貝類などの海洋生物の体内からマイクロプラスチックと呼ばれる大きさ5 mm 以下の微小プラスチックの検出報告が増えつつある。微小な大きさ故に,一旦,自然界に流出したマイクロプラスチックの回収・除去は絶望的であると同時に,有害化学物質を含有・吸着していることで,海洋生物の摂食による海洋生態系への汚染リスクが拡大し,最終的には,食物連鎖を介してブーメランのように我々に戻ってくる危険性を孕んでいる(筆者はこれをブーメラン汚染と称す)。そのためマイクロプラスチックなどの微小プラスチックは海洋生態系にとって深刻なダメージをもたらす脅威となることから,世界的に甚大な海洋・沿岸水域の汚染因子として警告が発せられている。 本稿では,まず,マイクロプラスチックの供給源である海洋廃プラスチックの海岸・沿岸水域での漂着実態やその特徴などについてグローバル・広域的に解説し,世界的に問われているプラスチック廃棄物の軽減・削減対策等の現状・動向や廃プラスチックによる海洋・沿岸水域への汚染対策に関する取り組み・課題などについて論究している。特に,20年以上に亘る長年の沖縄島嶼での調査・研究成果を踏まえ,下記の事項等について詳述している。 ①表示されている文字等から中国,韓国,台湾など近隣アジア諸国からとみられる越境ゴミを含む海洋ゴミの大量漂着が海岸・沿岸水域の甚大な自然破壊をもたらしている実態を明らかにし,深刻度を増す外来廃プラスチック等の越境ゴミに対する海岸・沿岸水域への国策的対応強化の重要性について。 ②廃プラスチックに加え,医療ゴミや管球類(電球・蛍光灯管・水銀ランプ)ゴミをはじめ,廃油ボール,有毒液体の残存する廃ポリタンク,ドラム缶や電化製品(冷蔵庫・テレビなど)などの危険で有害な海洋ゴミが大量に漂着を繰り返している実態を明らかにし,海岸・沿岸水域の自然環境に及ぼす有害リスクの甚大性について。 ③沖縄島嶼の中でも最も野趣豊かな島嶼とされる西表島(2021年7 月26日世界自然遺産登録)のマングローブ湿地水域を埋め尽くす海洋ゴミの深刻な汚染実態と,棲息・繁茂する海浜動植物生態系に与えるダメージリスクについて。 ④蓄積・山積する海洋ゴミによる防潮・防風林等の海岸樹木の折損・立ち枯れと,大型流木の大量漂着による海岸・沿岸植生域の衰退・荒廃リスクについて。 ⑤太平洋岸から流出漂流した我が国の海洋漂着ゴミによる太平洋上の他国の島嶼海岸への影響リスクの実態把握と軽減・抑制対策の検討について。 上述したように,近年では,廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の深刻化に伴い,劣化・破砕したマイクロプラスチックなどの微小プラスチックの海洋生物による摂食が鮮明化しつつある。食物連鎖を介した海洋生態系への影響リスクが危惧されていることから,海岸・沿岸水域に漂着した国籍(生産国)・タイプ(種類等)の異なる,様々な漁具類・容器類などの海洋廃プラスチックを対象に主要化学成分についての種々の成分分析を試みることで,重金属類等の有害元素の含有・溶出性に関して定量的に明らかにするとともに,摂食による微小プラスチックの有害リスクについて科学的に検証している。 さらに,筆者はこれまで長年,深刻化する廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の地球規模的な実情に危機感を抱き,マイクロプラスチックを含む微小プラスチックの砂浜海岸での漂着・混在状況を定量的に把握評価するための全国的な実態調査にも取り組んできた。 ここでは,2016年10月~2018年6 月にかけて,相模湾,東京湾,南外房沿岸の54か所の砂浜海岸(神奈川県37か所,東京都2 か所,千葉県15か所)で調査を実施し,関東沿岸水域の砂浜海岸に漂着・混在している大きさ5 mm 以下の微小プラスチック「海岸マイクロプラスチック」の現存量の実態や,それを構成している主要な素材の特徴・状況などについて詳細に解説している。また,海岸マイクロプラスチックの緻密な実態分析や,関東沿岸水域とは異なり,近隣アジア諸国からのものを含む廃プラスチックの大量漂着が長年繰り返されている沖縄島嶼での調査データとの比較検証を通して,マイクロプラスチックの主要な素材はレジンペレット樹脂粒子,プラスチック微細片,発泡スチロール微細片の3 素材で構成されていることを明らかにしている。だが,それらの素材の構成割合には海岸・沿岸水域間で偏重・特異性が認められることから,検出マイクロプラスチックの詳細な素材分析は,マイクロプラスチックの素である廃プラスチックの発生・排出源の解明や軽減・防止対策に有益な示唆を与えることを指摘している。 なお,洋上漂流や海底沈積したマイクロプラスチックは言うまでもないことであるが,海岸・沿岸水域に漂着・混在したマイクロプラスチックを含めた微小プラスチックの回収・除去すら,殆ど絶望的で不可能に近い作業となる。廃プラスチックを含めた海洋漂着ゴミの水際対策としては,何よりも海岸放置・停滞を許さない迅速,且つ持続的な清掃活動に基づいた海岸・沿岸水域の管理保全システムを,島嶼・過疎地を問わず全国津々浦々に如何に構築するかということが,マイクロプラスチックを含めた海洋漂着ゴミの軽減・抑制対策にとって最も重要で効果的な施策であることを,長年の調査成果から得られた最大の教訓として強調している。 そのためにも沖縄島嶼をはじめ日本海沿岸・離島などのように,大量漂着を繰り返す海洋ゴミが島嶼・沿岸水域の行政組織・住民など(NGO,NPO,学校,個人など)による清掃活動の限界を遥かに超え,放置・停滞を余儀なくされ,深刻な海岸・沿岸水系破壊がもたらされている地域においては,“特定監視海岸域の設定”や“海洋漂着ゴミ対策を主眼とした専属組織の立ち上げ”など,国策として積極的に対応・支援するための強化策の必要性について提言している。
