イカ網膜の感光性色素レチノクロームの最大吸収波長(λmax)はロドプシンより約10 nm長く,深海性の種に豊富である。アオリイカ3種間で両色素のλmax差を比較すると,本州に多いシロイカで17 nmであるのに,南方系のアカイカとクアイカでは2 nm以下であった。また,両色素の網膜内遺伝子発現強度は深場に出現するアカイカより内湾性のシロイカで高かった。シロイカの生息域は他2種に比べて濁度変動が大きく,λmaxが異なる2つの感光性色素を活発に利用することで複雑な光環境に視覚適応していると推察された。
日本近海に生息するアオリイカ3種が頻出する海域と水深は異なる。本研究ではロドプシンの遺伝子配列を決定するとともに最大吸収波長(λmax)を測定し,3種の波長感度を比較した。ロドプシンをコードする領域の塩基長は3種とも1356 bpで452残基のアミノ酸に翻訳された。λmaxはアカイカ,シロイカ,クアイカで496,492,489 nmであり,最も深場に出現する種で長波長であった。一般にλmaxは生息水深が深い種で短波長だが,3種間の約100 mの生息水深差はλmaxに反映されないことが示唆された。
2022年春季以降,播磨灘でスダレガイPaphia euglyptaの漁獲が急増し広域流通している。本種の有効利用を図るため,漁獲実態と原料特性を調査した。2019年頃から水深20–30 mの砂泥域で小型底びき網漁による入網量が増加し,2022年には一宮町漁協で約8トンの水揚げが記録された。殻長は69.0–75.0 mmにモードを示し,1月から5月にかけて肥満度と粗タンパク質,炭水化物,粗脂肪が増加した。セレン高含有(120 µg/100 g)の特性から機能性食材としての活用が期待された。
ブリやマグロなどの赤身魚肉は,鮮度低下に伴い褐変し,商品価値が低下する。褐変はミオグロビン(Mb)のメト化であり,メト化率は総Mbに対するメトMbの割合として表される。一般にMbのメト化率は,抽出液の2点から4点における吸光度より算出される。本研究では500–650 nmにおける吸光スペクトルを用いてブリMbのメト化率を推定した。オキシ,デオキシおよびメトMbを含む抽出液のスペクトルから,未処理のMb抽出液のスペクトルは,よく再構成できた。また,本手法は他種のMbにも応用が可能と期待される。