膵臓
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23 巻 , 5 号
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特別寄稿
  • 川 茂幸, 藤永 康成, 入澤 篤志, 能登原 憲司, 羽鳥 隆, 乾 和郎, 船越 顕博, 須田 耕一, 高瀬 優, 明石 隆吉, 新倉 ...
    2008 年 23 巻 5 号 p. 555-569
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎は膵癌と臨床所見が類似し,かつて膵切除術が施行された症例があった.2002年に自己免疫性膵炎の診断基準が示されて以来,疾患概念が広く認知されてきたが,それでも鑑別困難な症例が存在する.自己免疫性膵炎はステロイド治療が奏功するので,不必要な手術を避けるためにも両者の鑑別が重要である.本邦を中心に本疾患の詳細な病態が報告され,集積されてきた結果,臨床所見,血液検査所見,画像所見,病理所見について膵癌との鑑別点が明らかになってきた.本邦の診断基準はステロイド投与による治療的診断を認めない立場であり,鑑別困難例に対して最終的には開腹膵生検を施行せざるをえない場合もある.病態を総合的に充分に検討し,これら鑑別点を参考にして,自己免疫性膵炎をできる限り正確に診断することが肝要である.両者の鑑別に有用と考えられるいくつかのポイントを厚生労働省難治性膵疾患調査研究班(大槻班)でまとめた.
総説
  • 神澤 輝実, 岡崎 和一, 川 茂幸, 下瀬川 徹, 大槻 眞
    2008 年 23 巻 5 号 p. 570-577
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    本邦の自己免疫性膵炎の臨床診断基準は,自己免疫性膵炎として確実な症例のみを診断するミニマムコンセンサスの立場から作成された.韓国とアメリカから2006年に報告された診断基準は,ステロイド治療に対する反応性や膵外病変などを含むより広い立場をとっている.2008年1月に日本と韓国の研究者によってAsian diagnostic criteria for autoimmune pancreatitisが提唱され,7月にはソウルで,自己免疫性膵炎の診断基準に関する国際コンセンサスに向けて,国際シンポジウムが開催された.本邦や韓国で認められている自己免疫性膵炎は,膵臓に著明なリンパ球と形質細胞の浸潤と線維化を認めるlymphoplasmacytic sclerosing pancreatitis(LPSP)であるが,欧米からは膵臓に好中球の浸潤を認める自己免疫性膵炎が報告され,LPSPとは異なる病態を呈する事が明らかにされてきた.自己免疫性膵炎の臨床診断基準に関する国際コンセンサスへの歩みが始まったが,未解決な部分も多く,今後も国際的観点から,諸外国の研究者と討論を重ねていく必要がある.
原著
  • 浜田 幸宏, 今泉 弘, 渡邊 雅明, 菊池 秀彦, 渡邊 真彰, 西巻 博, 木田 光広, 砂川 慶介, 相馬 一亥, 西元寺 克禮, 松 ...
    2008 年 23 巻 5 号 p. 578-586
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    近年,重症急性膵炎(SAP)に対する蛋白分解酵素阻害薬·抗菌薬持続動注療法(以下,動注療法)の有効性を示す報告が散見される.広域抗菌スペクトルを有するimipenem/cilastatin(IPM/CS)が,動注療法の抗菌薬として繁用されている.しかしnafamostat mesilate(NM)との配合変化が問題となる.一方,biapenem(BIPM)は他のカルバペネム系抗菌薬に比べ,物理化学的安定性に優れている.我々は,BIPMとNMによる動注療法を行なったSAP 6例を経験した.生存率は83.3%であった.6例中1例のみが膵膿瘍を合併した.また1例は膵感染と関係のないMRSA腸炎による敗血症のため死亡した.SAPに対するBIPMによる動注療法はカテーテル管理の簡便化が図れ,IPM/CSと同等の治療成績が期待される.
