水利科学
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67 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
一般論文
  • ─河川水量と堆積土砂に注目して─
    梶原 健嗣
    2023 年67 巻3 号 p. 1-39
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    都市は,生産・消費そして廃棄の過程をその外部に頼らざるを得ない。その意味で物流の整備は,都市が都市として存続するうえで,不可欠の事項である。近世物流の中心は海路・河川を連携した舟運であり,江戸は舟運によって支えられた都市であった。 その観点からすれば,利根川水系の河道史は,もっと舟運に注目する形で考察されてよい。この時,舟運機能の阻害要因である河川水量や土砂堆積の問題は,重大な考察事項となるはずである。だが,その点に関する考察は,流路の変遷史に対して二次的な問題とされてきたように思われる。 利根川水系の改変は,17世紀とりわけ寛永年間(1624~44)に始まる。仙台藩をはじめとする東北諸藩の廻米需要が,その背景である。利根川をḪ航する舟運にとって,常陸川上流部の河川水量は大きな課題・障害であり,鬼怒川の付け替えをはじめとする利根川水系の改変は,江戸を都市として成立させる物流機構の整備にとって不可欠だった。 だがそうして改変された利根川水系も,18世紀には洪水のたびに土砂が堆積し,浅瀬が生じてくる。その点を克服するため艀下輸送が生み出され,他方,行徳みち(木下街道)をはじめとする陸路も整備された。そうしたなか,1783(天明3)年に浅間山が大噴火する。この噴火以後,利根川水系で洪水は頻発化するようになる。とりわけ1786(天明6 )年には,利根川治水の要である中条堤や権現堂堤も決壊した。利根川の河床はさらに上昇し,利根川舟運は,一層浅瀬障害に悩まされることになった。
  • 末次 忠司
    2023 年67 巻3 号 p. 40-68
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    水利科学の既報であるNo. 381,382,384の計3回にわたって,「河川地形論と川の見方」について論述してきた。そのなかで,マクロな河川地形,河川地形の構成や成り立ち,地形変化や土砂特性・河床変動特性などを,事例を踏まえて,分かりやすく解説できたと考えている。しかし,河川形成に関係するマクロ地形,マクロ地形の河川への影響については十分書ききれておらず,必ずしも地形論としての河川地形形成現象を掘り下げて説明できた内容ではなかった。そこで,本報では日本列島の地形形成や山地形成をはじめ,大規模地形変化,海水準変化・断層運動の河川(地形)への影響,地形と河川との関係などに関して,地球科学や地学(マクロ地形)の視点を踏まえた河川地形論を展開した。大局的な観点から河道の挙動を見る際の参考となるよう,関連する事項をとりまとめた。これまであまり触れてこなかった地震や断層についても記述しているので,これから地形や地学を勉強したいと思っている人の参考にもなると思われる。
  • 岩村  公暁
    2023 年67 巻3 号 p. 69-79
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    治山事業施工地においてクヌギを植栽したところ,ノウサギによる主軸切断被害が確認された。崩壊地を速やかに健全な森林へと復旧するため,ノウサギ被害の防止を図ることは非常に重要である。そこで,今回4 つの対策(①ツリーシェルター設置,②忌避剤散布,③ビニルテープ設置,④割竹設置)について,調査・検討を行った。その結果,どの対策も被害防止効果を確認することができたが,特にツリーシェルター設置,忌避剤散布,割竹設置の被害防止効果が高い結果となった。また,各対策についてはコストが異なり,最終的な撤去の問題,使用条件が限られるなど様々なメリットやデメリットがあることが分かった。このことから,現地の状況等に応じて適切な対策を検討する必要があると考えられる。
  • 村上  哲生
    2023 年67 巻3 号 p. 80-92
