水利科学
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66 巻, 2 号
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一般論文
  • 松下 潤, 小森 大輔, 井良沢 道也, 森 俊勇, 高部 圭司, 古川 柳蔵, 内海 真生, 阿部 正博, 白旗 学, 田中 國介, 中井 ...
    2022 年66 巻2 号 p. 1-22
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2025/06/09
    ジャーナル フリー
    近年,地球温暖化に伴う異常豪雨の頻発に伴い,大規模な流木流出を伴う複合災害が全国的な問題となっている。さらに,この流出した流木群の処理費用は,流域管理上,全国的に無視できないものとなっている。そこで本研究は,北上川水系(直轄6 ダム)を対象として,亜臨界水技術を用いた流木の資源化・利用の用途を開発し,低コストで自律的な流木管理モデルの構築を検討した。 最近20年間の流出流木量の解析より,洪水年平均約900m3(500トン)の流木を良質材(原木に近い丸太),通年平均約4, 100m3(2, 200トン)の流木を不良質材(林地残材)の二種類に区分した。そして,各々の特性に即した有効利用に係る実証試験と需給バランスの検討を行った。 亜臨界水解繊材(良質材)による黒毛和種肥育牛に対する木質飼料飼養試験においては,令和2(2020)年山形県内産牛枝肉共進会のチャンピオン賞を受賞するなどの肥育牛の良好な枝肉格付成績の結果を踏まえ,地元の畜産農家から木質飼料の良質性が認められれば,もしくは価格次第で,解繊木質飼料の地域ニーズは十分期待でき,技術面からは出口確保が可能であることが示された。一方で,需要量に対して流木(良質材)量が不足するため,安定供給に課題があることが推察された。 亜臨界水解繊材(不良質材)から抽出できるフルボ酸施用による栽培試験においては,技術面からはバラ科作物で出口確保の可能性が示された。また,バラ科作物の解繊フルボ酸液肥の需要量に対し42%供給でき,流木(不良質材)量により安定供給できる可能性が示された。バラでの病虫害抑止効果の再現性,バラ科作物等への展開が今後の課題である。
  • 丸田 泰史, 秋田 哲也
    2022 年66 巻2 号 p. 23-38
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2025/06/09
    ジャーナル フリー
    近年,全国的に大規模な自然災害が頻発しているが,災害が発生した際,行政機関には迅速な対応が求められている。 しかし,どの機関も職員数が減少している中で,災害状況等の把握には,多くの時間や労力を費やしていた。そこで,こうした課題の解決にむけ,地方自治体と四国森林管理局・徳島森林管理署の担当者が連携し,ドローン等の最新技術を用い,林野災害発生時に,その規模や災害状況等を安全かつ迅速に把握するため,平成29(2017)年3 月に全国初となる「林野災害時等における無人航空機等を活用した活動支援の運用に関する協定」を三好市と徳島森林管理署の間で締結し,また,平成31(2019)年3 月には,四国森林管理局と徳島県が「林野災害時等におけるドローンの利活用に関する協定」を締結した。 この協定に基づき,民国が密接に連携し,実際の災害現場において,ドローンを活用した演習会等を実施し,現地映像のリアルタイム配信や,自動飛行による画像データ収集,画像解析による平面図等の作成作業を検証するとともに,これらの技術の伝承や人材育成に取り組んだので紹介する。
  • ──長慶平地区地すべり防止事業の事例報告──
    宮前 貴旭
    2022 年66 巻2 号 p. 39-54
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2025/06/09
    ジャーナル フリー
    青森県西津軽郡深浦町長慶平地区には,2 地区213ha の地すべり防止区域が指定されている。昭和63(1988)年度から,集水井工,アンカー工及び治山ダムなど,数々の地すべり防止施設が整備されてきており,今後も対策工を継続していく計画である。 一方,老朽化に伴い施設の機能低下が懸念されるため,定期的な施設点検の必要はあるが,広大な範囲に整備された施設や各部位の健全度を現地確認することは,多大な時間と労力が生じるほか,地中での工法が多い特殊な施設であることから,地上からの目視による確認作業にも限界がある。 昨年(2020年),当地区で,調査委託により地すべり防止施設点検調査を実施したところ,一部の施設に共通した不良箇所や課題が判明した。 当該地すべり防止地区での事業実施状況を事例に,施工管理技術の実態を踏 まえ,施設点検における現場作業での支援策として,設計施工における留意点 を検討したものである。