  • 出澤 普子
    2022 年66 巻1 号 p. 72-85
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2025/05/28
    ジャーナル フリー
    治山施設の個別施設計画とは,インフラの長寿命化を図ることを目的に,個別施設ごとの具体的な対応方針を定めた計画である。林野庁は,各都道府県で管理している治山施設に係る個別施設計画を令和2(2020)年度までに策定することとした。 福島県においても県が管理する治山施設に係る個別施設計画を策定するため,県内21, 788施設のうち計画対象となる計10, 033施設の点検調査を行うこととなった。点検調査を実施した治山施設については,施設ごとの特性を踏まえた上で,機能の低下又はその可能性の有無,部材や材料の劣化状況等に応じて健全度を段階的に評価し,施設の長寿命化を図るための維持管理等について計画を策定した。 本稿は,当県における治山施設の点検方法とその結果,それに基づき機能強化対策が必要と判断された治山施設の対策方法等について整理したものである。
  • 末次 忠司
    2022 年66 巻1 号 p. 86-103
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2025/05/28
    ジャーナル フリー
    洪水災害を軽減したり,適切な河道管理を行っていくにあたっては,河川地形やその影響を十分理解しておく必要がある。また,河川管理施設の調査・計画・設計・施工の際にも,河川地形やその特徴に配慮しなければならない。既報(No. 381,382)では,拠点スケールで見た河川地形に関して,扇状地,砂州,樹林化地形について説明するとともに,土砂特性として,土砂生産,流動特性について解説した。また,河川地形や流砂のモニタリング技術について記述した。本報では既報に引き続いて,河川地形に影響する河床変動要因である砂利採取,深掘れなどについて説明するとともに,河床変動モニタリング手法や平常時・洪水時の川の見方などについて記述した。既報である「河川地形論と川の見方(Ⅰ)(Ⅱ)」とあわせて,全般的な「河川地形論と川の見方」になっている。
  • 松井 明
    2022 年66 巻1 号 p. 104-111
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2025/05/28
    ジャーナル フリー
    和田港海岸(福井県高浜町)において,海岸保全施設の建設と併せて水質を長期間モニタリングした。観測データを1999-2008年度および2009-2016年度の2 群に分類し,ウィルコクスンの順位和検定を実施した結果,2 群間の有意差が確認された測定項目は,塩分,濁度,pH およびCOD であった。これらの項目は,濁度を除き,海岸保全施設の影響を受けない沖合地点でも有意差が確認されたことから,海岸保全施設の影響ではなく,和田港海岸一帯の傾向と考えられる。濁度に関しては,海岸保全施設の影響が推定される。本海岸の環境を保全するために,離岸堤(潜堤)の内側に藻場を造成することを提案した。
  • 中村 徹立, 山田 正
    2022 年66 巻1 号 p. 112-134
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2025/05/28
    ジャーナル フリー
    高潮または津波と洪水または内水が同時生起すると,高潮・津波対策の遠隔・自動閉鎖水門の閉鎖によって,内水氾濫を生じる場合がある。操作シミュレーションの結果,高潮で水門閉鎖後は水門直近の内外水位を観測し,開閉操作することにより,高潮警報中の閉鎖と比較して内水氾濫水位を低下できる。津波警報に基づき閉鎖した場合は,ゲートの降下時間以上の津波到達時間が確保できる地点の潮位の遠隔監視により開閉操作すれば,レベル1 津波後の内水位の低下を早期化できる。
  • ──農村と団地が混在する塔野地区(愛知県犬山市)を事例として──
    村上 哲生
    2022 年66 巻1 号 p. 135-144
    発行日: 2022/04/01
    公開日: 2025/05/28
    ジャーナル フリー
    伝統的な自治組織が残る塔野地区(愛知県犬山市)で,災害時の代替水源として同区に残っている井戸の活用を検討した。同区に残る70箇所を超す井戸中30箇所を調査したところ,大腸菌が検出されず外観や理化学的検査にも問題がなく飲用に適すると判定された井戸は5 例に過ぎず,日常的に利用されていない井戸の水質劣化が特に顕著であった。井戸水の水質情報の公開や,今後の維持のための費用負担などの課題についての地域の合意はできておらず,公共財としての水管理を改めて住民に訴える必要がある。
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