水利科学
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68 巻, 2 号
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一般論文
  • ~沖縄宮古・八重山諸島での現況調査~
    山口 晴幸
    2024 年68 巻2 号 p. 1-29
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2025/08/26
    ジャーナル フリー
    2021年8 月13日,小笠原諸島南硫黄島付近の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で放出された膨大な量の火山噴出物(主に軽石)の漂流・漂着が,日本列島の多くの沿岸水域や海浜環境に与えた深刻な影響の実態を取り上げて報告している。 本稿では,2022年春季,沖縄宮古・八重山諸島の広範な海岸・沿岸水域で実施した漂着軽石の現況調査に基づき,特に,サンゴ白砂浜,干潟・湿地水域等の海浜土壌における漂着的特徴や現存状況などについて論じている。さらに,貴重な観光資源である海岸線への景観的なリスクに加え,大量漂着した軽石が野趣豊かな動植物生態系を育む沿岸水域の水質・土壌等の自然環境に与える影響,リスクなどに関する考察を通し,主に下記の事項について言及している。 ①東京都小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」周辺の地勢状況を概説し,海底に没する「福徳岡ノ場」と,火山列島(硫黄列島)を形成している近接する硫黄島での火山地形や噴火活動・痕跡等の事例を提示し,海底火山「福徳岡ノ場」一円の活発な火山活動の実態などについて概述している。 ②海底火山「福徳岡ノ場」の爆発的な噴火によって噴出した膨大な量の軽石が,約1, 300km 遠方の琉球列島をはじめ,奄美諸島や伊豆諸島,相模湾・南房総半島などの関東沿岸域に漂流・漂着した時期・経緯について概説している。 ③沖縄宮古・八重山諸島(港内調査9 島20港,海岸調査10島89海岸,他に西表島の砂浜,マングローブ干潟・湿地,河川下流・河岸域など)で実施した主要な港湾や沿岸水域での現況調査を通し,踏査時点での沿岸水域での漂流・浮遊軽石や海岸域への漂着軽石の現存状況について詳述している。特に,砂浜海岸域では,漂着軽石の現存状況を「大量(ランクⅠ)」~「無い(ランクⅤ)」の5 段階に区分して評価し,サンゴ白砂浜を形成する海浜域の景観や自然環境に与える影響などについて論述している。 ④野趣豊かな西表島でのマングローブ干潟・湿地水域や河川の下流・河岸域の踏査を通し,水域・流域を覆い尽くす漂流・漂着軽石による水質・土壌環境や棲息・繁茂する稀少な動植物生態系への影響,リスクについて考察している。 ⑤回収撤去された大量の軽石の適切な保全管理や迅速な処理処分の重要性,沖合海域に沈降・沈積していると指摘される軽石や,干潟・湿地水域に漂流・漂着した軽石の自然環境に与える影響把握のための継続的なモニタリング調査の必要性など,沖縄島嶼沿岸水域の自然回復に向けて,早期に取り組むべき方策や検討事項,今後の課題などについて解説している。
  • 末次 忠司
    2024 年68 巻2 号 p. 30-66
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2025/08/26
    ジャーナル フリー
    国土の森林面積が67%,傾斜度15度以上(土石流の発生勾配)が48%という急峻な山地地形が多い日本では,毎年全国のどこかで土砂災害が発生している。1994年以降,土砂災害による死者・行方不明者は一旦減少したが,2011年以降死者・行方不明者数及び発生件数が再び増加している。土砂災害は洪水氾濫以上に威力が大きいため,災害が発生すると住民が死亡したり,家屋が流失・全半壊するリスクが大きい。更に被災規模が大きくなると,被害が集落全体におよび,集団移転しなければならない場合もある。本報では土砂災害(歴史的に見た大規模土砂災害,近年発生した土砂災害)による被災実態を明らかにするとともに,その発生要因(外力・傾斜度・地質の他,人為的要因も)や災害発生時の土砂の流動特性(時間的な流下・堆積)について言及した。また,土砂災害対策(ハード対策,ソフト対策),災害に遭遇した時の対応,救助・救出方法,土砂災害への対応(成功事例)まで含めて,土砂災害リスクに関する一連の事柄を網羅し,要点の解説を行った。
  • 饗庭 靖之
    2024 年68 巻2 号 p. 67-107
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2025/08/26
    ジャーナル フリー
    人が居住する空間としての街づくりから見たとき,土地所有権に基づく土地利用の第一の問題は,人間と森林で形成される生物の土地利用は,互いを排除し合うことであり,人間が有意義に利用している程度が低い土地については,人間以外の生命体によって成立する生態系のために,人間の利用の対象から自然に還すことが必要である。 第二の問題は,個々人が土地の利用,収益,処分を追求する結果,全体の土地利用として,人が居住する空間として不適合を起こすことであり,都市においては人の活動を放置すると,都市がスラム化することによって,個々の生活のための土地建物の利用が互いの土地建物の利用を妨害し,互いの生活に危険をもたらす。 以上の解決のためには,利用度の低い土地を森林に還していくシステムを作るとともに,自然保護と防災を実現する街づくりをするために,密集住宅地域を,緑地と高層住宅に改変する市街地再開発組合の活動が必要である。
「雪の研究」シリーズ
  • 宮下 彩奈
    2024 年68 巻2 号 p. 108-124
    発行日: 2024/06/01
    公開日: 2025/08/26
    ジャーナル フリー
    積雪が人工林や自然林に与える影響は大きいにも関わらず,雪によって木の幹がどれだけの力学的なストレスを受けているのか野外で実測した例はほとんどない。積雪期間中,多雪地山地に成育する樹木の多くは雪圧によって幹の変形を強いられるが,このような幹の変形は樹木の成長や樹形とどのような関わりがあるのだろうか。また,積雪深や斜面傾斜等の条件が異なると雪による力学的ストレスはどう変化するだろうか。このような疑問に答えるため,Miyashita et al. (2020)はひずみゲージを用いた手法によって積雪期間中のブナの幹の曲げひずみを計測し,生木の状態での強度試験と合わせて,ブナの幹が積雪期間中に受ける力学的ストレス(ここでは曲げ応力)の大きさを推定した。これらの結果から,斜面傾斜および積雪深の異なる場所や,個体サイズによる違いを明らかにした。本稿では彼らの調査内容を抜粋して紹介し,ブナの成長における雪の影響について解説する。
シリーズ:全国47都道府県土砂災害の歴史
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