イカ釣り漁業へのLED集魚灯の導入を検討するために,長崎県壱岐北部海域において,沿岸の小型イカ釣り船にLED集魚灯パネルを装備して,夏季のケンサキイカと冬季のスルメイカを対象とした漁獲試験を行った。LED集魚灯船の漁獲量は,ケンサキイカとスルメイカともに対照としたメタルハライド船上灯船よりも低くなった。一般化線形モデルの解析結果から,漁獲量は集魚灯の影響を強く受け,ケンサキイカの場合には,スルメイカよりも少ない電力で漁獲が期待され,LED集魚灯の導入の可能性はスルメイカよりも高いと考えられた。
2007-2009漁期年(12月~翌年3月)に,沖合底びき網漁船が宮城県~茨城県海域で漁獲したズワイガニ雄のサイズ別最終脱皮割合と甲幅組成を調べた。甲幅120 mm以上の個体では全て最終脱皮を終えていたが,甲幅119 mm以下の個体では福島県海域における最終脱皮割合が茨城県海域よりも高く,宮城県~福島県海域における甲幅は茨城県海域よりも有意に小さかった。これらのことから,東北太平洋南部海域においてズワイガニ雄のサイズ別最終脱皮割合と甲幅組成に地理的変異が存在することが示された。
北海道から東北太平洋沿岸の産卵場9か所において2003年から2014年に採取したニシン16標本618個体についてmtDNA調節領域の塩基配列549 bpを決定した。FSTのNJ樹は,北海道,尾駮沼,宮古湾・松島湾のクラスターを描き,本州より北海道で遺伝的多様性が高かった。東日本大震災後の宮古湾ではハプロタイプ頻度が震災前と大きく異なり,尾駮沼に酷似した。北海道では約60万年前から集団が拡大,本州では20万年程度安定していたが,最終氷期後の温暖化と一致して2万年ほど前から急減していると推測された。
若狭湾西部産アカアマダイの年齢と成長を調べた。耳石横断面の輪紋形成の年周性,年齢起算日(9月1日)を仮定し,輪紋数から年齢を査定した。表面法で求めた3輪以下群の耳石径—体長関係式と各個体の第1, 2輪紋径から1, 2歳時の体長を逆算推定し,データに加えた。ベルタランフィの成長式は雌でLt=276(1−exp−0.490(t−0.215)),雄でLt=389(1−exp−0.320(t−0.0483))と推定された。確認された最高齢は雌18歳,雄14歳であった。
サクラエビ成熟雌の卵巣色彩の目視分類とデジタル画像解析,卵巣の組織学的観察を行い,卵巣の色彩変異と成熟過程について研究した。目視で分けられた3段階の卵巣の色彩には,卵母細胞の発達段階との間に対応がみられた。成熟雌を前成熟期・成熟期の卵母細胞をもつ個体とそうでない個体に分け,比較した結果,両者の色彩データに有意差があり,多変量解析によってもそれらの差が示された。卵巣の色彩と卵母細胞の関係は,淡青灰色では卵黄球期以前,緑青灰色では前成熟期以降,濃青灰色はそれらの個体が約半数ずつであった。
茨城県鹿島灘沿岸の重要な水産資源であるチョウセンハマグリの年齢推定法を確立するため,貝殻断面の輪紋と殻表の「リング」の年齢形質としての有効性を検討した。試料には,放流後の生存期間が分かる標識再捕貝の殻を用いた。試料は小型グラインダーで切断し,断面を研磨後,スキャナーで画像を取得した。断面の輪紋数は,試料が放流後に経験した冬の回数と概ね一致したことから,冬季に形成される年輪であると考えられた。殻表の「リング」ではほとんど一致しなかった。本種の年齢は,貝殻断面の輪紋数によって推定できると示唆された。
脂質含量及び乾燥時間が異なる煮干しとそこから抽出しただし汁の臭気成分量を比較した。脂質含量が高いほど,乾燥時間が長いほど煮干しの臭気成分量が高く,臭気成分量が高い煮干しから抽出しただし汁は臭気成分量及びTBA値が高かった。脂質含量が高い原料魚から煮干しを製造してだし汁を抽出すると,乾燥工程中に脂質酸化が進行して生じた脂質酸化生成物がだし汁に移行することにより,だし汁の風味が低下すると考えられた。乾燥工程を省くことにより,脂質含量の多い原料魚から臭気成分の少ないエキスを得られる可能性が示唆された。
ツノナシオキアミを練り製品原料として利用するために,タンパク質をNaClで溶解後に希釈し,沈殿して回収する方法を検討した。回収したタンパク質は,Ca-ATPase活性およびMg-ATPase活性が高く保たれた。また,SDS-PAGEにおいて回収工程におけるタンパク質の分解が確認されたが,80-90℃加熱でゲルを形成した。以上より,本方法で本種タンパク質の変性を抑制し回収できること,また回収したタンパク質が加熱ゲル形成能を持つことが示唆された。
広島湾の湾内外において,1,4,5,6,9,11,12月に分離浮遊卵を採集し,DNAバーコーディングによって種組成を明らかにした。種同定した547個の卵は20種に分類された。湾外は湾内より採卵量や種数が卓越した。月別では6月に採卵量や種数が多く,クロダイやマダイが優占種となったほか,イシダイやサワラも確認された。同湾は,主に春季に瀬戸内海の有用種の産卵場として利用されていることが明らかとなった。