日本水産学会誌
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71 巻, 1 号
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報文
  • 長井 輝美, 大谷 哲, 斎藤 大樹, 前川 真吾, 井上 邦夫, 荒井 克俊, 山羽 悦郎
    2005 年 71 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    ゼブラフィッシュを用い,胚盤移植を試み,同法の発生への影響および生殖系列キメラの作出への有効性を検討した。胞胚期の胚盤全体,胚盤上部,または胚盤下部を他胚の動物極へ移植した。全ての移植群で,正常な頭部・背方構造を持つ個体が得られたが,胚盤下部を移植した胚では頭部構造を欠く個体の出現頻度が高かった。胚盤全体または胚盤下部を移植した胚から発生した多くの個体(10/11)の生殖隆起にドナー胚盤に由来する PGCs が認められ,本種での生殖系列キメラ個体の作出に,胚盤移植法が有効であることが明らかとなった。
  • 鈴木 誉士, 永野 元, 小林 徹, 上野 紘一
    2005 年 71 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    琵琶湖産フナ仔稚魚の種および亜種判別に有効な RAPD マーカーを検討し,ヨシ帯に出現するフナ仔稚魚の種組成,季節変化およびヨシ帯内の分布を調査した。RAPD マーカーによってフナ仔稚魚を種•亜種レベルで明確に判別することができた。計 9 回の調査(4 月~7 月)で合計 973 個体の仔稚魚が採集された。1 回目の調査では 868 個体の主に上屈前期仔魚が採集され,ゲンゴロウブナ(G)およびギンブナ(H)はヨシ帯一面に,ニゴロブナ(N)は中央部から岸近くに出現した。それ以降の調査では,個体数は激減し,上屈期および上屈後期仔魚が岸近くに分布しており,その多くが N であった。
  • 渡部 俊広
    2005 年 71 巻 1 号 p. 16-23
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    隠岐諸島西方の海域で,商業ベニズワイガニ籠と円形脱出口をつけた商業籠による長期浸漬(約 6 ヶ月間)漁獲試験を行い,逸失時の商業籠の漁獲サイズ選択性を推定した.選択性曲線は,多項分布の尤度を用いた SELECT モデルによって求めた.商業籠の 50% 選択甲幅は 100.8 mm,選択性スパンは 3.4 mm であった.甲幅 99 mm 以下の個体は,商業籠から脱出できるため,雌についてはゴーストフィッシングが生じる可能性はない.しかし,籠に入った甲幅 103 mm 以上の雄については,籠内に保持されたまま死亡する可能性がある.
  • 斎浦 耕二, 東海 正
    2005 年 71 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    徳島県でカタクチイワシシラスを漁獲する船曳網のコッドエンドに使用される 260 経モジ網は細かく目合拡大が必要である。260 と 240, 220 経モジ網より作成した口径 1.3 m,全長 5.7 m の円錐形ネットにカバーネットを装着し,網目選択性を求めた。目詰まりのない状態で 240 と 220 経の l50 値は,全長 10.5~12.5 と 11.0~14.3 mm だが,漁獲が多いと目詰まりして l50 値は 10 mm 以下となる。船曳網のコッドエンド末端部は口径 1.3 m,全長 16 m の目詰まりし難い円柱形である。そのため,実際の操業での目詰まり状況を把握し,適正な目合を決定する必要がある。
  • 胡 夫祥, 志賀 未知瑠, 横田 耕介, 塩出 大輔, 東海 正, 酒井 久治, 有元 貴文
    2005 年 71 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    海鳥類の偶発的捕獲の回避を目的として,まぐろ延縄漁船現用の枝縄 30 数種類を調査し,その内の 10 種類と,釣元素材,釣元先端へ付加する錘重量を変えた枝縄の投縄後の釣針沈降特性を調べた。現用の枝縄における深度 10 m までの釣針平均沈降速度は 0.16 m/s~0.23 m/s であり,鳥嚇しラインの有効範囲である船尾から 150 m 以内で釣針が深度 10 m 以上に沈むものはなかった。一方,釣針の沈降速度は釣元にフロロカーボンを使用した場合では約 1.6 倍に,釣元先端に 45 gw の錘を付加した場合では約 2 倍に改善された。
  • 山下 秀幸
