膵臓
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23 巻 , 1 号
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〔特別企画〕第38回日本膵臓学会大会 会長講演
  • 船越 顕博
    2008 年 23 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    1970年代から今日までの自身の膵臓病研究の軌跡と今後の展望について記載した.膵の酵素学的診断法の研究は重要であり,ラジオインムノアッセイ法の開発により進歩を示したが,依然膵癌診断には十分ではない.消化管ホルモンの研究は分離膵腺房細胞採取が可能となり,またその血中動態の把握が進み,かなり研究が進んだが,やはり膵疾患の病態を正確に把握出来るまでには至っていない.その後分子生物学的手法の開発により,遺伝子異常解析も詳細に研究されたが,特異的なものは少ない.最近,膵癌の診療ガイドラインが作成されたが,早期診断法を目指した物にはなっていない.膵癌治療に関しては一部無作為化比較試験が行われ,標準治療法が確立され,また抗癌剤の進歩により延命効果も認められるようになってきた.今後はハイリスクの設定,膵臓病専門医の養成等を積極的に行い,難治膵臓病の克服に努めるべきと思われる.
特集:膵炎研究モデルの作製,選択,適用
  • 成瀬 達, 船越 顕博
    2008 年 23 巻 1 号 p. 12-14
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    分子生物学の進歩により様々な疾患の病因や病態が分子レベルで確立されており,その影響は膵疾患にも及んでいる.しかし,その成果が治療に及ばない所に,膵疾患の難しさがある.その理由としてヒトと実験動物の膵臓の生理学的違いのみでなく,分子の異常が膵疾患を引き起こす過程が,確率的事象であることがあげられる.この壁を打ち破るためには,私たちは常に新しい仮説を構築し,それを検証する実験モデルを作成していく努力が必要である.
  • 竹山 宜典
    2008 年 23 巻 1 号 p. 15-19
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    膵炎研究の歴史は,一面では実験膵炎モデルの作成の歴史である.急性膵炎は,臨床経過が急激であり発症機構と重症化機構の解明には実験モデルの応用が不可欠である.慢性膵炎の研究では,臨床例では既に病態が完成しており,発症機構の解明には実験モデルの作成が重要である.これからも膵炎の病態解明には,膵の臓器特異性と炎症性疾患としての普遍性の2方向からアプローチする実験研究が強力な武器となるであろう.
  • 大村谷 昌樹, 広田 昌彦, 橋本 大輔, 馬場 秀夫
    2008 年 23 巻 1 号 p. 20-24
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    トリプシノーゲンの異所性(膵内)活性化(トリプシン生成)にひきつづいて生じる連鎖的な諸プロテアーゼの活性化によって,膵の構成細胞が自己消化されるに至るという機構が,膵炎の主要な発症機構と考えられている.我々が樹立した膵分泌性トリプシンインヒビター欠損マウスの膵腺房細胞で誘導されるオートファジー(自食作用)の役割を解析する目的で,膵臓腺房細胞で特異的にオートファジーが欠失するマウスを作製した.このマウスは生理的条件下では異常は示さないが,セルレインで膵炎刺激を誘導すると,抵抗性を示した.さらに単離した膵腺房細胞に細胞内トリプシン活性化刺激を加えると,トリプシンの活性化がほとんど検出されないことが判明した.このことは腺房細胞内トリプシン活性化,つまり,膵炎発症機構にオートファジーが重要な役割を担っていることを示している.
  • 石黒 洋, 山本 明子, 近藤 孝晴
    2008 年 23 巻 1 号 p. 25-30
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    膵導管細胞からのHCO3-の分泌は,cystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)に依存する.導管細胞の管腔膜には,CFTR陰イオンチャネルの他に,Na+-H+ exchangerとSLC26陰イオン交換輸送体が存在する.ΔF508変異CFTRを導入したΔFマウスの単離小葉間膵管では,cAMP刺激による膵液分泌が消失し,管腔膜のNa+-H+ exchange活性が増強していた.膵嚢胞線維症では,管腔膜のNa+-H+ exchangerが膵液を酸性化している可能性がある.slc26a6ノックアウトマウスの単離膵管では,管腔内Cl-⇔細胞内HCO3-の交換活性が低下していたが,in vivoの膵液量とpHは影響されなかった.より高濃度のHCO3-を分泌するモルモットの単離膵管を用いてSLC26輸送体の役割を検討する必要がある.
