岩手県南部の砂浜域砕波帯仔稚魚相の優占種であるチカ仔稚魚の出現動態を調査した結果,春季から夏季の日中に,仔魚から若魚が内湾の砕波帯に出現することが明らかとなった。胃内容物分析の結果,これらは主に日出から日没にかけてカイアシ類を摂餌しており,日中には砕波帯を摂餌場所として利用していることが示唆された。また,仔稚魚の出現個体数は年変動が大きいことが明らかとなり,その変化は水温に関係して三陸沿岸で共通の変化を示すものと考えられた。主な要因の特定には,より詳細な環境条件の分析が必要である。
人工河川の淵(長さ8 m,幅4 m,最大水深60 cm)において,イワナが好むカバーの物理的条件を検証した。警戒時のカバー(天井構造の幅60 cm,奥行き30 cm。岸沿いに設置)の使用個体数(脅した後,隠れた尾数)は,天井の高さが川底から10 cmと20 cmの場合に多く,上流側と下流側に側壁を付けた場合の方が10%の有意水準で多かった。また,天井の高さが川底から10 cmの場合の側壁付きカバーの使用個体数は,カバーの幅が30, 60, 90 cmのうち90 cmの場合に最も多かった。
2013年と2014年に,北海道の石狩湾,風蓮湖,厚岸湖と岩手県の宮古湾でニシン産卵親魚の年齢別体長組成を調べたところ,石狩湾と宮古湾では体長25 cm以上または3歳以上の親魚が多く,風蓮湖と厚岸湖では体長20-23 cmの2歳魚が多かった。これらの海域において,雌親魚の尾叉長と,人工授精によって得られた受精卵の径,乾重量,孵化仔魚の脊索長,乾体重,卵黄嚢体積との間に正の関係が示された。このことから,ニシンにおいては大型の雌親魚ほど大型の卵仔魚を産み出すと考えられる。
宮城県で重要な養殖対象種であるマボヤの出荷最盛期は下痢性貝毒発生時期でもあるが,本種における毒化の知見は十分ではない。このため,毒化の指標種とされる同所で飼育したマボヤとムラサキイガイの下痢性貝毒の分析を行い,マボヤでは貝毒発生期間を通じて下痢性貝毒が肝膵臓に偏在していることを明らかにした。加えて両種は同じ原因プランクトンDinophysis fortiiにより毒化したと考えられるが,マボヤはムラサキイガイと比較しokadaic acid(OA)の割合が高く,また,過去のモニタリング検査でも同様であったことから,分類群間での代謝の違いなどが疑われた。
オリーブ葉粉末を2%添加した飼料で飼育したブリ(添加魚)と無添加飼料で飼育したブリ(無添加魚)の普通肉の破断特性を比較した。添加魚の荷重歪曲線の傾きは無添加魚より大きく硬い肉質だった。破断荷重は差がなかったが,破断歪率は添加魚が24%低く歯切れのよい肉質だった。添加魚のコラーゲン量は22%高く,食感の違いの要因であると示された。3日冷蔵後の肉の破断荷重は添加魚の方が40%高かった。顕微鏡観察より冷蔵後の添加魚の筋内膜は分解が少なかった。以上よりオリーブ葉給餌ブリの肉は歯切れよく軟化しにくいことがわかった。
本研究では,冷凍魚肉の解凍後の品質保持を目的として,即殺・急速冷凍した8種の養殖魚を対象に−7℃で24時間解凍前温度処理することによるNAD+, ATP含量の減少および冷蔵中のpH低下抑制効果について検討した。解凍前温度処理によりクエ,中国イサキ,マアジ,シマアジ,ヒラメについては,冷凍肉中のNAD+含量の有意な減少が認められ,マアジ,シマアジについてはATP含量の有意な減少が認められた。中国イサキ,マアジ,シマアジでは冷蔵保存後の有意なpH低下抑制効果が認められた。