2021年8 月13日,小笠原諸島南硫黄島付近の海底火山「福徳岡ノ場」の噴火で放出された膨大な量の火山噴出物(主に軽石)の漂流・漂着が,日本列島の多くの沿岸水域や海浜環境に与えた深刻な影響の実態を取り上げて報告している。
本稿では,2022年春季,沖縄宮古・八重山諸島の広範な海岸・沿岸水域で実施した漂着軽石の現況調査に基づき,特に,サンゴ白砂浜,干潟・湿地水域等の海浜土壌における漂着的特徴や現存状況などについて論じている。さらに,貴重な観光資源である海岸線への景観的なリスクに加え,大量漂着した軽石が野趣豊かな動植物生態系を育む沿岸水域の水質・土壌等の自然環境に与える影響,リスクなどに関する考察を通し,主に下記の事項について言及している。
①東京都小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」周辺の地勢状況を概説し,海底に没する「福徳岡ノ場」と,火山列島(硫黄列島)を形成している近接する硫黄島での火山地形や噴火活動・痕跡等の事例を提示し,海底火山「福徳岡ノ場」一円の活発な火山活動の実態などについて概述している。
②海底火山「福徳岡ノ場」の爆発的な噴火によって噴出した膨大な量の軽石が,約1, 300km 遠方の琉球列島をはじめ,奄美諸島や伊豆諸島,相模湾・南房総半島などの関東沿岸域に漂流・漂着した時期・経緯について概説している。
③沖縄宮古・八重山諸島(港内調査9 島20港,海岸調査10島89海岸,他に西表島の砂浜,マングローブ干潟・湿地,河川下流・河岸域など)で実施した主要な港湾や沿岸水域での現況調査を通し,踏査時点での沿岸水域での漂流・浮遊軽石や海岸域への漂着軽石の現存状況について詳述している。特に,砂浜海岸域では,漂着軽石の現存状況を「大量(ランクⅠ)」~「無い(ランクⅤ)」の5 段階に区分して評価し,サンゴ白砂浜を形成する海浜域の景観や自然環境に与える影響などについて論述している。
④野趣豊かな西表島でのマングローブ干潟・湿地水域や河川の下流・河岸域の踏査を通し,水域・流域を覆い尽くす漂流・漂着軽石による水質・土壌環境や棲息・繁茂する稀少な動植物生態系への影響,リスクについて考察している。
⑤回収撤去された大量の軽石の適切な保全管理や迅速な処理処分の重要性,沖合海域に沈降・沈積していると指摘される軽石や,干潟・湿地水域に漂流・漂着した軽石の自然環境に与える影響把握のための継続的なモニタリング調査の必要性など,沖縄島嶼沿岸水域の自然回復に向けて,早期に取り組むべき方策や検討事項,今後の課題などについて解説している。
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