日本水産学会誌
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66 巻, 6 号
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  • 貞方 勉
    2000 年 66 巻 6 号 p. 969-976
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    産卵期と幼生ふ出期およびその間の海深別の採集個体の年齢群を解析することにより, ホッコクアカエビの着底以降の海深別の分布と移動を調べ, これまでに得られた知見と合わせて本種の生活史を明らかにした。本種は浮遊幼生期を経て着底後, 成長にしたがって海深の深い方へ移動する。海深400-600mが交尾・産卵海域で, 主群は雄では3,4,5歳, 雌では6,8,10歳である。3-4月に産卵した抱卵個体は, 約10ヶ月の抱卵期間後の1-2月に海深200-300mに移動して幼生ふ出をおこなう。
  • 吉田 陽一, 中原 紘之, 藤田 裕子
    2000 年 66 巻 6 号 p. 977-983
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    Microcystis属4種(M. aeruginosa, M. wesenbergii, M. viridis, およびM. ichithyoblabe)によるアオコの発生がみられた, 琵琶湖沿岸の水域や各地の池沼等, 21水域(延56例)について, アオコの発生水域と同水域の水質諸要因との関係について調べた。前記4種が高密度に出現する水域の水質諸要因の特徴は, いずれもDIN : DIP比が40以下の低DIN : DIP比水域に出現するグループと, 同比が40以上の高DIN : DIP比水域に出現するグループとに大別され, 前者は後者に比し, DIN, (NO2-N+NO3-N) : NH4-N, DIN : DIP, やTN : TP比が低く, DIPやDOPが高いという傾向が強かった。また, 同一グループの4種の間でも出現水域の特徴に若干の差異がみられ, 特に低DIN : DIP比水域に出現するM. aeruginosaは, 両グループの内でも, WT, DON, TN, DIP, DOP, TP, TN×TP等が高く, (NO2-N+NO3-N) : NH4-NやDIN : DIP比が低い水域に出現する傾向が強かった。
  • 竹内 俊郎, 小林 孝幸, 清水 智仁, 関谷 幸生
    2000 年 66 巻 6 号 p. 984-992
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    ノコギリガザミ幼生におけるアルテミアの必要性と適正給餌時期および成長に及ぼすワムシとアルテミアに対する栄養強化の効果の違いについて, 各齢期の生残率, 各齢期への平均到達日数, 第1齢稚ガニの全甲幅長および餌料中の脂肪酸含量等から検討した。その結果, ノコギリガザミ幼生に, 第2齢もしくは第3齢ゾエア期からアルテミアを与えるのが望ましいと判断された。生残率および第1齢稚ガニの全甲幅長は, ワムシとアルテミアへのn-3高度不飽和酸(n-3HUFA)の栄養強化が影響していることが明らかになった。
  • 西川 哲也, 宮原 一隆, 長井 敏
    2000 年 66 巻 6 号 p. 993-998
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    室内培養実験の結果, Coscinodiscus wailesiiは広範囲の温度, 塩分条件で増殖が可能であり, 増殖速度は, 温度20∿25℃, 塩分20∿30の範囲で高い値を示し, 最大値は供試株4株の平均値で1.02 divisions d-1であった。播磨灘における塩分の変動範囲では, 本種は高い増殖速度を維持できると考えられた。また, 本種の増殖速度が高い値を示す温度の範囲は, 本種の秋季の増殖ピークである10,11月の現場海域の水温とよく一致した。しかし本種の増殖速度は, 5∿10℃の範囲で最大値の1/2以下に低下することから, 水温が10℃以下に低下する2∿3月には, 水温が増殖の制限因子として大きく作用していることが示唆された。
  • 澤 一雅, 工藤 孝也, 山岡 耕作
    2000 年 66 巻 6 号 p. 999-1005
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    2種類の人工生息場所への放流種苗マダイの蝟集状況を潜水調査した。Aタイプは幅50cm, 高さ15cmの黒色の長方形の網3枚から, BタイプはAタイプの長方形の網1枚と, 底を覆うように設置した50cm四方の網2枚より構成される。1998年7月21日に第一次放流として約3000個体(平均全長25.6mm)を, 7月28日に第二次放流として約1700個体(平均全長69.7mm)を放流した。放流個体は, 特に放流直後に人工生息場所周辺に蝟集し, BタイプをAタイプよりも多くの個体が利用した。これらの傾向は一次放流された小型個体で顕著であった。第二次放流個体に対しては, Bタイプはなわばり形成の基点の機能もはたした。
