膵臓
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25 巻, 2 号
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原著
  • 伊藤 英人, 中原 生哉, 葭内 史朗, 木村 宗士, 大原 行雄, 金戸 宏行, 遠藤 高夫, 細川 雅代, 篠村 恭久
    2010 年 25 巻 2 号 p. 105-108
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    MUC1は癌の浸潤と関連し膵癌では高率に発現する.KL-6はMUC1上に発現するシアル化糖鎖抗原である.我々はIPMNの悪性度診断と膵癌の診断における膵液中KL-6値測定の有用性について検討した.膵液KL-6値(U/ml )は悪性IPMN群(670±894)と膵癌群(26±42)が良性IPMN群(5.2±3.4),コントロール群(4.3±2.3)と比較し有意に高値を示した.膵液KL-6値のcut-off値を20U/ml とすると悪性IPMNに対しては感度,特異度,正診率ともに100%であり,膵癌に対しては感度38%,特異度100%,正診率69%であった.膵液中KL-6値測定は膵液中CA15-3,CA19-9,CEA値測定と比較し悪性IPMNと膵癌の診断に優れていた.膵液中KL-6値測定はIPMNの悪性度診断と膵癌の診断に有用である可能性が示された.
  • 松村 祐志, 須山 正文, 崔 仁煥, 窪川 良廣, 神谷 尚則, 渡辺 純夫
    2010 年 25 巻 2 号 p. 109-116
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    目的 Gemcitabine(以下GEM)とS-1同時併用化学放射線療法におけるS-1の最大耐用量および推奨用量を明らかにする.
    対象と方法 2004年2月から2006年8月までに局所進行膵癌Stage IVaかつ病理学的に腺癌と確定診断された症例.GEMは200mg/m2で週1回6週間投与した.放射線療法は総照射線量50.4Gy照射した.S-1は経口内服で14日間連続投与後7日間休薬し,さらに14日間連続投与した.S-1の投与量設定はレベル1:50mg/m2,レベル2:60mg/m2,レベル3:70mg/m2,レベル4:80mg/m2とした.
    結果 レベル1,2,3の各3症例でDLTは認めなかった.レベル4(S-1:80mg/m2)の3例中1例に,DLTとなるGrade 3の血小板減少を認めたが,結果的にレベル4の計6例中5例にDLTの発現を認めなかった.以上から,S-1の最大耐用量(MTD:Maximum Tolerated Dose)および推奨用量(RD:Recommended Dose)は80mg/m2とした.
    結語 局所進行膵癌に対して,S-1:80mg/m2,GEM:200mg/m2,放射線療法50.4Gy照射が安全に施行できることを確認した.
  • 三好 広尚, 乾 和郎, 芳野 純治, 奥嶋 一武, 服部 昌志, 山本 智支
    2010 年 25 巻 2 号 p. 117-124
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎の腹部超音波像(US)と造影超音波像(CEUS:contrast enhanced ultrasonography)について検討した.対象は自己免疫性膵炎7例,性別は男性5例,女性2例,年齢は57~74歳(平均67.4歳)であった.使用機種は東芝SSA-370A(Power Vision 6000),東芝SSA-770A(Aplio)を用い,撮影方法はAdvanced Dynamic Flow(ADF)とFlash Echo Image(FEI)であった.超音波造影剤はLevovist®を用い,300mg/ml を7ml ,肘静脈より1ml /秒で注入した.全例で膵腫大を呈した.膵腫大の部位は膵全体が3例,膵頭部が3例,膵体尾部が1例であった.膵腫大の程度は高度3例,中等度3例,軽度1例であった.内部エコー像は全例で,正常膵実質と比較して低エコ―を呈した.1例は非連続性に頭部と体尾部の2ヶ所に低エコー域を認めた.CEUS像では,膵腫大の部位が染影されるType I の5例と染影されないType II の2例に分類された.ステロイド治療後には全例で膵腫大は改善した.染影効果は治療後Type I の5例中4例で減弱したが,1例は軽度増強した.Type II の2例は治療前と同等に染影効果は認めなかった.これらの2つのTypeは病期あるいは病態が異なる可能性があると考えられた.USは自己免疫性膵炎を容易に拾い上げることができ,CEUSはType I においては膵癌との鑑別診断および治療前後の評価に有用であったが,Type II では膵癌との鑑別に注意する必要があると考えられた.