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    名古屋を起点とし中山道に至る木曽街道(楽田追分・土田宿間)の給水施設について調査した。宿場では井戸が利用されていたものの,峠越えでは,流量が乏しく,水質も良好とはいえない滲出水に頼っていた。滲出水を集めた細流は,石材で護岸され,石段沿いに水に接近する構造となっていた。流量や石段の規模からは,荷馬に給水する余裕はなく,人の利用のみを目的とした施設であったと思われる。木曽街道は善光寺街道との競合の結果,すでに江戸末期には衰退していたが,これには名古屋に至る両街道の距離や勾配だけの問題ではなく,往来する人馬への水の供給能力の差が関係している可能性がある。街道の衰退にもかかわらず,水場が保存されてきたのは,尾張藩管理時代の掃除丁場村々の制度だけではなく,地域の水場としても重要であり,藩管理が終了した以降も清掃や補修が継続されていたためと考えられる。
海岸林シリーズ
  • ~民国共通した管理経営方針策定に向けて~
    宮﨑  怜
    2023 年67 巻3 号 p. 93-104
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    本研究は,山形県庄内海岸林において民有林と国有林(以下,「民国」と表記する)で異なっていた海岸林の維持・管理施業を一元化するため,民国共通した管理指針の策定に向け,1 .民国で方法の異なるまたは見直しが必要な作業種を明らかにすること,2 .今後の課題及び具体的な対応について整理すること,3 .特に乖離が大きかった植栽本数について,民国共通した施業実施基準の作成及びその精査を行うことを目的としたものである。関係者との議論により,民国における現行施業の差異と一元化に向けた今後の方針を検討した。一元化に向けては,環境の違いなどから明確な基準の導入が重要であることが考えられた。特に乖離の大きかった植栽本数については,植栽環境を反映した新たな施業基準の試作と,それに対応する風速調査及び苗木の生育調査を行った。調査の結果,高密度植栽を行っていた前線部においても,人工砂丘や犠牲林等の効果で生育環境が改善されていることが示唆されたため,共通の基準としての可能性を示すことができた。今後は,その他の施業における一元化に向けた検討や調査方法の精査を継続していく。
  • ─山田町浦の浜地区における初回本数調整伐の実施時期の検討事例─
    浅沼  光
    2023 年67 巻3 号 p. 105-112
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    平成23(2011)年3 月11日に発生した東日本大震災津波により,岩手県内にある全17地区の海岸防災林が消失したが,本県においては「早期の復旧(植栽)完了」を目指して取組を進めてきた結果,令和3(2021)年度末までに全ての海岸防災林において植栽が完了した。 今後は下刈後の「本数調整等の適切な保育管理」へ施業の重点を移行していく段階にあるものの,具体的な技術基準が不足しており,下刈後の本数調整の遅れが懸念される状況にある。 このような中,令和2(2020)年3 月に林野庁より海岸防災林における本数調整の目安を定めた「海岸防災林の保育管理のためのガイドライン(案)」が示されたことから,これを活用し,適期を逃さない海岸防災林の保育管理の計画手法について検討したものである。
連載論文
  • 山口  晴幸, 岡山  伸吾
    2023 年67 巻3 号 p. 113-155
    発行日: 2023/08/01
    公開日: 2025/07/17
    ジャーナル フリー
    近年,魚類や貝類などの海洋生物の体内からマイクロプラスチックと呼ばれる大きさ5 mm 以下の微小プラスチックの検出報告が増えつつある。微小な大きさ故に,一旦,自然界に流出したマイクロプラスチックの回収・除去は絶望的であると同時に,有害化学物質を含有・吸着していることで,海洋生物の摂食による海洋生態系への汚染リスクが拡大し,最終的には,食物連鎖を介してブーメランのように我々に戻ってくる危険性を孕んでいる(筆者はこれをブーメラン汚染と称す)。そのためマイクロプラスチックなどの微小プラスチックは海洋生態系にとって深刻なダメージをもたらす脅威となることから,世界的に甚大な海洋・沿岸水域の汚染因子として警告が発せられている。 本稿では,まず,マイクロプラスチックの供給源である海洋廃プラスチックの海岸・沿岸水域での漂着実態やその特徴などについてグローバル・広域的に解説し,世界的に問われているプラスチック廃棄物の軽減・削減対策等の現状・動向や廃プラスチックによる海洋・沿岸水域への汚染対策に関する取り組み・課題などについて論究している。 特に,20年以上に亘る長年の沖縄島嶼での調査・研究成果を踏まえ,下記の事項等について詳述している。 ①表示されている文字等から中国,韓国,台湾など近隣アジア諸国からとみられる越境ゴミを含む海洋ゴミの大量漂着が海岸・沿岸水域の甚大な自然破壊をもたらしている実態を明らかにし,深刻度を増す外来廃プラスチック等の越境ゴミに対する海岸・沿岸水域への国策的対応強化の重要性について。 ②廃プラスチックに加え,医療ゴミや管球類(電球・蛍光灯管・水銀ランプ)ゴミをはじめ,廃油ボール,有毒液体の残存する廃ポリタンク,ドラム缶や電化品(冷蔵庫・テレビなど)などの危険で有害な海洋ゴミが大量に漂着を繰り返している実態を明らかにし,海岸・沿岸水域の自然環境に及ぼす有害リスクの甚大性について。 ③沖縄島嶼の中でも最も野趣豊かな島嶼とされる西表島(2021年7 月26日世界自然遺産登録)のマングローブ湿地水域を埋め尽くす海洋ゴミの深刻な汚染実態と,棲息・繁茂する海浜動植物生態系に与えるダメージリスクについて。 ④蓄積・山積する海洋ゴミによる防潮・防風林等の海岸樹木の折損・立ち枯れと,大型流木の大量漂着による海岸・沿岸植生域の衰退・荒廃リスクについて。 ⑤太平洋岸から流出漂流した我が国の海洋漂着ゴミによる太平洋上の他国の島嶼海岸への影響リスクの実態把握と軽減・抑制対策の検討について。 上述したように,近年では,廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の深刻化に伴い,劣化・破砕したマイクロプラスチックなどの微小プラスチックの海洋生物による摂食が鮮明化しつつある。食物連鎖を介した海洋生態系への影響リスクが危惧されていることから,海岸・沿岸水域に漂着した国籍(生産国)・タイプ(種類等)の異なる,様々な漁具類・容器類などの海洋廃プラスチックを対象に主要化学成分についての種々の成分分析を試みることで,重金属類等の有害元素の含有・溶出性に関して定量的に明らかにするとともに,摂食による微小プラスチックの有害リスクについて科学的に検証している。 さらに,筆者はこれまで長年,深刻化する廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の地球規模的な実情に危機感を抱き,マイクロプラスチックを含む微小プラスチックの砂浜海岸での漂着・混在状況を定量的に把握評価するための全国的な実態調査にも取り組んできた。 ここでは,2016年10月から2018年6 月にかけて,相模湾,東京湾,南外房沿岸の54か所の砂浜海岸(神奈川県37か所,東京都2 か所,千葉県15か所)で調査を実施し,関東沿岸水域の砂浜海岸に漂着・混在している大きさ5 mm 以下の微小プラスチック「海岸マイクロプラスチック」の現存量の実態や,それを構成している主要な素材の特徴・状況などについて詳細に解説している。 また,海岸マイクロプラスチックの緻密な実態分析や,関東沿岸水域とは異なり,近隣アジア諸国からのものを含む廃プラスチックの大量漂着が長年繰り返されている沖縄島嶼での調査データとの比較検証を通して,マイクロプラスチックの主要な素材はレジンペレット樹脂粒子,プラスチック微細片,発泡スチロール微細片の3 素材で構成されていることを明らかにしている。だが,それらの素材の構成割合には海岸・沿岸水域間で偏重・特異性が認められることから,検出マイクロプラスチックの詳細な素材分析は,マイクロプラスチックの素である廃プラスチックの発生・排出源の解明や軽減・防止対策に有益な示唆を与えることを指摘している。 なお,洋上漂流や海底沈積したマイクロプラスチックはいうまでもないことであるが,海岸・沿岸水域に漂着・混在したマイクロプラスチックを含めた微小プラスチックの回収・除去すら,殆ど絶望的で不可能に近い作業となる。廃プラスチックを含めた海洋漂着ゴミの水際対策としては,何よりも海岸放置・停滞を許さない迅速,且つ持続的な清掃活動に基づいた海岸・沿岸水域の管理保全システムを,島嶼・過疎地を問わず全国津々浦々に如何に構築するかということが,マイクロプラスチックを含めた海洋漂着ゴミの軽減・抑制対策にとって最も重要で効果的な施策であることを,長年の調査成果から得られた最大の教訓として強調している。 そのためにも沖縄島嶼をはじめ日本海沿岸・離島などのように,大量漂着を繰り返す海洋ゴミが島嶼・沿岸水域の行政組織・住民など(NGO,NPO,学校,個人など)による清掃活動の限界を遥かに超え,放置・停滞を余儀なくされ,深刻な海岸・沿岸水系破壊がもたらされている地域においては,“特定監視海岸域の設定”や“海洋漂着ゴミ対策を主眼とした専属組織の立ち上げ”など,国策として積極的に対応・支援するための強化策の必要性について提言している。
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