膵臓
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23 巻 , 4 号
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総説
  • 木村 理, 森谷 敏幸, 渡邊 利広, 神尾 幸則, 平井 一郎
    2008 年 23 巻 4 号 p. 473-480
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    IPMNの病態についてはさまざまな未解決の問題点がある.臨床的には,浸潤はどの程度になったら画像診断その他でとらえられるか.浸潤し始めてからもslow growingか,浸潤が明らかになってからの手術で間に合うか,さまざまな進展度の病変に対して,どのような手術がもっとも優れているか,どのような縮小手術が可能か,などである.これはIPMN由来浸潤癌が通常型膵癌と比較してどの程度悪性か,という問題でもある.
    われわれの経験では,IPMN切除症例60例のうち14例がIPMN由来浸潤癌で,その5年生存率はKaplan-Meier法で約40%であった.IPMNが浸潤し始めてからも臨床的にslow growingであることを示唆する所見であるが,IPMN非浸潤癌症例の5年生存率100%に比較すればけっして満足すべき数字ではない.したがって,これまで思われていたより悪性の疾患であることを考慮して治療にあたるべきである.さまざまな縮小手術が試みられているが,「縮小手術をしたことによって宿主(患者)を再発死させてはならない」という腫瘍外科手術の大前提を念頭に置きながら,機能温存によっていかなる恩恵を受けたかを客観的に示していくことが重要である.機能温存手術の適応は厳密にすべきである.
原著
  • 里井 俊平, 竹山 宜典, 中居 卓也, 土師 誠二, 保田 知生, 石川 原, 安田 武生, 新崎 亘, 亀井 敬子, 大柳 冶正
    2008 年 23 巻 4 号 p. 481-485
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に縮小手術が選択されるようになってきたが,その適応はまだ確立されていない.今回我々は,2003年4月から2007年12月までにIPMNにて切除した26例(分枝型21例,主膵管型5例)を主膵管径·嚢胞径·壁在結節の高さ·腫瘍マーカー(CEA·CA19-9)の術前所見より縮小手術の適応についてretrospectiveに解析し検討した.その結果,主膵管型IPMNは全て悪性例であり,分枝型IPMNの術前診断における因子としては悪性群で主膵管径の大きい傾向を認め,壁在結節は有意に高かった.また,主膵管径7mm未満には浸潤癌はなかった.このことから,主膵管の拡張しているものは浸潤癌の可能性が高いと考えられ,分枝型でも主膵管拡張を示すものは浸潤癌を合併している可能性があり,主膵管径が7mm以上のものは縮小手術を選択すべきでないと考えられた.
  • 中莖 みゆき, 石黒 洋, 代田 桂一, 山本 明子, 洪 繁, 後藤 秀実, 藤木 理代, 近藤 孝晴, 遠藤 彰, 成瀬 達
    2008 年 23 巻 4 号 p. 486-493
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    嚢胞性線維症(CF)および慢性膵炎におけるcystic fibrosis transmembrane conductance regulator(CFTR)の機能低下を簡便に診断するために,親指の指腹からの自然発汗のCl-濃度を測定する指先クロライド試験を開発した.左右の指先の同じ部位からの発汗量がほぼ等しいことを利用し,片側の親指からの発汗率をデジタル発汗計で測定し,対側の親指から採取した汗のCl-量を測定して,汗中Cl-濃度を求める.Cl-量の測定は,キャピラリー電気泳動法あるいは高感度Cl-電極のいずれを用いても,再現性よく測定することができた.健康正常人の汗中Cl-濃度は,平均38mMであり,年齢と相関した.高感度Cl-電極を用いれば安価に短時間に測定できるので,CFあるいは慢性膵炎が疑われる場合には,本方法を用いてCFTR機能を評価することが,早期診断に有用と考えられる.
