水利科学
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67 巻, 2 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • ─京都府木津川市山城試験地周辺を対象に─
    岡本 透
    2023 年67 巻2 号 p. 1-26
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    京都府木津川市山城町に位置するタワーフラックスサイトの一つである山城試験地を対象にして,インターネット上で公開されている図像資料を利用して,過去の山の景観を調べる方法を紹介する。最近の変化は,衛星画像をGoogle Earth Pro などを利用して確認する。第二次世界大戦前後頃までの変化は,地理院地図で公開されている年代別の空中写真を利用することで確認する。大正,明治時代までの変化は,「今昔マップon the web」などで公開されている旧版地形図の地図記号を読み取ることで確認する。合わせて,対象とする地域の旧版地形図の発行年と同じくらいの年代に撮影された写真を利用すると,当時の様子をより詳しく把握することができる。江戸時代の変化は,国立公文書館などが公開している国絵図のほか,さまざまな絵図を利用することで確認する。その結果,現在山城試験地周辺に見られるコナラが優占する森林は,江戸時代を通じてはげ山もしくは草山であったが,明治初期から継続して行われた近代的土木技術に基づく砂防事業の成果として成立したことを確認することができた。
  • 田所  正, 岡田  治, 渡辺  有, 辻本 哲郎
    2023 年67 巻2 号 p. 27-59
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    近年の豪雨災害の多発に伴い,河川水位の変動状況を迅速かつ的確に提供する必要性が高まっている。しかし,水位観測所は河川内の厳しい自然環境の中に置かれているため,異常値が含まれたデータを配信することが多い。このため本研究では,リアルタイムに異常値を検出するモデルを開発し,全国のテレメータ水位観測所を対象にデータ監視を行うためのシステム構築を行った。 モデルの開発は複数の手法で行い,近隣観測所を含めたデータ群の偏差を用いる「3σモデル」が,検証の結果高い精度を示した。併せてAI(深層学習)モデルの開発と検証を行ったが,優位な精度が得られなかったため「3σモデル」を正式に採用した。 現在では,リアルタイムデータを監視するシステムに「3σモデル」が組み込まれ,全国の水位観測所を対象にした異常値検出と早期復旧の実用に供されている。
  • ──洪水現象の分析
    末次  忠司
    2023 年67 巻2 号 p. 60-82
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    近年水害が激甚化していると言われる。この水害を引き起こす豪雨や洪水は同じ河川流域でも,その時の状況により特性が異なる場合がある。こうした豪雨・洪水に影響する河道特性や流域特性を知っておくことは,河道計画の策定にとって重要であるし,防災・減災対策を実施する場合にも有効な手段となる。本報では,実際の豪雨や洪水現象から見て,豪雨(時空間分布など)が洪水や水害におよぼす影響,河床勾配や川幅,河道形状(狭窄部,分合流)などの河道特性が洪水(洪水流量,洪水位)におよぼす影響について分析するとともに,洪水波の挙動の特徴,河道の上下流区間ごとの洪水位に関する特徴と特性について分析した結果を解説している。
  • 佐藤 博文
    2023 年67 巻2 号 p. 83-98
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    近年,豪雨による災害が激甚化,頻発化している状況を踏まえ,集水域から氾濫域にわたる流域のあらゆる関係者が協働して治水対策を行う「流域治水」を推進するための取組みが全国各地で進められており,熊本県においても,令和2 年7 月豪雨災害からの復旧・復興への対策として,自然環境との共生を図りながら,流域全体の総合力で安全・安心を実現する「緑の流域治水」の考え方のもと,様々な取組みを進めているところである。 この取組みに資するため,県の南部に位置する球磨地域で発生した農業用水路及び農業用ダムに大量の土砂が流れ込むことによる浸水被害への対応として,今後の被害防止を検討するための検討委員会を設置し,森林域からの土砂移動形態を調査するとともに,関係部局連携による土砂流出抑止対策の取組みを行った。