  • 和田 一範
    2022 年66 巻2 号 p. 55-76
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2025/06/09
    ジャーナル フリー
    大正7(1918)年に多摩川の内務省直轄改修が開始して100年が経過した。それ以前の多摩川は,毎年のように洪水氾濫を繰り返し,うねうねと蛇行をする暴れ川だった。昭和8(1933)年までのこの事業によって,多摩川は二本の太い堤防に囲まれ,以来,この二本の堤防を越えて大きくあふれることはなくなった。このことが多摩川の沿線を現在のような近代都市に発展させる大き な礎となった。 昭和5(1930)年,内務省直轄による大連続堤が,暴れ多摩川の両脇をくっきりと縁取ったとき,この両岸堤防44km を桜の堤防公園にしようと活動した,地元市民団体があった。地元市町村長を中心として,公爵を名誉会長として,東京市の各区長,東京府会議員,市会議員,区会議員,神奈川県会議員,川崎市会議員,高額寄付者など,そうそうたる顔ぶれが名を連ねた,大多摩川愛櫻會である。 昭和5(1930)年3 月15日には,多摩川浅間神社において植初式が挙行され,東郷平八郎元帥の手植えや,浜口雄幸総理大臣の来賓あいさつが添えられ,盛大な式典となった。この日のために「櫻の多摩川」が,作詞土岐善麿,作曲中山晋平により創作され,両岸の小学校児童により,披露された。 この団体が,昭和5(1930)年11月,建立したのが,愛櫻碑である。 この愛櫻碑ならびに大多摩川愛櫻會のことは,河川史誌の名著として知られる『多摩川誌』には記載がない。 実はこの愛櫻會の取り組みは,内務省にとっては歓迎されるものではなかった。 本論文では,愛櫻碑の紹介とともに,愛櫻會の一連の取り組みを明らかにし,内務省の時代の治水事業を再評価し,地元の様々な動きとの関連,確執を検証する。
シリーズ:全国47都道府県土砂災害の歴史
  • 今村 隆正
    2022 年66 巻2 号 p. 77-103
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2025/06/09
    ジャーナル フリー
    宮崎県は,国土交通省が発表する都道府県別土砂災害発生状況で見ると,平成21年(2009)から平成30年(2018)の過去10年間における平均順位は,47都道府県中13位である。九州は土砂災害履歴の大変多い地方であり,九州7 県のうちでは4 番目に多い県である。 本稿は,歴史資料(古文書,宮崎県史,市町村誌等)調査,ヒアリング調査,現地調査を基に,主に江戸時代以降に宮崎県で発生した,歴史に記録され,語り継がれる土砂災害の事例を調査した結果を整理したものである。
連載論文
  • 山口 晴幸, 岡山 伸吾
    2022 年66 巻2 号 p. 104-176
    発行日: 2022/06/01
    公開日: 2025/06/09
    ジャーナル フリー
    近年,魚類や貝類などの海洋生物の体内からマイクロプラスチックと呼ばれる大きさ5 mm 以下の微小プラスチックの検出報告が増えつつある。微小な大きさ故に,一旦,自然界に流出したマイクロプラスチックの回収・除去は絶望的であると同時に,有害化学物質を含有・吸着していることで,海洋生物の摂食による海洋生態系への汚染リスクが拡大し,最終的には,食物連鎖を介してブーメランのように我々に戻ってくる危険性を孕んでいる(筆者はこれをブーメラン汚染と称す)。そのためマイクロプラスチックなどの微小プラスチックは海洋生態系にとって深刻なダメージをもたらす脅威となることから,世界的に甚大な海洋・沿岸水域の汚染因子として警告が発せられている。 本稿では,まず,マイクロプラスチックの供給源である海洋廃プラスチックの海岸・沿岸水域での漂着実態やその特徴などについてグローバル・広域的に解説し,世界的に問われているプラスチック廃棄物の軽減・削減対策等の現状・動向や廃プラスチックによる海洋・沿岸水域への汚染対策に関する取り組み・課題などについて論究している。 特に,20年以上に亘る長年の沖縄島嶼での調査・研究成果を踏まえ,下記の事項等について詳述している。 ①表示されている文字等から中国,韓国,台湾など近隣アジア諸国からとみられる越境ゴミを含む海洋ゴミの大量漂着が海岸・沿岸水域の甚大な自然破壊をもたらしている実態を明らかにし,深刻度を増す外来廃プラスチック等の越境ゴミに対する海岸・沿岸水域への国策的対応強化の重要性について。 ②廃プラスチックに加え,医療ゴミや管球類(電球・蛍光灯管・水銀ランプ)ゴミをはじめ,廃油ボール,有毒液体の残存する廃ポリタンク,ドラム缶や電化品(冷蔵庫・テレビなど)などの危険で有害な海洋ゴミが大量に漂着を繰り返している実態を明らかにし,海岸・沿岸水域の自然環境に及ぼす有害リスクの甚大性について。 ③沖縄島嶼の中でも最も野趣豊かな島嶼とされる西表島(2021年7 月26日世界自然遺産登録)のマングローブ湿地水域を埋め尽くす海洋ゴミの深刻な汚染実態と,棲息・繁茂する海浜動植物生態系に与えるダメージリスクについて。 ④蓄積・山積する海洋ゴミによる防潮・防風林等の海岸樹木の折損・立ち枯れと,大型流木の大量漂着による海岸・沿岸植生域の衰退・荒廃リスクについて。 ⑤太平洋岸から流出漂流した我が国の海洋漂着ゴミによる太平洋上の他国の島嶼海岸への影響リスクの実態把握と軽減・抑制対策の検討について。 上述したように,近年では,廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の深刻化に伴い,劣化・破砕したマイクロプラスチックなどの微小プラスチックの海洋生物による摂食が鮮明化しつつある。食物連鎖を介した海洋生態系への影響リスクが危惧されていることから,海岸・沿岸水域に漂着した国籍(生産国)・タイプ(種類等)の異なる,様々な漁具類・容器類などの海洋廃プラスチックを対象に主要化学成分についての種々の成分分析を試みることで,重金属類等の有害元素の含有・溶出性に関して定量的に明らかにするとともに,摂食による微小プラスチックの有害リスクについて科学的に検証している。 さらに,筆者はこれまで長年,深刻化する廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の地球規模的な実情に危機感を抱き,マイクロプラスチックを含む微小プラスチックの砂浜海岸での漂着・混在状況を定量的に把握評価するための全国的な実態調査にも取り組んできた。 ここでは,2016年10月から2018年6 月にかけて,相模湾,東京湾,南外房沿岸の54か所の砂浜海岸(神奈川県37か所,東京都2 か所,千葉県15か所)で調査を実施し,関東沿岸水域の砂浜海岸に漂着・混在している大きさ5 mm 以下の微小プラスチック「海岸マイクロプラスチック」の現存量の実態や,それを構成している主要な素材の特徴・状況などについて詳細に解説している。 また,海岸マイクロプラスチックの緻密な実態分析や,関東沿岸水域とは異なり,近隣アジア諸国からのものを含む廃プラスチックの大量漂着が長年繰り返されている沖縄島嶼での調査データとの比較検証を通して,マイクロプラスチックの主要な素材はレジンペレット樹脂粒子,プラスチック微細片,発泡スチロール微細片の3 素材で構成されていることを明らかにしている。だが,それらの素材の構成割合には海岸・沿岸水域間で偏重・特異性が認められることから,検出マイクロプラスチックの詳細な素材分析は,マイクロプラスチックの素である廃プラスチックの発生・排出源の解明や軽減・防止対策に有益な示唆を与えることを指摘している。 なお,洋上漂流や海底沈積したマイクロプラスチックはいうまでもないことであるが,海岸・沿岸水域に漂着・混在したマイクロプラスチックを含めた微小プラスチックの回収・除去すら,殆ど絶望的で不可能に近い作業となる。廃プラスチックを含めた海洋漂着ゴミの水際対策としては,何よりも海岸放置・停滞を許さない迅速,且つ持続的な清掃活動に基づいた海岸・沿岸水域の管理保全システムを,島嶼・過疎地を問わず全国津々浦々に如何に構築するかということが,マイクロプラスチックを含めた海洋漂着ゴミの軽減・抑制対策にとって最も重要で効果的な施策であることを,長年の調査成果から得られた最大の教訓として強調している。 そのためにも沖縄島嶼をはじめ日本海沿岸・離島などのように,大量漂着を繰り返す海洋ゴミが島嶼・沿岸水域の行政組織・住民など(NGO,NPO,学校,個人など)による清掃活動の限界を遥かに超え,放置・停滞を余儀なくされ,深刻な海岸・沿岸水系破壊がもたらされている地域においては,“特定監視海岸域の設定”や“海洋漂着ゴミ対策を主眼とした専属組織の立ち上げ”な ど,国策として積極的に対応・支援するための強化策の必要性について提言している。
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