膵臓
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21 巻, 4 号
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特別寄稿
  • 山口 幸二, 白鳥 敬子, 唐澤 克之, 石川 治, 船越 顕博, 田中 雅夫
    2006 年 21 巻 4 号 p. 315-322
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドラインが日本膵臓学会膵癌診療ガイドライン作成小委員会のもと,2006年3月15日金原出版より発刊された.膵癌ガイドラインではまず,1.目的,2.利用する上での注意事項,3.作成法,4.文献レベルの分類法と推奨度,5.改訂,その他について述べている.つぎにガイドライン本体は膵癌診断と膵癌治療のアルゴリズムとそれに対応する5分野,22CQの部よりなる.CQでは推奨,推奨度を示し,そのエビデンスを述べ,エビデンスに用いた引用文献を示している.エビデンスの後に膵癌診療ガイドラインの特徴である「明日への提言」を挿入している.表は8枚,図(早期膵癌の画像診断を含む)は5枚となった.巻末には引用文献として用いた304の文献の構造化抄録をCD-Rの附録として挿入し,紹介した.膵癌診療ガイドラインの作成経緯や内容を紹介した.
原著
  • 長井 和之, 和田 道彦, 細谷 亮, 梶原 建熈
    2006 年 21 巻 4 号 p. 323-328
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    膵癌は極めて予後不良の疾患であり,治療成績改善には早期発見が重要と考えられている.今回,1981年から2005年8月までに手術を行ったTS1膵癌21症例について検討し報告する.
     44~83歳(平均68.3歳),男性12例,女性9例,膵頭部癌15例,膵体尾部癌6例であった.有症状例が17例(81.0%)と多く,無症状例4例であった.検査においてはERCP,MRCP,EUSの感度が高かった.pT1は5例のみで,大半がpT3以上であった.リンパ節転移は過半数に認めた.f Stage Iは5例で,f Stage III以上が約4分の3を占めていた.全体では,MST 23.6月,5年生存率25.1%であった.R0症例はR1症例よりも,生存率が良い傾向にあった.
     TS1症例でも進行例が多く,手術においてはリンパ節,膵周囲組織の郭清を伴った手術によりR0を目指し,補助化学療法の適用を考慮することが重要と考えられる.
  • 松田 正道, 渡邊 五朗, 橋本 雅司
    2006 年 21 巻 4 号 p. 329-332
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    プロテアーゼインヒビターであるウリナスタチン(Ulinastatin;以下UTI)10万単位を混じたフィブリン糊(以下UTI―fibrin糊)3 mLで尾側膵切離後の断端を被包し,膵液漏発生を抑制しうるかを検討した.当科で,プロキシメイト・リニアステイプラー(TL60/TLH60)を用いて尾側膵切除を施行した73例を対象とし,UTI―fibrin糊群38例,UTI―fibrin糊非使用群(以下非使用群)35例における膵液瘻の発生頻度を検討した.膵液瘻発生はUTI―fibrin糊群5/38(13.2%),非使用群13/35(37.1%)であり,UTI―fibrin糊群で有意に低下した.今回の検討から,TL/TLHによる膵断端処理に加え,フィブリン糊による膵切離面のsealingとUTIによる局所での膵酵素活性阻害により,膵液瘻発生が抑制されうると考えられた.しかし今回の検討は前向きのランダム化試験ではないこと,またフィブリン糊がUTIの徐放効果を有するのか,UTIに局所作用はあるのか,といった問題点があり,今後の検討を要する.
症例報告
  • 三上 和久, 関 誠, 小菅 崇之, 斉浦 明夫, 山本 順司, 山口 俊晴, 有賀 明子, 山田 恵子, 田中 宏子, 松枝 清, 高野 ...
    2006 年 21 巻 4 号 p. 333-338
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.2003年6月,高血圧にて通院中の近医で初めて肝機能異常を指摘された.精査にて膵頭部癌による閉塞性黄疸の診断で当院を紹介された.膵頭部の35 mm大の浸潤性膵管癌に対して,同8月に膵頭十二指腸切除術を施行し,組織診断は高分化型管状腺癌,T4(PV)N0, Stage IVaであった.その後,2004年5月頃からCEA,CA19-9が漸増し,画像診断にて精査を繰り返し,残膵の主膵管拡張が指摘されていた.その後も腫瘍マーカーの漸増は続き,2005年5月のCTにて初めて残膵の腫瘤を指摘され,残膵に発生したIPMT由来浸潤癌の診断にて同7月6日残膵摘出術を施行した.組織診断は高~中分化型管状腺癌,T4(PL)N0,Stage IVaであった.膵癌根治切除後の残膵に異時性多発性に第二癌が発見され,さらに根治的に切除されることは極めて稀である.
  • 城田 哲哉, 竹山 宜典, 川辺 高史, 保田 知生, 土師 誠二, 中居 卓也, 塩崎 均, 大柳 治正
    2006 年 21 巻 4 号 p. 339-345
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    患者は53歳,男性.2合30年間の飲酒歴有り.以前より慢性膵炎の診断に対し近医にて外来通院を受けていた.2004年9月初旬より呼吸困難,右側胸部痛を自覚,近医を受診し右胸水貯留,血清・胸水中アミラーゼ高値を認めたため蛋白分解酵素阻害剤投与等による保存的加療を施行されるも軽快せず当科入院となる.胸腹部CT,ERPにて膵管の破綻による膵性胸水を伴う縦隔内膵仮性嚢胞と診断した.膵管減圧のため内視鏡的膵管ドレナージ術を施行,胸水減少,血清アミラーゼ値低下するも炎症反応の上昇及びCTにて縦隔内仮性膵嚢胞の増大を認めドレナージ術施行による感染と診断,経皮的嚢胞ドレナージ術を施行した.その後,炎症反応低下,CTにて嚢胞の消失を認めた.近年,内視鏡的膵管ドレナージ術が縦隔内膵仮性嚢胞の治療に有用であるとの報告があるが,感染合併の可能性にも十分留意し施行する必要があると思われた.