  • 安田 武生, 竹山 宜典, 上田 隆, 中島 高広, 沢 秀博, 新関 亮, 大柳 治正
    2008 年 23 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    重症急性膵炎モデルとしてラット胆汁酸膵管内注入モデルなどが頻用されるが,in vivoのモデルだけでは分子機構の解析や再構成実験として限界がある.我々は重症急性膵炎の臓器障害におけるアポトーシスの関与と分子機構を解明するため,ラットDCA(デオキシコール酸)膵炎の腹水(pancreatitis-associated ascitic fluid;PAAF)を培養細胞(肝細胞,腎尿細管細胞,腸管上皮細胞)に添加するin vitroの実験系を確立している.最近では,in vivoにおいて腸管粘膜上皮のアポトーシスが加速し,アポトーシスを抑制することにより腸管粘膜上皮が保護され, bacterial translocationが減少することを明らかにした.実際,PAAFをT84細胞(ヒト腸管上皮)に添加するとアポトーシスが増強し,電気抵抗が減弱(透過性が亢進)していることが確認できた.PAAFを用いた実験系は,重症急性膵炎に特異的な臓器障害機構や感染成立機構の解明に有用である.
  • 山本 光勝, 山口 泰三, 大槻 眞
    2008 年 23 巻 1 号 p. 36-41
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎の治療法の開発や病態の解明のために,適切な慢性膵炎モデルの開発が望まれている.我々は新たな慢性膵炎モデルの作製を試みた.まず膵管内の粘稠度を上昇させて膵液の流出を障害する目的で0.01% agaroseとそれ自体では軽度の膵傷害作用しか示さない0.1%タウロコール酸を混合して,胆膵管十二指腸開口部から膵管内に投与した(40μl/100g体重).この実験モデルでは4週間後も膵臓に線維化と炎症細胞浸潤が持続していた.次にラットの胆膵管十二指腸開口部にカニューレを挿入し,そのカニューレの遠位端を膵液の分泌を妨げないように挙上させて膵管内圧を亢進させた.この実験モデルでは2週間後には著しい小葉間の線維化と炎症細胞浸潤及び腺房細胞の萎縮を認めた.
  • 西田 淳史, 安藤 朗, 藤山 佳秀
    2008 年 23 巻 1 号 p. 42-45
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    膵線維化の研究は,膵星細胞の単離,培養系の確立により,大きな進歩をとげた.膵星細胞を用いた研究は,動物膵(主にラット)由来の細胞を用いる場合とヒト膵由来の細胞を用いる場合がある.ヒト由来の細胞を用いる利点として,よりヒトの生体内応答を反映できると考えられること,抗体や測定系の入手が容易なこと,ゲノム解析が終了しており遺伝子解析のストラテジーがたてやすいことなどがあげられる.ここでは,Interleukin(IL)-1βによりヒト膵由来筋線維芽細胞に誘導される遺伝子群のDNAチップを用いた解析結果と現在研究中のIL-32の産生誘導について述べる.IL-32は最近報告された炎症性サイトカインの一つで,Tumor necrosis factor(TNF)-αがヒト膵筋線維芽細胞からIL-32を強力に誘導することを見いだした.一方,IL-32自身がTNF-α誘導因子として報告されていることから,TNF-αとIL-32からなるサイトカインカスケードが急性膵炎や慢性膵炎の病態の形成に関与している可能性が示唆される.
