膵臓
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29 巻 , 6 号
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特集 膵癌化学療法の新たな展開
  • 古瀬 純司
    2014 年 29 巻 6 号 p. 871-872
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    膵癌切除手術の補助療法として,ゲムシタビンに続いてS-1による術後補助療法が確立し,大きく治療成績が改善している.最近では術前補助療法としてゲムシタビン+S-1併用療法やFOLFIRINOX療法などの抗腫瘍効果の高い治療を用いた臨床試験が進められている.切除不能膵癌の化学療法では,フランスからFOLFIRINOX療法が報告され,標準治療のゲムシタビンに比べ大きな生存期間の延長が得られている.日本でも第II相試験が実施され,2013年,適応が承認された.このような化学療法の進歩を実臨床に確実に導入し,実施する目的で膵癌診療ガイドラインが作成されている.今回の特集は切除手術の術前,術後補助療法と新たに登場したFOLFIRINOX療法を取り上げ,最新の膵癌診療ガイドラインから膵癌の化学療法を展望するという内容で企画された.膵癌化学療法に対する理解が進むものと期待される.
  • 海野 倫明, 元井 冬彦
    2014 年 29 巻 6 号 p. 873-877
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    膵癌は現在においても最も予後不良な癌であり,その克服は21世紀に残された課題である.近年,術後補助化学療法の進歩により治療成績の改善が図られつつあるが,切除企図膵癌を母数とすると切除が行われ,術後補助化学療法が開始される症例は,約半数である.術前治療はこの切除企図膵癌に対して行われる治療であり,術前治療の有効性を明らかにするためには,切除企図膵癌に対する切除先行群の治療成績もIntention-To-Treat解析により行い比較しなければならない.このように術前治療は膵癌全体の治療成績向上に寄与する可能性がある.現在進行中の切除可能膵癌の術前治療の有効性・安全性に対する臨床試験の結果により,切除可能膵癌に対する術前治療が標準治療になるかが明らかになるものと思われる.
  • 中森 正二, 前田 栄, 濱 直樹, 宮本 敦史
    2014 年 29 巻 6 号 p. 878-884
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    膵癌に対する術後補助化学療法について,これまでの進歩と現状および今後の展望を紹介した.膵癌における術後補助療法の有効性が明らかになり,塩酸ゲムシタビンのみが膵癌に対する第一選択薬の立場を変えつつある現状で,本邦からも多施設の協力によりS-1の膵癌術後補助治療における優位性が報告された.メタアナリシスの結果から,膵癌の術後補助療法として,5-FUあるいは塩酸ゲムシタビンを用いた治療を中心とした術後補助化学療法が試みられていくものと思われるが,術後という利点を利用して,癌組織を用いた個別化治療も勧められていくものと思われる.
  • 大川 伸一
    2014 年 29 巻 6 号 p. 885-891
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    切除不能膵癌に対する化学療法は長らくゲムシタビン(GEM)が標準治療であった.これに続いてGEM+Erlotinib併用療法,S-1が用いられるようになったが,3つのレジメンには治療成績において大きな差はなかった.FOLFIRINOX治療はフランスで行われたGEMとの比較試験で生存期間に大きな差を持って優越性を示し,欧米では迅速に標準治療の一つに加えられた.日本でもほぼ同様のレジメンで治験が行われ,良好な成績を得たため2013年12月に膵癌に使用が承認された.抗腫瘍効果に優れており,実地医療でも使用され始めているが,4種の薬剤を用い,また薬剤によっては用量も多いため,これまでのレジメンに比べて骨髄抑制を始めとして多くの副作用を伴う.このため実地医療において対象となる膵癌患者の選択には慎重かつ十分な検討が必要であり,治療経過中も丁寧な観察と有害事象に対する迅速な対応が必要である.
  • 奥坂 拓志, 福冨 晃, 木原 康之, 伊藤 鉄英, 古瀬 純司, 大東 弘明, 中郡 聡夫, 菅野 敦, 上坂 克彦, 中村 聡明, 山口 ...
    2014 年 29 巻 6 号 p. 892-897
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    膵癌診療ガイドラインは2013年に4年ぶりの改訂版が出版された.切除可能例に対する化学療法(補助療法)に関しては,JASPAC-01試験の結果をうけてS-1単独療法が推奨され,切除不能例に対する化学療法に関しては,PA.3試験の結果をうけてゲムシタビン塩酸塩+エルロチニブ併用療法が,GEST試験の結果をうけてS-1単独療法が,推奨に追加された.また切除不能例に関しては2014年にも改訂が行われ,PRODIGE 4/ACCORD 11試験の結果に基づきFOLFIRINOX療法の推奨が追加された.膵癌に対する化学療法は今後も有効な治療の開発が続くと予想されており,患者の予後のさらなる改善に寄与することが期待されている.
