ニホンウナギの成長や降海時の順応の場である汽水域のハビタットの劣化は著しい。本研究では,このハビタットの創出・復元を目標に,本種がどのような浮石間隙構造を好むかを生活史段階ごとに検証した。汽水域において異なるサイズの石(大,長軸30 cm;中,20 cm;小,10 cm)を詰めた石倉カゴ(研究用漁具)の利用状況を比較したところ,未成熟のクロコや黄ウナギは間隙が細かい「小」を好むが,海へ産卵に向かう銀ウナギは「大」,「中」のみで出現した。これは,間隙構造の多様性が河川生活を完結する上で重要であることを示唆している。
内水面の漁業協同組合(内水面漁協)の経営においては,第五種共同漁業権に基づく増殖義務と遊漁料の徴収という特徴から,財務構造も独特である。本研究では2017事業年度の内水面漁協の業務報告書を収集し,それに記載された貸借対照表を用いて経営の規模と安全性を分析した。その結果,自己資本比率および流動比率の分析から安全性が高いことがわかった。一方で総資本および自己資本の分析から経営規模が小さいこと,経営規模の格差が大きいことがわかった。また固定比率の分析から,固定資産に投資する余地があることが示唆された。
2020年8-9月に西部北太平洋日本沖合で漁獲されたサンマの消化管内容物を調べた。これまでの知見では,本種は主に冷水性のカイアシ類やオキアミ類といった大型動物プランクトンを捕食すると報告されていた。本研究ではウミタル類のほか,小型カイアシ類や暖水性の枝角類が消化管内容物に数的に優占していた。この要因としてサンマ標本が漁獲された海域において,これまで主要な餌とされていた大型動物プランクトンの分布が少なかった可能性が示唆された。
日本国内におけるヒョウモンダコHapalochlaena cf fasciataの分布域,体サイズと成熟の年変動を16府県で採集された97個体に基づいて推定した。本種は房総半島以南の太平洋沿岸と福井県以南の日本海側および瀬戸内海で確認され,南西諸島では確認されなかった。生殖腺重量指数と体サイズおよび個体数の変化から,本種は秋から翌春にかけて成熟し,春から初夏にかけて産卵・卵保護すると推察された。また,寿命は約1年で,雌雄ともに繁殖後に死亡していると推察された。