和歌山県太地町における,鯨類追込網漁業により得られた鯨類発見記録を用いて,熊野灘南部海域における鯨類の来遊状況を調べた。秋季から冬季の操業で得られた計31漁期の記録から22種(ヒゲクジラ類5種,ハクジラ類17種)の鯨類が確認された。発見数が多かった13種は,来遊時季のピークによって4つのグループ(9–10月,11–12月,1–2月,ピークなし)に大別された。黒潮大蛇行により発見率が減少する4種が確認され,特にコビレゴンドウとマダライルカの分布は黒潮の影響を強く受けている可能性が示唆された。
分布北限に近い奄美大島産海草ウミジグサの光合成における光と温度の影響を明らかにした。15℃と24℃における光合成光曲線は,最大純光合成速度が15℃で顕著に抑制された。総光合成速度と最大量子収率による光合成温度曲線(8–40℃)は,それぞれ30.5℃と23.9℃で最大となった。15℃と24℃,光量300と1000 µmol photons m-2 s-1の組み合わせによる光と温度の複合応答では,低温・強光条件で量子収率が顕著に低下し,その後の暗馴致でも回復しなかったことから,低温光阻害が示唆された。
閉鎖循環式システムを用いたバナメイエビの親エビ養成技術を確立するため,実験Ⅰにおいて未眼柄切除個体と片眼柄切除個体の雌親エビに人工配合飼料のみと生餌(ゴカイ)とを組み合わせた飼料を与え,8週間飼育した(給餌量:1日当たり全個体重量の10%)。繁殖能力を調べたところ,生餌と組み合わせた試験区において,卵成熟・産卵に至ったエビの割合が高かった。そのため,実験Ⅱにおいてこの条件を選択し,再試験を行い,最適な養成技術を確認した。
東京都特別区においてランダム抽出した鮮魚販売店で丸のマアジとマイワシをサンプリングし,Fish AnalyzerTM Proを用いて品質を調査した。得られたデータを主成分分析とクラスター分析にかけることで,小売店の販売戦略の類型化を試みた。品質調査から,サンプリングされた魚の大半は生食には適さない鮮度であることや,脂肪度の範囲がマイワシで特に大きいことが分かった。統計解析からは鮮魚販売店の戦略が大きく4つに分類できることが示され,品質を含むデータセットを用いた販売戦略類型化の有用性が示唆された。