水利科学
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最新号
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一般論文
  • ─今後の実践的な防災・減災に向けて─
    末次 忠司
    2025 年68 巻6 号 p. 1-37
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2026/02/01
    ジャーナル フリー
    災害や被害情報はメディアやネット情報により収集することは可能であるが,やはり現場に行かないと分からないことも多い。特に河川災害は自然の河川や洪水を対象としているため,その挙動や痕跡を現地で十分把握していないと,災害現象や発生原因を見誤ることがある。また,災害現場で見たり,感じたことが教訓となり,その後の防災・減災対策に生かされることもある。本報では,著者の災害現地調査27事例を対象に,特にそのうちの重要な16事例について,水害発生に至る経緯,これまで十分語られなかった災害実態・原因,水害を教訓とした「その後の対応策」,防災・減災のための研究などについて詳細に記述した。すなわち,現地調査をして,または調査結果をまとめる際に,今後の防災・減災のために書き残しておいた方が良いと思ったことを年代順に記述した。大和川の水害(1982. 8),東日本大震災(2011. 3)など,災害発生から期間をおいて行った現地調査は事例には含めていない。なお,水害被害の詳細な実態は既存の災害調査報告書や著者の論文等に記載されているので,そちらを参照されたい。
  • ─2014~2019年の豪雨で発生した5 地域15地質の例─
    秋田 寛己
    2025 年68 巻6 号 p. 38-64
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2026/02/01
    ジャーナル フリー
    本研究は,2014~2019年の豪雨で土砂災害が発生した日本の5 地域15地質を対象とし,災害前後のLP 地形データを用いて標高値の変化量を計算し,崩壊生産土砂量V を求めた。そして,V=αAγで表される崩壊生産土砂量推定式のパラメータα 値・γ 値を計算し(A は崩壊面積,α とγは係数),これらに及ぼす崩壊深や地質の影響を検討し,国内外で汎用的に使用されている既存研究(Guzzetti et al., 2009 ; Larsen et al., 2010)の値と比較した。その結果,α 値とγ 値には負の相関があり,崩壊面積に対する崩壊深の増加割合が大きくなるとγ 値が増大することが明らかになった。地質別に見ると,火成岩類は概ねα 値が大きく,γ 値が小さい傾向があり,崩壊面積によって崩壊深があまり変化しない崩壊形状であるためと考えられた。深成岩類と堆積岩類はα 値・γ 値が広範囲に分布していた。これらは,地質ごとに崩壊形状の分布特性が多様なためと考えられた。変成岩はα 値が小さく,γ 値が大きい傾向があり,崩壊面積に対する崩壊深の増加割合が大きい崩壊形状の分布特性を示唆していると考えられた。
  • 田中 健人, 石原 道秀, 横尾 啓介, 甲斐 達也, 山田 朋人
    2025 年68 巻6 号 p. 65-79
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2026/02/01
    ジャーナル フリー
    日本海に河口を持ち,下流末端部において南東から北西に向かって流下する石狩川では,塩淡二層流により塩水遡上が発生する。1988年に観測を開始して以来,2021年7月,最長のKP30.0km 付近まで塩水遡上が発生した。これまで塩水遡上が発生した1993年,2003年,2021年の各7 月はいずれも小雨であり南東風が卓越していた。2021年7月は,月平均で南東風が卓越していたが,7月16日から7月22日までの7日間は南東風が弱まっていたことが分かった。本研究では,この点に着目し,風の影響を考慮した一次元二層流モデルを構築し,感度分析を行なった。その結果,同時期に仮に南東風が卓越し続けた場合,塩水がKP40km 付近まで遡上し,KP28.0km の工業用水や千歳川下流部の上水の取水に影響を与えていた可能性が示唆された。
シリーズ:森林の防災減災機能と他の機能との両立を目指して
  • ─森林の斜面崩壊防止機能は発揮されたのか?─
    村上 亘, 大丸 裕武
    2025 年68 巻6 号 p. 80-92
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2026/02/01
    ジャーナル フリー
    平成29年7月九州北部豪雨において発生した斜面崩壊を調査対象とし,発生した斜面崩壊に対して,降水量(12時間雨量),地形(標高,傾斜,方位),地質,植生(林齢,樹種)の各要因が与えた影響について調査した。併せて,それぞれの要因項目の中でどの要因が斜面崩壊の発生に対して重要であったのかを機械学習のひとつであるランダムフォレストを用いて推定することで,斜面崩壊に対する,とくに森林の斜面崩壊防止機能の重要性について評価した。本災害においては,森林の斜面崩壊防止機能には限界があり,12時間雨量が500mm 以上の解析対象範囲では森林の効果は限定的であった。その一方で,11年生以上の森林では,12時間雨量で500mm 未満の降水量の解析対象範囲で斜面崩壊を抑制する機能を発揮した。林齢の影響は,今回の解析では降水量(12時間雨量),傾斜の次に斜面崩壊の発生要因として重要な要因であり,樹種の違いよりも林齢による影響の方が斜面崩壊に対する森林の抑制効果が大きいという結果となった。
「雪の研究」シリーズ
  • ─釜淵森林理水試験地の長期観測から明らかとなったこと─
    阿部 俊夫, 久保田 多余子, 野口 正二, 細田 育広
    2025 年68 巻6 号 p. 93-114
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2026/02/01
    ジャーナル フリー
    山形県にある釜淵森林理水試験地を対象に,長期データを用いて,春季の融雪流出に伐採が及ぼす影響を解析した。融雪流出量は,年最大積雪深が大きく,冬季と春季の平均気温が低い水年ほど多い傾向がみられた。融雪流出の開始日は春季平均気温が低い水年ほど遅く,終了日は年最大積雪深が大きく,春季平均気温が低い水年ほど遅い傾向がみられた。伐採後の変化を調べると,融雪流出量は増加し,融雪流出の開始は早まったが,苗木植栽から約30年で元に戻ることが明らかとなった。ピーク流量は,2号沢では伐採後に基準流域の約1.1倍に増加し,植栽から数十年で元に戻っていた。旬流出量は,伐採後,1月下旬から融雪流出期間の前半(4月上旬前後まで)にかけて増加したが,後半の流出量が減少することはなかった。現在,地球温暖化により気温上昇しており,今後,春季の融雪流出は減少すると予想される。水資源対策として,適切な森林整備を行うことも検討の価値があると考えられる。
海外情勢
  • ─政府所有地での居住者を事例として─
    山田 翔太, 田中 志歩
    2025 年68 巻6 号 p. 115-134
    発行日: 2025/02/01
    公開日: 2026/02/01
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,大土地所有世帯が存在しない地域おける村民の水利用やその変化を捕捉するとともに,水利用が変化する要因を特定することにあった。バングラデシュ南西沿岸部での現地調査の結果,大土地所有世帯が存在せず,土地も限られている地域では,各世帯が所有する池も小さい傾向にあり,井戸が主要な飲料水源として利用されていることが明らかとなった。このため,他の同国南西沿岸部農村での飲料水に関する開発援助では池の濾過などが中心であるのに対して,土地も限られている地域では井戸の掘削が実施される傾向にあった。加えて,水汲み労働は,他の同国南西沿岸部農村と同様に,村民にとって重大な問題であり,その軽減のために村民は利用する飲料水源を変更したり,飲料水源を自ら設置したりしていた。さらに,村民による水源利用の方法は,新たな水源の設置などの状況変化に伴って変化する可能性が指摘された。
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