膵臓
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26 巻, 2 号
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会長講演:2010年膵臓学会
  • 中尾 昭公
    2011 年 26 巻 2 号 p. 117-122
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    The first case of pancreatoduodenectomy(PD) in Japan was done by Kuru in 1946, then Yoshioka in 1947, and then Honjyo performed a total pancreatectomy in 1949. Portal vein resection combined with PD was reported by Kikuchi in 1956 and by Asada in 1963. They used 70% alcohol-preserved homograft of the vein. Fortner's report of regional pancreatectomy in 1973 greatly impressed Japanese pancreatic surgeons. Then in 1981, I developed my own catheter-bypass method of the portal vein using antithrombogenic material. The isolated pancreatoduodenectomy combined with portal vein resection was completed. This bypass method made it possible to prevent portal congestion or hepatic ischemia during portal vein resection or simultaneous resection of the hepatic artery. Thus, vascular resection has become safer and easier during pancreatic surgery. Extended radical pancreatic resection was developed during the 1970s and 1980s. The high mortality rate of PD in the 1950s and 1960s decreased gradually to within 10% in the 1980s and 5% in the 1990s. Hanyu had performed a landmark 1000 PDs in 1997, and the mortality rate has been 1% since 1989.
    We have performed 825 pancreatic resections, for various diseases since 1981 and mortality was observed in 14 cases (1.7%). Moreover 441 pancreatic resections for pancreatic cancer along with combined resection of the portal vein were performed in 282 cases during 1981-2009. The mortality rate of PD for pancreatic cancer was 2.7% in my series, but no mortality has been experienced in the last 11 years. However, the prognosis for pancreatic cancer is still poor and adjuvant therapy has been combined with radical surgery such as intraoperative radiotherapy using linac, and intraportal continuous infusion of 5-FU. Adjuvant chemotherapy using gemcitabine or TS-1 and clinical trial of oncolytic virus therapy using herpes simplex virus (HF10) have been performed, yet numerous problems remained to be solved.
    I have devised techniques such as isolated pancreatoduodenectomy combined with portal vein resection using catheter-bypass method for the portal vein and a mesenteric approach and pancreatic head resection with segmental duodenectomy(PHRSD) for IPMN. Every day I still feel great pleasure and a sense of fulfillment in performing surgery. Surgeons are able to care for patients all the way from diagnosis and surgery through postoperative management and follow-up after the patient leaves the hospital. This sense of accomplishment is truly great, and it is a specialty that I believe we should be sure to pass down to younger people. Let me say that I am filled with gratitude to my colleagues and the younger doctors I have worked with in medical practice and research.
特集:膵臓・膵島移植の現況と最新の研究
  • 鈴木 康之
    2011 年 26 巻 2 号 p. 123-124
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
  • 伊藤 壽記, 石橋 道男
    2011 年 26 巻 2 号 p. 125-131
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    本邦では,1997年10月16日,「臓器の移植に関する法律」,いわゆる"臓器移植法"が実施されて後,2000年4月の第1例目の膵腎同時移植以降,2009年末までに,脳死下,心停止下,ならびに生体からの膵臓移植が合計81例行われた.その間,脳死下では,47例の膵腎同時移植(SPK),9例の腎移植後の膵臓移植(PAK),3例の膵単独移植(PTA)が行われた.さらに,心停止下で2例のSPKと20例の生体からの膵臓移植が行われた.
    本邦での膵臓移植(脳死下,心停止下)はいわゆるマージナルドナーが73.8%と高率であることが特徴である.本邦では,ドナーの条件が悪いにも関わらず,移植膵の1年,3年,5年生着率は,各々,88.4%,83.6%,73.3%と,欧米での成績と遜色ない結果が得られている.
  • 杉谷 篤
    2011 年 26 巻 2 号 p. 132-141
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    膵臓移植あるいは膵腎同時移植は本邦でも増加している.特に,2010年7月の臓器移植法改正後,脳死ドナーからの膵臓提供が増えて多くの認定施設で施行されるようになってきた.本稿では,最近の膵臓移植の手術手技について,脳死ドナーと心停止ドナーからの膵臓摘出術,移植施設におけるBench surgery,レシピエントに対する膵単独移植あるいは膵腎同時移植の手術手技を述べる.
