水利科学
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67 巻, 6 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • ─流域治水・避難などへの対応─
    末次 忠司
    2024 年67 巻6 号 p. 1-41
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    平成の後半には,2011年の紀伊半島水害や2012年の九州北部豪雨災害に始まって,2019年の東日本台風災害や令和2 年7 月豪雨災害に至るまで,連年水害が各地に大きな爪痕を残した。各々の水害は様々な教訓を呈した一方で,その後有効に利活用される対応技術(施策を含む)を生み出す契機ともなった。こうした技術・施策は水害の実態調査報告の一部として取り上げられることはあっても,包括的に示されることは少ないため,マクロな全体像(時間的に見た流れ)や実態を理解することは難しい。そこで,本報では氾濫被害だけでなく,土砂災害,津波まで含めた広義の水害を対象に,近年展開されている流域治水,避難,洪水・氾濫防御,防災・減災計画の各ジャンルごとに特筆すべき対応技術(27技術)の概要や特徴などを網羅した。総合的に対応技術を提示することによって,マクロな全体像が分かるとともに,対応技術の方向性・相違や今後の課題も見えてくる。
  • 蓮沼 佑晃, Rozaqqa Noviandi, 岩佐 直人, 大高 範寛, 五味 高志
    2024 年67 巻6 号 p. 42-62
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    森林景観の自然斜面では樹木根系が有する斜面安定化機能が発揮されていると考えられており,斜面上の樹木の根系効果の研究が精力的に行われてきた。しかし,斜面安定性に寄与する樹木根系は地下部に存在し,根系の形状・強度等を確認するためには,地盤掘削による根系の強度や構造を計測する等の大規模試験を必要とする。根系の引き抜き抵抗力の計測と根系量の推定などの研究も進められているが,樹木根系そのものと斜面安定化機能については,未解明な点が多い。特に,近年の極端気象と関連した集中豪雨の発生と森林斜面における斜面安定性の評価に対して,根系を含む森林の水土保全機能への期待も大きい。このことから,根系による斜面安定化効果に関する研究を進め,根系効果を含めた自然斜面安定設計への取り込み等の研究と技術開発が求められている。 そこで著者らは,根系の斜面安定性の評価について,降雨特性を考慮した模型斜面実験を実施し,降雨時の根系を含む斜面の安定性に関する研究を実施している。本稿では,代表的な既往研究成果を整理し,水平根効果を評価することの重要性を示し,模型斜面による降雨実験を実施した。根系の存在により崩壊までの時間が長くなるとともに土壌中の水貯留量は増加し,斜面の深さ方向と斜面上部方向に飽和領域が拡大する傾向が示された。実験結果をもとに修正フェレニウス法による2 次元解析から,水平根の斜面補強効果を地盤の粘着力増加効果として評価できることが示唆された。本研究から水平根の効果を評価する手法が確立できたが,根系の斜面土壌の引き止め効果を評価する手法の検討の必要性も示された。
  • ─運河経営を圧迫した維持管理費用─
    梶原 健嗣
    2024 年67 巻6 号 p. 63-114
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    明治初頭,河川行政は水運網の構築に力点を置き,進められた。いわゆる低水工事の時代である。それが明治20年代,相次ぐ水害の頻発化と鉄道の整備によって,河川行政は高水工事を柱とするものに変わっていった。このように明治中期は,社会と河川との関係が大きく変化する時期にあたる。しかしその明治中期以降も,河川舟運は近代日本にとって必要不可欠な物流であり続けた。利根川水系もその1 つである。 千葉県では明治中期,日本鉄道土浦線,総武鉄道,成田鉄道が開通し,県北部で鉄道が整備されていったが,その少し前の1890(明治23)年,利根運河が開削された。運河開削の最大の目的・利点は,航路の短縮よりもむしろ浅瀬に悩まされていた利根川舟運網の機能回復にあった。時期的に競合した利根運河と鉄道だが,政府は新規鉄道路線の敷設願いをたびたび却下した。 利根運河50年の歴史を運河収入からみると,高位安定の20年→大きく減少する10年→少し盛り返す10年→大きく凋落する10年と総括できる。そうして利根運河は1941(昭和16)年,国有化され,その歴史に幕を閉じた。そうした歴史をたどった利根運河株式会社の経営を圧迫したのは,堤塘費,護岸費,川浚費など,運河維持管理費用である。運河開通直後の明治29年洪水に始まり,利根運河では度重なる洪水に悩まされた。発展する鉄道は利根運河にとって重要な競争相手ではあったことは確かであろうが,運河を運河として維持することの費用が,経営上大きな負担となった点も看過してはならない。いうなれば,洪水とそれに伴う運河補修費用という,「内なる敵」に負けた部分も大きいのである。
