膵臓
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21 巻 , 5 号
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報告
総説
  • 神澤 輝実
    2006 年 21 巻 5 号 p. 398-403
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎に関する最近の3つの話題を中心に述べる.第1は今年発表された自己免疫性膵炎診断基準の改訂案である.日本膵臓学会では2002年に自己免疫性膵炎診断基準を作成したが,その後再検討を加え,より多くの症例を診断できるように,主膵管狭細像の範囲の規定を除き,血清IgG4高値を加えた新基準を厚生労働省難治性膵疾患調査研究班と合同で2006年に報告した.第2は,最近欧米で報告されている,本邦で認知されているものとは異なる病態の自己免疫性膵炎である.通常の自己免疫性膵炎の膵臓の病理組織像は,密なリンパ球とIgG4陽性の形質細胞の浸潤と線維化(lymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP))を特徴とするが,欧米で報告されている膵臓に好中球の浸潤を認める例は,発症年齢が若く,男女差がなく,炎症性腸疾患の合併が多いなど,本邦の自己免疫性膵炎と異なる臨床像を呈しており,今後の検討が必要である.第3は,自己免疫性膵炎の膵臓にみられる特異的炎症性変化は,後腹膜,胆道系,唾液腺などにも認められることより,自己免疫性膵炎はIgG4が関連した全身性疾患(IgG4関連硬化性疾患)の膵病変で,その膵外病変はこの全身性疾患の諸臓器病変の1つであるとする考え方である.
  • 佐藤 晃彦, 下瀬川 徹
    2006 年 21 巻 5 号 p. 404-411
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    Protein kinase C(PKC)は,生体のほとんどの組織・細胞に発現しているセリン・スレオニン蛋白質リン酸化酵素であり,様々な細胞内情報伝達において重要な分子スイッチとして機能している.膵腺房細胞においては,膵外分泌調節,炎症応答や細胞死の制御など多彩な細胞現象に関与している.最近,アイソフォーム特異的な阻害剤/活性化剤の開発や分子生物学的手法の進歩によって各アイソフォームの役割についての解析が可能となり,膵腺房細胞の生理応答や急性膵炎の病態形成に関与するPKCアイソフォームの特定やその分子機序についての知見が蓄積されつつある.
症例報告
  • 福田 晃, 羽鳥 隆, 鬼澤 俊輔, 金井 信雄, 大原 敏哉, 古川 健司, 松浦 裕史, 高崎 健
    2006 年 21 巻 5 号 p. 412-418
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は51歳女性.9年前より糖尿病を指摘され,2003年2月,スクリーニングの腹部超音波検査で膵腫瘤を指摘された.腹部超音波,CT検査,EUSでは膵体部に径15 mm,膵尾部に径8 mmの比較的境界明瞭なhypoechoic tumorを認め,CTでは造影効果を認めなかった.多発性非機能性膵内分泌腫瘍または嚢胞成分の乏しいsolid-pseudopapilary tumorと診断し,2003年2月に脾温存膵体尾部切除術を施行した.摘出標本割面ではともに白色調で,膵体部のものは石灰化,出血壊死を伴っていた.病理組織所見では膵体部のtumorは石灰化,硝子様変性,出血壊死を伴い,また膵尾部のtumorは毛細血管に富んだ小型の核を有する好酸性細胞の島状,索状の増殖を認め,Grimelius染色,Chromogranin A染色が陽性で,ともに非機能性膵内分泌腫瘍と診断した.また,非腫瘍部の膵のランゲルハンス島の多くは硝子様変性を伴っており興味深い症例と考えられた.
  • 加藤 公一, 竹田 伸, 井上 総一郎, 野本 周嗣, 金住 直人, 中尾 昭公
    2006 年 21 巻 5 号 p. 419-425
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は57歳男性.1993年9月膵頭部領域の膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対して幽門輪温存膵頭十二指腸切除術,膵胃吻合・陥入法による再建(PPPD-IV B-2)が施行されている.病理診断はpapillary adenomaであった.2004年11月上腹部痛,背部痛,発熱,四肢浮腫があり前医へ入院.腹部CTにて膵胃吻合部を中心に胃後壁の肥厚と残膵の主膵管拡張を認めた.上部消化管内視鏡検査では膵胃吻合部から幽門前庭部にかけてBorrmann 1型腫瘍がみられ,生検にて中分化型腺癌が検出された.膵胃吻合部に発生した胃癌と診断し,手術を施行した.幽門側胃切除,残膵部分切除,腫瘍の浸潤がみられた横行結腸を楔状切除し,Whipple法にて再建を行った.病理組織学的診断は膵臓原発の中分化型管状腺癌であった.IPMN手術後は,残膵における発癌の可能性を念頭においた慎重な経過観察が必要である.
  • 矢澤 直樹, 飛田 浩輔, 大谷 泰雄, 種田 靖久, 柏木 宏之, 石井 正紀, 堂脇 昌一, 杉尾 芳紀, 石過 孝文, 今泉 俊秀, ...