  • 有田  貴洋, 岸畑  明宏, 筒井 和男, 稲田  健二, 森 要, 佐藤  純子
    2023 年67 巻2 号 p. 99-111
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    平成23(2011)年の東日本大震災や紀伊半島大水害を契機に防災教育の重要性が強く認識され,正しい知識と理解及び避難行動に関する教育が始まっている。特に小学生は将来防災の担い手となるため,和歌山県土砂災害啓発センターでは防災学習に積極的に取り組み,地域の特性を取り入れた教材作りを行っている。 さて,和歌山県では過去に歴史的な大規模土砂災害が繰り返し発生し,各地には石碑等の災害伝承碑や災害記録が残っている。一方で,西日本豪雨で大きな被害を出したある地域では,関心を持って碑文を読んでいなかったという住民の声が聞かれるなど,災害伝承碑等が十分に活かされていないのが現状である。過去の災害を風化させることなく後世に伝えることで,過去の災害から学び備え,防災学習をはじめとする地域の防災力を高めることが重要であると考える。 そこで,和歌山県PR キャラクターである「きいちゃん」を用いた災害伝承碑等を紹介する動画を制作し,過去の災害を知る動機付けとすることで,防災学習をはじめとする地域の防災力を高める方法について検討したので報告する。
「後世に伝えるべき治山」60選シリーズ
  • 高森  好文
    2023 年67 巻2 号 p. 112-123
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    長崎県の島原半島に位置する眉山は過去に山体の6 分の1 が崩壊し,急峻な崩壊面における剝離が著しく進行している。 大正3 年(1914年)の豪雨災害を受け,大正5 年から国による直轄治山事業が開始され,第二次世界大戦による中断をはさみ昭和23年(1948年)から現在まで百有余年の間治山事業を継続している。 眉山の直下には保全対象である島原市街地がひかえており,平成3 年(1991年)の雲仙岳噴火災害の際には,火砕流からの盾となり島原市街地を守った。 また,この眉山は,湧水と温泉の街「島原」のシンボルとして,古くから市民に親しまれている。 今回は“日本三大難山の一”,“眉山を見ずして九州の治山を語ることなかれ”と言われるほどの治山事業の難所「眉山の治山」について紹介する。
連載論文
  • 山口  晴幸, 岡山  伸吾
    2023 年67 巻2 号 p. 124-158
    発行日: 2023/06/01
    公開日: 2025/07/10
    ジャーナル フリー
    近年,魚類や貝類などの海洋生物の体内からマイクロプラスチックと呼ばれる大きさ5 mm 以下の微小プラスチックの検出報告が増えつつある。微小な大きさ故に,一旦,自然界に流出したマイクロプラスチックの回収・除去は絶望的であると同時に,有害化学物質を含有・吸着していることで,海洋生物の摂食による海洋生態系への汚染リスクが拡大し,最終的には,食物連鎖を介してブーメランのように我々に戻ってくる危険性を孕んでいる(筆者はこれをブーメラン汚染と称す)。そのためマイクロプラスチックなどの微小プラスチックは海洋生態系にとって深刻なダメージをもたらす脅威となることから,世界的に甚大な海洋・沿岸水域の汚染因子として警告が発せられている。 本稿では,まず,マイクロプラスチックの供給源である海洋廃プラスチックの海岸・沿岸水域での漂着実態やその特徴などについてグローバル・広域的に解説し,世界的に問われているプラスチック廃棄物の軽減・削減対策等の現状・動向や廃プラスチックによる海洋・沿岸水域への汚染対策に関する取り組み・課題などについて論究している。 特に,20年以上に亘る長年の沖縄島嶼での調査・研究成果を踏まえ,下記の事項等について詳述している。 ①表示されている文字等から中国,韓国,台湾など近隣アジア諸国からとみられる越境ゴミを含む海洋ゴミの大量漂着が海岸・沿岸水域の甚大な自然破壊をもたらしている実態を明らかにし,深刻度を増す外来廃プラスチック等の越境ゴミに対する海岸・沿岸水域への国策的対応強化の重要性について。 ②廃プラスチックに加え,医療ゴミや管球類(電球・蛍光灯管・水銀ランプ)ゴミをはじめ,廃油ボール,有毒液体の残存する廃ポリタンク,ドラム缶や電化品(冷蔵庫・テレビなど)などの危険で有害な海洋ゴミが大量に漂着を繰り返している実態を明らかにし,海岸・沿岸水域の自然環境に及ぼす有害リスクの甚大性について。 ③沖縄島嶼の中でも最も野趣豊かな島嶼とされる西表島(2021年7 月26日世界自然遺産登録)のマングローブ湿地水域を埋め尽くす海洋ゴミの深刻な汚染実態と,棲息・繁茂する海浜動植物生態系に与えるダメージリスクについて。 ④蓄積・山積する海洋ゴミによる防潮・防風林等の海岸樹木の折損・立ち枯れと,大型流木の大量漂着による海岸・沿岸植生域の衰退・荒廃リスクについて。 ⑤太平洋岸から流出漂流した我が国の海洋漂着ゴミによる太平洋上の他国の島嶼海岸への影響リスクの実態把握と軽減・抑制対策の検討について。 上述したように,近年では,廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の深刻化に伴い,劣化・破砕したマイクロプラスチックなどの微小プラスチックの海洋生物による摂食が鮮明化しつつある。食物連鎖を介した海洋生態系への影響リスクが危惧されていることから,海岸・沿岸水域に漂着した国籍(生産国)・タイプ(種類等)の異なる,様々な漁具類・容器類などの海洋廃プラスチックを対象に主要化学成分についての種々の成分分析を試みることで,重金属類等の有害元素の含有・溶出性に関して定量的に明らかにするとともに,摂食による微小プラスチックの有害リスクについて科学的に検証している。 さらに,筆者はこれまで長年,深刻化する廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の地球規模的な実情に危機感を抱き,マイクロプラスチックを含む微小プラスチックの砂浜海岸での漂着・混在状況を定量的に把握評価するための全国的な実態調査にも取り組んできた。 ここでは,2016年10月から2018年6 月にかけて,相模湾,東京湾,南外房沿岸の54か所の砂浜海岸(神奈川県37か所,東京都2 か所,千葉県15か所)で調査を実施し,関東沿岸水域の砂浜海岸に漂着・混在している大きさ5 mm 以下の微小プラスチック「海岸マイクロプラスチック」の現存量の実態や,それを構成している主要な素材の特徴・状況などについて詳細に解説している。 また,海岸マイクロプラスチックの緻密な実態分析や,関東沿岸水域とは異なり,近隣アジア諸国からのものを含む廃プラスチックの大量漂着が長年繰り返されている沖縄島嶼での調査データとの比較検証を通して,マイクロプラスチックの主要な素材はレジンペレット樹脂粒子,プラスチック微細片,発泡スチロール微細片の3 素材で構成されていることを明らかにしている。だが,それらの素材の構成割合には海岸・沿岸水域間で偏重・特異性が認められることから,検出マイクロプラスチックの詳細な素材分析は,マイクロプラスチックの素である廃プラスチックの発生・排出源の解明や軽減・防止対策に有益な示唆を与えることを指摘している。 なお,洋上漂流や海底沈積したマイクロプラスチックはいうまでもないことであるが,海岸・沿岸水域に漂着・混在したマイクロプラスチックを含めた微小プラスチックの回収・除去すら,殆ど絶望的で不可能に近い作業となる。廃プラスチックを含めた海洋漂着ゴミの水際対策としては,何よりも海岸放置・停滞を許さない迅速,且つ持続的な清掃活動に基づいた海岸・沿岸水域の管理保全システムを,島嶼・過疎地を問わず全国津々浦々に如何に構築するかということが,マイクロプラスチックを含めた海洋漂着ゴミの軽減・抑制対策にとって最も重要で効果的な施策であることを,長年の調査成果から得られた最大の教訓として強調している。 そのためにも沖縄島嶼をはじめ日本海沿岸・離島などのように,大量漂着を繰り返す海洋ゴミが島嶼・沿岸水域の行政組織・住民など(NGO,NPO,学校,個人など)による清掃活動の限界を遥かに超え,放置・停滞を余儀なくされ,深刻な海岸・沿岸水系破壊がもたらされている地域においては,“特定監視海岸域の設定”や“海洋漂着ゴミ対策を主眼とした専属組織の立ち上げ”など,国策として積極的に対応・支援するための強化策の必要性について提言している。
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