  • 正宗 淳, 菊田 和宏, 渡邊 崇, 佐藤 賢一, 下瀬川 徹
    2008 年 23 巻 5 号 p. 587-593
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    膵星細胞は慢性膵炎や膵癌の際の線維化形成に中心的役割を果たす.最近,膵星細胞の多彩な細胞機能が明らかとなっている.今回,膵星細胞の血管新生誘導能について検討した.膵癌切除膵組織よりヒト膵星細胞を分離した.膵星細胞培養上清(CM)を作成し,ヒト臍静脈血管内皮細胞の増殖,遊走,細胞内シグナル伝達系に与える影響を検討した.更に,3次元管腔構造形成(in vitro血管新生能)ならびにヌードマウスの皮下でのin vivo血管新生誘導能についても検討した.CMは血管内皮細胞の増殖と遊走を刺激した.CMはERK系ならびにAkt系を活性化し,CMによる増殖ならびに遊走誘導は,これらのシグナル伝達系の抑制剤であるU0126およびwortmanninにより抑制された.CMは,in vitroおよびin vivoにおいて血管新生を誘導した.本研究により膵星細胞が血管新生能を有することが示された.
症例報告
  • 松本 逸平, 黒田 大介, 新関 亮, 外山 博近, 辻村 敏明, 金 英植, 高瀬 至郎, 木戸 正浩, 藤田 恒憲, 味木 徹夫, 黒田 ...
    2008 年 23 巻 5 号 p. 594-599
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    59歳女性.直腸腫瘍による排便時出血を主訴に来院し,腹部CTで膵体尾部に4cmの嚢胞性腫瘍を認めた.精査の結果,主膵管型膵管内乳頭粘液性腺癌(intraductal papillary mucinous carcinoma,以下IPMC)と診断した.術前診断では腫瘍は膵体尾部に限局し,明らかな浸潤所見は認めなかった.術中所見でも浸潤癌の所見なく腹腔鏡補助下膵体尾部切除を施行した.腹腔鏡下に膵体尾部脾臓を後腹膜より剥離し,上腹部正中に6cmの皮切をおき小開腹にて体外へ誘導した.超音波外科吸引装置(CUSA)を用いて膵を切離,主膵管を結紮切離し,切除を終了した.術後病理でIPMC(pTis, pN0, M0, Stage 0)と最終診断し,術後第12日目に退院した.本症例ではCUSAを用いた膵実質切離手技を腹腔鏡補助下膵切除に応用し術後経過良好であった.IPMCに対しても詳細な術前·術中診断を行い,症例を選択すれば腹腔鏡を用いた低侵襲手術が可能と考えられた.
  • 白川 博文, 後藤 田直人, 高橋 進一郎, 中郡 聡夫, 小西 大, 木下 平, 小嶋 基寛
    2008 年 23 巻 5 号 p. 600-607
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳女性.肝血管腫にて,1996年7月から当院通院経過観察中であった.2006年9月,画像検査にて初めて主膵管の拡張を指摘された.明らかな腫瘍の存在を指摘し得なかった為,当院外来通院にて肝血管腫とともに厳重に経過観察の方針となった.2007年2月,画像検査にて主膵管径のさらなる増大,膵頭部の分枝膵管の拡張と内部に壁在結節を疑われ,膵頭部分枝型膵管内乳頭粘液性腫瘍と診断した.2007年3月,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理診断は分枝膵管から主膵管にまで広がる腺腫であった.術後経過良好にて第12病日に退院した.現在術後13ヶ月,再発を認めていない.膵管内乳頭粘液性腺腫において,他疾患の経過観察中に偶発的に発見され初期像からの経過を観察された切除例は,その自然経過を知る上で貴重な症例であり,文献的考察を加え報告する.
  • 飯田 洋, 窪田 賢輔, 馬渡 弘典, 米田 正人, 後藤 歩, 阿部 泰伸, 稲森 正彦, 小林 規俊, 桐越 博之, 斉藤 聡, 中島 ...
    2008 年 23 巻 5 号 p. 608-614
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は66歳男性,閉塞性黄疸で発症したAutoimmune pancreatitis(AIP)が,1年6ヶ月のステロイド維持療法後,3年後に閉塞性黄疸で再発した.ステロイド再投与後,AIPは改善したが,その6ヶ月後,脳内出血で再入院した.7ヶ月後CA19-9 364U/mlと急上昇し,PET/CTで膵尾部癌,多発肝転移,骨盤転移と診断された.画像診断で膵炎所見は改善し,血清IgG4値も330から30mg/dlに改善した.抗癌剤投与が行われたが無効であった.最近,AIPの膵癌併発例が散見されるようになった.これまでAIPは予後良好の膵炎と認識されてきたが,今後は,膵炎症状の消退後も癌の存在を常に念頭に起き,ステロイドの長期投与の併発症に注意しながら,厳重に長期観察を行うことが肝要と考えられた.