    2006 年 21 巻 5 号 p. 426-431
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳男性.1991年,腹部超音波検査にて膵管拡張が認められ,アルコール性慢性膵炎として経過観察中であった.1998年9月,右胸鎖関節痛が出現し,右胸鎖関節炎の診断で入院となった.胸部単純X線検査で左胸水が出現したため,CT検査を施行したところ,脾門部に膵仮性嚢胞が認められた.超音波ガイド下に経皮的ドレナージを行った.ERCPでは十二指腸乳頭部に絨毛状の腫瘍が認められ,生検の結果は高分化型腺癌であった.膵頭部主膵管は著明に拡張し,内部に不整形の透亮像が認められた.PPPDを施行し,病理組織学的に膵管内乳頭粘液性腺癌(IPMC)と診断した.膵仮性嚢胞の発生の原因として,膵癌や膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMT)を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 山口 洋志, 木村 康利, 信岡 隆幸, 染谷 哲史, 曽々端 克哉, 佐藤 卓, 廣川 直樹, 小井戸 一光, 桂巻 正, 平田 公一
    2006 年 21 巻 5 号 p. 432-438
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.肝右葉と膵尾部の嚢胞性病変について1992年から前医にて経過観察されていたが,肝嚢胞性病変の増大が著しく2005年手術目的に入院した.腹部超音波検査では,肝右葉と膵尾部に境界明瞭で,内部に隔壁様構造や隆起性病変を伴わない単房性嚢胞を認め,腹部CTでは両病変に壁肥厚や石灰化,壁外浸潤所見を認めなかった.これまでのCT画像を経時的に比較検討したところ,膵嚢胞性病変に関しては嚢胞径の増大に伴い,造影効果を認める明瞭な被膜の消失を認めた.以上より,典型的画像所見を欠くものの腫瘍性膵嚢胞である,粘液性嚢胞腫瘍を疑い,肝嚢胞開窓術と尾側膵切除術を施行した.病理組織学的には,異型性に乏しい粘液産生性の円柱上皮と卵巣様間質を認め,膵粘液性嚢胞腺腫と診断された.興味深い画像変化を示し,膵嚢胞性病変の鑑別診断を考える上で示唆に富む,単房性膵粘液性嚢胞腺腫の一例を経験したため報告する.
  • 平井 隆二, 鶴見 哲也, 長尾 洋, 國友 忠義, 三宅 孝佳, 名和 清人
    2006 年 21 巻 5 号 p. 439-445
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    患者;38歳,女性.主訴;痒みを伴う皮疹.現病歴;平成13年7月より,下肢に始まり上半身に拡大する強い痒みを伴う紅斑が出現した.壊死性遊走性紅斑を疑い,血中グルカゴン値を測定したところ2,100 pg/mlと高値を示した.超音波検査,CT,MRIにて膵尾部に分葉した3.5 cm大のhypervascularな腫瘍性病変を認め,グルカゴノーマと診断した.平成14年1月,手術を施行.膵尾部に3.5cm大の雪だるま型を呈する腫瘤を認め限局性で周囲への浸潤やリンパ節転移を認めないため脾温存膵尾部切除を施行した.固定後割面では被膜を有する内部灰白色の均一な腫瘍で,腹側に分葉発育し内部には嚢胞を有していた.病理組織学検査;glucagon陽性,血管侵襲を伴うためglucagonoma,low-grade malignantと診断した.術後5日目には,グルカゴン値は正常値に戻り,皮疹も消失した.術後4年を経過しているが再発の徴候はない.
  • 中山 新士, 松下 光伸, 山科 雅央, 川村 梨那子, 池浦 司, 島谷 昌明, 内田 一茂, 山本 伸, 久保田 佳嗣, 岡崎 和一
    2006 年 21 巻 5 号 p. 446-452
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/12/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.全身倦怠感・黄疸で近医を受診し,びまん性膵腫大・主膵管狭細像・下部胆管狭窄があり,胆管狭窄を伴う自己免疫性膵炎(AIP)と診断された.胆管ステント留置後にプレドニゾロン内服を開始され,膵腫大・主膵管狭細像は軽快したが,下部胆管狭窄は改善しなかったため当科紹介受診となった.本院の内視鏡的逆行性胆管造影(ERC)でも下部胆管狭窄は残存し,胆管内超音波検査(IDUS)では胆管壁が全体に肥厚し,ポジトロン断層撮影法(FDG-PET)・胆汁細胞診・狭窄部の生検では悪性所見は認めなかった.プレドニゾロンの再内服は希望されず,長期漸減の必要のないステロイド・ミニパルス療法を施行した.ミニパルス療法後のERCでは,下部胆管狭窄は改善し胆管ステントを抜去した.以後,維持療法としてプレドニゾロン内服を開始したが,肝・胆道系酵素上昇を認めず,プレドニゾロン漸減中である.ステロイド内服で軽快しなかったAIPに伴う胆管狭窄に対して,ステロイド・ミニパルス療法が有効であったので報告する.
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