    膵臓摘出もふくめたドナーの多臓器摘出手術は,血管内潅流(Core cooling)とともに表面冷却(Surface cooling)を併用するSuper rapid techniqueが臓器のViabilityを保ち,脳死でも心停止でも対応でき,簡便・安全な方法である.小腸や肝臓に血管を優先的に供与するので,膵頭部と膵体尾部の血流を保持し1本化するためのBench surgeryが必要となる.レシピエント手術は右腸骨窩の腹腔内で腸骨動静脈に端側吻合し,膵液ドレナージを腸管か膀胱に行うことが多い.膵腎同時移植の場合は,対側の腹膜外腔に腎移植を行う.本稿では,日本の膵臓移植が医学的・社会的状況に応じて進化・変遷し,現時点でもっとも妥当と思われる手術手技を概説した.
  • 松本 逸平, 新関 亮, 外山 博近, 浅利 貞毅, 後藤 直大, 福本 巧, 具 英成
    2011 年 26 巻 2 号 p. 142-152
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    臓器保存法は歴史的に主に腎移植の領域で研究,開発が進められ,灌流保存法(hypothermic pulsatile perfusion)が提唱され,臓器保存液による単純浸漬保存法(simple cold storage)がそれに続いた.膵保存では灌流保存法は臨床応用に至らず,1980年代に開発されたUniversity of Wisconsin solution(UW液)による単純浸漬保存法は長期膵保存を可能とし,現在でも標準的保存法である.いくつかの新規保存液が開発され臨床応用されているが,現時点でUW液を凌駕するエビデンスはない.本学で開発されたPerfluorochemical(PFC)と臓器保存液を用いた二層法膵保存は,PFCにより保存中の臓器に酸素を供給できるという特性を有する.二層法は主に膵島移植において2000年以降北米を中心に臨床応用され,優れた成績を示した.近年,従来のUW液の代わりにM-Kyoto液を用いた二層法や膵管内注入保存法などによりさらに優れた成績が報告されている.
    マージナルドナーや心停止ドナーからの膵臓移植,1ドナー1レシピエントでの膵島移植の実現など,今後も臓保存法が果たす役割は大きく,さらなる研究,発展が望まれる.
  • 剣持 敬
    2011 年 26 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    当施設では2010年末までに,生体膵臓移植16例(14例が生体膵・腎同時移植)を施行した.ドナーの適応は日本膵・膵島移植研究会のガイドラインを遵守した.6例は血液型不適合間の移植であった.ドナー手術は左腎摘術,膵体尾部切除術をHALSで行った.レシピエントは全例が1型糖尿病で,糖尿病性腎症はIV期,V期であった.血糖コントロールは極めて不良で,低血糖発作も頻回であった.移植手術は,左腸骨窩に腎臓移植,右腸骨窩に膵臓移植を行い,膵液は膀胱ドレナージとした.免疫抑制法は4剤併用としABO血液型不適合では脱感作療法を行った.ドナーは全例合併症なく退院した.レシピエントは全例透析離脱し,1例を除きインスリン離脱した.ABO血液型不適合症例も適合例と同等の成績を示した.生体膵臓移植は,長期待機が不要,安全性が高い,ABO血液型不適合も可能などの利点があり,重症1型糖尿病腎不全の治療法のオプションとしての意義を有すると考える.