症例報告
  • 赤池 英憲, 板倉 淳, 大澤 俊也, 藤井 秀樹, 中澤 匡男, 村田 晋一, 加藤 良平
    2008 年 23 巻 4 号 p. 494-500
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は78歳女性.高熱と白血球の異常高値を認め,画像診断にて膵尾部の腫瘤と多発性肝腫瘤を認めた.肝膿瘍を疑い肝腫瘤を穿刺するも液性成分は認めず,生検にて腺扁平上皮癌を認めた.膵腺扁平上皮癌,肝転移の疑いで,平成18年10月中旬当科転院となった.当科転院後も高熱と白血球増多が持続していたためG-CSF産生腫瘍が疑われたが,感染性疾患の併存をも疑われ,化学療法を施行できなかった.その後は病状の進行のため入院後41病日に永眠された.病理解剖の結果,膵尾部原発の腺扁平上皮癌,多発肝転移と診断された.経過中の血液検査にて血漿中のG-CSFは高値を示し,さらに免疫染色にて主病変はG-CSF陽性であり,G-CSF産生膵腺扁平上皮癌と診断された.
  • 石井 博道, 前田 敦行, 松永 和哉, 金本 秀行, 岡村 行泰, 杤久保 順平, 成本 壮一, 城原 幹太, 大城 国夫, 長尾 厚樹, ...
    2008 年 23 巻 4 号 p. 501-509
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳男性.膵腫瘍を指摘され当院を受診した.超音波検査で膵頭部に境界明瞭な4cmの低エコー腫瘍を認め,内部は一部嚢胞化していた.CTでは膵腫瘍は多血性病変として描出され,内部に低吸収域を認めた.画像上嚢胞変性を伴う膵内分泌腫瘍と診断したが,生検は本人の希望で施行できず,高齢であることも考慮して経過観察とした.初診から約6か月後のCTで腫瘍は5.2cmに増大し,内部の低吸収域も増大したので悪性非機能性内分泌腫瘍と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.組織学的には,破骨細胞類似の多核巨細胞と異型単核細胞が混在して増殖し,一部に腺癌成分も含まれており破骨細胞型退形成性膵管癌と診断した.嚢胞と思われた部位には赤血球の集簇と壊死を認めた.術後12か月経過した現在,無再発生存中である.退形成性膵管癌は腫瘍径が大きくなるに従い内部に出血·壊死を来すことがある.画像上,境界明瞭な充実性腫瘍で内部に低吸収領域を認める膵腫瘍では本疾患が鑑別診断の一つになると思われた.
  • 石上 俊一, 馬場 信雄, 北口 和彦, 崎久保 守人, 上村 良, 浦 克明, 大江 秀明, 吉川 明, 田村 淳, 小川 博暉, 坂梨 ...
    2008 年 23 巻 4 号 p. 510-518
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳の女性で,2002年3月に左乳癌(pure mucinous carcinoma)で手術後,経過観察中であった.2004年3月のCTと腹部超音波検査で,膵体部の径3cmの腫瘍と主膵管の拡張,肝内に多発する低吸収域を指摘された.CA15-3やCA19-9は正常,CEAが4.7ng/ml, SPan-1が960U/ml, DUPAN-2が1600U/ml以上と上昇していた.以前に乳癌の手術既往があり,転移性再発やそれ以外に胃癌,大腸癌の転移も考え精査を施行した.結局,他病変は認めず,多発肝転移を伴う膵癌の診断で2004年5月より2週間に1回のペースでgemcitabine(GEM)の投与を開始した.膵腫瘍や肝転移巣の縮小に伴いSPan-1は一旦低下したが再上昇し, 2006年2月にS-1/GEM併用療法を開始後まもなく正常化した.その後2007年6月に肝転移巣に対してラジオ波焼灼療法(RFA)を施行した.同時に施行した生検の結果adenocarcinomaの診断であった.患者は,治療開始から3年7か月後の2008年1月に肝不全で死亡したが,亡くなる4か月前の2007年9月までは食思不振や疼痛に悩まされることなく良好な日常生活を送ることができた.さらに亡くなる直前の腹部CT検査で,膵の腫瘍は径1cmと良好にコントロールされていた.予後不良な進行膵癌に対しS-1/GEM併用療法の有効性が示されると同時に,GEMとS-1との相乗効果が推察された.
