水利科学
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67 巻, 4 号
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一般論文
  • 玉井  幸治, 後藤  義明
    2023 年67 巻4 号 p. 1-15
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2025/07/26
    ジャーナル フリー
    秋田県から熊本県にかけての広葉樹林17林分,スギ・ヒノキ林19林分において観測した林床面日射量に基づいて相対日射率を算出した。常緑樹のみで構成されている広葉樹林での相対日射率は,季節を通して4 ~ 6 %とほぼ一定であった。広葉樹林における月別相対日射率の最大値には,落葉樹を除外した常緑樹のみによる胸高断面積合計との間に高い相関が認められた。スギ・ヒノキ林における相対日射率は,胸高断面積合計が6 m2ha-1以下の新植地と50m2ha-1以上の林分ではそれぞれ,約47~86%と7 %未満であった。広葉樹林とスギ・ヒノキ林における相対日射率を比較すると,常緑樹のみによる胸高断面積合計が約15m2ha-1以下の林分の場合において,スギ・ヒノキ林では約37~86%と広葉樹林での約11~45%よりも大きかった。
  • ─複合災害の視点から水害を見る─
    末次  忠司
    2023 年67 巻4 号 p. 16-37
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2025/07/26
    ジャーナル フリー
    山梨県内には急流河川が多数あり,崩壊地・構造線・断層もあることから,古来より水害被害が多く,氾濫と土砂災害の複合災害を繰り返してきた。治水対策としての武田信玄による信玄堤や万力林は有名であり,明治以降も笛吹川・釜無川において河川改修が積極的に推進されてきた。本報では,今後全国的に水害の激甚化が進むのに対して,土砂・流木・氾濫の発生状況や土砂災害の影響要因を踏まえたうえで,山梨県内で過去に発生した大水害の実態(概要,個別災害)と洪水・土砂災害への対応(ハード,ソフト対策)を鑑みることにより,水害実態を明らかにするとともに,今後の水害対策の手掛かりを模索することを目的としている。
  • 小椋  佳
    2023 年67 巻4 号 p. 38-47
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2025/07/26
    ジャーナル フリー
    近年,UAV(無人航空機)で撮影した画像を用いた写真測量が広く普及している。福島県では,福島県県北農林事務所が画像解析ソフトや高精度(高額)な測量機材の導入状況に応じた複数モデルについて,山地災害発生現場における測量精度の比較検討を行っており,高精度(高額)な測量機材を使用しない場合でも(一般的なハンディGPS を使用),誤差3 ~ 4 m 程度の簡易写真測量が可能であることを報告している。そこで本検討では,近年注目を集めている安価で高精度なGNSS(衛星測位システム)受信機(DG-PRO1RWS〈ビズステーション社製〉)の導入や撮影条件(重複率・撮影角度等)を改善し,より精度の高いモデル作成を目的に検討を行った。その結果,撮影条件の改善やDG-PRO1RWS で取得した座標で補正( 1 点)することにより,誤差が1.0m 以下の簡易写真測量が可能だった。また,植生等の影響により上空から視認できず,写真測量では計測できない箇所もDG-PRO1RWS による補足測量(誤差0. 5m 程度)や既存の航空レーザ計測データを活用することで,斜面上部や下部の地形情報を精度よく取得可能で,山地災害発生時においてはこれらを組み合わせた測量成果が事業実施計画の策定に有効と考えられた。
シリーズ:全国47都道府県土砂災害の歴史
  • ─関東大震災から100年─
    今村  隆正
    2023 年67 巻4 号 p. 48-112
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2025/07/26
    ジャーナル フリー
    神奈川県は,大正関東地震(1923)の激しい揺れによって県内各地で大規模な土砂災害が多数発生した。この地震は,土砂災害の他にも,火災,家屋倒壊,列車脱線,津波などによるあらゆる災害を発生させ,歴史上稀に見る大災害であった。大正関東地震による災害を「関東大震災」という。 今年は関東大震災から100年目である。関東大震災は今までにも多くの研究者によって調査研究がされてきたが,今回改めて土砂災害に関する当時の資料や写真,地元伝承等を再調査するとともに,関東大震災以外の神奈川県における主な土砂災害についても,歴史資料(古文書,神奈川県史,市町村誌等)調査,空中写真判読調査,ヒアリング調査,石碑調査,現地調査を行い,主に江戸時代以降に神奈川県で発生した,歴史に記録され,語り継がれる土砂災害の事例を取りまとめた。
連載論文
  • 山口  晴幸, 岡山  伸吾
    2023 年67 巻4 号 p. 113-148
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2025/07/26
    ジャーナル フリー