症例報告
  • 蔵原 弘, 前村 公成, 又木 雄弘, 迫田 雅彦, 飯野 聡, 樋渡 清司, 南 幸次, 石神 純也, 上野 真一, 新地 洋之, 夏越 ...
    2014 年 29 巻 6 号 p. 898-904
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    67歳の男性.2013年9月に膵尾部癌の診断にて当科受診.TS2(21mm),T4(S+,RP+,PVsp+,Asp+),N3(16b1),M1(LYM),cStage IVbであり,S-1+gemcitabine療法の方針とした.4コース施行後,16b1転移リンパ節におけるFDG-PETでの異常集積は消失し,CA19-9は正常化.加療後の評価はTS1(10mm),T4(S+,RP+,PVsp+,Asp+),N0,M0,cStage IVaであり,2014年1月に手術を施行.No.16b1リンパ節は術中迅速病理組織診断にて転移陰性であり,膵体尾部切除術,D2リンパ節郭清を施行.最終病理組織診断にて切除膵臓内には軽度の炎症細胞浸潤を伴う線維化を認めるのみで,癌の遺残を認めず,組織学的にcomplete responseと判定.
  • 馬場 慧美里, 二川 康郎, 三澤 健之, 筒井 信浩, 石田 祐一, 片木 宏昭, 矢永 勝彦
    2014 年 29 巻 6 号 p. 905-912
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.上腹部痛を主訴に受診した.近医の腹部超音波で膵体部に3cm大の嚢胞を伴う腫瘤性病変を指摘され,当院を受診した.DUPAN-2軽度上昇,腹部CTで膵体尾部に嚢胞を伴う単房性腫瘤を認め静脈相にて造影効果を認めた.腹部MRIで嚢胞壁はT2強調像で低信号,拡散強調像で軽度拡散低下を認めた.EUSで内部に嚢胞を内含した腫瘤を認め,腫瘤内部は不均一な低エコーを示していた.ERPでは嚢胞と主膵管の交通を認めず,MRCPでは腫瘤より尾側膵管は軽度拡張していた.以上から神経内分泌腫瘍,漿液性偽乳頭状腫瘍等を考慮の上,悪性腫瘍の可能性を否定できないため,腹腔鏡下膵体尾部切除術を施行した.病理診断は自己免疫性膵炎であり,嚢胞は真性嚢胞であった.今回真性嚢胞を伴う稀な形態を呈したため診断困難であった自己免疫性膵炎の一切除例を経験したので報告する.
  • 中島 陽平, 西原 一善, 松永 浩明, 田宮 貞史, 柿原 大輔, 光岡 浩志, 板場 壮一, 槇原 康亮, 濱田 哲夫, 阿部 祐治, ...
    2014 年 29 巻 6 号 p. 913-918
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    症例は54歳男性,右背部痛を主訴に近医を受診した.CT/MRIで膵腫瘤を指摘され,PET検査でも高集積を認めた.画像所見から膵Solid-pseudopapillary neoplasm(以下,SPNと略記),神経内分泌腫瘍,腺房細胞癌,漿液性嚢胞腺腫などが疑われた.診断確定のために超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診を施行しSPNの術前診断を得た.膵臓の腹側に突出する腫瘍であり,核出術で遺残なく切除可能と判断し腫瘍核出術を選択した.組織検査では小円形核と弱好酸性胞体を有する腫瘍細胞が充実性に増殖していた.免疫染色ではβカテニンがびまん性に陽性で,SPNの診断であった.脈管侵襲や核分裂像は認めなかったが,一部に核異型の強い部分を認めた.核異型が悪性因子の指標になるとの報告もあり,今後再発に対する注意が必要と考えた.
  • 前平 博充, 杉浦 禎一, 金本 秀行, 岡村 行泰, 伊藤 貴明, 栗原 唯生, 蘆田 良, 佐々木 恵子, 上坂 克彦
    2014 年 29 巻 6 号 p. 919-925
    発行日: 2014/12/25
    公開日: 2015/01/09
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.肝細胞癌に対するラジオ波治療後にCTでフォロー中,膵体尾部に膵管拡張を指摘された.CTでは膵内に腫瘤性病変を認めなかったが,EUSを行うと,膵体部に8mm大の低エコー領域を認め,それより尾部側の膵管が拡張していた.ERCPでは,膵体部に主膵管の狭窄と,それより尾部側の主膵管拡張を認めた.その際に施行した膵液細胞診はclass Vであった.以上よりEUSで認められた低エコー領域を浸潤性膵管癌と診断し,膵体尾部切除術,脾臓摘出術を施行した.病理組織学的検討では,膵体部の主膵管と分枝膵管に上皮内癌を認めた.EUSで認めた低エコー領域は,上皮内癌の存在部位とは完全には一致せず,上皮内癌周囲に引き起こされた線維化の部位に相当していた.本症例は上皮内癌周囲に引き起こされた線維化がEUSで腫瘍像としてとらえられた症例と考えられた.
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