膵臓
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22 巻, 4 号
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報告
  • 山口 幸二, 白鳥 敬子, 唐澤 克之, 石川 治, 船越 顕博, 田中 雅夫
    2007 年 22 巻 4 号 p. 447-453
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    目的:「科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2006年版」の利用状況およびこれに対する意見を日本膵臓学会会員を中心に調査した.方法:日本膵臓学会会員や評議委員を中心に2006年12月より2007年2月にかけ,2,807名に3,287枚のアンケート用紙を送り,記入の上,FAXで回答して貰った.結果:回答は168枚,回答率は5.1%であった.診療ガイドラインを知ったのは多くは学会であり,事前に行った公聴会は有用であった.ガイドラインは膵癌診療にも頻回に利用されているが,膵癌診療の知識の整理としても利用されていた.ガイドラインは5つの章よりなっているが,どの章も利用されていた.しかし,膵癌に関してはエビデンスレベルの高い論文が少なく,推奨度がCのものが多過ぎるとの意見もあった.結論:ガイドラインでは推奨度がCのものが多く,「明日への提言」を加えるなど工夫した.発刊後,保険に適用されたS-1などの記載を含め,今後の定期的改訂が必要とする意見が多かった.膵癌診療ガイドラインは現在,改訂作業に入っているが,得られた貴重な意見も反映されることを期待する.
特別寄稿
  • 中村 光男, 丹藤 雄介, 柳町 幸, 田中 光, 志津野 江里, 野木 正之
    2007 年 22 巻 4 号 p. 454-461
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    膵内外分泌不全の病態を正しく理解し,十分な食事療法(膵炎食ではない)に加え,膵性脂肪便をはじめとする消化吸収不良を膵酵素製剤の補充によって治療する.更に,膵性糖尿病の血糖コントロールを自己血糖測定下に超速効型インスリン,持効型(中間型)インスリンを組み合わせることによって患者のQuality of life及び予後は著しく改善してきた.しかし,新しいインスリン製剤によってより良い血糖コントロールが,糖尿病固有の最小血管障害(腎症)の進行をどの程度抑制するかについての臨床データはまだ存在していない.
総説
  • 神澤 輝実
    2007 年 22 巻 4 号 p. 462-469
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    膵臓は,背側膵原基と腹側膵原基が癒合して形成される.背側膵原基の主導管の腹側膵管との癒合部の近位側は,発生過程において退行する例が多く,副膵管(Santorini管)と呼ばれる.我々の検討では,副膵管は形態的にlong typeとshort typeに二分され,これらは機能的にも発生学的にも異なる所見を呈した.主膵管内色素注入法による十二指腸副膵管の開存率は,43%であり,副膵管の口径,走行形態および末端像と関連性を認めた.急性膵炎例の副膵管開存率は低値であり,副膵管の開存は,第2の膵液ドレナージシステムとして,急性膵炎の発症を防止する安全弁として機能する可能性が示唆された.膵管癒合不全例では,先天性の副乳頭の閉塞性因子に,後天性の負荷因子が加わり,その相互関係で膵炎が発症することが推察され,再発性急性膵炎合併例は内視鏡的治療の良い適応と考えられた.
原著
  • 沢 秀博, 上田 隆, 竹山 宜典, 安田 武生, 新関 亮, 松村 直樹, 中島 高広, 松本 逸平, 藤田 恒憲, 味木 徹夫, 藤野 ...
    2007 年 22 巻 4 号 p. 470-478
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎105例を対象とし肺障害合併例を検討した.経過中の肺障害合併例は50%であった.肺障害合併例の入院時重症度や壊死性膵炎の頻度は有意に高かった.肺障害合併群と非合併群の間で入院時に有意差を認めた因子はBE,BUN,クレアチニン,血糖,LDH,CRP,リンパ球数,カルシウム,総蛋白,好中球エラスターゼであった.肺障害合併例の感染併発率は48%,死亡率は58%と有意に高かった.肺障害合併例を肺障害単独例と多臓器障害例に分けると,多臓器障害例の感染併発率は56%,死亡率は68%と有意に高かった.肺障害合併例の入院時予後予測因子はAST,ALT,総ビリルビン,クレアチニン,カルシウム,LDHであった.入院時肺障害,早期肺障害,後期肺障害での膵手術施行率は,それぞれ47%,0%,75%であり,死亡率はそれぞれ63%,10%,83%であった.いずれの時期の肺障害においても肺障害単独例に比して多臓器障害例で死亡率は高かった.重症急性膵炎において肺障害合併率は高く,肺障害合併例(特に多臓器障害例)の感染併発率や死亡率は高かった.入院時や後期の多臓器障害としての肺障害は予後不良であり,感染対策を含めた全身管理が必要である.
症例報告
  • 稲垣 光裕, 後藤 順一, 鈴木 茂貴, 安部 達也, 國本 正雄, 中村 和正, 中野 靖弘, 丹野 誠志, 高後 裕, 徳差 良彦, 三 ...