  • 松久 宗英
    2011 年 26 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    膵移植は1型糖尿病において長期のインスリン離脱が期待できる唯一の根治治療である.本邦の膵移植後生存率や膵グラフト生着率は欧米に匹敵する優れた成績であるが,移植後インスリン離脱に時間を要する遷延性膵グラフト機能を呈する場合が多い.この理由として,高齢で死戦期に複数の昇圧剤を用いるマージナルドナーである場合が多いこと,また移植後急性期は免疫抑制薬を高用量必要とすることが挙げられる.そこで,インスリン離脱やグラフト障害を予知するため,移植後早期から膵グラフト機能の正確な評価が必要となる.筆者らは膵移植後72時間に人工膵島を用いた厳格な血糖管理を実施し,その時の必要インスリン量が1年の経過において,膵グラフト機能を反映する指標であることを見出している.これからの膵グラフト機能の長期安定化に向けて,β 細胞保護療法の確立が望まれるが,現状では移植後チーム医療による生活習慣への積極的介入が有効と考えられる.
  • 穴澤 貴行, 後藤 満一
    2011 年 26 巻 2 号 p. 169-175
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    わが国の膵島移植は,いわゆる「エドモントンプロトコール」を用いて2004年から臨床実施され,主として心停止ドナーより提供された膵を用いた65回の膵島分離から,34回の移植が18症例に対して行われた.初回移植後1年,2年,3年時における膵島生着率(basal c-peptide levelが0.3ng/ml 以上を生着とした場合)はそれぞれ76.5%,47.1%,33.6%で,膵島生着中の血糖制御は良好であることが確認された.近年海外では,導入時にthymoglobulinおよびヒト型可溶性TNFαレセプター製剤を用いる免疫抑制法により,エドモントンプロトコールを凌駕するインスリン離脱率と,インスリン離脱期間の延長が報告されている.このような現状を受けて本邦でも,初回移植の導入時にthymoglobulinおよびヒト型可溶性TNFαレセプター製剤を用いる新しい免疫抑制プロトコールでの膵島移植実施を計画し,2011年より多施設共同臨床試験として開始する実施体制が整備された.
  • 松本 慎一
    2011 年 26 巻 2 号 p. 176-182
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    膵島移植は提供された膵臓から膵島細胞を分離し,分離された膵島細胞を移植するインスリン依存状態糖尿病に対する移植治療である.移植手技そのものは低侵襲であり,患者にとって優しい治療であるが,膵島を分離する技術は難しく,膵島分離の技術革新は重要な研究テーマである.我々は,膵島分離の成績を向上させるために,膵管保護技術,酸素化二層法膵保存,密度を調整した密度勾配遠心法などを導入した.その結果,最新のプロトコールを用いると膵島分離成功率は90%に達し,さらに,1名のドナーの膵臓を用いてのインスリン離脱が可能であった.膵島分離成績の向上は,直接膵島移植の成績に貢献し,膵島移植を標準治療とするために重要と考えられる.
  • 米良 利之, 小玉 正太, 安波 洋一
    2011 年 26 巻 2 号 p. 183-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    2000年の臨床膵島移植成功例の報告以来,欧米を中心に移植症例数が増加している.膵島移植の適応は1型糖尿病であり,中でもインスリン治療で血糖管理が困難な症例が対象になる.現在までに1回の膵島移植でレシピエントの血糖安定化が得られ,HbA1cも正常化する事が判明している.しかしながら,移植後にインスリン治療より離脱するには2~3回,すなわち2~3人分のドナー膵臓が必要で,この事が臨床膵島移植で解決すべき最大の課題となっている.この問題は言い換えれば生着した移植膵島数(量)が不十分である事を反映しており,その解決策は如何にして十分量のドナー膵島を確保し,移植後のドナー膵島喪失を最小限にするかという点に集約される.本稿では後者の移植膵島障害,特に移植早期(24時間以内)に発現する膵島移植特有の自然免疫拒絶反応の機序,ならびに制御法について,我々が見出した知見について報告する.