    2005 年 71 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    東シナ海でアマダイ類を対象とする底延縄と立延縄について,水揚物の銘柄組成を尤度比検定で比較した。また,聞取りにより操業漁場を調査した。さらに,両漁法を用いた操業実験による漁獲物体長組成を,尤度比検定により漁法別と操業水域別とで比較した。その結果,水揚物には漁法による差がみられたが,それは漁法による漁獲特性の違いによるものではなく,両者の漁場が異なっていることに起因することが示唆された。今後,水域別の漁獲物体長組成の特徴をより明確にすることにより,本漁業の資源管理の推進に資することが期待される。
  • 水谷 高教, 原田 泰志, 山下 秀幸, 山本 圭介, 依田 真里, 檜山 義明
    2005 年 71 巻 1 号 p. 44-53
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    着底トロール調査船曳網による漁獲物の昼夜差を東シナ海の小海域内の 8 か所での昼夜それぞれ 1 回,計 16 回の曳網結果から検討した。漁獲量,個体数は,ケンサキイカを除くイカ類等では夜に多く,キダイ,ケンサキイカ等では昼に多かった。体長はマアジ,ヒラツメガニ♀で夜に大きく,サラサハギ,ヒラツメガニ♂では昼に大きかったが,いずれの種でも昼夜の差は大きくなかった。平均出現種数は夜に多かった。また,昼夜半々の回数曳網することにより,同一の曳網回数でより多くの種をとらえられる可能性が示された。
  • KIM IN-OK, JO TAE-HYUN, 朴 倉斗, 東海 正
    2005 年 71 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    コタマガイに対する桁漁具袋網の網目選択性を求めるために,目合 24, 30, 41, 47 mm の袋網に目合 13 mm のカバーネットを装着した操業実験を行った。目合 mに対する殻長 l の比 R(=l/m) に対する網目選択性曲線のマスターカーブは r(R)=1/[1+exp (-8.63R+5.13)] で求められた。また,現在,韓国の桁網漁船の船上で用いられている棒間隔 12.5 mm のフルイ装置の 50% 選択殻幅は棒間隔とほぼ等しい 12.7 mm であった。この船上篩装置で商品サイズ殻長 35 mm 以上を選別するには棒間隔の拡大が必要である。この出荷サイズ未満のコタマガイを曳網中に網外に出す方法を,袋網の目合拡大とその他の方法を含めて検討した。
  • 本多 直人, 藤田 薫
    2005 年 71 巻 1 号 p. 60-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    刺網によりコクチバスを効率的に漁獲して在来魚の混獲を軽減するために,コクチバスと在来魚が刺網に羅網しやすい時間帯を青木湖で調べた。魚の羅網時に生じる網の動きを時系列で記録できる振動検知器を底刺網に取り付けて,個体毎に羅網時刻を測定した。コクチバスの全漁獲尾数の 86% が日出から日没に羅網し,青木湖に生息する在来魚のフナは 92%,コイは 91% が日没から日出に羅網した。日出から日没に刺網を設置することにより,コクチバスを漁獲し,フナやコイの混獲を減らすことが可能である。
  • 吉岡 立仁, 荻野目 望, 内田 直行
    2005 年 71 巻 1 号 p. 68-73
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    一本釣カツオおよびまき網カツオを原料魚として製造したかつお節の品質を,製造中の粉末の発生量,製品の嵩,腰の強さ,およびイノシン酸含量を指標として比較した。また,筋組織を組織化学的に分析した。その結果,一本釣カツオを原料魚とした節は,いずれの品質指標においても有意に優れており,エオシン陽性成分の筋細胞内残留率が有意に高かった。この細胞内残留率と品質指標との間に関連性が認められ,かつお節製品組織の筋細胞内に残留するエオシン陽性成分の存在状態は,かつお節の品質を決定する大きな因子であることが示唆された。
  • 雪野 繼代, 林 雅弘, 井上 良計, 今村 純子, 長野 直樹, 村田 寿
    2005 年 71 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2005年
    公開日: 2005/06/08
    ジャーナル フリー
    機能性食品として広く利用されているスピルリナについて,高付加価値化を目的としてドコサヘキサエン酸(DHA)の富化を検討した。スピルリナ培養液に各種 DHA 源を添加したところ,魚油や DHA エチルエステルは細胞内に取り込まれなかったが,遊離脂肪酸型 DHA は細胞内に取り込まれ,総脂肪酸中の DHA 含有率は 70.2% に達した。細胞内の DHA は主としてモノグリセリド,ジグリセリドを中心とする中性脂質に取り込まれていたが,少量の遊離脂肪酸が残存した。DHA の一部はグリセロ糖脂質やリン脂質中にも取り込まれていた。
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