    近年,魚類や貝類などの海洋生物の体内からマイクロプラスチックと呼ばれる大きさ5 mm 以下の微小プラスチックの検出報告が増えつつある。微小な大きさ故に,一旦,自然界に流出したマイクロプラスチックの回収・除去は絶望的であると同時に,有害化学物質を含有・吸着していることで,海洋生物の摂食による海洋生態系への汚染リスクが拡大し,最終的には,食物連鎖を介してブーメランのように我々に戻ってくる危険性を孕んでいる(筆者はこれをブーメラン汚染と称す)。そのためマイクロプラスチックなどの微小プラスチックは海洋生態系にとって深刻なダメージをもたらす脅威となることから,世界的に甚大な海洋・沿岸水域の汚染因子として警告が発せられている。 本稿では,まず,マイクロプラスチックの供給源である海洋廃プラスチックの海岸・沿岸水域での漂着実態やその特徴などについてグローバル・広域的に解説し,世界的に問われているプラスチック廃棄物の軽減・削減対策等の現状・動向や廃プラスチックによる海洋・沿岸水域への汚染対策に関する取り組み・課題などについて論究している。 特に,20年以上に亘る長年の沖縄島嶼での調査・研究成果を踏まえ,下記の事項等について詳述している。 ①表示されている文字等から中国,韓国,台湾など近隣アジア諸国からとみられる越境ゴミを含む海洋ゴミの大量漂着が海岸・沿岸水域の甚大な自然破壊をもたらしている実態を明らかにし,深刻度を増す外来廃プラスチック等の越境ゴミに対する海岸・沿岸水域への国策的対応強化の重要性について。 ②廃プラスチックに加え,医療ゴミや管球類(電球・蛍光灯管・水銀ランプ)ゴミをはじめ,廃油ボール,有毒液体の残存する廃ポリタンク,ドラム缶や電化品(冷蔵庫・テレビなど)などの危険で有害な海洋ゴミが大量に漂着を繰り返している実態を明らかにし,海岸・沿岸水域の自然環境に及ぼす有害リスクの甚大性について。 ③沖縄島嶼の中でも最も野趣豊かな島嶼とされる西表島(2021年7 月26日世界自然遺産登録)のマングローブ湿地水域を埋め尽くす海洋ゴミの深刻な汚染実態と,棲息・繁茂する海浜動植物生態系に与えるダメージリスクについて。 ④蓄積・山積する海洋ゴミによる防潮・防風林等の海岸樹木の折損・立ち枯れと,大型流木の大量漂着による海岸・沿岸植生域の衰退・荒廃リスクについて。 ⑤太平洋岸から流出漂流した我が国の海洋漂着ゴミによる太平洋上の他国の島嶼海岸への影響リスクの実態把握と軽減・抑制対策の検討について。 上述したように,近年では,廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の深刻化に伴い,劣化・破砕したマイクロプラスチックなどの微小プラスチックの海洋生物による摂食が鮮明化しつつある。食物連鎖を介した海洋生態系への影響リスクが危惧されていることから,海岸・沿岸水域に漂着した国籍(生産国)・タイプ(種類等)の異なる,様々な漁具類・容器類などの海洋廃プラスチックを対象に主要化学成分についての種々の成分分析を試みることで,重金属類等の有害元素の含有・溶出性に関して定量的に明らかにするとともに,摂食による微小プラスチックの有害リスクについて科学的に検証している。 さらに,筆者はこれまで長年,深刻化する廃プラスチックによる海洋・沿岸水域汚染の地球規模的な実情に危機感を抱き,マイクロプラスチックを含む微小プラスチックの砂浜海岸での漂着・混在状況を定量的に把握評価するための全国的な実態調査にも取り組んできた。 ここでは,2016年10月から2018年6 月にかけて,相模湾,東京湾,南外房沿岸の54か所の砂浜海岸(神奈川県37か所,東京都2 か所,千葉県15か所)で調査を実施し,関東沿岸水域の砂浜海岸に漂着・混在している大きさ5 mm 以下の微小プラスチック「海岸マイクロプラスチック」の現存量の実態や,それを構成している主要な素材の特徴・状況などについて詳細に解説している。 また,海岸マイクロプラスチックの緻密な実態分析や,関東沿岸水域とは異なり,近隣アジア諸国からのものを含む廃プラスチックの大量漂着が長年繰り返されている沖縄島嶼での調査データとの比較検証を通して,マイクロプラスチックの主要な素材はレジンペレット樹脂粒子,プラスチック微細片,発泡スチロール微細片の3 素材で構成されていることを明らかにしている。だが,それらの素材の構成割合には海岸・沿岸水域間で偏重・特異性が認められることから,検出マイクロプラスチックの詳細な素材分析は,マイクロプラスチックの素である廃プラスチックの発生・排出源の解明や軽減・防止対策に有益な示唆を与えることを指摘している。 なお,洋上漂流や海底沈積したマイクロプラスチックはいうまでもないことであるが,海岸・沿岸水域に漂着・混在したマイクロプラスチックを含めた微小プラスチックの回収・除去すら,殆ど絶望的で不可能に近い作業となる。廃プラスチックを含めた海洋漂着ゴミの水際対策としては,何よりも海岸放置・停滞を許さない迅速,且つ持続的な清掃活動に基づいた海岸・沿岸水域の管理保全システムを,島嶼・過疎地を問わず全国津々浦々に如何に構築するかということが,マイクロプラスチックを含めた海洋漂着ゴミの軽減・抑制対策にとって最も重要で効果的な施策であることを,長年の調査成果から得られた最大の教訓として強調している。 そのためにも沖縄島嶼をはじめ日本海沿岸・離島などのように,大量漂着を繰り返す海洋ゴミが島嶼・沿岸水域の行政組織・住民など(NGO,NPO,学校,個人など)による清掃活動の限界を遥かに超え,放置・停滞を余儀なくされ,深刻な海岸・沿岸水系破壊がもたらされている地域においては,“特定監視海岸域の設定”や“海洋漂着ゴミ対策を主眼とした専属組織の立ち上げ”など,国策として積極的に対応・支援するための強化策の必要性について提言している。
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