膵臓
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27 巻, 6 号
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原著
  • 長谷部 修, 越知 泰英, 伊藤 哲也, 成本 壮一, 川 茂幸
    2012 年 27 巻 6 号 p. 733-741
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    自己免疫性膵炎(AIP)は高率に膵内胆管狭窄を合併するが,その原因が膵炎波及によるしめつけ狭窄か硬化性胆管炎による壁肥厚かは明らかにされていない.今回,膵内胆管狭窄を認めたAIP 19例に胆管腔内超音波検査(IDUS)を施行し,狭窄機序について詳細に検討した.IDUS所見は,しめつけ4例,しめつけ>壁肥厚7例,壁肥厚>しめつけ2例,壁肥厚6例であった.全体では壁肥厚は15/19例(79%)に認めたが,狭窄機序はしめつけ優位が11/19例(58%)と多かった.またステロイド治療後の胆管造影では膵内胆管狭窄は15/16例に残存がみられ,膵野からの不可逆的線維化が関与していると考えられた.AIPにおける膵内胆管狭窄は,壁肥厚よりしめつけ要因が強いと考えられるが,しめつけのない純粋な壁肥厚に由来する症例も存在することから,現時点では両者の要因を考慮して検討することが妥当と考えられる.
  • 田島 秀浩, 北川 裕久, 中沼 伸一, 牧野 勇, 林 泰寛, 中川原 寿俊, 宮下 知治, 高村 博之, 太田 哲生
    2012 年 27 巻 6 号 p. 742-746
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    膵体尾部癌手術症例28例をUICC規約により大動脈左縁を体尾部境界として尾部(T群:9例)と体尾部(B群:19例)に分類し,臨床病理学的因子を比較検討した.T群では神経叢浸潤やリンパ節転移が脾動脈周囲に限局していたのに比しB群では総肝動脈から腹腔動脈方向への進展が認められた.B群の5年生存率11.8%に対してT群は60.0%と予後良好な傾向を認めた(p=0.054).B群19例において総肝動脈から腹腔動脈の合併切除を伴ういわゆるAppleby手術を行った11例と行わなかった8例で予後を比較すると生存率に差はないが,合併切除を行った群のみに2例の5年生存例を認めた.以上より膵体尾部の境界は大動脈左縁とする方が疾患の予後をより反映できる可能性があり,大動脈左縁を越えて腫瘍が右側に及ぶ症例に対してはAppleby手術を行うことで長期生存例が得られる可能性があると考えられた.
症例報告
  • 渡邉 幸博, 岡本 光順, 上野 陽介, 岡田 克也, 合川 公康, 岩城 靖子, 宮澤 光男, 小山 勇, 山口 浩, 清水 道生
    2012 年 27 巻 6 号 p. 747-754
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    症例は52歳.男性.ドック検診の腹部USで膵体部腫瘤を指摘され,当院紹介となった.腹部CTでは膵体部に動脈相で造影効果が不良で,門脈相にて強い造影効果を示す径2.5cm大の境界不明瞭な腫瘤を認めた.MRIではT2強調像とDiffusionで高信号を示し,FDG-PET/CTではSUVmax(the maximum standardized uptake value)=9.7と著明な集積亢進を認めた.以上より悪性度の高い膵体部癌と診断し,膵体尾部切除術を施行した.病理組織学的検査ではductal cell carcinomaとneuroendocrine carcinoma(NEC)が混在するMixed adeno-neuroendocrine carcinomaと診断した.膵併存腫瘍の本邦報告例は少なく,病体や予後についても確立していない.今回,文献的考察を加えて報告する.
  • 大田 悠司, 菊山 正隆, 黒上 貴文, 森田 敏広, 重友 美紀, 松村 和宣, 児玉 裕三, 千葉 勉
    2012 年 27 巻 6 号 p. 755-761
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    膵石を伴う慢性膵炎症例では発熱や腹痛と炎症反応上昇を認め,ERCPにて膿性膵液を認める症例が存在する.この病態を我々は急性閉塞性化膿性胆管炎に準じ急性閉塞性化膿性膵管炎と定義した.同症例を6例経験した.全ての症例において,膿性膵液を内視鏡的に確認し,培養しえた5例において消化管常在菌を認めた.治療に関しては敗血症に至った症例も存在したが,経鼻膵管ドレナージカテーテルにて5例改善を認めた.1例はカテーテル留置困難のため外科手術となった.慢性膵炎急性増悪の病態の一つとして急性閉塞性化膿性膵管炎があると考えられ,膵石を伴う慢性膵炎の発熱には,この病態も疑い,早期に膵管ドレナージを行う必要がある.
  • 親松 学, 黒崎 功, 佐藤 賢治, 高野 可赴, 味岡 洋一
    2012 年 27 巻 6 号 p. 762-767
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    十二指腸副乳頭部の腺癌は極めてまれである.本稿では特異な膵管拡張を呈した副乳頭部癌の1切除例を報告する.症例は74歳女性.貧血の精査時にCA19-9の高値(274mg/ml)が指摘された.上部・下部消化管内視鏡検査,腹部CTで病変は発見されなかったが,CA19-9は経時的に上昇した.7か月後にFDG-PET検査にて右上腹部に集積が認められ,上部消化管内視鏡再検査にて十二指腸第2部に2型腫瘍が指摘された.CTとMRCPでは膵頭部腹側に限局した膵管拡張が認められ,副乳頭部癌または十二指腸癌の副乳頭浸潤の診断で膵頭十二指腸切除術が施行された.切除標本上,病変は3.2cm大で陥凹部中央に副膵管が開口していた.組織学的検索で副膵管内に腺癌の上皮内進展が認められ,副乳頭部癌と診断された.領域性の膵管拡張が副乳頭部癌を診断する契機となった.副乳頭は診断の死角になりやすく,注意深い画像診断が重要である.