  • 小森 淳二, 新蔵 信彦, 光吉 明, 京極 方久, 財間 正純
    2008 年 23 巻 4 号 p. 519-524
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    われわれは術式選択に苦慮したIPMTの1症例を経験した.73歳男性,腹痛を主訴に入院した.主膵管型IPMTと診断し,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行し,膵胃吻合を選択した.結果的に膵管内圧亢進に起因すると思われる膵炎を発症し,異時性に残膵全摘を行った.初回手術時の病理所見で主膵管にIPMAを認めた.再手術時の残膵の膵管内全体にIPMTを認め,一部癌化しており,IPMCと診断された.われわれの症例から全膵におよぶ主膵管拡張を伴う主膵管型IPMTは発見時に膵管のどこかに癌化した部分(IPMC)が存在している可能性が強く示唆され,膵全摘の適応があることが示唆された.
  • 山元 俊行, 堀口 明彦, 石原 慎, 伊東 昌広, 永田 英生, 浅野 之夫, 津田 一樹, 森垣 曉子, 志村 正博, 宮川 秀一
    2008 年 23 巻 4 号 p. 525-532
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.2006年4月,検診にて血清アミラーゼ値の高値を指摘され受診.腹部CTにて膵頭部に造影不良腫瘤と主膵管の拡張,上腸間膜動脈(SMA)周囲神経叢浸潤を認めた.また,ERCPにて膵頭部主膵管の狭窄と尾側膵管の拡張を認めた.局所高度浸潤膵癌と診断し放射線化学療法として総照射線量50Gy及びGemcitabine(GEM)600mg/m2の投与を開始した.2コース目以降,800mg/m2のGEMをBi-weeklyで施行し,3コース終了時の腹部CTにて原発巣でPRとSMA周囲神経叢浸潤の軽快を認めたため膵頭十二指腸切除術を施行した.病理検査にて十二指腸粘膜下筋層内に少数の癌遺残を認めたが,膵頭部は腺房萎縮と広範な線維化を認めるのみで明らかな癌細胞は認めなかった.現在,外来にてGEMによる化学療法を継続中であり,明らかな再発·転移は認めていない.
    今回,SMA周囲神経叢浸潤を伴う進行膵頭部癌に対しGEM併用放射線化学療法が奏功し膵頭十二指腸切除術を施行しえた1例を経験したため報告した.
  • 福田 重信, 宮谷 博幸, 本田 英明, 高松 徹, 福西 昌徳, 岩城 孝明, 宇賀神 卓広, 中島 嘉之, 鷺原 規喜, 吉田 行雄
    2008 年 23 巻 4 号 p. 533-540
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/08/28
    ジャーナル フリー
    24歳女性.23歳時,腹痛·下痢·血便で発症した,全結腸型潰瘍性大腸炎の患者.発症から1年4ヵ月後,血清アミラーゼ値上昇.自覚症状はなかった.薬剤性を考え,サラゾスルファピリジンを中止,メシル酸カモスタット300mg経口投与を開始した.
    発症から1年10ヵ月経過,潰瘍性大腸炎が増悪し入院.入院時内視鏡でサイトメガロウイルス腸炎が疑われ,ガンシクロビルを投与.腸炎は改善したが,腹痛,血清アミラーゼ値の上昇を認め,膵炎と診断した.経過から非薬剤性を考え,原因精査目的にERCP施行,分枝膵管の不整拡張があり,慢性膵炎による変化と考えられた.メシル酸カモスタットを600mgに増量,以後膵炎の増悪なく,血清アミラーゼ値上昇を認めない.
    潰瘍性大腸炎に伴う慢性膵炎はまれであり,メシル酸カモスタットを投与して経過を追った症例は少ない.臨床上重要であると考えられるため,文献的考察を加え報告する.
Selected Expanded Abstract
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