  • 佐藤 賢一, 木村 憲治, 菅野 敦, 濱田 晋, 廣田 衛久, 下瀬川 徹
    2008 年 23 巻 1 号 p. 46-53
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    膵癌早期発見のためには膵発癌機構を解明することが不可欠である.そのためには,遺伝子解析も作成法も容易である動物モデルの開発が必要と考えられる.我々は化学発癌物質DMBA投与によってマウス膵発癌モデルを作成し,それがヒト膵癌研究に応用できるか否かを検討した.DMBA処理2週後からマウス膵にtubular complexが観察され,1ヶ月でPanIN類似病変,2ヶ月後3ヶ月後にかけて癌病変の形成が認められた.癌は肉腫様形態を呈したがcytokeratin陽性,vimentin, chymotrypsin陰性で膵管由来の癌と考えられた.過形成病変および癌病変において,ヒト膵癌同様,悪性度の進行に伴って,smad4発現の消失,cyclin D1, p53発現の増強,Notchシグナルの活性化が認められた.しかし,ヒトで最も初期にまた最も高頻度に異常の認められるK-ras遺伝子の変異は確認されなかった.これらの事から,本マウスモデルは,多くのヒト膵癌とは初期の発癌過程は異なるが進展過程に関与する遺伝子異常には類似性がみられ,ヒトにおける発癌過程の後期から癌進展過程の研究に適用できる可能性が示唆された.
  • 足立 智彦, 田島 義証, 黒木 保, 小阪 太一郎, 三島 壮太, 常岡 伯紹, 兼松 隆之
    2008 年 23 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の臨床研究は多岐に渡り進行している.疾患病態の更なる解明ならびに治療への展開にはIPMN動物モデルの確立が有用と思われる.我々は,主膵管内乳頭腺癌(IPC)を高率に誘発することが可能なハムスターモデルを作成した.このモデルの特徴は,下部共通管結紮及び胆嚢十二指腸吻合を施行することで膵管内へ胆汁が逆流し,胆汁刺激により主膵管上皮の細胞回転亢進をきたすことにある.このモデルに膵癌誘発剤を負荷すると,通常型浸潤膵癌のみならずIPCが高率に発生する.誘発されたIPCは著明な膵管内乳頭状増殖を示し,またslow growthであることが示唆され,これらの特徴はヒトIPMNと類似していた.今後このハムスターモデルを用いた種々の検討が,ヒトIPMNにおける臨床課題を克服する一助となり得ると考えられる.
  • 内田 英二, 松下 晃, 柳 健, 廣井 信, 相本 隆幸, 中村 慶春, 福原 宗久, 横山 正, 田尻 孝
    2008 年 23 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    膵癌は早期より転移を生じるため,その制御は予後改善に重要である.新しい観点からの基礎的研究が行われているが,特に分子生物学的知見からヒトへの応用までの過程には実験モデルによる検証が必要である.われわれはN-nitrosobis(2-oxopropyl)amine(BOP)をシリアンゴールデンハムスターに皮下注射し発生させた膵癌からPGHAM-1細胞株を樹立した.PGHAM-1細胞による膵癌モデルは,病理学的特性および生物学的特性もヒト膵癌に類似し,膵内,脾内,腹腔内という3種類の同種移植方法によって,膵腫瘍,肝転移,腹膜播種というヒト膵癌におけるすべての病態を21日という短期間で実験的に作製できる.このモデルは,転移特性の解明とともにその特性を生かした治療実験も可能であり,各種の血管新生阻害剤の治療実験でも,転移率,腫瘍径,微小血管密度などの検討から有用性が示された.動物を用いた研究モデルに関しては,実験動物をとりまく社会的環境の変化からも,屠殺することなしに生体観察が可能な方法など,さらなる改善が望まれている.
