四万十川でテナガエビ類3種の分布と体サイズを調べた。分布上流限はテナガエビで河口から28 km,ミナミテナガエビで54 km,ヒラテテナガエビで83 kmにあり,種間差がみられた。各月の頭胸甲長の頻度分布において,3種の新規加入群は8-9月に出現し始めた後,12月までに最頻値は7 mm前後となった。その後,最頻値は繁殖期直前の4-5月に顕著に増大して10-13 mm前後となり,この際,新規加入群より高齢と判断される大型個体の割合は,ヒラテテナガエビに比べて他2種で低い特徴にあった。
サクラマスの脊椎骨数を人工種苗と野生魚で比較した。また,人工種苗が放流されてきた河川のサクラマス野生魚の脊椎骨数を調べた。人工種苗の脊椎骨数は野生魚よりも少ない値を示し,この差異は,発生時の水温の違いにより生じていると考えられた。長期間,種苗放流が行われてきた河川のサクラマス野生魚の脊椎骨数は,近隣河川の野生魚に比べて少ない傾向を示した。これより,種苗放流は野生魚の脊椎骨数に遺伝的な影響を及ぼす可能性が示唆された。
本研究ではギス肉加熱ゲル形成不良メカニズムの解明を目的として,明治時代から現代に至るまでの小田原かまぼこ製法の変遷に着目した。加熱ゲルの破断試験結果の比較から,原料ギスの凍結保存プロセスよりも,35℃付近での予備加熱がゲル形成不良をもたらす支配的な因子であることが明らかとなった。またギス肉加熱ゲルから調製した水溶性タンパク質画分の解析結果から,明治時代頃のように直加熱を行うことによって,ギス肉中のミオシン重鎖ロッド部の分解が抑制され,破断荷重値が高いゲルを得られることが明らかとなった。
ウナギ代替フィレの開発を目的として,外来ナマズ2種(クララ,カイヤン)に肥育飼料を給餌して養殖した。これを,養殖業者から購入したニホンウナギとあわせて,化学分析と食味試験(蒲焼)によって比較・評価した。両種とも,肥育飼料を給餌することで,フィレの脂質含量が増加した。食味試験では,ウナギとクララの肉質(固さ)が同等の評価となった。「脂濃さ」では,カイヤンの腹肉がウナギよりも高い評点となった。一方「うなぎらしさ」で,クララが最も高い評点となった。
飼育水の塩分が死後硬直へ及ぼす影響を明らかにするため,致死直後から完全硬直に至るまで硬直指数および尾部の垂下角度を算出し,これらの経時変化をモデル化し,海水即殺区,希釈海水即殺区,海水苦悶区で比較した。希釈海水即殺区は海水即殺区と比較して,完全硬直に至るまでの時間に差はなく,海水苦悶区のみ有意に短かった。また希釈海水即殺区は海水即殺区と比較して致死直後の垂下角度が有意に小さかった。飼育水の塩分は死後硬直の進行速度に影響を及ぼさないが,致死直後の垂下角度を有意に低下させることが明らかとなった。