鹿児島湾のアマモ場の分布の現況を把握するため,2021年に湾内外の77か所において調査を行った。調査は潜水または海岸踏査によって海草の生育範囲を確認し,群落内に無作為に設置した方形枠で被度を記録した。その結果,湾内ではアマモ,コアマモ,ヤマトウミヒルモが見られ,湾外ではこれらに加えてオオウミヒルモ,カワツルモが見られた。アマモ場の面積は湾内で4.39 ha,湾外4か所を含めても6.46 haとなり,湾内のアマモ場の面積は2006年の調査時の11.6%,1978年の2.4%まで減少していた。
ノリ養殖では,胞子体の成熟誘導を行い,採苗日に殻胞子放出のピークが来るようにしているが,荒天等で延期になる場合が稀にある。その場合,殻胞子放出の進行を抑制する処理を行っているが,本研究では当該処理中の藻体の生理状態を把握するため,光化学効率を測定した。実験は,海水中で遮光保存する「暗黒処理」と,海水から取り出して飽和湿度の容器内で保存する「飽和処理」で7日間行い,実効量子収率を測定した。その結果,養殖工程で実際に実施された3日間程度では,両方法とも実効量子収率は安定して推移することが示唆された。
2022年6月から9月にかけて,佐賀県沿岸の東与賀,浜,七浦の3つの干潟で,アゲマキガイ種苗の成長,生残,グリコーゲン含量並びに生息環境を調査した。各干潟では8月に向けて成長していた一方で,密度は減少した。グリコーゲン含量(mg/g)は7月に最大に達し(東与賀7.4,浜5.4,七浦7.3),8月以降は減少傾向を示したことから,8月から9月の性成熟期に貯蔵エネルギーが十分に蓄えられていないことが示唆された。グリコーゲンが蓄積できない一因として,生息地における底泥の嫌気化の悪影響が考えられた。
近年,瀬戸内海では栄養塩濃度低下による藻類養殖被害が発生し,環境負荷の少ない施肥技術の開発が求められている。本研究では小孔の開いた小型のパイプ(香川方式施肥パイプ)に施肥材を充填し,流速が外部より緩やかな養殖施設内で溶解した施肥液を少しずつ放出させながら栄養塩を効率的に供給する技術を開発した。試験区では対照区と比較してノリ葉体の活力,色調,乾海苔の価格ともに高かった。
コイ稚魚とホンモロコ稚魚に,低リン飼料(試験区)もしくはリン充足飼料(対照区)を1か月間給餌した。低リン区のコイ(平均体重8.7 g)は,リン充足区のコイ(平均体重8.0 g)と比較して,脊椎と鱗の灰分,カルシウム,およびリンの各含量が低く,体脂肪量および肥満度が高かった。食味試験でも低リン区のコイは,リン充足区のコイよりも骨が柔らかく,総合評価においても高い評価を得た。一方,ホンモロコでは両区間にこのような違いは認められなかった。