EU,米国,そして我が国を対象に,最大持続生産量(MSY)に基づく資源管理におけるステークホルダー(SH)の関与の状況および参加型モデリングの事例を踏まえて,我が国の新たな資源管理におけるSHの関与の可能性を議論した。参加型モデリングを通じた適切なSHの関与は,信頼関係の構築,SHの知識の活用,SHの参加や理解の促進等によって実現される。一方で,国際情勢や資源変動の不確実性に起因する参加型モデリングのみで解決できない問題もあり,別の利害調整の場や実用的な解決手段をSHと共に探る必要がある。
練習船によるHoop式カバーネットを用いた曳網実験と以西底びき網漁船の水揚げ物の体長測定から,66 mm目合コッドエンドの網目選択性と漁獲物選別時のサイズ選択性を推定した。キダイとカナガシラ類について,曳網ごとの選択性から推定した平均的な網目選択性と全曳網データを合算して求めた網目選択性の50%選択全長(L50)と選択性レンジに大きな違いは無かった。未利用サイズを示唆する両種の選別時のL50は網目選択性のそれらに比べて61-91 mm大きかった。
ニホンウナギ資源減少の原因の1つとして,鳥類からの被食リスクを低減する隠れ場所となると考えられる浮き石の,河川改修による減少が挙げられる。本研究では,浮き石による間隙の存在が,本種の生残に影響を与えるかを検証するために,間隙が利用可能な池と利用不可能な池の2群における生残率と肥満度の変化量を比較する実験を行った。その結果,間隙が利用可能な池では供試魚の生残率が有意に高く,浮き石による間隙は捕食者である鳥類から餌として発見される可能性を下げる効果があることが確認された。
道東産マイワシの高品質な生食用冷凍商材の開発を目的に,港に水揚げされた直後の鮮度を調査し,凍結前鮮度が解凍後の品質に及ぼす影響を調べた。道東産マイワシは,漁獲時期によってはATP含量が高く,pH6.5以上および乳酸含量の低い,高鮮度な個体が水揚げされることが明らかとなった。この高鮮度マイワシは水揚げ直後に急速凍結すること,または水揚げ後氷蔵5時間以内に急速凍結したのち−40℃以下で保管することにより,肉質に優れ,血合肉色調の劣化が少ない生食用冷凍商材となる可能性が示唆された。
緩慢・急速凍結したヒラメを緩慢・100 MHz電磁波急速解凍し,組織観察と性状を比較した。緩慢凍結・緩慢解凍ヒラメの筋肉には氷結晶に由来する巨大な空隙が多数認められ,ドリップ量が多く,低い応力曲線を示した。これに対し急速凍結・急速解凍ヒラメの組織は緻密で,ドリップが少なく,高い応力曲線を示し,生ヒラメに近似していた。その他の凍結・解凍ヒラメのデータから,凍結はドリップ発生と噛みはじめの応力に,解凍は噛みごたえ感に影響すると考える。本解凍技術で,寄生虫の心配のない刺身商材の供給が進むと考える。
三陸の定置網2ヶ統を対象として,揚網中の箱網内でROVの浮沈を繰り返した連続観察を2017-2019年に合計5回行い,水中映像に基づいてクロマグロの遊泳深度を記録した。クロマグロは揚網時間の12%経過時以降平均1.7-29.3個体からなる魚群が認められた。クロマグロの遊泳深度は,揚網前半では大部分が8-15 mと非揚網時の箱網内と同様であるが,揚網の後半や潮流による吹かれによる底網の変化にあわせて浅くなっていた。