  • 中原 一有, 小林 剛, 藤田 直孝, 野田 裕, 伊藤 啓, 尾花 貴志, 洞口 淳, 高澤 磨
    2008 年 23 巻 5 号 p. 615-621
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    症例は53歳女性.慢性膵炎の急性増悪と膵仮性嚢胞内の出血,増大にて入院となり,内視鏡的ドレナージ術を施行した.膵頭部の60mm大の仮性嚢胞に対し胃前庭部から超音波内視鏡(EUS)下に穿刺し,0.035inchのガイドワイヤーを挿入後,5Frのテーパードカテーテルから段階的な穿刺ルートの拡張を試みた.しかし,嚢胞壁は慢性炎症性変化で12mmと著明に肥厚,硬化しており,拡張が困難であった.そこでガイドワイヤーチャンネル付きのニードルナイフを用いて胃壁および嚢胞壁を通電切開したところ,嚢胞内へのアプローチが可能となった.これによりカテーテル径5Frの拡張用バルーンカテーテルが嚢胞内へ挿入可能となり,嚢胞壁を拡張して6.5Fr経鼻外瘻チューブを留置しえた.
    今回われわれは12mmの厚い嚢胞壁を有する膵仮性嚢胞に対しEUSガイド下ドレナージを施行したところ,穿刺後,肥厚,硬化した嚢胞壁のため瘻孔拡張に難渋したが,ガイドワイヤー式ニードルナイフおよび細径拡張用バルーンカテーテルの併用が有用であった.
  • 高瀬 功三, 今西 築, 村尾 眞一, 金丸 太一, 山本 正博
    2008 年 23 巻 5 号 p. 622-627
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    今回,膵癌の小腸転移により小腸穿孔を来した1例を経験したので本邦文献報告例の検討および文献的考察を加え報告した.症例は84歳,女性.急性腹症の精査にてFree airおよび膵尾部腫瘍を指摘された.開腹所見では空腸に全周性腫瘍が存在し,同部で穿孔を認めた.空腸部分切除および腫大した幽門上リンパ節(#5)のサンプリングを行なった.術後病理所見にて小腸腫瘍および#5リンパ節は中分化腺癌で同一の組織像であり,小腸腫瘍は転移性腫瘍の形態を示したことから膵原発と考えられた.膵癌からの小腸転移は極めて稀である.我々が検索しえた限り,膵癌小腸転移の本邦文献報告例は自験例を含めわずか6例であった.平均年齢66.2歳,男性5例,女性1例であった.転移は全例空腸であり,穿孔例は3例で,5例で小腸切除がなされていた.転移経路は血行性3例,播種性3例であった.全例とも予後不良であった.
  • 大田 悠司, 菊山 正隆, 笹田 雄三, 松橋 亨, 仲程 純, 高瀬 優, 須田 耕一
    2008 年 23 巻 5 号 p. 628-633
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/10/31
    ジャーナル フリー
    39歳·男性.心窩部痛を主訴に入院.ビール2本/日程度の飲酒歴あり.2年前のERCPでは広岡らの分類で3型の膵管分枝癒合を認めた.入院時の腹部超音波で膵頭部に境界不明瞭な低吸収域を認め,同病変は造影CT早期相で軽度に,後期相で周囲膵実質と同程度に造影された.ERCPで腹側膵領域に一致して粘液様の透亮像を伴う不整で高度な膵管拡張を認めた.膵頭十二指腸切除術を行なった.病理組織標本では病変はほぼ腹側膵領域に一致し小葉間の線維化が著しくnodular pancreatitis patternを呈していた.小葉間膵管には蛋白栓が見られた.アルコール性慢性膵炎と診断した.本症例の特徴は腹側膵領域に限局して高度のアルコール性慢性膵炎所見を呈している点である.主乳頭機能異常により生じた病変と推察した.その背景には存在する膵管分枝癒合に関わる病態の可能性が推察された.
Selected Expanded Abstract
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