  • 坂東 正, 松能 久雄, 塚田 一博
    2012 年 27 巻 6 号 p. 768-772
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.人工関節置換術時に指摘された糖尿病の精査にて膵と肝に腫瘍性病変が認められ紹介となった.CTでは膵臓と肝臓にいずれも長径約5cmの大きさの,膵には体部から尾部にかけて嚢胞成分を主体とした腫瘤像と,肝にはS6に充実性の占拠性病変が認められた.肝転移を有する膵粘液性嚢胞腺癌と診断し,膵体尾部切除と肝後区域切除術を施行した.術後診断は粘液性嚢胞腺腫と浸潤性膵管癌及び肝転移であった.術後経過は良好で退院され,外来通院で補助化学療法を施行し5年以上再発なく健在である.
    粘液性嚢胞腺腫と浸潤性膵管癌の合併は稀であり,肝転移を有する高度進行癌であったが外科切除を施行し長期生存が得られ臨床上興味深い症例と考え報告した.
  • 木村 有, 横溝 博, 内藤 嘉紀, 福田 精二, 福田 海, 日高 悠嗣, 清水 健次, 松田 文雄, 山永 成美, 平田 稔彦
    2012 年 27 巻 6 号 p. 773-779
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性.膵癌にて膵体尾部切除後25ヶ月に閉塞性黄疸出現,膵頭部に第二癌の出現を認め残膵全摘術施行した.切除標本より2つの癌が検出された.すなわち本症例の膵臓より(1)初回手術の膵体部の病変,(2)groove領域の胆管浸潤を来した病変,(3)膵切除断端近くの病変の3つの癌が検出された.遺伝子学的検索を行ったところ(1)の病変ではK-ras codon 12が野生型であるのに対し(2)と(3)の病変では変異型であった.さらには(2)と(3)の病変では形態病理学的に距離を持って存在し,膵管内進展による連続性も持たなかったので2つの腫瘍は独立した異時性多発癌と診断した.初回手術,残膵切除の切除標本で,ともにintraductal papillary mucinous neoplasm(IPMN)は認めなかった.IPMNを伴わない浸潤性膵管癌に異時性・多発性に第二癌が発見され,切除し得た症例を経験したので報告する.
  • 森川 孝則, 内藤 剛, 鹿郷 昌之, 田中 直樹, 渡辺 和宏, 廣田 衛久, 元井 冬彦, 三浦 康, 片寄 友, 柴田 近, 江川 新 ...
    2012 年 27 巻 6 号 p. 780-785
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代,女性.自己免疫性溶血性貧血および膵尾部嚢胞性腫瘍の診断にて腹腔鏡下膵体尾部切除術を行い,術後合併症なく退院した.術後84日目に全身倦怠,食欲不振により再入院となり,4日目に突然両側胸水貯留による呼吸不全・循環不全を呈した.胸腔ドレナージにて症状は改善したが胸水アミラーゼが高値であり,膵性胸水を疑い内視鏡的逆行性膵管造影を行った.膵管造影では膵体部膵管から右胸腔内への造影剤流出を認め,経鼻膵管ドレナージチューブ挿入,絶食,および酢酸オクトレオチド投与による保存的治療を開始した.膵液ドレナージ後胸水排出はなくなり,挿入後36日目に経鼻膵管ドレナージチューブを抜去,その後も胸水の増加は認めなかったが,日常生活動作の低下が著しく再入院後155日目に退院した.術後遅発性に発症した膵性胸水は稀な病態であるが,重篤な併存疾患を持つ患者の膵切除後において念頭に置くべき病態と考えられる.
  • 今井 仁, 長久保 秀一, 川口 義明, 角田 裕也, 伊藤 剛, 今村 諭, 清水 智樹, 諸星 雄一, 藤田 由里子, 小松 弘一, 峯 ...
    2012 年 27 巻 6 号 p. 786-791
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/01/18
    ジャーナル フリー
    症例は42歳女性.CT上,膵尾部に最大径約25mm大の嚢胞性病変を認め精査となった.精査の結果,病変内の一部にcyst in cyst様構造が認められ粘液性嚢胞腫瘍(MCN)を完全には否定できないため十分な説明を行い膵体尾部脾合併切除術を行った.切除標本では漿液性嚢胞腺腫(SCA)と診断された.SCAは通常microcystic typeと表現されるような径2~5mm程度の小さな嚢胞の集簇からなることが多い.しかし,本症例はmacrocystic typeに分類される形態を呈しており,病理学的にも大型嚢胞内に小型な嚢胞の集簇があるため一部cyst in cyst様構造が認められ,肉眼的にもMCNとの鑑別が非常に困難であった.SCAは形態がバリエーションに富むことから本症例のように他疾患の可能性も考え,手術適応とすることが度々存在する.
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