  • 坂田 直昭, 後藤 昌史, 江川 新一, 海野 倫明
    2011 年 26 巻 2 号 p. 190-196
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    膵島移植は1型糖尿病の根治につながる治療法であり,2000年に発表されたエドモントンプロトコールと呼ばれる一連の技術革新を経て,その治療成績は大幅に向上し,世界で広く行われるようになった.しかしながら,移植後5年のインスリン離脱率は10~15%と低く,未だ発展途上の治療法である.膵島の生着状態を把握し,その状態変化に応じた治療方針を立案するためには,移植膵島を経時的に評価する非浸襲性の検査法を確立することが急務である.近年,MRIやPETなどの画像検査により,移植膵島の生着を評価する試みが進められている.膵島は400μm以下と小さく,従来の画像モダリティで同定することは不可能と考えられてきたが,膵島を標識することで,MRIにより捕捉できることが明らかになってきた.本稿では,膵島生着確認のためのMRI研究がどこまで進められてきたかを,著者らのデータを交えて紹介する.
  • 岩永 康裕, 金宗 潤, 高折 恭一, 上本 伸二
    2011 年 26 巻 2 号 p. 197-203
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    膵島移植では,インスリン離脱するために2~3回の移植を必要とし,たとえインスリン離脱してもそれを移植後長期に渡って維持することが難しい.アロ免疫反応以外に膵島移植特有の免疫反応があるからである.まず,膵島が門脈経由で移植された直後に,補体,凝固,そして自然免疫反応によって血栓性及び炎症性反応であるInstant blood-mediated inflammatory reaction(IBMIR)が引き起こされる.次に,核内タンパク質が関与する早期拒絶反応も起こり,中長期的には,主な対象である1型糖尿病が自己免疫疾患であるため自己免疫の再発が起こる.移植成績の向上を図るため,これらの免疫反応から移植膵島を防御する方法が検討されている.免疫抑制剤については,ミネソタ大学から報告されたプロトコールが有望で,長期成績の改善が示唆されている.本邦でも,この方法を踏襲したプロトコールの導入が予定されている.
症例報告
  • 中村 陽介, 廣岡 芳樹, 伊藤 彰浩, 川嶋 啓揮, 大野 栄三郎, 石川 卓哉, 松原 浩, 伊藤 裕也, 平松 武, 中村 正直, 宮 ...
    2011 年 26 巻 2 号 p. 204-211
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    通常型膵癌に比較して膵内分泌腫瘍では,主膵管途絶を呈することは稀である.我々はERPにて主膵管途絶を来たした膵内分泌腫瘍の2例を経験した.症例1は40歳代男性.心窩部痛で近医受診し,膵腫瘍を指摘.当院精査にて膵内分泌腫瘍と診断し,膵体尾部切除術施行.リンパ節転移を認めwell-differentiated endocrine carcinomaであった.症例2は40歳代男性.主膵管拡張精査目的で当院受診し,膵体部に8mm大の膵腫瘍を認め,膵癌疑いで膵体尾部切除術施行.膵内神経浸潤を認め,well-differentiated endocrine tumor(uncertain behavior)と診断.また造影EUSでは,2症例ともに造影効果の乏しい画像所見を呈した.膵内分泌腫瘍における主膵管途絶所見と造影EUSにおける非典型的造影パターンは悪性度の高い膵内分泌腫瘍を示唆する重要な所見と考えられた.
  • 清野 隆史, 井上 匡央, 森島 大雅, 川端 邦裕, 石川 英樹, 片山 雅貴
    2011 年 26 巻 2 号 p. 212-218
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は無治療の糖尿病のある73歳男性で,口渇感を主訴に当院内科を受診した.HbA1c高値,腹部超音波検査で主膵管拡張を認め精査となる.腹部CTでは膵全体の萎縮と体尾部の主膵管拡張を認めたが,明らかな腫瘍性病変は指摘できなかった.EUSでは膵体尾部に主膵管の数珠状拡張があり,その頭側に径10mm大の辺縁不整な低エコー腫瘤が存在した.造影超音波検査では膵体部に造影効果のない径15×15mmの病変が存在し,ERCPでは膵頭体移行部での主膵管の途絶と尾側膵管の数珠状拡張を認めた.確定診断目的にEUS-FNAを施行し,病理組織診断は腺癌だった.膵亜全摘術を施行し,術後病理は,浸潤性膵管癌の診断だったが,膵尾部に偶発的な内分泌腫瘍が2つ認められ,MIB-1 index <1%と低値でありlow risk groupに分類された.膵内分泌腫瘍を合併した小膵癌の一例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 川原 隆一, 堀内 彦之, 御鍵 和弘, 北里 雄平, 勝本 充, 江藤 大明, 石川 博人, 久下 亨, 石田 祐介, 加治 亮平, 岡部 ...
