日本水産学会賞:
浅川修一,八木信行
日本水産学会功績賞::
荒井修亮,長島裕二
水産学進歩賞::
井尻成保,小谷知也,樋口健太郎,柳本 卓
水産学奨励賞::
市田健介,富安 信,中村政裕,山本慧史
水圏生物の行動の個体発生と群集の環境応答に関する研究
Behavioral Ontogeny of Aquatic Organisms and Community Responses to Environmental Changes
水圏生物の行動や群集生態に関する知見は,水産資源の持続的利用のみならず,海洋における生物多様性の役割を理解するうえで不可欠である。益田氏は,飼育実験により魚の群れ行動の個体発生とその生態的機能を明らかにするとともに,長期にわたる潜水目視調査や環境DNAなどの最新の手法を用いて,種間相互作用が複雑に働く生物群集を分析し,地球温暖化や津波などの環境変化に対する群集構造の応答の解明を行なった。
(京大フィールド研セ 山下 洋)
京都府沖合では,最終脱皮前の雄ズワイガニは毎年9–10月に脱皮するが,中には11–3月の漁期中(脱皮遅延)または翌年(脱皮休止)に脱皮する個体が存在する。新たに両者を組み込んだ脱皮成長モデルを構築し,齢期ごとの各脱皮率および最終脱皮雄の資源量を推定した。両者を考慮した最終脱皮雄の資源量は,脱皮休止割合が増加するほど減少し,特に大型齢期で顕著であった。また,両者は未成熟で市場単価も低いことから,漁獲制限により,将来市場価値の高い最終脱皮雄の資源量が増加することが示された。
公比1.14で48–157 mm目合を組み合わせた調査用流し網の採集結果から,カラフトマス,シロザケ,ギンザケ,ヒラマサ,シイラ,マサバ,マルソウダ,クロメダイに対する流し網の網目選択性曲線を推定し,この目合を組み合わせた調査用流し網の合成選択性曲線を算出した。ギンザケとクロメダイを除く6魚種では尾叉長に対する相対採集効率はほぼ一定であり,資源調査として網目の組み合わせは適切であった。マサバとマルソウダの小型個体の採集には小さな目合の反数が不足しており,目合の組み合わせの改善策について検討した。
養殖ノリの疑似しろぐされ症の病原菌を明らかにすることを目的として感染実験を実施した。病葉から分離した細菌のうち,4菌株が病葉と同じ症状を引き起こし,感染した葉状体から再び同一の菌株が再分離された。4菌株中3株の病原性は強く,主要な病原菌と考えられた。この3株は16S rRNA遺伝子の塩基配列が一致し,同塩基配列に基づく系統解析からAquimarina laterculaと最も近縁であることが示唆された。本研究により,疑似しろぐされ症の原因が明らかになったため,病名を白変病に変更することを提案する。
飼料の魚粉代替原料として用いられる植物性原料にはカビ毒が含まれている恐れがある。そこで本研究は,カビ毒の一種であるデオキシニバレノール(DON)がブリ稚魚の成長成績に及ぼす影響を調べることを目的とした。試験1では,DONを飼料1 kgあたり0,1.5または4.0 mg/kgで添加し,試験2では,DONを飼料1 kgあたり0,0.1または0.5 mg/kgで添加して,飼育を行った。その結果,試験1では飼料1 kgあたり1.5 mg以上,試験2では0.5 mgで成長成績の低下がみられた。
発育初期のアカムツ仔魚において,光周期と水温が成長と生残に及ぼす影響を調べた。実験は開口前日から10日間行い,光周期は明暗条件が異なる3区(L0:D24,L12:D12,L24:D0),水温は15–30°Cの5区を設定した。光周期試験では,24時間照射は12時間照射よりも生残率が高く,成長が速かった。0時間照射では生残率が低く成長しなかったことから,恒常的な照射の有効性が示された。水温試験の結果,生残率は18°Cで最も高く,成長は21°Cと24°Cで速かったことから,適水温は18–24°Cと考えられた。
牡蠣殻による漁場の底質改善を図るため,堆積場に海中保管された牡蠣殻による硫化水素の除去効果を室内実験により調べた。かき養殖漁場由来の底泥に対し,牡蠣殻を半分量混ぜ込み攪拌した試験泥を貧酸素海水で満たした密閉瓶に封入したのち,試験泥の間隙水を経時的に採取して硫化物イオン濃度を測定した。牡蠣殻を添加した試験区では,泥のみの対照区に比べて間隙水中の硫化物イオン濃度が有意に低かった。堆積場に海中保管された牡蠣殻は運搬等により破砕が進行し,露出した炭酸カルシウム結晶に硫化物イオンが吸着されると考えられた。
小型ハクジラ類の鯨肉食品の付加価値向上を目指し,5種を対象として筋肉中のイミダゾールジペプチド(IDP)含量を測定した。IDP含量はバレニン(BAL)が最も多く,次いでカルノシン(CAR),アンセリン(ANS)の順となった。ミンククジラと比較して,BAL含量は半量程度と少なかったが,ミンククジラで検出限界以下であったANSが検出され,CARは最大約10倍多く含まれていた。これらのことから,対象5種の筋肉には3つのIDPがすべて含まれ,複数のIDPを同時に摂取できる食材であることが明らかとなった。
令和6年度第2回講演会を下記により開催した。
題目:「これからの国産水産加工原料供給-多獲性浮魚資源の動向」
日時:令和6年12月24日(火)16:00–18:00
場所:東京海洋大学品川キャンパス 白鷹館2階多目的スペース(1)およびオンライン
サンマの資源および漁獲動向Stock status of the Pacific stock of Pacific saury
巣山 哲
((国研)水産研究・教育機構水産資源研究所広域性資源部)
Satoshi SUYAMA
(Fisheries Resources Institute, Japan Fisheries Research and Education Agency)
マイワシ・マサバ太平洋系群の資源動向Stock status of the Pacific stock of sardine and chub mackerel
由上 龍嗣
((国研)水産研究・教育機構水産資源研究所浮魚資源部浮魚第1グループ)
Ryuji YUKAMI
(Fisheries Resources Institute, Japan Fisheries Research and Education Agency)