総説
  • 武田 和憲
    2008 年 23 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    急性膵炎において膵が壊死に進展する機序には,膵の虚血や微小血栓形成による血管の途絶など血流障害が関与しているが,最近,vasospasmが急性膵炎の重症化因子として注目されている.急性壊死性膵炎における発症早期の血管造影所見はvasospasmによる虚血性変化が特徴的で,vasospasmは造影CTにおける膵の造影不良域と一致している.また,vasospasmによる虚血性変化の程度は膵の造影不良域の大きさ,死亡率と相関している.重症急性膵炎ではnon-occlusive mesenteric ischemia(NOMI)を合併することがあり,血管造影所見では膵の動脈と上腸間膜動脈およびその分枝のvasospasmが同時に認められている.急性膵炎によって惹起されるvasospasmは急性壊死性膵炎における膵の血流障害すなわち膵虚血に関与しているものと考えられる.
症例報告
  • 木村 公一, 古川 善也, 桑田 幸央, 花ノ木 陸巳, 松本 能里, 山本 昌弘, 藤原 恵
    2008 年 23 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性,心窩部痛を主訴に近医受診.CTで膵頭部腫瘤を認め当科紹介となった.血液生化学検査ではCA19-9, CEA, amylaseの高値を,画像検査にて膵のびまん性腫大,膵頭部に30mm大の腫瘤と同部より尾側の主膵管拡張,肝内に10∼25mm大の多発性腫瘤を認めた.内視鏡的逆行性膵管造影時の膵液細胞診で癌細胞を認め,肝内転移を伴う膵癌で膵炎併発と診断した.膵炎治癒後にgemcitabine 1400mg(3週投与1週休薬)+tegafur·uracil合剤300mgによる加療を開始し腫瘍縮小を認めたが,間質性肺炎のため中止した.以後,irinotecanによる治療を開始するも効果なく,脳転移·皮膚転移を認め初診より348日で死亡した.
    現在,膵癌の脳転移·皮膚転移は稀であるが,今後化学療法の進歩に伴い長期生存例が増加すると考えられ膵癌の全身管理には脳転移·皮膚転移も念頭におく必要がある.
  • 藤井 雅邦, 河本 博文, 原田 亮, 堤 康一郎, 栗原 直子, 水野 修, 石田 悦嗣, 小川 恒由, 坂口 孝作, 山本 和秀
    2008 年 23 巻 1 号 p. 83-88
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    症例は73歳男性.アルコール性慢性膵炎の増悪のため当科入院.入院時,膵石,膵管拡張を認めた.内視鏡的治療のためERPを施行したが,膵頭部に22×12mm大,鋳型の膵石が嵌頓し造影できず,内視鏡的膵管口切開術を施行後,ESWLを計8回施行した.結石破砕後ERPを再施行したが,膵頭部の狭窄部膵管に結石は残存しカニューレは通過できない状況であった.ダイレーターとして7FrのSoehendra stent retriever(SSR)を使用し,カニューレの通過は容易となり,7Frの膵管ステントを留置し終了した.その後経過良好のため退院となった.膵石を伴う膵管狭窄に対する内視鏡治療は難治例も多い.本症例では,SSRが難治性膵管狭窄症に対する治療の一つになりうることが示唆された.
  • 齋藤 雄康, 中村 隆司, 大越 崇彦, 岩指 元, 佐々木 剛, 目黒 敬義, 松野 正紀
    2008 年 23 巻 1 号 p. 89-94
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/03/07
    ジャーナル フリー
    症例は64歳男性.61歳時に閉塞性黄疸で入院した.ERCPを行うも結石認められず,ERBD tube挿入のみで改善した既往歴がある.2005年5月,上腹部痛を主訴に内科を受診した.CTで膵石を伴う膵管拡張,総胆管内の結石を認め,慢性石灰化膵炎急性増悪,総胆管結石の診断で入院となる.内視鏡的に除石を試みるも不可能であり,手術目的に当科紹介となる.術中所見で,膵石の共通管部への嵌頓による閉塞性黄疸と診断され,外科的乳頭切開除石と総胆管切石術に加え膵頭部芯抜きを伴う膵管空腸側々吻合術(Frey手術)を施行し良好な経過を得た.
    膵石の乳頭部嵌頓による閉塞性黄疸は極めて稀であるが,慢性石灰化膵炎の場合はこれも念頭に置き,治療に当たる必要がある.
Selected Expanded Abstract
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