症例報告
  • 那須 淳一郎, 井口 東郎, 浅木 彰則, 大田 耕司, 棚田 稔
    2010 年 25 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.腹痛を主訴に膵癌,切除可能と診断された.膵体尾部切除術およびD2郭清ののち,GEMによる術後補助化学療法を開始した.5コース目day1に血清クレアチニンが2.05mg/dl ,尿蛋白+になり,腹部CTで両側腎腫大あったためGEMを中止した.腎生検で薬剤性腎障害,溶血性尿毒症症候群と診断した.プレドニゾロンの投与で血清クレアチニンは低下し,プレドニゾロン開始から13カ月の現在,膵癌の再発はない.
  • 岩城 孝明, 宮谷 博幸, 池谷 敬, 山中 健一, 池田 正俊, 牛丸 信也, 松本 吏弘, 高松 徹, 福西 昌徳, 鷺原 規喜, 吉田 ...
    2010 年 25 巻 2 号 p. 132-137
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    症例54歳,男性.50歳時に肝機能障害を指摘されたが,膵炎発作の既往なし.嗜好歴は,缶ビール2本/日,焼酎水割5~6杯/日.
    心窩部痛を主訴に近医受診.血液検査,腹部CTにて急性膵炎と診断され当院へ救急搬送となった.当院で施行した腹部CT所見で,膵管癒合不全,十二指腸副乳頭部での膵石嵌頓が疑われたため,同日緊急内視鏡検査を施行した.副乳頭からの造影にて尾部膵管までの背側膵管が独立して認められ,背側膵管は拡張し,内部に陰影欠損を認めた.内視鏡的副乳頭切開術後,経鼻膵管ドレナージを施行した.保存的治療で膵炎,背側膵管拡張は軽快し,陰影欠損は消失した.経過良好にて第36病日に退院し,16ヵ月後の現在まで膵炎の再発を認めていない.
    膵管癒合不全において,膵石が副乳頭に嵌頓し慢性背側膵炎が増悪する例は稀であり,内視鏡的副乳頭切開術が膵炎の重症化を予防するうえで有効であったので報告する.
  • 山元 隆文, 大山 宗士, 海江田 衛, 川井田 啓介, 菰方 輝夫, 東 美智代, 米澤 傑
    2010 年 25 巻 2 号 p. 138-145
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/04/30
    ジャーナル フリー
    今回,主膵管内へ進展を呈した膵漿液性嚢胞腺腫の1例を経験した.症例は82歳,男性.前医にて急性膵炎の精査中に膵頭部に充実性腫瘍を指摘され,精査目的にて紹介となった.腫瘍は約2cm大で,造影CT早期相で造影効果を示し,後期相でwash outした.CPR構築像やMRCPでは膵頭部主膵管に狭窄と思われる不明瞭な所見を認めた.EUS,IDUSでは比較的高エコーパターンを呈した腫瘍と,腫瘍の一部が主膵管内へ突出,進展している所見が認められた.主膵管進展を呈した膵腫瘍の診断にて,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が施行された.病理組織学的には腫瘍は増生した繊維性間質を伴った微小な嚢胞で構成され,漿液性嚢胞腺腫と診断された.腫瘍は主膵管を圧排し,管腔内への突出,進展も認められた.過去に主膵管内進展を呈した膵漿液性嚢胞腺腫の報告例はなく,非常に興味深い症例と思われた.
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