  • 小林 孝幸, 竹内 俊郎, 荒井 大介, 関谷 幸生
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1006-1013
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    アルテミア摂餌期におけるノコギリガザミ幼生へのエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の給餌適正量を明らかにすることを目的に, 各齢期の生残率, 平均到達日数, 第1齢稚ガニの全甲幅長および餌料中の脂肪酸含量等を検討した。その結果, ノコギリガザミ幼生は生残に対してEPAを強く要求し, 乾燥重量当り1.3∿2.5%程度必要であるものと推察された。また, DHAは第1齢稚ガニの全甲幅長を大きくすることに機能するが, 0.46%以上強化するとメガロパ幼生への変態に際し, 脱皮失敗によるへい死率の増加がみられることが明らかとなった。
  • 角南 靖夫, 平川 和正
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1014-1019
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    富山湾における主要カイアシ類Metridia pacificaの季節変動を予測するためにシミュレーションモデルを再構築した。富山湾におけるM. pacificaの成長速度, 孵化・発育時間と生息水温の測定値等を使用し, 本種の従来の成長モデルを改良した。さらに本種と同じカラノイダ目のAcartia clausiの既往資料を基に, 個体数に関するパラメータについての設定方法を検討して, 個体数モデルも改良した。これらの成長モデルと個体数モデルとの組み合わせから, 本種個体群現存量の季節変動をモデル化することを目的とした。M. pacificaのコペポダイトV期およびVI期(成体)は魚介類による捕食圧が高いと考え, それらの生残率を半分にすると, 本モデルは4月始めの本種の現存量(湿重量)のピークを再現することがわかった。
  • 笠井 久会, 石川 麻美, 堀 友花, 渡辺 研一, 吉水 守
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1020-1025
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    流水式海水電解装置を用い, 魚類病原細菌あるいはウイルスを懸濁した3%食塩水を直接電気分解して生成した次亜塩素酸による殺菌・不活化効果を検討すると共に飼育用水の殺菌効果も検討した。次亜塩素酸濃度0.07∿0.14mg/l, 1分間の処理で供試細菌が99.9%以上, 0.49∿0.58mg/l, 1分間の処理で供試ウイルスが99.99%以上不活化され, 市販の次亜塩素酸より高い殺菌効果を示し, 試薬特級NaClを電解した場合, 最も殺菌効果が高かった。飼育用濾過海水については1mg/l, 1分間の処理で99.99%以上の殺菌効果が得られた。
  • 舩津 保浩, 小長谷 史郎, 加藤 一郎, 竹島 文雄, 川崎 賢一, 井野 慎吾
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1026-1035
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    マルソウダ冷凍すり身を製造する際の加工残滓から調製した魚醤油(WS)と, その落し身から同様に調製した魚醤油(MMS)およびアジア産魚醤油の呈味成分を比較した。その結果, 遊離アミノ酸とペプチドの組成は試料によりかなり異なっていた。いずれの試料にもAMP, IMPおよびGMPは検出されなかった。また, WSとMMSは乳酸が, 魚露は酢酸が多かった。WSとMMSは他の試料よりもPが多く, Mgが少なかった。WSとMMSにはエリスリトール, アラビトール, マンニトールが, ナンプラとニョクマムにはスクロースが検出された。官能評価では, 魚露は塩味のみが強い不快な味と感じられたが, WS, MMSおよびニョクマムは, まろやかで味のバランスが調和されていた。
  • 舩津 保浩, 砂子 良治, 小長谷 史郎, 今井 徹, 川崎 賢一, 竹島 文雄
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1036-1045
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    マルソウダから調製した魚醤油(FMS)の呈味成分を, 国内産魚醤油(しょっつる(S), いかいしる, いわしいしる(IS))および大豆こいくち醤油(SS)と比較した。その結果, FMSは遊離アミノ酸やオリゴペプチド態アミノ酸総量が, 比較した全試料の中で最も多く, SSのそれらよりも多かった。全試料で, AMP, IMPおよびGMPは検出されなかった。FMSとSSで有機酸の総量は極めて高いが, その大部分は乳酸であった。FMSとSSはKとP含量が高く, Naが比較的少なかった。官能評価では, SとISでは塩味が強いが, FMSとSSでは, 塩味は強いとは感じられず, まろやかで味のバランスがとれていた。