  • 尾崎 弥生, 井上 勝朗, 村木 崇, 浜野 英明, 新倉 則和, 越知 泰英, 川 茂幸, 清澤 研道, 宮川 眞一, 佐野 健司
    2006 年 21 巻 4 号 p. 346-352
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.Stage IVb膵癌と診断され,Gemcitabine(以下GEM)全身投与が施行された.膵原発巣に対して投与後数ヵ月間は抗腫瘍効果を認めたが,肝転移巣に対しては無効であり,全経過9ヵ月で死亡された.剖検所見では,膵病巣の1/3未満に壊死,癌細胞の空胞化,壊死部にマクロファージの貪食像,一部線維化など,化学療法による腫瘍壊死反応を認めた.残り2/3の膵病巣と肝転移病巣は高分化管状腺癌が増殖しており,内部に壊死を認め,腫瘍自体が自壊したものと考えられた.本例ではGEMの膵原発巣に対する治療効果を病理学的に確認したが,GEM無効期の化学療法既治療例を対象とした化学療法,肝転移巣に対する治療方法の確立が重要と考えられた.
  • 山雄 健次, 水野 伸匡, 高橋 邦之, 澤木 明, 井上 宏之, 伊藤 聡子, 石井 紀光, 清水 泰博
    2006 年 21 巻 4 号 p. 353-357
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    乳頭部癌による閉塞性黄疸に対して超音波内視鏡ガイド下経十二指腸的胆道ドレナージを施行した症例を経験したので報告する.症例は83歳,男性.熱発を主訴に前医を受診し,十二指腸内視鏡下生検にて乳頭部癌と診断され,紹介入院となった.諸検査にて切除可能乳頭部癌と診断したが,患者は高齢のため保存的治療を希望し内視鏡的胆道ドレナージを実施した.以降,外来通院中であったが,ステントの自然脱落や閉塞のため22ヶ月後に超音波内視鏡ガイド下経十二指腸的胆道ドレナージを実施した.経過良好にて6日後に退院,10ヵ月後の現在も特に合併症を認めず外来通院中である.本手技は現時点では従来のドレナージ法が困難な時に行われるべき方法と考えられる.しかし今後は,減黄術の有効な選択肢の一つになる可能性もあると考え報告した.
  • 田原 純子, 清水 京子, 平山 浩美, 前出 幸子, 小山 祐康, 中村 真一, 羽鳥 隆, 白鳥 敬子
    2006 年 21 巻 4 号 p. 358-364
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎に伴う膵仮性嚢胞が脾穿破と胃穿破を合併した1例を経験したので報告する.症例は45歳男性.飲酒後の背部痛を主訴に当院受診し,重症急性膵炎の診断で入院となった.腹部CT上,膵腫大と周囲の滲出液を認め,膵尾部に接して径70 mm大の嚢胞が脾内へ穿破していた.第13病日の腹部CTにて,膵仮性嚢胞は脾臓へ穿破し内部にガス像を認め,炎症所見も増悪した.経皮的嚢胞ドレナージを施行し経過観察中,さらに胃と嚢胞間に瘻孔形成が確認され,胃穿破と診断した.ソマトスタチンアナログ投与によりドレナージ排液量が減少し,嚢胞も縮小し,第88病日にドレナージチューブを抜去しえた.現在まで嚢胞の再発はなく経過良好である.脾臓と胃に同時に穿破した膵仮性嚢胞は極めて少なく,また保存的治療により治療せしめた症例である.
  • 安田 幹彦, 河邉 顕, 有田 好之, 宜保 淳也, 山内 祐允, 米川 智, 本田 邦臣, 吉永 繁高, 加来 豊馬, 大野 隆真, 中村 ...
    2006 年 21 巻 4 号 p. 365-372
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    進行性膵癌に対するGemcitabine(GEM)の効果は広く認知されるに至ったが,治療抵抗例も存在するため他剤との併用療法が試みられている.今回,我々は膵・胃同時性重複癌に対してS-1併用GEM化学療法を施行し,良好な治療効果を認めた症例を経験したので報告する.症例は63才,女性.膵鉤部癌(stage IVa)および胃癌(cType 0IIc, M)の膵・胃同時性重複癌の診断で,S-1併用GEM化学療法を施行した.治療経過とともに,膵癌および胃癌は画像上縮小を認め,腫瘍マーカー(CA19-9,DUPAN-2)も低下を認めた.さらに膵癌に伴う癌性疼痛も軽快し,症状緩和効果も認めた.文献的に進行性膵癌に対するS-1およびS-1併用GEM化学療法の有効性が報告されている.本症例においても,S-1併用GEM化学療法は膵癌,胃癌ともに高い治療効果を認め,両薬剤の相乗効果が示唆された.
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