サケでは従来,鱗による年齢査定が行われてきたが,成熟が進むと鱗による年齢査定が困難になるという難点があった。そこで本研究では,サケの耳石薄片法,耳石表面法,鱗による年齢査定の作業効率と正確性を比較検討した。耳石温度標識によって年齢がわかっている個体から得られた耳石と鱗における査定の結果,鱗および常法よりもさらに研磨を進めた約80 μmの耳石薄片では正確性が100%となった。この正確性と作業効率を合わせて考慮すると,鱗と耳石薄片法を使い分けることが妥当であると考えられた。
セタシジミの種苗生産は天然の親貝を採捕して実施されるが,採苗量と相関のある肥満度は年による変動が大きく,安定的な種苗生産が困難である。そこで人為的に肥満度を増加させる方法を開発した。11月から翌年5月の冬季に琵琶湖の港湾,湖水をかけ流した池,内湖の1つである西の湖で垂下飼育した。飼育終了時の肥満度は西の湖が他の場所や5月の天然個体より有意に高かった。このことから,冬季の間,内湖で垂下飼育することで,人為的に肥満度を高めることができると考えられた。
ヒスタミン蓄積が認められたうるめいわし丸干から分離した細菌は,16S rRNA配列分析で99.15%の相同性を示したPhotobacterium angustumと同定された。柑橘の文旦の精油は丸干由来のPhotobacterium angustumに対して増殖抑制作用を示した。うるめいわし丸干製造時の塩漬工程で柑橘精油を添加した結果,丸干のヒスタミンの蓄積が抑制された。うるめいわし丸干製造におけるヒスタミン蓄積を抑制する方法として柑橘精油の添加が有効であることを確認した。
アルカリ塩水晒しによるアカアマダイ筋肉加熱ゲル形成能の改善を試みた。アルカリ塩水晒し(0.2% NaHCO3+0.15% NaCl)は清水晒し,アルカリ晒し(0.2% NaHCO3)および塩水晒し(0.15% NaCl)と比較して,本種のゲル形成能を改善した。アルカリ塩水晒しは加熱時のタンパク質表面疎水性を有意に高めたが,ミオシン重鎖の分解抑制効果は他と同等であった。以上より,アルカリ塩水晒しによる加熱ゲル形成能改善には,タンパク質の分解抑制効果のみならず,表面疎水性向上の寄与も示唆された。
冷凍マサバを−2℃から−20℃の温度で一定期間貯蔵(解凍前温度処理)を行い,この時の筋肉中の嫌気的代謝関連指標の変化ならびに解凍後の性状を調べた。冷凍マサバでは,本処理により解凍後のpH低下抑制効果は得られないこと,処理期間に伴って血合肉色調に影響を及ぼすことがわかった。同処理によりpH低下抑制効果の認められたメバチよりも,処理期間中におけるNAD減少速度が有意に小さかったことから,pH低下を抑制する効果が得られるのは,解凍前温度処理中におけるNAD減少速度が速い魚肉に限られることが示唆された。
本稿では,生鮮クロマグロ,冷凍メバチの非対称価格伝達の推計をおこない,それらの市場・取引構造上の特徴に関する実態調査や,これらと関連する既存研究のレビューとあわせ,分析をおこなった。生鮮クロマグロ,冷凍メバチにおいて,それぞれ正,負の非対称価格伝達の存在が明らかとなったが,これらの間では,類似した財であっても,取引構造や代替財の存在等の条件の違いにより,非対称価格伝達に違いが生じていると考えられる。