    2011 年 26 巻 2 号 p. 219-224
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は63歳男性.上腹部違和感にて近医を受診,膵嚢胞性疾患と診断され,当院紹介となった.血液生化学検査ではCA19-9 90.3U/l ,SpanI 45U/ml と高値であった.腹部CTでは10m大の嚢胞と内部に2cm大の結節状の構造物があり,その辺縁のみに造影効果を認めた.ERCPでは,主膵管との交通は認めず圧排所見を認めた.本人の希望にて手術となった.手術所見では,膵頭体部にソフトボール大の腫瘍を認め,胃の剥離は容易であったが,膵体部との剥離が一部困難であった為,膵由来の病変と判断した.嚢胞内には,粥状物と血液まじりの漿液を認めた.嚢胞背側に2cmの血腫を伴う隆起を認めた.病理所見では内部に角化物の貯留する嚢胞性病変であり,隆起部は隔壁様構造物であった.上皮は重層扁平上皮で覆われ,上皮直下にはリンパ組織の形成を認めLymphoepithelial cystと診断された.
  • 谷口 浩一, 松山 隆生, 武田 和永, 熊本 宜文, 野尻 和典, 田中 邦哉, 秋山 浩利, 小林 規俊, 窪田 賢輔, 中島 淳, 遠 ...
    2011 年 26 巻 2 号 p. 225-230
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は46歳男性で,アルコール性慢性膵炎で通院中に膵尾部の仮性嚢胞と,嚢胞内に仮性動脈瘤を認めた.血管造影では仮性動脈瘤内に噴出する動脈波を認めコイリングを行ったが,膵炎の増悪を認めたため膵体尾部切除を施行した.術後徐々に主膵管が拡張し,膵炎症状の再燃がみられたため超音波内視鏡下に尾側拡張膵管のドレナージを試みたが不良であり,食事のたびに膵炎様症状を繰り返したため残膵の尾側拡張膵管と空腸の側々吻合術(Partington手術)を施行した.術後経過は良好で第10病日に軽快退院した.術後約1年5ヶ月経過しているが膵炎症状の再燃を認めず経過は良好である.本症例のように慢性膵炎で膵体尾部切除後の膵炎再燃に対してPartington手術を施行した報告はないが,積極的なドレナージ手術によりQOLの改善が得られると考えられた.
  • 片山 外大, 西田 久史, 中右 雅之, 加納 正人, 洲崎 聡, 柳橋 健, 岸本 光夫
    2011 年 26 巻 2 号 p. 231-236
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/05/10
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性.腰背部痛を主訴に受診し,画像検査にて膵体尾部の膵原発悪性腫瘍が疑われた.腹部超音波検査にて1か月で径7.5cmから8.5cm大への増大を認め,CTでは中心部に壊死性変化を伴うhypervascularな充実性腫瘍であり,MRCPでは主膵管の異常所見は認めず,血管造影検査では脾動脈のencasementと脾静脈の閉塞を認めた.遠隔転移を疑う所見は認めず,手術にて膵体尾部および脾に加え,浸潤を認めた胃,左副腎の合併切除にて腫瘍を切除しえた.標本は線維性の被膜を有し中心部に壊死を伴う10cm大の充実性腫瘍で,病理組織学的検査にて多形細胞型退形成性膵管癌と診断された.術後は化学療法を施行せずに観察しているが,6年経過した現在でも無再発生存中である.退形成性膵管癌は発生頻度がまれで予後不良とされるが,本症例のように治癒切除を施行しえれば長期予後が望めることが示唆された.
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