    2007 年 22 巻 4 号 p. 479-487
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.近医にて指摘された膵体部腫瘍精査目的で来院した.CTでは膵全体がびまん性に腫大し,尾部の造影が不良で体部病変は描出されなかった.血液検査で抗核抗体陽性·IgG4上昇を認めた.EUSでは体部に約15mmの辺縁不整な低エコー腫瘤を描出,体外式造影超音波で同病変部は動脈相から実質相にかけて造影効果の乏しい乏血性腫瘤として描出された.ERPでは膵体部主膵管に長さ23mmの限局性狭細像を認め,同部位の生検で異型細胞を得た.以上の術前血液検査·画像所見は自己免疫性膵炎(AIP)を強く疑わせたが,膵体部癌の合併を否定できず膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的検索では,切除膵全体に高度の線維化と,膵実質内にIgG4陽性の炎症性細胞浸潤を認めたが悪性所見はなくAIPと臨床診断した.本例は術前診断で膵癌合併を否定できなかったAIP症例で,今後の鑑別診断において示唆に富むものであった.
  • 水上 陽, 笹田 哲朗, 橋田 裕毅, 水本 明良, 佐藤 正人, 上田 修吾, 田中 基文, 郡司 周太郎, 大石 賢玄, 小山 幸法, ...
    2007 年 22 巻 4 号 p. 488-493
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は32歳女性.心窩部痛を主訴に当院を受診し,血液検査で貧血を認めた.US, CT, MRIで膵体部に腫瘍内出血を伴う径60mm大の多房性嚢胞性腫瘤がみられ,ERCPで主膵管の体部での狭窄,十二指腸乳頭部からの血性膵液の流出を認めた.血管造影では腫瘍濃染像はなく,脾動脈の狭細化と脾静脈の閉塞を認めた.膵管出血を伴う膵癌の診断で膵体尾部切除,脾臓·空腸·門脈合併切除術を施行した.組織学的には腫瘍の大部分に異型巨細胞の浸潤性増殖がみられ退形成性膵管癌(giant cell type)と診断した.また,膵実質内動脈への浸潤および動脈壁の破綻を認め,膵管出血の成因と考えられた.術後は化学療法を行ったが早期に再発をきたし術後14ヶ月で癌死した.退形成性膵管癌は生物学的悪性度が高くその予後は不良である.また,血管浸潤傾向が強く,動脈の破綻により急速に出血する可能性が示唆された.
  • 石戸 圭之輔, 袴田 健一, 鳴海 俊治, 豊木 嘉一, 石澤 義也, 浅野 研一郎, 大熊 洋揮, 鎌田 義正, 佐々木 睦男
    2007 年 22 巻 4 号 p. 494-502
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は36歳男性で,平成13年悪性髄膜腫に対して腫瘍摘出術が施行された.平成16年4月急性膵炎を発症し,腹部CTでは膵体部に石灰化を含む腫瘤陰影がみられるも慢性膵炎変化とされ経過観察となった.半年後の腹部follow up CTで膵体部の石灰化を含む腫瘤の増大が確認されたため,平成17年8月当科紹介入院となった.入院時の腹部CTでは膵体部に内部石灰化を伴う径5cmの不整形腫瘤を認め,広範囲な門脈腫瘍塞栓も認めた.同年9月開腹生検術を施行し,病理組織学的に間葉系腫瘍細胞の増生と免疫組織学的にc-kit陽性を認め,膵原発GISTと診断された.術後よりメシル酸イマチニブを投与したが腫瘍は著明な増大傾向を示し,2006年5月腫瘍破裂で死亡した.剖検の結果,膵腫瘍はmesenchymal chondrosarcomaと診断された.これまでの病理標本を再検討した結果,初回脳腫瘍は脳硬膜原発mesenchymal chondrosarcomaであり,同腫瘍が膵転移をきたした症例であると考えられた.Mesenchymal chondrosarcomaの膵転移は非常に稀で,さらにc-kit陽性を示すmesenchymal chondrosarcomaはこれまでに報告がなく自験例が最初の報告と思われたので若干の文献的考察を加え報告する.
  • 西澤 俊宏, 朴沢 重成, 鈴木 秀和, 今枝 博之, 樋口 肇, 久松 理一, 永田 博司, 島津 元秀, 向井 万起男, 日比 紀文
    2007 年 22 巻 4 号 p. 503-508
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/09/04
    ジャーナル フリー
    症例は60歳台男性.上腹部痛を主訴に上部消化管内視鏡を施行し,早期胃癌(印環細胞癌)を認め入院となった.入院時に膵仮性嚢胞を伴うアルコール性膵炎の併発を認めた.保存的治療にても腹痛は改善せず,仮性嚢胞は増大傾向を示したため経乳頭的膵仮性嚢胞ドレナージを施行し,嚢胞の著明な縮小を認め腹部症状も消失した.EUSで嚢胞と主膵管の移行部に低エコー性腫瘤を認め,CTとMRIで同部に乏血性の腫瘤性病変を認め,血管造影で上腸間膜静脈·脾静脈合流部の全周性狭窄を認めた.ERCPで膵管の狭窄像がみられ,膵管ブラシ細胞診でclass IVであったため,膵癌を強く疑った.早期胃癌および膵癌疑いの診断のもと膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的には,膵臓は著明な炎症性細胞の浸潤と線維化の所見のみで悪性所見を認めなかった.膵癌との鑑別に苦慮した膵仮性嚢胞を伴うアルコール性膵炎の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
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