定置網漁業におけるクロマグロの割当量の5つの管理方式の性能をシミュレーションで検討した。管理方式は1)月別県別管理,2)月別共同管理,3)年別県別管理(現状),4)年別共同管理,5)月間県別割当量の緩和措置である。年間漁獲量の確率分布を多変量対数正規分布で,月別漁獲量の割合をディリクレ分布で表した。基本シナリオの結果では割当量の達成率の期待値はそれぞれ78,87,91,99,90%であった。実用化の課題等について議論した。
水槽にスルメイカを収容し,光源へ誘引される際の遊泳速度を測定した。9.5 mの距離で対向する水槽壁面に白色LED光源を1台ずつ設置し,交互に点灯することでスルメイカを水槽内で往復させた。水槽内に収容する個体数を変えて対光行動を観察した結果,1個体収容時は顕著な正の走光性を示す個体と走光性を示さない個体がみられた。3, 10個体収容時は全個体が正の走光性を示し,体軸方向がそろった群れとして光源方向に移動した。走光性を示した個体の遊泳速度は0.02-0.97 m/sの範囲で平均値は0.14 m/sであった。
四万十川と仁淀川でテナガエビ,ミナミテナガエビ及びヒラテテナガエビの抱卵雌の出現時期と場所,体サイズを調べた。抱卵率の高い時期は,3種とも仁淀川より四万十川で1-2か月長かった。出現場所の河川間差はヒラテテナガエビにみられ,抱卵雌は仁淀川より四万十川で上流に広く出現した。体サイズについては,テナガエビとヒラテテナガエビでは両河川で類似したのに対し,ミナミテナガエビでは仁淀川より四万十川において小型であった。上記の河川間差には,河川形態と水温のほか漁獲が影響している可能性も考えられた。
岡山県吉井川と高梁川におけるシラウオの資源管理方策の検討に資するため,それぞれ27, 25個体の耳石Sr:Ca比を測定し,移動・回遊生態の把握を試みた。両河川産のSr:Ca比(×103)は,全個体が淡水湖の霞ヶ浦産(1.2-4.4)と外海の三沢産(25.3-32.2)との中間的な値である10-30の範囲で終始変動し,一定期間の淡水および海水生活履歴は認められなかった。両河川の個体群は河口汽水域に依存した非通し回遊型の汽水魚と判断され,他水域にみられる生活史多型は存在しないと推察された。
ハンドリングに弱いサバ科魚類における非侵襲的な人為催熟技術の開発を目指し,卵黄蓄積開始前のゴマサバに安価な粗精製GnRHaを経口投与した。1.2 mg/kg魚体重/日のGnRHaを20日間経口投与した結果,有意な卵濾胞径の増大が認められた。また,油球期後期の卵母細胞が経口投与区において出現し,その頻度はGnRHa徐放性ペレットの腹腔内投与(0.1 mg/kg魚体重)よりも高い傾向が認められた。以上の結果から,GnRHa経口投与がサバ科魚類の卵黄形成期以前の卵成長促進に有効であることが示唆された。
日本水産学会誌第86号1号(January 2020)9-19頁「生化学的アプローチによるガンガゼDiadema setosumの天然餌料の検討」(DOI: 10.2331/suisan.19-00015)に誤りがありましたので,訂正いたします。
9頁 英文要旨5-6行目
誤:
The nitrogen stable isotope ratio of the reared individuals was significantly higher than that of the wild individuals,
正:
The nitrogen stable isotope ratio of the reared individuals was significantly lower than that of the wild individuals,
38頁 和文要旨,右段5-6行目
誤:
窒素安定同位体比は有意に高かった。
正:
窒素安定同位体比は有意に低かった。