「雪の研究」シリーズ
  • 玉井 幸治
    2024 年67 巻6 号 p. 115-117
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    気候変動による様々な現象への影響予測と温暖化緩和策・適応策の重要性が広く認知されるようになって久しい。特に近年では極端気象現象時に激甚災害が頻発するようになってきており,その重要性はますます増している。2017年7月には九州北部で大量の流木を伴った土石流により死者行方不明者が42名にも達する災害が発生した。その後も,それぞれ80~200名を超える人命が失われた2018年7 月豪雨災害,2019年9 月の台風19号豪雨災害,2020年7 月豪雨災害など激甚災害が頻発していることから,気候変動が新たな局面に入ったとする報道も耳にするようになった。 気候変動による影響で「降雪量は減少して積雪期間が短くなる地域が多く,雪による災害は減少する」ように考える人は多いであろう。しかし実際には,短時間での大量降雪による高速道路や主要幹線での立ち往生が2020年以降も毎年のように発生している。また雪崩事故の報道も相変わらず耳にする。2022年12月には,新潟県中越地方と佐渡島,石川県能登地方にて発生した冠雪害により数万戸が停電し,孤立集落も発生した。このように気候変動が新たな局面に入ったと言われる近年においても,雪による災害は引き続き発生している。
  • 勝山 祐太
    2024 年67 巻6 号 p. 118-130
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    地球温暖化に伴う気温上昇により,日本においても積雪量の減少が予想されており,一部地域ではすでに積雪量の減少傾向が観測されている。積雪量の減少には,地域的な偏りや標高による違いが大きく,特に標高の低い地域では積雪量が大幅に減少すると予想されている。一方で,標高の高い地域では,必ずしも積雪量が減少するとは限らないことが指摘されている。しかし,使用される全球気候モデルの種類や地域によって将来予測の結果が異なり,不確実な予測である。そこで,Katsuyama ら(2017;2020)は北海道を対象にして積雪の地球温暖化影響について将来予測の不確実性を含めて詳細に調べた。本稿では,彼らの調査結果をレビューし,積雪の温暖化影響について解説した。
ニホンジカシリーズ
  • 山下 広
    2024 年67 巻6 号 p. 131-143
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    ニホンジカをはじめ野生鳥獣の生息域の広がりに伴い,深刻な農林業被害が全国で発生しており,森林被害面積もピークである平成26(2014)年には約7千ha に及ぶとともに,農業被害も深刻な状況となっている。 鳥獣被害対策として,「抜本的な鳥獣捕獲強化対策」を平成25(2013)年に策定し,ニホンジカ・イノシシの捕獲強化に努めてきたところ,個体数は減少しているものの,ニホンジカについては依然として高い水準にあり,引き続き捕獲強化を進めていく必要がある。 森林における鳥獣被害対策は,個体数管理,被害防止対策,生息環境管理を総合的に推進することとして,各種施策を講じている。
シリーズ:全国47都道府県土砂災害の歴史
  • 今村 隆正
    2024 年67 巻6 号 p. 144-159
    発行日: 2024/02/01
    公開日: 2025/08/02
    ジャーナル フリー
    大分県は,別府や湯布院などの世界的な観光地を有している。そして,その観光地を直撃するような地震災害(揺れによる家屋の倒壊)や津波災害が繰り返し発生していることは周知されている。しかし,過去の土砂災害についてはあまり知られていない。 本稿は,歴史資料(古文書,大分県史,市町村誌等)調査,ヒアリング調査,現地調査を基に,主に江戸時代以降に大分県で発生した,歴史に記録され,語り継がれる土砂災害の事例を調査した結果を整理したものである。
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