  • 形浦 宏一, 小宮 真一, 小関 聡美, 布施 雅昭, 立野 芳明
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1046-1050
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    前報で, 優れた緑色の抽出液が得られるクロロフィル原料として塩蔵コンブが優れていることを示すとともに, その抽出液中に2つの緑色成分を見出し, クロロフィル分子のアロマーと推測した。本研究では, まず予測されるアロマーを合成し, 塩蔵コンブからの2成分とHPLCで比較した。次に, 単離した2成分と合成品のNMR, およびCDスペクトルを比較した。その結果, 上記の2成分は10-ヒドロキシクロロフィルαとその立体異性体と決定した。
  • 伊藤 光史, 赤羽 義章
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1051-1058
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    マサバを1週間塩漬にした後, 7ヶ月間糠床に漬けてへしこを製造し, 工程中の一般成分とエキス成分の変化を調べた。塩漬では, 食塩の急速な浸透に伴い, 魚肉は強く脱水した。この間に一部のタンパク質が流出したが, 脂質は保持, 濃縮された。糠漬中に, 魚肉の水分, 灰分, 脂質はやや減少したが, タンパク質はほとんど減少しなかった。塩漬と糠漬中にヒスチジンは激減したが, 他の遊離アミノ酸と低分子ペプチドが著増し, このことはへしこ特有の呈味に寄与すると考えられた。イノシン酸などのヌクレオチドは塩漬で激減し, 糠漬の初期にはほぼ消失した。有機酸は糠漬の初期まで減少し, その後大きく増加し, それに伴い魚肉のpHが大きく低下した。
  • 嶌本 淳司, 長谷川 薫, 藤井 大樹, 河野 澄夫
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1059-1065
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    ビンナガの脂肪分布の従来法による測定, および近赤外分光法による魚体全体の脂肪の非破壊測定を行った。魚体中央の脂肪含量は, 魚体全体のそれと高い相関を有した。魚体中央部でインタラクタンス方式により測定したスペクトルの2次微分値と魚体全体の脂肪含量を基に重回帰分析を行った結果, 第1波長として926nmの脂肪の吸収バンドを含む良好な検量線が得られた。そのRPD値は2.2であった。近赤外分光法は, インタラクタンスプローブ用いて, 魚体中央部のスペクトルを測定することにより, ビンナガ(全体)の脂肪含量を測定する可能性を有していると結論づけられた。
  • 渡辺 研一, 吉水 守
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1066-1067
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    マツカワ受精卵の効果的で安全な消毒法について検討した。有効ヨウ素濃度50mg/lのヨード液で受精卵を15分間消毒しても, ふ化仔魚からPCRによりVNNウイルス遺伝子が検出されたが, 0.5mg/l濃度のオキシダントを含むオゾン処理海水で5分間消毒した場合は検出されなかった。受精卵の発生段階ごとにオゾン処理海水に対する感受性を比較した。モルラ期から嚢胚期では高いふ化率が得られ, モルラ期に0.5mg/l濃度のオキシダント海水に10分間浸漬する方法が, マツカワ受精卵のVNNウイルス対策に有効な消毒法と考えられた。
  • 渡辺 研一, 南 卓志
    2000 年 66 巻 6 号 p. 1068-1069
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2008/02/01
    ジャーナル フリー
    人工授精および水槽内における自然産卵によって得られた受精卵から, 仔魚を経て成熟に至るまで水槽内で飼育したマツカワ40尾を用いて孕卵数を推定した。有眼側および無眼側の卵巣の単位重量当たりの卵数は, それぞれ2,189粒/g, 2,331粒/gであり, 1個体当たりの孕卵数は326,000∿1,247,000粒(平均578,000粒)と推定された。1尾当たりの孕卵数と全長との間には指数関数関係が認められ, 全長470∿665mmの範囲では, 全長が大きいほど孕卵数が多いという結果が得られた。
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