膵臓
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25 巻, 6 号
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ガイドライン
症例報告
  • 高岡 聖子, 浅木 彰則, 灘野 成人, 西村 理恵子, 寺本 典弘, 井上 武, 井口 東郎
    2010 年 25 巻 6 号 p. 682-686
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/27
    ジャーナル フリー
    66歳,男性.平成11年,膵癌にて膵体尾部切除を施行し,組織型は類破骨細胞型巨細胞癌であった.経過観察中の平成20年2月にCA19-9の上昇を認め,PET/CTにおいて残存膵頭部の腫瘤及び同部位へのFDG集積所見より膵癌再発を疑われ,当院紹介となった.術前の造影CTにおける進展度はT4(TS2,CH(-),DU(-),S(+),RP(+),PV(+),A(-),PL(-),OO(-))N2M0,Stage IVbであった.膵頭十二指腸切除に臨んだが,開腹時に腹腔動脈周囲神経叢への浸潤を認め,切除不能と判断し,試験開腹で終了した(組織診断:tubular adenocarcinoma).その後はgemcitabineによる化学療法を施行している.本症例は膵破骨細胞型巨細胞癌の術後9年目にして管状腺癌(tubular adenocarcinoma)を発症した極めて稀な症例と考える.
  • 高見 一弘, 神賀 貴大, 高橋 良延, 小針 正人, 神山 篤史, 大和田 康夫
    2010 年 25 巻 6 号 p. 687-692
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は40歳代,男性.突然の腹痛と背部痛が出現し救急車にて当院救急外来受診した.右腹部全体に強度の圧痛と右上腹部には腫瘤を触知し,腹部CT所見では後腹膜に広範囲の血腫を認め,3D-CTでは膵十二指腸動脈瘤が確認された.動脈瘤の精査加療目的に腹部血管造影検査を施行したところ,上腸間膜動脈造影にて前下膵十二指腸動脈と前上膵十二指腸動脈のアーケードに径8mm大の動脈瘤を認めた.これに対し動脈瘤を中心とし中枢・末梢両側塞栓によるTAEを施行した.TAE後のCTでは動脈瘤の消失を認め,その後再出血もなく外来follow中である.膵十二指腸動脈瘤は稀な疾患で腹部内臓動脈瘤の約2%と報告されている.近年IVRの進歩に伴い,手術治療よりも侵襲の低いTAEによる治療報告が増えている.今回,われわれは,膵十二指腸動脈瘤破裂に対するTAEにより止血,救命し得た1例を経験した.本症の様な動脈瘤の末梢側血管の塞栓においては血行動態と血管径を考慮し,より大きなコイルを選択する必要がありこの点に関し考察を加え報告する.
  • 関 誠, 名取 健, 岸 庸二, 森村 玲, 吉岡 龍二, 古賀 倫太郎, 斎浦 明夫, 山田 恵子, 田中 宏子, 松枝 清, 鹿取 正道 ...
    2010 年 25 巻 6 号 p. 693-701
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/27
    ジャーナル フリー
    膵腺房細胞癌は稀な疾患で,発見時の平均長径は10cmと言われ,2cm以下で発見されることは極めて稀である.症例は61歳女性で,初診時の近医US/CTで15mm大の低エコー/低吸収像として発見され,嚢胞性病変に類似していたため経過観察となった.その後患者が来院せず,2年後に腹痛を主訴に再来した.この時,同病変は径3cmに増大しており,手術を勧めたが拒否された.その1年半後(初診から3年半後)に当院受診し,7cmに急速増大していると聞いて,ようやく手術を受けた.術後5カ月,多発肝転移により死亡した悪性度の強い癌であった.組織診断は,免疫組織学的検索を含めて膵腺房-内分泌細胞併存癌であった.一般に膵US/CT検査において,2cm以下の低エコー/低吸収像は多くが嚢胞性病変であるが,稀に腺房細胞癌など充実性腫瘍の早期像を見ている可能性もあり,経過観察前にdynamic CT/MRI,嚢胞と鑑別できなければ,EUS/PETなど精査が必要である.
  • 櫻井 克宣, 塚本 忠司, 清水 貞利, 金沢 景繁, 山下 好人, 西口 幸雄
    2010 年 25 巻 6 号 p. 702-707
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/01/27
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の女性.スクリーニングのFDG-PET検査で膵尾部に高集積を認めたため,精査目的に当科を紹介受診となった.CTおよびMRI検査では径1cmの充実性腫瘍が指摘された.腫瘍内に嚢胞や石灰化は認めなかった.血液検査上腫瘍マーカーや血中内分泌ホルモン値の上昇は認めなかった.PET検査では膵尾部の腫瘍の部位に一致した高集積を認めた.膵癌を否定できず,膵体尾部切除術を行った.病理組織学的検査では好酸性の胞体を持つ腫瘍細胞が充実性胞巣を形成し増生していた.免疫組織学的にはα1-antitrypsin,CD10,NSE,CD56が陽性,synaptophysin,chromogranin Aは陰性であり,solid pseudopapillary neoplasm(SPN)と診断された.小さなSPNは石灰化や嚢胞を伴わないことがあり膵癌との鑑別が困難である.また小さなSPNはPETで高集積を示すことがあるため,PETで高集積する小さな膵腫瘍の場合,SPNを鑑別診断として念頭におく必要があると考えられた.
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